■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 最新50 [PR]ぜろちゃんねるプラス[PR]  

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/05/28(日) 12:25:12 ID:AaT+g6Z00
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです。
小説形式、レポ形式、一言、オリジナル何でも歓迎です。

・スレの性質上、レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので
 スレ容量が470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
 (トリップは名前欄に「#(半角シャープ)+半角8文字」で出ます)
・同じスレ内で続きをアップする場合は
 アンカー(「>>(半角右カッコ2つ)+半角数字(前回レスしたスレ番号)」)
 をつけるとより読みやすくなります

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら六泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1142080254/

まとめサイト
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」冒険の書庫
tp://www.geocities.jp/if_dq/
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」避難所
tp://corona.moo.jp/DQyadoya/bbs.cgi

226 :224:2006/06/29(木) 15:41:58 ID:z5PLjJnu0
>>18

227 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/29(木) 16:05:11 ID:FTVj7ZSHO
色々なスレがあるんだな


228 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/29(木) 16:29:18 ID:mJXj1Cd90
>>226
いわゆる日本語でオkというやつか

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/06/30(金) 21:08:35 ID:0PrSc3P+O
保守

230 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/01(土) 00:29:07 ID:tMTM+C4V0
>216
今更ですが乙です。

展開良し、文体もお気に入り。そしてボリューム大とかなりいい感じです。

ですが…パナマ上陸とか航宙自衛隊とか突撃し続ける三州公とか言いたくなるのは何故でしょうか。(最後の一字が違うが)

231 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/01(土) 09:13:24 ID:krEl1sQD0
ドラクエ自衛隊とか妄想してみる

232 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/01(土) 09:53:16 ID:q6XuHz6q0
>>231 こんな感じ?
http://jbbs.livedoor.jp/movie/4152/fjieitai.html

233 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/01(土) 17:17:40 ID:bD+EsNcA0
>>232
うはwwwそんなスレあったのかwww

234 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/01(土) 17:31:40 ID:tMTM+C4V0
まあ似たようなことを考えるヤツは居るわけで…

235 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/02(日) 22:42:41 ID:7xYBOQe4O
ほす

236 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/07/03(月) 09:49:12 ID:/7h50aHS0
俺達は港町ルプガナに到着した。結構大きな町で結構人が歩いていた。
しかし、シャールが俺達に護衛を頼むって言う事は何かあったのだろうか?

シャール「ありがとう。無事に町に着く事ができたよ。」
 サマル「何事も無くて良かった。」
  もょ「まずはムーンをやどやにはこんでそれからこんごのことをかんがえるか。」
  リア「シャールさん、宿屋はどこにあるの?」
シャール「わしが知っている所に連れて行ってあげよう。」

シャールはそう言うと俺達を案内し始めた。案内された宿屋はローレシアやサマルトリアの宿屋も大きな建物だった。

 サマル「で、でっかいなぁ…」
  リア「結構高そうじゃない?」
シャール「この町は色んな国から旅人や商人が集まってくるからここは大衆向けの宿屋なんだ。料金はそんなに高くは無いぞ。」
  もょ「なにからなにまでありがとうございました。」
シャール「護衛をしてくれたお礼だ。わしもやっと娘に会いにいけるからな。」
 サマル「へぇ、そうなんですか。」
シャール「ああ、機会があったら是非わしの家にも来てくれ。後、薬を買うとしたら必ずわしの所に来るようにな。」
  リア「シャールさんって商売上手だね。」
シャール「こりゃ可愛いお嬢さんに一本採られたか。ハハハ…」

シャールはそう言いながら町の方へ戻っていった。


237 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/07/03(月) 09:50:36 ID:/7h50aHS0
 もょ「さて、どうしようか?」
サマル「まずはムーンが目を醒めるのを待つ事だね。」
 リア「ムーンさんが起きるまで休憩だね。」

うーん、このままではおもろーないわ。――――――――――ここは一発かき回すか。
  
 タケ「サマル。留守番を頼めないか?」
サマル「どうしたんだい?もょ?」
 タケ「リアちゃんとちょっと町をブラって回りたいからさ。」

 もょ「(お、おい!タケ!い、いきなりなにいっているんだ!?)」
 タケ「(まーまーここは俺に任せておけって。)」

サマル「えーっ?でも………………」
 タケ「もっとこの町の情報を知りたいからな。それに男一人で動き回るよりもリアちゃんと一緒の方が効率が良い。」
サマル「わかったよ………じゃあ行っておいで。」
 タケ「なら決まりだな。リアちゃん、行くぞ。」
 リア「うん!」

よしよし俺の思惑通りに行ったで。さぁ!!!イッツ・ア・ショウタイムや!!!

 タケ「(もょ。ついに初デートやな。)」
 もょ「(か、か、かってにはなしをすすめるなよ!)」
 タケ「(あのなー、もょも男ならこのチャンスをモノにしろや。まぁ、頑張れ。ひひっ。)」
 もょ「(お、おい………………よわったなぁ……………)」 
 リア「もょもとさん。はやくぅ。」
 もょ「あ、ああ………」


238 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/07/03(月) 09:51:31 ID:/7h50aHS0
ドッキン、ドッキン――――――――――もょもとがすごく緊張しているのが良く分かる。

 リア「もょもとさん。どうしたの?」
 もょ「な、なんでもないぞ。」
 リア「耳まで真っ赤っ赤だけど大丈夫?」
 もょ「だ、だいじょうぶだぞ。と、とにかくいこうか。」
 リア「あっちの方に行ってみようよ。」

リアがもょもとの手をつなぎ、引っ張っていった。

 タケ「(もょ、どないや?)」
 もょ「(き、きんちょうしてどうすればいいのかわからないな…)」
 タケ「(ホンマに奥手やな〜。変に気持ちを入れ込む必要はないんやで。」
 もょ「(あ、あたまではわかっているんだが…)」
 タケ「(普段通りにしとけばええやん。俺も流石にイキナリ決めろって言っているんやないで。)」
 もょ「(そ、そうゆうものなのか?)」
 タケ「(ああ、何でも時間をかけて成長しやんとアカンやろ。剣も恋愛もな。)」
 もょ「(だ、だからなにいっているんだよ!!)」
 タケ「(もょ必死やなwwwwwwwwほらほら、リアちゃんが呼んでいるで。)」

 リア「もょもとさんボーッっとしてどうしたの?」
 もょ「ああ、ごめんごめん。さぁいこうか。」

俺は何も口出しせずにもょもととリアのやり取りを見ていた。


俺にもこうゆう事をしていた時があったっけ……懐かしいな……
まぁ、今は感傷にひたってもええやろ…



239 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/07/03(月) 09:53:07 ID:/7h50aHS0
しばらく町を歩いて情報収集していたら、いろんな情報が集まった。
その内容は

・ルプガナから北東に向かうとラダトームの城があるのだが定期船の運行が中止になったらしい。
・しかもラダトームはロトの子孫アレフの故郷。
・ある富豪が嵐に巻き込まれて財宝を海底の底に沈んでしまった。
・シャールがルプガナに2年ぶりに帰ってきた。

 リア「う〜ん・・・・船が要るみたいだね。」
 もょ「ていきせんもないからふねをかりることがひつようだな。」
 リア「シャールさんに頼んでみようよ!」
 もょ「そうだな。とにかくなにもしないよりはこうどうをとることにするか。」


もょもと達はシャールの店に向う事にした。

シャールの店に入ろうとしたら怒鳴り声が聞こえた。

   *「バカタレ!今頃に何しに帰ってきたんじゃ!この放蕩息子が!!」
シャール「悪かったよ。親父。だから誤っているだろう?」
   *「自分の娘を2年間もほっておいた父親にそんな事言える立場ではないわ!」
シャール「マリンには申し訳ない事したって思っているよ。だから帰ってきたんだ。」
   *「屁理屈言うとる奴なんかウチの敷居を跨ぐ事など許さないんじゃ!!出て行け!!」
シャール「ああ、わかったよ。このクソ親父!!」

シャールが勢い良く店から出て行った。ヤケになってたのかもょもと達に気がつかなかったみたいだった。

  リア「ど、どうしたのかなぁ…シャールさん…?」
  もょ「とにかくはいってみよう。」

数分後もょもと達は店に入った。

240 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/07/03(月) 10:02:46 ID:l9yJ9+n20
数分後もょもと達は店に入った。

もょ「こんにちは。」
 *「やぁ、いらっしゃい。」
もょ「じょうやくそうを3ついただけませんか?」
 *「上薬草?生憎ウチではとりあつかっておらんのぉ。」
もょ「そうですか…」
 *「お客さんすまんのぉ。ワシの息子なら作れるんじゃが…」
もょ「シャールさんのことですね?」
 *「………………………………………なぜワシの息子を知っているんじゃ?青年。」
もょ「シャールさんがくださったじょうやくそうでわたしをたすけていただいたのです。」
 *「そうじゃったのか………」

老人が納得した表情で答えた。

もょ「シャールさんはどこに?」
 *「どっか行ってしまったワイ。行き先は見当が附かないんじゃ。」
もょ「そうですか…」
 *「しかし青年よ。シャールに何の用事だったのじゃ?」
もょ「ラダトームにいきたいのですが、ていきせんがちゅうしになったので、ふねのことでそうだんしにきました。」
 *「そうだったのか…力に馴れなくてすまんのぉ。」

店の奥から女の子が出てきた。

241 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/07/03(月) 10:04:26 ID:l9yJ9+n20
 もょ「このこは?」
  *「ワシの孫のマリンじゃ。マリン、あいさつしなさい。」
マリン「こ、こんにちわ。」

女の子は元気が無さそうに挨拶した。シャールとじいさんの口論を見て凹んでいるのだろう。

 リア「こんにちはマリンちゃん。私はリア。よろしくね!」
マリン「………………………………」
 リア「マリンちゃん、お姉さんと一緒に遊ぼうか?」
マリン「う、うん!」

マリンの表情が一瞬だが嬉しそうな表情をした。やはり、リアには人を元気つけさせる力がある。

 もょ「かってにしては………」
 タケ「行っておいで!気をつけてな!」
 リア「ありがとうもょもとさん!マリンちゃん行こう!」

リアとマリンが店から出た。


242 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/07/03(月) 10:06:11 ID:l9yJ9+n20
 *「大丈夫ですかの?」
タケ「リアなら大丈夫ですよ。彼女は少しながら呪文も使えます。それに剣術も中々の腕ですよ。」
 *「まぁ、青年が言うなら安心じゃの。」

もょ「(いまのはとめたほうがよかったんじゃないのか?)」
タケ「(リアちゃんは自由に伸び伸びさせた方ええで。その方があの娘にとってプラスになるわ。)」
もょ「(こんきょはあるのか?)」
タケ「(サマルと一緒におる時と今と全く表情が違うからな。今の方が生き生きしとるよ。)」
もょ「(う〜ん…そこまではみぬけなかったな。)」
  
もょ「おじゃましました。」
 *「明日またきてくだされ。シャールの事で何か分かったら報告させてもらいますわい。」
もょ「しつれいします。」

俺達は店を出た。 

もょ「これからどうする?」
タケ「宿屋で夜を待つ事にするか。まぁ、のんびりしようや。今日は疲れたで。」    
もょ「じゃあやどやにいくか。」
タケ「おう。」

Lv.15
HP:91/105
MP: 0/ 0
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄兜 
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:はやぶさ斬り・魔人斬り
タケ専用  :かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御


  

243 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/03(月) 12:18:55 ID:IG/mjASdO
タケ乙!
ルプガナにとうとう着いたか〜。
ここから世界が広がってゆくよな…。
ムーンに照れてるもょカワイスwwともかく乙!

244 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/03(月) 12:21:10 ID:IG/mjASdO
スマン、レッドマン氏だった…。
乙!

245 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/03(月) 12:22:28 ID:IG/mjASdO
再度すまない、リアちゃんだった…。
逝ってくる

246 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/03(月) 12:40:28 ID:45sTEGkAO
レッドマン
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
いなくなったと思ったぞ。とにかく乙!

247 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/04(火) 07:49:37 ID:LoPYaCWz0
シャルル・レッドマンGJ!

他の職人さんが戻ってくる起爆剤になろそうだな。

248 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/04(火) 07:50:42 ID:LoPYaCWz0
×なろそう
○なりそう

249 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 14:58:20 ID:qIpcu4y30
皆さんお疲れ様です
今回はキャラの名前について少し話そうかと…
たいていの名前はラテン語から取ってきています

まずはパトリス。patrisと表記します。ラテン語の父という単語からつけました。
まぁ父というよりは、おじいちゃんなんですけどね…

フィリアはfiliaで、娘という意味です。こっちもパトリスの孫なんですけどね
だいたい語感で決めてしまうのです…

ジュードはjudoで、聖書のユダ(juda)から取りました。ラテン語ではJはYと同じなんですねー
決して裏切る訳ではありませんよw

では真理奈はというと、聖母マリアからです。そのままですね…
でも全然聖母という感じでは無いんだよな〜もっとおしとやかにすれば良かったかな

他のキャラはまた今度って事で。
では>>148の続きです

250 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:01:08 ID:qIpcu4y30
――――――――――――――――――――6――――――――――――――――――――

明朝、町の大広場の中心にフィリアは立っていた。
霧が薄っすらと立ち込める中、ブルーを抱え、じっとしている。

朝の散歩を楽しむ人に時々おはようと声をかけられ、ブルーがそれに答える以外は静かなものだ。
散歩人は反応したのがフィリアでなくスライムだったという事に驚き、いぶかしげに去っていく。

フィリアはほとんど喋らない。
真理奈達が挨拶してもチラリと目を合わせただけで終わってしまう。
でもそれは言葉ではない、フィリア特有の表現方法なのかもしれない。

  「フィリアちゃん、やっぱいない?」

プレナが霧の中から現れ、フィリアに駆け寄りながら確認する。
フィリアはふるふると首を横にして左右に揺らして肯定した。

  「はぁ……どこ行っちゃったんだろ」
  「さぁな、もうほっといて出発しよーぜ。時間の無駄だ」

ジュードがプレナの後ろから近づいて来る。心底呆れたといった感じで冷たい言葉を放つ。

  「仕方ないの……真理奈は事が済んでから探すとしよう」

パトリスもそれに合流する。

昨日の夜、兵士長を探しにいった真理奈はそのまま帰って来なかった。
朝になっても戻らないので、もう一回探してからエジンベアに出発する事になったのだ。

251 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:03:31 ID:qIpcu4y30
その問題を考えると、携帯があるというのは何と便利な事なのか、改めて理解されるだろう。
待ち合わせや、動向の確認がすぐにできるのだから。

この世界にもそのような呪文があれば良かったのだが、今は仮定の話をしても仕方が無い。

  「とりあえず出発する事にしましょう。真理奈は弱い人ではありません」

ジュードの怒り。フィリアの疑問。パトリスの妥協。プレナの不安。
それぞれのモヤモヤがこの霧に表れている様だった。

パトリスがルーラを唱えようとした時、霧がさぁーっと動き、不意に視界が晴れる。
陽が差し込み、4人は目を伏せる。

まぶたをゆっくりと持ち上げると、広場を大勢の兵士が埋め尽くしているのが見えた。
しかし突然の出来事というのは理解するのに時間がかかるものだ。

  「何だ、貴様らか」

兵士長が相変わらずの無表情でそこにいた。


252 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:05:07 ID:qIpcu4y30

  (真理奈〜今日遊んで帰ろうよ〜歌わないとやってらんないよ〜)

  「そうだね〜ストレス発散しよーぜ!」

     …………

  (あ、真理奈先パイ! もう帰るんですか? 今度デートしましょうよw)

  「お〜おごってくれるならいいよw」

     ………

  (能登、ウチの部に入ってくれよ。お前なら全国狙えるぞ)

  「またその話ですか先生〜助っ人くらいならいいですよ」

     ……

  (……真理奈 …起きて ……遅刻するよ?
   ………ったく……
   起きろっつってんだろー!!)

  「!!」


253 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:07:00 ID:qIpcu4y30
急に頭が回転しだす。が、そういう時は霧が晴れた時と同じ様なものだ。
赤い絨毯。右腕を下にして寝そべっている自分。動かない手足。
少しずつ理解していく、一種の防衛本能。

  (あれ…? どうしたんだっけ…? 確か……)
  「気が付いたかな?」

突然の声に驚く。その声は背後から聞こえてくる。

  「誰?!」
  「手荒な事をしてすまないな。けれど……ふふ、仕方ないんだよ」

絨毯を擦る音が聞こえる。声の主が近づいてくる。
それから逃げようとするが、体に力が入らない。

  「まだ動けないはずだ。キャビンの腕はワシが認めている」

足音が耳元で止まる。

  (キャビン! そうだ! 私――!)
  「久し振りだな。会いたかったぞ」

そう言って後ろから顔を覗き込んでくる。この顔は……エジンベア王だ。

  「お前っ!」
  「おっと。女はそんな口を利くもんじゃないぞ。…くそっ、これでは待つのではなかった」
  「どういう事だよっ! 早く動けるようにしろ!」
  「まだ動けない、と言ったはずだ」
  「み、皆は?」
  「クク……もう殺されている頃じゃないか?」



254 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:08:58 ID:qIpcu4y30
  「何だお前ら! 特にお前!」

ジュードが兵士長に吠える。

  「我らの邪魔をしてもらっては困るのだよ」

そう言って兵士長は片手を振り上げる。それを合図に兵士達が解散しようとする。

  「むっ! ボミオス!」

すかさずパトリスが兵士達の動きを止める。対象の素早さを限りなくゼロにする魔法だ。

  「ふん…ピオリム!」

兵士長が真逆の魔法を唱え、パトリスの魔法の威力を相殺させてしまう。

  「なんと?!」

動き始めた兵士達に今度はボミオスをかけ続けて全ての兵士の足を完全に止める。

  「…邪魔をするなと言ったはずだが?」
  「いきなり言われて、はいそーですかってなる訳ねーだろ。 …お前の目的は何なんだ?」
  「ふん、まぁいい。貴様らから始末すればいいだけの話だ」

そう静かに言い放ち、兵士長はいきなり4人の方へ走り出した。

  「!! こやつにボミオスは効いておらんぞ!」


255 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:10:55 ID:qIpcu4y30
走りながら剣を抜く兵士長。その刃がパトリスに届く直前にジュードが同じく剣で受け止める。
が、わずかに兵士長の方が力が強いようだ。ジリジリと押されていく。
ジュードに焦りの色が見える。しかし少しでも力を抜けばやられてしまう。

  「ぐはっ!」

その時、ジュードと兵士長の競り合いの後ろから、フィリアの兵士長への攻撃が決まる。
ジュードはすかざず兵士長のヘソの辺りに蹴りを入れ、突き飛ばして距離を取る。

  「サンキューフィリア……」

フィリアはジュードをじっと見つめる。しっかりしろ、と言いたいのかな…?

  (分かってるよ……だけど、コイツ、強ぇ)
  「先ほどの質問に答えていただきましょう。あなた達は何をしに来たのですか?」

戦いの間を使い、プレナが問いかける。兵士長は剣を杖代わりにし、立ち上がった。

  「ふん、貴様らに言う必要はない」
  「そういう訳にはいきません。私はこの町の責任者です」

ずいっとジュードの前に進み出て、その立場を示す。

  「…なるほどな。では教えてやろうか。この町がどうして潰されるかを、な」

256 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:12:32 ID:qIpcu4y30
  「なっ! 何でだよ!」
  「最初から交渉など必要なかったのだ。必要なのはあの大陸へと渡る足だ。
   足さえあれば後は町を潰すのみよ」
  (な…何言ってんの?)

自前の論理を前提に話をされると、何を言いたいのかすぐには理解できないものだ。
しかし王はそれをする。基本的に傲慢なのだ。

  「あの町は使える。あの物流をこの手にすれば世界中のアイテムは私の物だ。
   そこへイエローオーブの話が舞い込んだ。お前達の事だ」

横たわる真理奈の側にしゃがみ込み、ニヤニヤと笑いながら機械的に事の次第を話し続ける。
王の間でだ。普通ならば到底有り得ない状況だが、それを咎める家臣はいない。
真理奈と王の2人きり…

  「あの時お前が荷物からオーブを取り出した。という事はその中にはイエローオーブ
   以外のオーブが入っているに違いないと感じた。事実そうじゃったからな」

王は真理奈に皮の袋を見せる。オーブが入れてあった袋だ。

  「あっ! 泥棒するなよ!」
  「泥棒ではない。これは収集だよ」

真理奈のツンツンした声色とは対照的に、王はその口調を崩さない。

  「戦争もその為だ。植民地などにはしない。
   我が国が支配する土地は、我が国民が住むべきだからだ。
   だから、彼らは皆殺しだ」
  「――!!」
  「理解したかね?」


257 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:16:07 ID:qIpcu4y30
  「そ…そんな事理解できる訳ないでしょ!! 何考えてるのよ!」
  「何も考える必要は無い。貴様らは我が国の為にいなくなればいいのだ」
  「――!!」

言葉には力がある。だからこそ、それは時に暴力として表現される。
相手の反論を許さず、ただその言葉を受け入れろ、とでも言いたげな兵士長の表情に
プレナは声を詰まらせる。

この人は怖い、と。

  「だから、死ね」

兵士長が剣を構え、再びこちらに駆けて来る。

  「くそっ!」
  「ダメー!!」

それに合わせて駆けようとしたジュードの右腕をプレナが掴み、自分の方へ強引に引き寄せた。

  「いっ?!」
 
上半身が後ろに引っ張られ、足は前に進もうとしたため、仰け反る格好になる。

258 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:19:00 ID:qIpcu4y30
ジュードが予期せぬ出来事に体勢を崩したところに、兵士長の剣が振り下ろされた。

ジュードはとっさに左腕に装備している盾でそれを受け流し、
プレナに腕を取られたまま体を捻り、兵士長の頭にハイキックを決める。
金属のぶつかり合う音が不快に響く。

フラつく兵士長に、今度はプレナを引き剥がしたジュードが襲い掛かる。
しかしそれもプレナのジュードへの体当たりで、攻撃が阻止される。

  「邪魔だ! 何で敵を助ける!」

ジュードはそう怒鳴りながらプレナを突き飛ばし、後ろへ向き直って兵士長と相対する。
レンガの敷き詰められた地面へと投げ出されたプレナは、
そのままの体勢で荷物からまだらクモ糸を取り出し、2人へ投げつけ、
再び剣を交えようとした2人の動きを封じた。

  「何なんだよっ!」

  「それはこっちのセリフよ! どうしてすぐに戦おうとするの? 
   それじゃあモンスターと変わらないわ!」

雲が太陽を遮り、広場を暗くしていく……


259 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:21:35 ID:qIpcu4y30
  「馬鹿じゃないの! それだけの為に人を殺すなんて!!」

しかし真理奈の世界の歴史は、そのようにして成り立ってきた一面がある。
そこまで思いが至らないのは、
真理奈が勉強不足だからなのか、勉強が本当の教育となっていないからなのか。
しかし思い至ったとしても、真理奈が発する言葉は同じだっただろう。

  「これからは魔王の時代ではない。モンスターでもルビスでもない。
   我らの時代よ。いつかはその事に世界が気付くじゃろうよ」
  「そんなの絶対におかしい!」
  「何とでも言いたまえ。 
   ……少々お喋りが過ぎたようだ。王としてのクセだよ、これは」

王は恐るべき内容を淡々と、ただ淡々と語った。
真理奈もプレナと同様に恐怖を覚える。

  「では本題に入ろうか。なぜお前がここに連れて来られたのか」
  「???」
  「オーブを手に入れるためだけの目的でお前自身をここに連れてくる理由などないだろう?
   しかも毒まで使って身動きできないようにしてまで、だ」

  「……! まさか!!」 
  「その通りだよ」

260 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:24:51 ID:qIpcu4y30
真理奈に手を伸ばす王。ニヤニヤは崩さない。
それどころか、ますます醜悪になっていく様に真理奈は感じた。
まず、肩に手をかけ、横たわっている真理奈を仰向けにする。

  「ちょっ! 止めてよ!!」

そして王は真理奈のブラウスのボタンを外そうと、胸元に手を持っていく。

  (マジ……?! 体! 動けっ!!)

しかし真理奈の体は、辛うじて手先が動くくらいにしか回復していなかった。

  「死ねっ! 変態!!」
  「女がそんな口を利いてはならんと言ったであろうが。黙ってろ!」

ボタンを少しずつ外していく王。 あぁ…真理奈の胸が……

  「やめろって言ってるだろ!!」
  「…ハァハァ……」
  「くっ……イヤー!!」

  「ふふ… いい! イイぞっ!! この肌触り! シャープなライン! 素晴らしい!!
   この服はどこで手に入れたのだ?!」
  「やめっ…………え?」

…………は?

  「そしてこのスカートの色! 素材! こんな服見た事が無い! は、早くこれを私の物にっ!」
  「服かよっ!!」


261 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/04(火) 15:27:19 ID:qIpcu4y30
今日はここまで…

262 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/04(火) 18:46:31 ID:tbNPWlDyO
ちょwwwwwwwwww暇さんwwwwwwwwww
王様は制服フェチかよwwwwwwwwww
とりあえず つ囲
シャルル・レッドマンが投下したお陰で良い流れになりそうだ。


263 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/05(水) 23:47:48 ID:QqG3fNI00
職人さん達乙です!
制服オチおkwwwww

264 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/06(木) 19:12:23 ID:p09ofrqf0
> 服かよっ!!
クソワラタ

265 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/07(金) 18:37:00 ID:wfeucbD+0
全然笑えない。お前らご機嫌取り乙

266 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/08(土) 12:30:28 ID:73E6TWOBO
>>265
お前初めてかここは。
力抜けよ。

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/08(土) 16:22:40 ID:jg4lXkEy0
お前らもよく見とけよ。
よかったじゃないですか。265のせいに出来て。
生265様の生レスを拝見してもよろしいでしょうか?

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/08(土) 19:30:03 ID:8wUApjTt0
>>267
意味がわからないのは私だけ?

とにかく続ききぼーんぬ
がんがれ職人さん

269 :名無しさん@ご利用は計画的に:2006/07/09(日) 06:59:01 ID:DyX5Vbfj0
テンプレとは違うが荒らしにレスする奴もついでにあぼーんできる2chブラウザ
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Bay/7474

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/09(日) 10:08:18 ID:i991slKk0
IDって日にちがたつと変わるからNG入れてもその日の内しか意味なさげ

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/09(日) 19:25:46 ID:i991slKk0
同意

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/09(日) 19:29:03 ID:i991slKk0
ID変わってqあwせdrftgyふじこlp


273 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/10(月) 19:42:10 ID:+U5rKmBZ0
>>272
ワロスw
つドンマイ

274 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/11(火) 15:16:10 ID:tfKOHhRK0
DQ4の作品、面白かったっす!
保管庫の魔でしか読んでないんだけど、過去ログには続き載ってますか?

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/12(水) 11:31:50 ID:Qm4qnMsT0
>>274
途中までだけど載ってるよ
過去ログはこちら
ttp://ifdqstory.web.fc2.com/

276 :274:2006/07/12(水) 21:20:52 ID:s8ekCcfm0
>>275
サンクス


277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/13(木) 23:19:00 ID:0Fa+2D0AO
保守

278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/14(金) 21:02:54 ID:P+CPpAjnO
あげ保守

279 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/15(土) 20:31:42 ID:WyNkAMRC0
保守

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/17(月) 01:35:28 ID:giZF/MQw0
ほす

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/17(月) 12:17:43 ID:gO9cniZ80
保守祭りにするぐらいなら一発ネタでも書くべきかな

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/17(月) 14:36:24 ID:sPNeEjEtO
>>281
頼んだ

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/17(月) 15:16:02 ID:IisPZtgx0
ふとんがふっとんだ

284 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/17(月) 15:57:19 ID:JQfsk9rp0
スライムがスライムを買ってきた

285 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/17(月) 16:02:38 ID:w+yaQpWs0
>>283
マジレスすると、6の空飛ぶベッドは、まさにそれ状態。
布団でもベッドでも、寝床には変わらん。

286 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/17(月) 20:10:18 ID:VhKQKXO90
ちょっと書いてみたので投下してみます。

287 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/17(月) 20:11:02 ID:VhKQKXO90
01

強い衝撃を感じ、俺の意識は急速に覚醒した。
目覚めればそこは薄暗い建物の中だった。地下室か何かだろうか?
ひんやりとした石造りの壁で、端っこの方に壷や樽が置いてあるほかには何も無い。
そして目の前には何かごっついおっさんが変な格好をして木剣を片手に仁王立ちしている。

「どうした、もう降参か?」

何を言っているのだろう?さっぱり意味プーだ。
とりあえず今だ少しぼやけている頭を振ると、跳ね起きる。
何時の間にか俺の手にもおっさんの物と同じ木剣が握られている。

「ほう、どうやらまだ気力はあるようだな。だが、今日のところはここまでだ」

いや、意味わかんないから。
おっさんは、状況を整理しようと必死になっている俺には全く頓着せず、
呼び止める間もなくさっさと行ってしまった。
ええと……一体何をどうしろと?
いきなり放置プレイを喰らって呆然としていると、次第に体が痛み出してきた。
どうやら大分痛めつけられているらしい。

288 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/17(月) 20:12:03 ID:VhKQKXO90
ふむ。情報が足りなすぎるが、とにかく俺の天才的頭脳で以って予測演算してみるに、つまりこれは――



痛めつけられた。

ここは地下室。

俺は虜囚の身。

拉致監禁+秘密の特訓。

組織最強の暗殺者として育てられている!!



…………な、なんですとーー!?

ま、まずい。いつの間に拉致られたのかは全然覚えていないが、おそらく薬でも盛られたのだろう。
きっとこのまま行くと、泣いたり笑ったり出来なくなるんだ。飛べない豚は唯の豚なんだー!

逃げなければ!

自由をこの手に掴む為に!!


289 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/17(月) 20:12:49 ID:VhKQKXO90
地下室から地上へ上る階段を見つけると、一段一段慎重に上り、外へ出る。
そして周囲への索敵を怠らずにゆっくり歩く。と。

『勇者様、勇者様!』

ぬあ!?この俺が全く気配が感じられなかっただと!?
慌てて振り返ると、川辺に一匹のカエルがいた。

カエルが喋っている……!?

……ちょっと待て、落ち着け。
よく考えたらよく考えるまでも無くさっきから何かがおかしい。あまりにも脈絡が無さ過ぎる。
冷静になって状況をよく見渡すんだ。つまりこれは――

――ああ、なんだ。これは夢だ!!
夢ならばそんなにむきになって構える必要は無い。

『私は実はとある国のお姫様で――って、ちょっとユーリル!?』

俺はカエルを引っ掴むと、どうするかしばし思案に暮れる。
爆竹は無いし、夢とはいえ流石にそれは可哀想だ。
ストローも無いが、まあいいか。夢だし。
俺は大きく息を吸い込むと、カエルのケツに吹き込んだ。

『きゃあああああ!?』

大きく腹を膨らませたカエルを天高く放り投げると、中空でジェット噴射の如く加速し、
彼方へと飛んでいった。HAHAHAHAHAHA…………。

290 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/17(月) 20:13:47 ID:VhKQKXO90
「空しい……」

わかってはいるのだ。
これは現実。多分原因は、あれだ。
俺が自宅の研究室で空間跳躍の研究実験をしてたことだろう。
あれが成功して実用化されれば、ちょっとシャレにならないくらい世界の有り様は変わっていったろうに。
あの時片方のカプセルに実験用の物体Xと共に愛猫ニトロが入り込んでしまった為、
つい慌てて俺までカプセルに飛び込んでしまい、さらにふとした弾みで最終スイッチまで入ってしまったのだ。
あの時は最悪、ネコ人間として生まれ変わってしまうのではないかとちょっとドキドキしていたりもしたのだが、
やはりそんな足して引いてない結果が出る筈も無く、何かこの俺の天才的頭脳をもってしても意味プーな
状況に陥ってしまったというわけでR。

う〜む、やはりまだ実験が手探りの段階だからって、転移用の物体に嘘か真か北極で発見されたという、
あらゆる解析を受け付けない謎の巨大生物の体細胞など用いたのが拙かったのだろうか?

「まぁ、とりあえずそれは置いといて」

すぐ傍を流れる川の面を覗く。
何か俺の世界じゃ天然では絶対ありえない緑色の髪がサラサラと微風に揺れている。
うむ。男の俺から見ても美男子だな。とかそれはどうでも良く、
カエルが喋ったり人間の風貌が人間離れしていたり、やはりこれは良く考えるまでも無く。

「世界越えちゃいましたー、HAHAHAHAHA……」

やはり空しい……。
拉致監禁でなかったのは幸いだが、俺自身の状況としては大差ない。

「さ〜て、どうしたものかな……」


291 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/17(月) 20:14:41 ID:VhKQKXO90
と。
殺気を感じた。
振り返ると、そこには何か耳がとんがってて、さらにピンク色という俺以上にありえない色の
髪を持った美少女がいた。土や草にまみれてはいるが、この美少女っぷりはちとシャレにならない。
もちろん俺も引き篭もりがちな科学者とはいえ一人前の男な訳で綺麗な女の子に興味が無いわけも無く、
こんな状況でもなければ挨拶の一つもかけて、分化系硬派な生活にささやかな潤いを得たりもするのだが。
それはともかく。

――何で、彼女はあんなに怒っているのでせう?

控えめに言っても、キレてます。
知っている。アレは快楽殺人者の目だ。
知り合いの科学者やってる女が未知の触媒や実験動物に出会ったときにも似た、
見るからにおぞましい狂気の光が瞳にぎらぎらと宿っている。

『コロサレル』

と思考した時には彼女の姿は既に視界から霞み、同時――衝撃、が。
顎を、手か足で跳ね飛ばされたと認識する前にさらに打たれる。打たれる。打たれる。
水月金的人中胸尖村雨壇中鳥兎向骨――
美少女の華奢な拳は人体の前面に存在する急所という急所を的確に打ち抜き、
それと同時、俺の命も削り取っていく。
段々と痛みが薄れ――

「落ち着けシンシア!」「ひぃ、何だこの赤いの!まさかユー……」「離して、離してー!!」

――闇の中、黄金の光に包まれた、巨大な何者かの姿の影を垣間見ると同時――

「一体何があったんだ!!」「おい、じいさんはまだか!」「ユーリルを殺して私も死ぬ、死ぬのーー!!」

――俺の意識はホワイトアウトした。


292 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/17(月) 20:15:33 ID:VhKQKXO90
目覚めるとやはり知らない天井だった。
先の地下室とは違い、ごく普通の木造家屋のようだ。
意識を取り戻す以前のことはあまりよく覚えていない。
とりあえず神の領域に到達しかけたことだけは覚えているのだが。
寝てても仕方が無いので痛む体に鞭打って寝かされていたベッドから何とか身を起こそうとすると、
何かオバハンがやってきた。

「体はもう大丈夫?」
「え、あ、はい。何とか」

察するにこの人があの桃色の暴風から命を救ってくれたのだろう。
この人とこの体の持ち主との関係は不明だが、先に外を見渡した限りでは、
ここは本当に、小さな村というか集落という感じだった。恐らく村人全員が知り合いなのだろう。

「一体何があったの、ユーリル?あの温厚なシンシアがあそこまで我をなくすなんて……」

問いかけには心からの気遣いが感じられる。きっとかなり近しい人物なのだろう。親子だろうか。
だがその割にはあまりにも容姿が似ていない。父親似とかそう言う次元ではなく、
何というか黄色人種と白色人種くらい違う。
ともあれ、俺が気にすることでもない。何か複雑な事情でもあるのだろう。
それよりあのピンクの殺戮者、シンシアというのか。本気で、あれはいったいなんだったのだろうか。
このオバハンは温厚とか訳のわからないことを口走っているが、アレを温厚と呼んでいいのなら、
この世の全ての事象を愛という言葉で解決しても許されると思う。
まぁ恐らく、俺が乗り移る前にこの体の持ち主、ユーリルがあの娘に酷いセクハラでもしたのだろう。
顔に似合わずスケベなヤツだ。
少々納得はいかないが、今後のためにも、折を見て謝っておいたほうがいいかも知れん。



293 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/17(月) 20:16:21 ID:VhKQKXO90
夕食の材料を取りに行ったオバハン(後に母親と判明)の話によると、どうやら俺は丸一日気絶していたらしい。
昨日地下室から上がってきた時点で夕暮れ時だったので今もそのくらいの時間なのだろう。
ベッド脇のハメコミ式の窓を覗けば既に逢魔ヶ時。何か気持ち悪いくらいに真っ赤な夕焼け空が見える。

「う〜ん、まるで燃えているかのようですなぁ。何か焦げ臭いし、外で騒ぎ声が悲鳴が喧しいし……。
 …………………………………………て言うか、燃えてますなぁ」

な ん で す と ! !

呆然としているとヒゲのおっさんが家に飛び込んできた。

「ユーリル!まだこんな所にいたのか!」
「ああ何が何やら急展開が大安売りで意味不明の大ピンチと考えられる状況はどうすると思われるのが
 一番でしょうか――!?」
「とうとうこの日が来てしまった……さあ、私について来なさい」

シャレにならない空気を感じ、流石に混乱している俺をヒゲ(後に父親と判明)は軽くスルーし、
燃え盛る村を突っ切って、俺をあの地下室へと引きずっていった。
その後ヒゲは何か勇者とか魔物とか、情報が全く足りてない異邦人の俺にとっては正直、
毒電波にしか聞こえない戯言を垂れ流し、俺を地下室に閉じ込めて頑丈な扉に鍵を掛け、また出て行った。

「いや……だからどうしろと……」

294 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/17(月) 20:17:22 ID:VhKQKXO90
しばらく上から聞こえてくる爆発音やら絶叫やらをBGMにこれからの行動を何とか模索しようとしていると、
新たな人影が階段を下りてきた。
それは――ヒィィ!!ピンクの殺戮者だった!!!!!ピンクは扉を開け、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
……騒ぎに乗じてこの俺を抹殺しに来たのか――!?

「ユーリル……私、お別れを言いに来たの……」

や は り か ! !

ピンクが何やらぶつぶつとつぶやくと、何とピンクの姿が緑色の髪をした美少年へと変化してゆく。
って、俺やん!!
落ち着け。カエルが喋るくらいなんだ。そんな魔法じみた技術があってもおかしくない。落ち着いて考えるんだ!
……そうか!さては俺を亡き者にしたあと俺になりすまし、完全犯罪を達成するつもりか!!
元ピンクの偽俺が後ろを振り返る。――今しかない!!!!!

「今まで楽しかったわユーリル……。さようなガフッ!!」

バイト先の先輩直伝、上段回し蹴り。
十二分に遠心力を効かせた俺の左足刀は、油断していたのか隙だらけだった偽俺の延髄を確実に刈り取った。
一瞬で崩れ落ちる偽俺。だがいつ目覚めるかわからないので油断は出来ない。
すぐさま部屋から出て、扉を閉めて鍵を掛ける。よし、これでとりあえずは大丈夫な筈だ。
上ではまだ騒動が続いているようだが、少なくともここよりは安全であろう。
いざ行かん、愛と自由と平和を求めて!!



HP:10
MP:120

装備:E旅人の服


295 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/17(月) 23:02:01 ID:ST4Wnw4yO
だめー!
行っちゃだめー!ww

296 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/18(火) 01:02:15 ID:eL4ZwAnE0
テラワロス

297 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/18(火) 02:08:13 ID:S3CxDzNR0
この新職人の続き期待wwww

298 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/18(火) 09:16:59 ID:SvRDh+eZ0
勇者バロスww
HPのわりにMPが多いなw

299 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/18(火) 22:51:08 ID:wf1wk23eO
期待してるwwww

300 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/19(水) 15:34:13 ID:boWJR/Y40
MPが多いのはアレか、学者だからかwwww

301 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/19(水) 17:36:01 ID:oUIXdYTL0
何故シンシアがカエルに??って思ったが、
もしやと思って検索してみたらリメイク版で追加されてたシーンなのな。

302 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/19(水) 20:16:37 ID:lqywTisbO
シンシアのアナルに息を吹き込む………
これ何てエロゲ?

303 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/20(木) 01:39:31 ID:noskjohi0
なんてイカス勇者だwwww

304 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/20(木) 11:40:05 ID:1xS7w4pbO
激しく続きが気になるな、頼むからここで辞めないで頂きたい。

305 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/20(木) 16:29:05 ID:DrobvFpV0
激しく続きが気にならないな頼むからここで辞めて頂きたい。




306 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:30:36 ID:ISbctBbv0
ども〜
今回もキャラの名前について少し解説を……

レキウス、アリアハンの王様ですね。rex【王】という単語の変化です

ロマリア王ストゥルーストはstultus【愚か者】という意味から来ています。親馬鹿って事で…

フィリー(ロマリア王子)は【息子】filiusの変化 フィリアが娘なので名前が似ているんですね

プエラ(イシスの姫)はpuellaで【少女】 また出番があるかな〜?

ナヴィアス(ポルトガ王)は【船】 アルドゥス(エジンベア王)はArduus【高い】

キャビンは【熱烈な愛国者】  ゲノは【民族】  マヌ爺さんは【手】

そしてプレナは【たくさん持った】plenusの変化です。


ほとんどそのままの意味でつけてますね(苦笑)
一応タイトルを聖書関連でつけているので、ラテン語を使っている訳です。

ではでは>>260の続きをどうぞ〜

307 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:34:14 ID:ISbctBbv0
――――――――――――――――――――7――――――――――――――――――――

  「プレナ! たすけに きたよ!」

その声は思わぬ方向から飛んできた。
プレナ達が振り返ると大勢の男達が広場に集まって来ているところだった。
その集団はこの町の住民だけでなく、スー民族の若者も交じっていた。
それぞれ武器を手にし、いつでも戦闘可能な状態……

  「皆……? どうして??」
  「そこのおとこが きのうむらにきた!
   プレナのまちつぶして スーもつぶすといった!
   ていこうするなら あしたひろばにこい ともいった。
   だからきたんだよ!」

話を聞いたプレナは思わず兵士長に怒鳴りそうになる。
が、拳をギュッと握る事でその怒りをどうにか押さえつける。
ここで我を忘れてしまっては全てが台無しになるだろう。

  「皆、ありがとう。でも聞いて。
   大丈夫。
   私達の町は潰れたりしないわ。
   だから皆落ち着いて。武器を置いて」

まだ武器を堅く握りしめているのを見ると、その言葉の全てを信じている訳ではないようだが、
興奮していた男達がプレナの言葉で飛び出すのを止めた。
プレナがいかに影響力を持っているかが分かる。
そしてプレナは再び兵士長に向かって話しかける。


308 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:36:09 ID:ISbctBbv0

  「王の私欲の為だけに働くなんて間違ってるわ。
   しかもその為に人を殺すなんて……
   
   人はもっと違うものの為に働くのよ。
   あなただって少しはこの町を見たでしょう?
   彼らは自分の隣の人の為に働いているわ。
   それが時に自分の家族であったり、お客さんであったりするだけよ。
   そして自分自身も誰かの隣の人になる事もある。
   だから誰かに優しくできるのよ。
   
   そういう風にしてこの町は回っているの。
   だからここまで大きくなれた。
   もし私の思うままに造ろうとしていたら、どんなに発展していても悲しい結果になったでしょうね。
   自分達の幸せより支配者の幸せだけを考えないといけないのだから……

   ……あなた達、この町を滅ぼしに来たと言ったわね。
   でも暴力以外で解決する方法、私はあると思う。
   だってあなた達の国に私達の町の隣じゃない。
   私達はあなた達を拒まないわ。
   お互いに手を繋ぎましょう?
   そうすればいつかきっと良い結果がでるわ」

この話をエジンベア王にしたかったのか、とっさに考えたのかは分からない。
けれど、少なくとも聞く者の心に打つものが確かにあった。
ただ一人を除いて。

309 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:37:57 ID:ISbctBbv0
  「ククク……そんな話に俺が感動して手を差し出すと思ったのか?」

  「――!!」

  「差し出すのはこの剣のみよ!!」

その瞬間、兵士長の足元から風が吹き出し、頭上へと舞い上がった。
バギの風だ。それはまだらクモ糸を切り刻み、空に吹き飛ばす。時間にして一秒程度。
風が止んだと同時に、体が自由になった兵士長が動き出した。

  「フィリアっ!」 「!!」

その声を合図にジュードの体も風に包まれる。
しかし、一瞬、遅い。
風が止む時、そしてジュードが動けるようになったその時、兵士長は剣を刺し出した。

  ズッ!!

文字にすれば、そんな感じ。しかし、実際にはそんな音が聞こえる訳ではない。
突かれた勢いで体がくの字に曲がる。

  ズシュッ……!

肉に埋まった剣を抜く兵士長。今度はその剣に引っ張られ、一・二歩前に歩く。

  「あっ」

小さく声が漏れる。無意識に傷口を手で塞ぐ。
温かい。血が手の平を撫でていく。
体中の血液がそこから抜け出そうとしているんじゃないか、という感覚に陥る。

310 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:38:52 ID:ISbctBbv0
  「これが答えだ」

良く砥がれた刃が左肩から右腰に向かって流れる。
肩にかかっていた髪がその剣筋に沿ってキレイに切り揃えられる。
そして返り血の雨が降った。

足の力が抜け、膝を折り、プレナの体がゆっくりと倒れる。
兵士長の剣から飛び散ったプレナの血が左目に当たり、ジュードは反射的に目をつぶる。

プレナが切られたのは自分のせいだとジュードは思った。
一度目の突きは、もっと早く動けるようにしておけば十分対処できた。
そして二度目の斬撃。ただ、傍観してしまった。

確かに兵士長とジュードの戦いの間に割り込んで来たのはプレナ自身だ。
しかしそれには納得がいかない。
プレナは避けようとしなかったからだ。

  (くそっ……! 何なんだよ……! 何でそんなに……)

今までこんなに変なヤツに会った事は無かった。
敵も味方も傷つかないなんて事は有り得ないのに、プレナはそれをしようとした。
ジュードにその考えは理解できない。

しかし、こうも思う。

  (……気に入らないが、お前の言う通りにしてやろう)

と。
目を開き、兵士長をしっかりと睨みつける。
ジュードの目元から、プレナの血の涙が頬へと流れていった。

311 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:41:01 ID:ISbctBbv0
  「「「「プレナ〜!!」」」」

その場に集まった町の男共とスー民族達はプレナに起きた出来事を理解すると、
口々にその名を叫び、敵に襲い掛かろうと一斉に走り出した。
ジュードが既に兵士長と打ち合っているのもきっかけになったのだろう。

  「ボミオス!」

パトリスはその場にいる全員に再び呪文をかける。
敵・味方含めて300とも500ともつかない人数に呪文をかけるのは容易ではない。
しかし、やらなければ犠牲者が出る。
それだけは避けたい。
そこでパトリスはもう一つ呪文を唱える。

  「スクルト!」

これでもし、誰かの呪文が切れて相手に飛び掛ろうとしても、ダメージを与える事はできないだろう。
こうする事でパトリスはパトリスなりにプレナの意志を尊重したのだ。
これで当面誰も傷つく事はない。
パトリスのMPが切れるまでは……
しかし、ジュードと兵士長。
この2人にはボミオスもスクルトも効かなかったようだ。
つまりこの決着は、ジュードと兵士長に委ねられたのだ。


312 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:44:27 ID:ISbctBbv0
商人の町は奇妙に静かだった。
全ての人々が広場の中央で繰り広げられているたった2人の戦いに目を注ぎ、
固唾を飲んで見守っていた。
今や2人の戦いは国同士の戦いと同義だった。
しかしこれを戦争と呼ぶのなら、それは何と効率的で、犠牲の少なく、あっけないものだろうか。

 ギンッ!! 
       ……ズサッ…… 
                 ザシュッ……!!

打ち合いの中、ジュードはとても冷静な自分に気付いた。
兵士長の攻撃も、自分の体の動きも、そして自分の心の中までも……
だからだろうか。ジュードは疑問を持つ。
自分を殺そうとする者に対して。

  「お前、何の為に戦ってるんだ?」
  「国の為! 王の為よ!!」

兵士長の剣がジュードの左腕を斬り付ける。
これで盾は使えなくなった。
しかしジュードも兵士長の足を傷つける。
  
  「本当にそんなモンの為に戦ってるのか?」
  「貴様もあの女と同じ事を?」
  「……まぁ全部は守れそうにないけどな」
  「くだらんな……」

313 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/20(木) 16:47:16 ID:DWVnOyC40
支援

314 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:47:50 ID:ISbctBbv0
2人の間に距離が出来る。
その隙に兵士長は足に手をかざし、何かをつぶやいた。
血の噴出が止まり、傷が癒える。

  「……そうか、あんた転職したんだな?」
  「あぁ、国の為、王の為にな」
  「もう聞き飽きたよ」
  「しかし、それが真実だ!」
  「そのまま祈っていればよかったのに」
  「神などいらぬ! 想像の産物に祈って何になる!!」
  「あぁ、なるほど。同感」
  「だから俺は真に俺を助けてくれたものの為に戦う!」

ガキンッ!! ガキンッ!!!

再三の仕切り直し。回復していないジュードの方がより不利。
受けるので精一杯。
しかしそれは最初から分かっている事。
レベルが違う。
けれど、負けられない。

  「あんたによく似たヤツを俺は知っている。けどあんたとは大分違うな」
  「我が主の為に死ね!」
  「……俺自身は特に誰かを守りたいとも思わない。
   そんな事して強くなれるのか……?
   けど、今だけは、そうさせてもらう」


315 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:51:47 ID:ISbctBbv0
それまで受け身だったジュードが上段に構え、兵士長に突っ込む。
と、ピカッと剣が光り、兵士長の目を瞑らせる。
それは太陽の光の反射か、それとも……

  (――!! このままでは……)

兵士長は暗闇の中でジュードの剣を受けようと無意識に剣を顔の前にかざす。
ジュードはそれに構わず、剣を振り下ろす。

  ス――ッ……

刃が交差したところから、剣が剣に切られる。
防御を打ち破った剣は続いて、鎧の左肩から右腰を切り裂いていった。

ジュードは突っ込んだその勢いで兵士長の左へ体を流す。
左足で着地。そして一歩進み、そのまま逆時計回りに体を回す。
兵士長の背後に回ったジュードは遠心力を使い、
兵士長の鎧の背後部分、右腰から左肩へと剣を走らせた。

自身の重みに耐えられなくなった鎧が、兵士長の体からガランガランと滑り落ちる。
そして兵士長も膝から崩れる。
その体には傷一つ付いていなかった。
しかしこれで兵士長は戦えない。

  「あんたより、あいつの方が強かったぜ」

316 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:53:34 ID:ISbctBbv0
――――――――――――――――――――8――――――――――――――――――――

  「アルドゥス王!! あっ……」

城のどこかに待機していた兵士だろうか。ひどく慌てた様子で入って来た。
もっとも入って来るなり王の見てはいけない行為を見てしまい、余計に慌ててしまう。

  「……どうした?」

一度高まった気分に水を差され、明らかに不機嫌なのが見てとれる。
しかし、普通なら動揺しそうなもんだが…

  「は、はい! し、侵入者が――」

そこで言葉が途切れる。
真理奈からは部屋の入り口は死角なので事態の推移を見る事が出来ないが、
王の体がビクリを反応した事で、何かがあった事だけは悟る。
では王は何を見たのだろうか。
それは炎に包まれ、一瞬にして炭と化した兵士の姿だった。
ただの黒と成り下がった兵士が倒れ、絨毯に触れた部分からさぁーっと人の形が崩れていった。

  「やぁ、エジンベア王。久し振りだね」

人であったものを踏みつけ、新たな人間が入ってくる。
王から見れば、まだ若い。青年。

  「だ、誰じゃお前は!」

間の抜けた質問。 兵士は侵入者が、と言ったではないか。
そしてその兵士を殺したのは後ろから入ってきたこの青年に間違いがない。
とすれば、この少年が侵入者であろう。
まぁ王が期待したのはそのような答えではないだろうが…

317 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:55:29 ID:ISbctBbv0
  「ふん…下の者を働かせて、自分はお楽しみタイムって訳ですか」

青年は2人を一瞥して笑う。
そして右手をかざして――

  「イオ」

呪文を唱えた。
爆発は2人の手前で起こり、彼らを引き離すかのように吹き飛ばした。

  「ぐはっ!!」  「いったぁ〜!!」

王は部屋の横壁に叩きつけられ、真理奈は王座の側に転がった。

  (何なんだよー、一体……)

未だに侵入者の姿は確認できない。
目を開けると目の前には自分のバッグが横たわっていた。

  (や、薬草!じゃないか… 毒消し草…あるっけ?
   草臭くなるからいつもいらないって言っちゃうんだけど……)

震える手を伸ばす。 幸いな事に腕までは何とか動かせるようになったようだ。
力も徐々に戻り始めている。
真理奈はバッグの中に入っているもう一つの皮袋を取り出す。
匂いがイヤできつく縛っておいたのが仇となった。なかなか解けない。
が、絶対に無理ではなかった。確実に真理奈の中の毒の効果は薄れている。
何とか結び目を解き、中身を見る。

  (あった! ラッキー!! おじいちゃんサンキュー!!)

渡された時は閉口したものだが、今は喜んで口を開いて食べるしかない。

318 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 16:56:41 ID:ISbctBbv0

  「どこの世界でもやる事は一緒か。まいったな」

本当に困ったとは思えない明るい口調で青年がつぶやく。

  「ま、人が作り出す社会なんてそんなものか」

一人で納得した後、青年は王の所へ静かに足を進める。

  「お…お前は……」

息も絶え絶えに王は繰り返す。

  「あなたもよく知っている者ですよ。会った事はありませんがね」

しかし彼は"久し振りだ"と言ったはずだ。一体……?

  「では自己紹介しましょう。僕の名前はゾーマです」

319 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/07/20(木) 17:04:35 ID:ISbctBbv0
さて、取り合えずここまで〜

>>262-264 &>>313、そして読んでくれてる方みんなありがとうございます〜
前回の制服オチが好評だったようで、嬉しい限りですw
楽しんでもらえるよう、また頑張ります

そして新人さんにはじめまして&wktkしつつ、今日はこの辺で退散します
ではでは〜ノシ

320 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/20(木) 17:06:14 ID:GtGVMyeY0
暇さん乙!
リアルタイムで読ませていただきました。
ワッフルの結末がこうなるとは思わなかったorz

321 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/07/20(木) 17:30:59 ID:iWpTI+RHO
乙乙乙乙乙乙乙乙乙!

322 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/20(木) 21:48:40 ID:Xe0lIA1h0
前回>>294
続き投下開始します。

323 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/20(木) 21:49:32 ID:Xe0lIA1h0
02

俺が地下室から飛び出すと、何か村はすっかり炎に包まれていました。
目に見える範囲では爺さんやらユーリルのお袋さんやらが円陣を組んで何やらぶつぶつと
念仏みたいなのをつぶやいており、時々どういう原理か光ったり燃えたり凍ったり爆発したりしている。
さらに遠くの方からは、金属がぶつかり合う音や、人や獣の雄叫びみたいなのが
ひっきりなしに聴こえてくる。

「何、やってんだ、こいつら…………?」

何かの前衛的な宗教儀式だろうか?とにかく必死の気迫という奴は確実に伝わってくる。
ちょっと関わりたくないけど、あのピンクの殺戮者よりはマシだと思いたい。
俺はぶつぶつと必死に念仏ぶっこいてる爺さんに近付いて話し掛けようとしたが、
それより先に爺さんが気付いて、思いつめた、どこか後ろめたさを感じさせる顔で話し掛けてきた。

「!!……シンシア、か。すまぬ、お主には残酷な役回りをさせてしまったのう……」



――――――――――――――――――――――――――――――――は?




324 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/20(木) 21:50:27 ID:Xe0lIA1h0
何を、言っている、この老人は?
シンシアというのは、俺を抹殺しようとしたあのピンクの殺戮者の名前だった筈だ。
……決して、燃え盛る村の熱気のせいというだけではない、冷たい汗が背筋を伝う。
シンシア――ピンクは俺を殺した後で、変な技で俺になりすまし、
俺という存在を闇に葬り去るつもりだったはずだ。
なぜ、こいつがピンクの計画を知っている……?
……考えるまでも無い。
村中がグルだったのだ。
小さな村であり、周囲は森に囲まれて交流はほとんど無さそうだ。
村中の人間が口裏を合わせれば人一人の死ぐらい、簡単に無かったことに出来るのだろう。

……ユーリルという少年が、この村においてどのような存在だったのかは知らない。
或は両親や村中から、最初からいなかった事にされるほどに
徹底的に処刑される程の罪を犯したのかもしれない。
――だが、そんなものはこの俺には何の関係も無い!
俺は生きる!
例え違う人間としてでも、こんな所で訳もわからずに殺されてたまるか!!

「……っ!!」

俺は走った。脇目も振らずに、つっ走った。

「バカな!突っ込むつもりか!?」「まさかおとりになるつもり!?」「待て、幾ら何でも一人じゃ無茶だ!」

何か後方から叫び声が聞こえてくるが無視だ無視!
今はとにかく俺が本物とばれないうちに逃げるしかない!!自分の事以外は考えるな!!


325 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/20(木) 21:51:41 ID:Xe0lIA1h0
ある程度走ると、村と森の境で新たな人影が見えてきた。
先程の爺さん達とは違い、ガタイのいいオッサン達ばかりだ。
中には地下室で俺をぶちのめしたオッサンやユーリルのオヤジさんの姿も見える。
皆例外なく血まみれで、何かしらの手傷を負っているようだった。既に事切れてるのもいるっぽい。
普段の俺なら驚くなり引くなりするだろうが、今は自分の命が最優先だ。
小さな村だ。奴らも例に漏れずグルとみなした方がいいだろう。
俺は脇目も振らずにオッサンたちの間を駆け抜けていく。

「くっ、彼女の覚悟を無駄にするな!!」「これを機に敵を分断するぞ!!」「おお!!!!!」

後方からまたなんかよく分からない叫びが聞こえてくるが、気にしない。今はただ走れ。走るんだ。



村を抜け、森の中をひたすら走る俺の前に、複数の新たな人影が――って、人じゃない!?
な――何だ!?あのひたすら放射能に汚染されまくって突然変異を起こした挙句
邪教の館で三身合体して殺意の波動に目覚めたデ○ズニーランドみたいな連中は!?

「いたぞ!」「今までの奴らより歳が若い。奴が勇者か!?」「バカな奴だ、一人でやってくるとはな!」

ヒィ!?何か知らんがロックオンされたっぽい!?

「待て!落ち着け!!話合おグヒョッ――」


326 :隙間風 ◆njN6YTN.DI :2006/07/20(木) 21:52:31 ID:Xe0lIA1h0
聞いてください、みのさん。何か六本足のライオンさんが僕を襲うんです。
思わずすくめた頭の上を、ものすごい唸りをあげて、ぶっとい腕の内の一本が通り過ぎていきます。
余波の衝撃で僕がよろめいたところに、もう一本が、今まさに頭上から真下に振り下ろされようとしてます。
計算なんてするまでも無く、あんなのをマトモに喰らったら死ぬでしょう。
ええ、そりゃあもうあの勢いですから、死体が原形を留めることすら難しいでしょう。
そうならないように、僕は頑張って計算しました。
世界の全てを数字に置き換えて、僕の身体強度とライオンさんの腕の破壊力と動きを仮定し、
どう動けば最も負荷を減らすことが出来るか一生懸命考えたのです。そりゃもう本当に、死ぬ前の走馬灯並の
集中力で頑張りました。脳内に住んでる小人さんや妖精さんたちともいっぱい話し合いました。
まぁ計算の過程なんかは面倒くさいから省略しておきますが、とにかく最終的に、前に2歩、左に1歩半の地点で
やや中腰気味でかがんでいれば、負荷のおよそ8割を相殺できるという計算結果を得ることが出来たわけです。
で、僕もやはり死にたくないわけですから、その通りに動いてみると、ライオンさんは僕の頭の横ぎりぎりを
空振りして、元からあまり良くなかった体のバランスを崩してしまいます。
それと同時、先程よりも凄まじい衝撃波が僕の脳を揺さぶり(つーかかすった)、頭の変な羽根飾りが
彼方に吹っ飛んでいきました。意識がぶっ飛びそうになるのを、まぁ頑張って我慢します。
とにかくそこに、僕がちょっと足を引っ掛けてやると、ライオンさんはあべしと盛大にずっこけました。
六本足の分際で二足歩行なんてするからです。間抜けです。ぶっちゃけ大笑いです。HAHAHAHAHAー!!
つられて他のなんちゃってデ○ズニーどもも大笑いです。ああ、何だか和気あいあいとしてきました。
この状況ならあの奥義も6割の確率で通用するでしょう。先に言っておきますが、バカにしてはいけませんよ。
こういうのは心理的タイミング(その場のノリとも言う)というものが大事なのですから。
それではいきましょう。

「ああーー!!アレは何だーー!?」


474KB
続きを読む

名前: E-mail(省略可)
READ.CGI - 0ch+ BBS 0.7.4 20131106
ぜろちゃんねるプラス