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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら六泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/11(土) 21:30:54 ID:2kKEOzWo0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです。
小説形式、レポ形式、一言何でも歓迎です。

・スレの性質上1000になる前に500KB制限で落ちやすいので
 スレ容量が470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
 (トリップは名前欄に「#(半角シャープ)+半角8文字」で出ます)
・同じスレ内で続きをアップする場合は
 アンカー(「>>(半角右カッコ2つ)+半角数字(前回レスしたスレ番号)」)
 をつけるとより読みやすくなります

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら五泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134827399/

まとめサイト
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」冒険の書庫
http://www.geocities.jp/if_dq/

356 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/11(火) 22:20:03 ID:U4FiKkYZO
生存証明保守

357 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:31:40 ID:4cLXcxQB0
>>195
から続き
ついでにトリップ思い出したので戻します

●メイの両親

「ごめん」

宮殿を出てすぐに謝る俺
町の明るさが全く変わらないためどれくらいの時間なのかがわからない
太陽の動きがわかっても早朝、朝、昼、夕方、夜くらいしか判断出来ないが

「儀式で眠る人なんてまずいないから、驚いただけ 泣いてなんかないわ」

目が赤くなってるじゃないか
心なしか鼻声だし
ルビスもタイミングを考えてくれよ…

「ところで、魔力を引き出してもらった感想は?」
「感想? …あまり実感が無いな、俺は魔法を使えないし」
「え、そうなの? 神父さまにそう言われたの?」
「ルビス─ じゃあない! …そうだろうなぁって思っただけ」

危ない、思わずルビスの事を話してしまうところだ

358 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:32:35 ID:4cLXcxQB0
「ルビス様がどうかした?」
「なんでもないんだ たぶん、夢でもみたんだよ ははっ」
「ふーん… 後で簡単な魔法を教えてあげるわね」

困ったな
使えないってわかってて教えてもらうのは、悪い
しかしどう説明したらいいんだろうか

「いや、今は剣を─」
「遠慮しなくてもいいのよ 私は賢者なんだから教える事くらい簡単」

仕方ない
教わっても使えない所をみてもらえば、諦めてくれるか
……なんか悲しいけど

「わかった 楽しみにしておくよ
 それで今どこへ向かってるんだ? 宿屋か?」
「当然、私の家よ
 お金払って宿屋に泊まるなんて、家があるのにもったいないわ」
「そっか じゃあお世話になろうかな」

359 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:33:29 ID:4cLXcxQB0
助かった
これで宿代が浮く
1ゴールドだろうと無駄遣いは出来ないから節約だ

宮殿の正面の大通りを途中で曲がり、民家らしき建物がある通りを歩いていく
"民家らしき"というのは、どの建物も人の住む家に見えないからだ

「ここよ 結構立派でしょ? どう?」

メイが腕を右へあげる

二階建ての四角い石造り
雨が振らないから雨樋を要しておらず余計なでこぼこが無い本当に四角い家
そして空間制御のおかげかとてつもなく広い 軽く百坪はあるだろう
例に洩れず外壁は白だ

家の大きさと合わない扉を開け家へ入る
メイの両親は俺を歓迎してくれた

娘が男と旅をしてるなんて正直、なにか言われるんじゃないかと思っていたが…

360 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:34:24 ID:4cLXcxQB0
父親はカシムといいドワーフ
母親はネリスといい人間
二人はとても温和で、やさしい
俺とトルネコの話をじっと聞いてくれ、それからメイを呪いの解けた勇者様へ送り届けてほしいとお願いされた
メイとの旅は封印の洞窟までと決めていたのだが、その場の雰囲気に押されて"はい"と返事をしまう

この世界で何度、妥協と安請け合いをしてきただろう
俺のこの行動が後々トラブルを起こさなければ良いけど

しばらく談笑し、やがて食事が運ばれてきた
ネリスの作る料理はとても美味しく、メイが作ったという何かのスープも同じく美味い
旅ではゆっくり食事を作る時間も設備も無いから、俺はしっかり堪能した

食事後、疲れていた俺は失礼かと思ったが眠気を我慢できず先に寝かせてもらう事にし、湯を借りた
その後客間へ案内されたのだが、光苔は植えられておらず真っ暗
客間と寝室は、俺はすぐ寝たいので断ったが移動できる台に光苔を植えたモノを使うそうだ

俺が客間へ入った後も家族の会話は聞こえたけど何を話していたのかはわからない
メイと両親は明日から長い時間会えなくなるんだ、いろんな話があるんだろう
気にせず柔らかく厚い布団に潜り込む

明日からまた固い地面と薄い毛布と渇いた食事─
その事を忘れるように目を瞑り、俺は一瞬にして夢の住人となった


361 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:35:16 ID:4cLXcxQB0
●オリハルコンと魔力の力

「お世話になりました」
「メイの亊、よろしくお願いします」

朝になり、俺はカシムとネリスに礼を告げていた
ネリスが俺に言葉を掛け、カシムは黙ってうなずいている

「今度は勇者様もお招きするわ いってきます!」

メイが元気良く両親に挨拶をし、俺と共に家を出る
俺は食事をして眠っただけだが家族は遅くまで話し込んでいたようだ
娘を苛酷な旅へと送り出す親の気持ち、俺には今後も理解できそうにない

「スープ、美味しかったよ」
「ありがとう 私が唯一、自慢できる料理なのよ」
「唯一? 他は?」
「他は… 勉強中です!」

ちょっと怒った表情で、メイは大声で答えた

362 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:36:42 ID:4cLXcxQB0
旅をしている間は否応なしに軽い食事になってしまう
だけど俺は朝からそんなに腹へ入れられない
だから朝食は昨晩メイの作ったスープを出してもらった
調理されている食事はこれで当分お預け、メルビンに出会えれば別だけど方向が違うから会えないだろう

メイの家から歩き、宮殿正面の大通りへ出る
真っ白な建物には真っ白な店の看板
いくら白が好きだといっても、これじゃ迷うよなぁ

「旅に必要なものを用意しましょう」
「うん、店に寄って準備だ」

話し合い、まずは食料品店へ入り食べ物を買った
栄養価が高く保存も利く、いつもと変わらない乾物だ
それから魔法の鎧の代わりを探すため、武具の店へ

「いらっしゃいませ!」

小さな店主が出迎える
この店は武器と防具両方を扱っているため広い

「鎧を見せてほしいのですが」
「鎧ですね? それなら─」

店主がカウンター奥のカーテンをシャッと引く
その向こうには鎧が二つと木の人形に着せられた衣が一着

363 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:37:50 ID:4cLXcxQB0
「左から"水の羽衣"、"ドラゴンメイル"、"魔法の鎧"となっております」

俺が扱えそうなのは魔法の鎧とドラゴンメイルの二つ
水の羽衣はヒラヒラしすぎていて、剣を持って前に出るには不向きだ
メイはどうする?

「あ、私は大丈夫よ 良いローブを着ているから」

メイが身に着けているのは、薄いベージュで所々がキラキラ光るローブ
そういえば昨日までのローブと違う

「昨夜、母にもらったの プリンセスローブっていって"炎"、"風"、"氷"の魔法ダメージを軽減できるのよ」
「へぇ たいしたローブなんだな」

耐性というやつか
これから長い旅になるんだし、そういう事も考えていかなきゃいけない

「耐性なら魔法の鎧が良いと思いますよ!」

店主がそういいながら魔法の鎧をカウンターへ乗せる

トルネコもちゃんと耐性を考えて俺に装備させていたんだな…

364 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:39:04 ID:4cLXcxQB0
「ドラゴンメイルは耐性無いんですか?」
「炎に対してだけ、高い耐性があります」

"炎だけ"なのか、うーん…
赤い色がかっこいいんだけど、守る範囲は広いほうがいいもんな

「じゃあ、魔法の鎧を」
「ありがとうございます! お代は9000ゴールドです
 今装備している鎧は… おやそれも魔法の鎧ですか!
 穴が空いているようなので1000ゴールドで引き取りましょう
 8000ゴールドのお支払いをお願いいたします」

思ったより高い 金が…
しかし穴があいたままでは気持ち悪いし仕方がないか、この鎧を引き取ってくれるんだ…

俺は残った金17000ゴールドから8000ゴールドを支払う
その場で、穴の空いた魔法の鎧を外し店主へ渡した後、新しい魔法の鎧を装備した

「とてもお似合いですよ! ありがとうございました!」

同じ鎧でも新しいモノは気分がいいな

「鎧だけでいいの?」

メイが俺に問いかける

365 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:40:20 ID:4cLXcxQB0
「そうだなぁ… 兜は重いし、これでいいよ」
「あ! 盾はいかがですか? どんな攻撃でも弾き返せますよ!」

店主が勢いよく提案し、別のカーテンを引く
見ると盾がズラリと立てかけられていた

「すみません 俺は盾を扱えないんです…」
「そ、そうですか 最近、盾が売れないんですよねぇ」

そういえばピピンもテリーも、そしてトルネコも盾は使ってなかった
魔物くらいだろうか、使っているのは
とりあえず俺には必要無いな

「じゃあ、これで…」

今度は武器を薦められてしまいそうな雰囲気だったから、急いで武具店を出る
武具屋の扉から"またどうぞ!"と店主の声が聞こえた

「さて もう準備はいいかな」
「ええ、町を出る?」
「そうしよう」

遠くに見える町の入口へちょっとの時間でたどり着き、階段を昇る
昇りきると、まぶしい陽射しが出迎えてくれた

やっぱり本物の陽は違う
なんというか、暖かさがあるもんな

366 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:41:24 ID:4cLXcxQB0
「よし どっちの方向へ向かえばいいんだ?」

地図を出しながらメイに聞く

「ここからだと… 南ね、この偽物の町をこのまま通り過ぎれば分れ道があるわ
 その先は私も行ったことが無いから地図を頼りに、迷わないように」
「フィッシュベルへ向かう途中、何回か迷ったからな…
 今度はしっかり確認しながら行くよ」

地図をしまい、偽廃墟を通り過ぎる
しばらく進んだところで振り返って見ると、なるほど
普通の人間でもこの距離から眺めれば本物の廃墟だ
しかしこれじゃあ何も知らない旅人はきっと廃墟だと勘違いして素通りするか近付かないだろう

「ホイミ、教えてあげる」

イシスの偽廃墟を眺めていると突然、メイが言った

「あ いや、いいんだ魔法は任せるから」
「任せるって、魔力を持ったのに魔法を使わないつもりなの?」
「うーん、今はオリハルコンと魔力の二つの力を見てみたい
 魔法はまた今度、教えてよ」
「そう? タカハシがそう言うなら良いけど」

367 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:42:59 ID:4cLXcxQB0
ルビスの事を言えないのは面倒だ
"誰にも言うな"とは言われてないんだから構わないんだけど、説明するのがなぁ
俺が違う世界から来たなんて、とてもじゃないけど言えない
今はなんとかなってるから、別にいいか 俺はこの世界からいなくなるんだしな

ちょっと不満そうなメイと並び、チゾットへ向け再び歩きだす
俺は魔力とオリハルコンの関係が知りたくて魔物と戦いたくて仕方がなかった
そっと、剣に手を添える

…そういえば魔力の使いかたを知らない
魔法と同じような感じなのだろうからメイに聞いておこう

「魔法を使うには、使おうとする魔法を思い描く事から始めるの」
「魔法を思い描く?」
「例えば、簡単に言うとメラなら炎を相手にぶつける様ね」
「なるほど そうすればメラが出るのか」
「そう そうすることで術者の魔力と反応し魔法が使える」
「メイはメラミっていうでっかい炎をよく使っているけど、そういう魔法はどこで教えてもらえるんだ?」
「魔法のほとんどは書物や人から教えてもらったり… 中には魔法自体を封じ込めてある特別な道具からとか」
「特別な道具か きっと賢者の石みたいなものなんだろうな」
「たぶん似たような物ね でも魔法の効果を知ったとしても使えるようになるには訓練が必要なのよ」
「ははぁ 訓練が必要だなんて、剣術と同じなんだなぁ」
「強力な魔法を扱うにはそれ相応の魔力も必要になるの 魔法使いはただ叫んでるだけじゃないのよ」

魔法を使うにも訓練が必要か
じゃあ、オリハルコンの剣が魔力で強くなるって言うのも訓練が必要なのかもしれない

368 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:44:30 ID:4cLXcxQB0
その後、魔力の話を中心にしながら歩き、夜を迎えた
メイは毛布にくるまって休んでいる
夜は交替で見張りをするため、交互に休む
俺は焚火を前に座り、干し肉をかじりながらボウボウと踊る炎を眺めていた

テリーは今ごろどうしてるかな
メルビンとうまくやっているだろうか
剣の事になると他の事が考えられなくなるから、心配だ
もしかすると武器商人を目指していたりしてな はは…

俺は眠い目をこすりながら、そんな事を考え交替の時間まで過ごした


「おはよう…」

今日も朝からよい天気
結局、魔物が現われることはなく夜は明けた

水筒の水で顔を洗い、草の茎で歯を軽くこする
歯ブラシが欲しいけどこの世界には存在しない

369 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:46:11 ID:4cLXcxQB0
「チゾットまでどれくらいかかるかな」
「わからないわね 私も行くのは初めてだから」
「ゆっくり進んで行こう いつかたどり着くだろうし」
「…朝から大雑把ね」
「ゆっくり眠れなくて… 正直、ベッドの上で寝たいよ」
「私が我慢してるんだから、男のあなたはもっと我慢しなきゃ」

よくわからないメイの言葉に思わず言う

「いや、そのりくつはおかしい」
「なにか言った?」
「……いえ」

女を敵にしちゃぁイカン、ここは大人しくしとこう…

イシス周辺の景色とは違う開けた大地
所々に密集した木々があり地面を短い草が覆いつくす、メルキド周辺に良く似ている

寝起きの頭がハッキリしてから歩きだし、三十分ほどでハイオークが行く手を阻んできた

「ここは俺にまかせてくれ 魔力と剣の威力を試したい」

荷物を降ろし、オリハルコンの剣に手をかけながら俺が言う

「危なくなったらすぐに回復しに戻ってきて」
「わかった」

メイには後ろで待機してもらう

370 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:47:06 ID:4cLXcxQB0
「ウゴゥゥ」

俺は剣を構え、ハイオークの前に立つ
剣に対して魔力を送り込むイメージを作り、柄をギュッと握り斬りかかった
剣尖が弧を描き、動きの鈍いハイオークへ刃が当たるギリギリ─

勝負は一瞬で付いてしまった
ゴウと刀身が金色の光を纏い、上半身と下半身がまるで達磨落としのように跳ね、土の上へ不様に落ちるハイオーク
剣は魔物の体には触っていない
だが明らかにいつもと違う感触 それだけだった

「う…! これが オリハルコンの、力…!」

魔物を倒したというのに、剣から放たれる光は一向に収まろうとしない
俺の身体から力を、魔力を吸い取りつづけているような感覚

このよくわからない現象を抑えようと必死に違うことを考えたりしたが─
やがて俺はその場へ膝からガクリと崩れ落ち、立てなくなってしまった
立てなくなっても柄から手を離すことが出来ない
刃にまとわりつく金色の光は一層、大きく強く激しくなる

371 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:48:16 ID:4cLXcxQB0
「魔力を抑えて! お腹の、下腹部へ魔力を戻す様を!」

メイの声に従い、剣から下腹部へ魔力を呼び戻すイメージを必死につくる
すると、カシャリとオリハルコンの剣が手から滑り落ち、力を吸い取られる感覚も無くなった

「な、なんだったんだ今のは…」
「…たぶんあなた自身が魔力の扱いに慣れていないから、このままだったら魔力どころか体力全てを吸い取られていたわね」

吸い取られる?
もしメイの助言がなかったら危なかったって事なのか

"ふぅ"と一息ついて、立ちあがる

「助かったよ、ありがとう
 それにしても魔力を扱うってのは難しいんだな」
「剣に与えたり自分へ戻したりするのはすぐに出来ていたから、すぐに慣れると思う
 後は上手に、自分の思う通りに強弱を付けられれば更に良いわね」
「強弱か それは魔力で出来たあの光の強さを変化させるって事かな?」
「そうよ メラでも、魔力を抑えれば弱くなり効果を抑えられる
 そして魔力を強めれば効果が上がり強くなる オリハルコンの剣も同じだと思うの」

そういう事か 魔力ってのも奥が深い
うまく扱うにはやっぱり訓練が必要って事だ

372 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:50:04 ID:4cLXcxQB0
「今後は意識して魔力をコントロールしなきゃならないな
 戦いかたが全く変わってしまいそうだ」
「こんとろーる?」
「えっと… 操作って意味だよ 魔力を操作しなきゃならないって」
「変な言葉ね どこの言葉?」
「どこの言葉って言われても… 何か変な本でも読んだのを覚えていただけかも」
「ふぅん」

存在しない言葉があるっていうのは、難しい
思わず普段遣いの口調になってしまう、元の世界の

「魔力を増減させるのはそんなに難しい事ではないわ
 経験を積んでいけば自然に体得できるから、あまり考えすぎないで」
「それを聞いて安心した しばらくは俺一人で戦うよ」
「私が楽でいい案ね 出来ればずっと一人で戦ってもいいのよ?」
「いや、それはちょっと…」

実際、魔力をうまくコントロールできるようになれば一人で戦っていけるような気もする
敵に触れることも力一杯叩きつける必要もなく、切り裂いてしまう力
だけどテリーみたいに戦闘マニアじゃないから遠慮しておく

373 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:52:03 ID:4cLXcxQB0
「あ、ちょっと待って」
「ん?」
「魔力は大丈夫? まだ残ってる?」

"残ってる"というのはどういう…

「魔力は限りがあるから、時々休んで回復させなきゃならないの
 経験を積んでいけばその上限は際限なく上がっていくのよ」
「その"残った魔力"はどうやったらわかる?」
「さっき言った下腹部へ魔力を集中させて
 そうして目を閉じると青い光が見えるから、その光の眩しさでわかるはずよ」

下腹部っていうのは丹田の事か
気功みたいだな 本で読んだことがある

「どんな光か、教えてね」

目を閉じ、体全ての末端から力を丹田へ集めるイメージを頭の中で描き、魔力を集中させた
少しして、まぶたの奥に大きな青い光が浮かびあがってくる
その輝きは、少し淋しそう

374 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:52:57 ID:4cLXcxQB0
「大きな光が… でも輝きは弱い」
「魔力が残り少ないと弱い光になるの
 大きな光という事は、魔力自体は強いのね
 でも剣にかなり吸い取られたみたいだから… 少し休んでいきましょう
 魔力の回復は身体を休めるだけでも自然に回復するんだけど、座って今みたいに目を閉じ
 静かに、魔力を下腹部で造り出すようにすれば早く回復できる
 熟練してくるとあっというまに回復できるようになるから」
「わかった」
「今の魔力を知るのも、経験していけば目を閉じて集中しなくても出来るようになる」
「なんだかめんどうな事が増えたなぁ」
「ふふ 頑張ってね
 魔力を集中する練習をたくさんしておくと良いわ」

妄想なら得意分野だし─

「…妄想じゃないから」

!!
まずは思ったことを呟かなくなる練習が必要みたいだな……


375 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:53:39 ID:4cLXcxQB0
●守れない

イシスを旅立ってかなりの日数が経った
グランバニアからフィッシュベルの距離よりも長く、遠い道程
目の前には高い山がそびえ立ち、俺とメイの旅を更に苛酷なモノにしようとしている

「はぁ この山を登っていくのか、嫌になるな…」
「さすがにこれは厳しいわね…」

あまりに嶮しい山道に思わず溜息と愚痴が出てしまう
しかし文句を言っても仕方がない
毎度の事だが進むしかないんだ

急な上り坂のような、道らしき岩を登っていく
だが角度がありすぎる 二人の移動速度は平地の時よりかなり遅い歩みとなった

376 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:54:36 ID:4cLXcxQB0
「こんなに苦労をして… 洞窟に何もなかったら笑うしかないな」
「ごめんね 私もこんなに厳しい旅になるなんて思ってなかったから…」
「いや、それは構わないんだ どっちみち俺は、自ら進んで可能性を探るしかなかったから」
「…そう言ってもらえると私も気が楽になる 勇者様の呪いを解くシャナク、あるといいんだけど」
「シャナクが無くたって構わない 剣術の修行が出来るだけでもありがたい
 だけど願わくば、呪いも解きたいよ」

この地へたどり着くまでに、オリハルコンと魔力をほぼ思った通りにコントロール出来るようになった
その力は正に素晴らしく、戦いを格段に楽にしてくれた
それはよかったのだけど、困ったこともある
食糧が常に不足しているのだ
旅商人と出会えたのは一回だけ、しかも食糧屋では無かったため十分に補給する事が出来なかった
だから時々森へ入り、自然に育つ木の実や果実を採取していたがほとんど魔物に荒らされ数は採れない
水だけは休憩所のおかげで困ることが無かった
旅人がメンテナンスしてくれるおかげだ

377 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:55:35 ID:4cLXcxQB0
「それにしても、ここ最近魔物に遭遇しなくなったよなぁ」
「そういえばそうね お腹が空きすぎて気付かなかったわ」

この数日、実は魔物と戦ったのはたったの一回
まさか俺たちに恐れをなして姿を見せないわけではないだろうから、不気味だ

「はぁ… ちょっと、休憩しよう いくらなんでも急過ぎるよ」

小一時間ほどあるいただけで息が切れてしまう
この世界に来て一時間歩くなど造作も無いことだったのだが、この山道は別
富士登山した時も同じようにすぐ息切れして休憩した事を思い出す

その日、実際に歩いた時間は五、六時間だが進めた距離はほんの少しだろう
いや、上に向かって歩いているんだから距離は稼げたのかもしれない
岩の窪みへ座り込み、火も起こさず見張りも立てず、ぐっすり眠ってしまった

378 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:57:17 ID:4cLXcxQB0
翌日、昨日と変わらない嶮しく急な山道を歩いていく
背中に背負う荷物は残り少ない食糧の分だけ、軽い
昨日あまり進めなかった反省から、今日は暗くなっても進もうと二人で頑張ることにした
魔物の気配は全く感じられない
何か、おかしな事でも起きようとしているのだろうか…

翌々日、相変わらず平に削られた道
全くの無言で、その岩に対し疲れをぶつけるかのようにかかとを蹴って進む
この道はいつまで続くのか

山道を進み始めて数日
体も慣れ、あまり休憩を必要とせず進めるようになっていた
だけど食糧が底を尽きそうだ
道の起伏が激しくなり、標高は上がったり下がったりを繰り返し、今いる場所が高いのか低いのかすらわからない

379 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 14:58:23 ID:4cLXcxQB0
更に数日
降り道が思った以上にキツイ事が判り、そして食糧は尽きていた
水も、節約してきたつもりだが残り少ない
歩みは止まりメイが─ 熱を出し寝込んでしまった
俺も相当疲れていたがここで動けなくなると共倒れ、最悪二人とも"死"
そんな状況を脱するため俺は一人、何か食べ物になる物は無いかと探しに出た
ここ数日を考えれば、魔物はたぶん現われないだろう
メイを休ませフラフラと道を進んでいく

進み始めたはいいが、草一本生えていない
これじゃあ意味が くっ…

小さな石に躓き、その拍子に膝からゆっくりと力が抜けへたり込む

380 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:01:34 ID:4cLXcxQB0
めまいがする
頭がいたい
足腰が安定しない
考えがまとまらない
ここで俺が倒れたら、メイがやばい
今動ける俺しか守って、助けてやれないんだ
そのためにもなんとか進まなければ……
くそっ…!
こんなところでへばるな! 動け!

こわばった足を拳で殴り、気合いを入れる
太股に少し力が戻り、膝を持ち上げ脛と脹脛を前に出す
"うおお!"と叫びながらやっと立ち上り、ズリズリと足を引き摺り─

だが、無情にも再び膝から力が抜け、前のめりに倒れ込み頬を地面にくっつけた状態

もう─ 動けない
ここまで頑張ってきたのに
誰にも見付けてもらえずこんなところでひっそりと死ぬのか
どんなに剣術で強くなったとしても、身体が健康じゃなきゃ無駄だ…

すまないメイ… トルネコさん…
俺には誰も、守れない……

意識は 頭の中から どこか遠いところへ 運ばれて──


381 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:02:14 ID:4cLXcxQB0
ちょっと休憩…

382 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:04:04 ID:4cLXcxQB0
●チゾット

どれくらい 倒れた?
ここは どこだ?
メイは どうなった?
俺は どうなっている?

もしかしたら死の世界かもしれない
瞼を開くのがとても恐ろしい
あの状況ではとてもじゃないが助かったとは思えない

だけどこの感触
柔らかいシーツにベッドだ
俺は、ベッドの上で寝ているんだ
助かったのか?
だとしたらここは… チゾット?
それとも元の世界、か?

"イチ、ニィ、サン…"と心で掛けながらゆっくりと瞼を開く
石で出来た天井に大きなランプが下がっている
元の世界でも死の世界でも無い、この世界の部屋

383 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:04:36 ID:4cLXcxQB0
身体中を大きな倦怠感に支配され、起き上がりたいけどそれも出来ない
仕方がないから顔だけを横に向けると、隣のベッドで白いシーツに包まれたメイの寝ている姿

「…ここは」

俺の声に反応したのだろう
誰かがコツコツと足音を立て近付いてくる
反対方向を向くと、スラリとした長身の男が居た

「気がつきましたか 私はここチゾットで医者をしているクリーニといいます」
「チゾット… 医者… じゃあ俺たちは助かったんだ……」
「貴方は運が良かった
 たまたま、東から来た旅の剣士が通りかかりこの村の者へ知らせてくれたのです
 お二人とも脱水症状があり、栄養失調になりかけ他にもいろいろ、です」
「助けていただいて感謝します… メイは…?」
「一緒にいた女性ですね 大丈夫、今は熱も引き寝ているだけですよ
 しかし貴方が意識がはっきりしないにも関わらず、この女性の事を言わなければ存在に気付かなかった」

目立たない岩影に寝かせていたから、見付けてもらえなかったんだ
また、トルネコを目の前で呪われてしまったように、メイも助ける事が出来ないと─
とにかく助かって本当によかった
もう、俺の目の前で誰かが立ち上がれなくなるのは、見たくない

384 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:05:25 ID:4cLXcxQB0
「さぁ、あなたもまだ回復していません
 この薬を飲んでもう少し休んでください」

クリーニから粉薬と水の入った器を受け取り、それを飲み干す

「その薬は身体の回復力を促進させる効果がありますから……」

薬の説明を全て聞く前、現状に安心した俺は深い眠りに落ちた


俺を夢から引っ張り出したのは
クリーニが村の人の治療をしている声

ゆっくり身体を起こしてみる
身体の痛みと疲労感はすっかり無くなり、完全に回復したようだ
今までの旅の疲れも、消え去った

メイは─
隣のベッドで眠っていた

385 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:06:12 ID:4cLXcxQB0
「おや、目が覚めましたね
 身体はすっかり治ったのでもう動いて大丈夫ですよ」
「ありがとうございます、クリーニさん
 俺はタカハシで、この娘は俺と旅をしているメイといいます」

ベッドから降り、履き慣れた革靴に足を収める
健康に戻った俺の身体はとても軽かった

「はは タカハシさん、礼なら旅の剣士殿に言ってください
 要らないというのに治療費まで支払っていったのですから」
「治療費まで?! その剣士は今どこに」
「なんでも、強い魔物を探すんだとかですぐに旅立っていきましたよ」
「そうですか… 名前はわかりませんか?」
「ええと… テルー? いえ… テリー、と名乗っていましたね」
「テリーだって?! はははっ」

思わず大きな声で笑ってしまった
そうかテリーか!

「テリーさんからあなたに伝言を預りました
 "約束を、忘れるな!"
 だそうですが、知り合いですか?」
「ええ、まぁ 友人なんですよ」
「そうでしたか! それはそれは」

話をしたかったけど、相変わらず忙しく動いているみたいだ
感謝するよ、ありがとうテリー
それにしても、メルビンはどうしたんだ
もう修行は終わったのか?
そしてテリーの言う約束
俺が元の世界へ戻る方法を見付けたとしても─
果たさなきゃならないな

386 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:07:35 ID:4cLXcxQB0
よし
なんだか心も元気に戻ってきた
俺は俺の今の目的を、精一杯やってやろう

「…俺たちの荷物はどうなりました? それから何日くらい眠ってましたか?」
「荷物は、私が責任を持ってお預かりしていますよ
 タカハシさんは十日、そしてメイさんはかなりひどい状態だったのでまだ休ませたほうが良いでしょう
 無理もありません、いろんな症状が一度にでていたんですからね
 あ、身体は治っていますから安心して下さい」

クリーニはそう言い、地下への階段を降りる

俺たちが休んでいる部屋はクリーニの診療室だろう
広い机と診察台、大きな本棚にはたくさんの本が詰められている

あれ?
この世界に病院や医者というものは存在していないんじゃぁ……

「さぁこれです」

クリーニが大きな布の袋三つとオリハルコンの剣を抱えて戻ってきた

「ありがとうございます ところで…」
「なんでしょう?」

受け取ったオリハルコンの剣を腰に携えながら質問する

387 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:08:34 ID:4cLXcxQB0
「この世界、というか、医者というのは?」
「ええ、私が作った職業です
 一般には病気になったり怪我をした場合、薬草や魔法、そして教会で治療することが当り前ですが
 その手段を持たなかったり教会では間に合わなかったりします」

悲しそうな表情で話すクリーニ

「薬草で病気は治りませんし、魔法は使える者が限られている
 最近は病気も複雑化して野草では治らない事が多い
 そうなると教会で人体に詳しい者が治療するのですが、これもまた神官の高齢化でままならなず知識も中途半端
 そこで、です
 私のように怪我や病気を治す事を専門にした人間が町にいれば、そんな事は無くなるだろうと考えた」
「なるほど それで"医者"という職業を始めたんですね」
「そう、今はまだ私しかいませんがきっと認められ、もっと広まると信じています
 "医者"は"医療"で人を助ける
 医者の医は病気を治すという意味があるのでそう名付けました」

医者という職業が広まるのは確実だ
教会から文句を言われるかもしれないが、頑張ってほしい
その為には勇者が世界を救わないといけないんだが…

388 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:09:45 ID:4cLXcxQB0
「ルビス… 様……」

メイが上ごとで小さく呟く

そう、ルビスが誰を勇者にするかだ
そのルビスが、この世界を救うのは俺では無いと言った
でも俺はオリハルコンという特別な金属を扱っている
…どうも信用できないな 俺に何をしろって言うのか
また変なタイミングで現われるだろうからその次こそは聞き出そう

「ええと、それで治療費なんですが…」
「いえいえ 先ほども言いましたがテリーさんに受け取りましたから結構です
 それに医は仁術、人に恵みをもたらすという意味もあるのですよ
 私はその喜び、仁徳を受け取れるだけで満足です」
「そうですか… では余裕ができたらいつか、寄付させていただきます」
「ええ 余裕が出来たらぜひ、お願いします」

ニッコリと微笑むクリーニ
この世界の人は必要以上に欲がないというか、羨ましい

389 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:10:47 ID:4cLXcxQB0
「あ…!」

急に、メイの何かを追いかけるような声
そのまま動かず横になったまま、目と表情だけが動いていた

「コホン… では私は少し席を外しますので」

クリーニが診療室を出る

「大丈夫か?」

俺はメイのベッドへ行き、話しかけた
その顔色は良く、体調も回復しているようだ

「タカハシ…」
「ん?」

キュッと、俺の手をとり心配そうに顔を見つめるメイ
ほとんど死にかけた二人、助かったんだから感激しているんだろう

「助かったね… ここはどこ?」
「チゾットだよ テリーが偶然俺たちを見付けてこの村の人に知らせてくれたんだそうだ」
「テリーさんが? どこにいるの?」
「それが、もう旅立ってしまったって」
「そう… 今度テリーさんに合ったらお礼言わないとね」
「そうしよう それから今後だけど、まだ予定は何も決めていないから後で一緒に─」
「あの……」
「どうかした?」
「…いいえ 私はもう少し休ませてもらっていい?」
「ああ、ゆっくりしてていいよ」

メイがまた、布団へ潜り込む

390 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:12:24 ID:4cLXcxQB0
さて、これから何をするか
とりあえず、食料品でも買い込んでおこう

空になった食糧袋を背負い診療室を出る


チゾットの村は山に沿って作られていた
崖に沿って山肌を切り崩し道を作り、その道沿いに家が並ぶ
"並ぶ"というよりは岩をくりぬいてある
家は岩の奥深くまで続いていて、その中で数十人が暮らしているようだ
店を探すと食料品屋と道具屋しかない
特に見て回る場所もないようなので食料品屋へ直行した

「いらっしゃいませ!」

食料品屋はとても広く、品揃えが多い
対照的に客は俺一人
住民が買い物にくるにしては広すぎるし、こんな山の中でどうやってこんなにたくさんの食糧を用意できるのか
不思議に思い店主に聞いてみた

391 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:13:37 ID:4cLXcxQB0
「はは あんたが運ばれてきた道と反対方向の地、西側に村を無くした人達がたくさん住んでいるんだ
 そういう人達が二十日に一回ほど大勢でまとめ買いにくるんで、それで広くしている
 品物は西側へ採りに行って加工してるよ
 ここらは旅人も多いし、商売するには困らないさ」

西の地へはすぐに行ける?

「すぐもなにも、二日かからない
 それにしてもグランバニアからならもっと楽に行けるのに東側からそれもたった二人でくるなんて
 あんたずいぶん遠回りしてきたんだなぁ、イシスから来たんだろうけど」

グランバニアから…?
え! 地図にはそんな道のってなかったぞ?
じゃあトルネコの地図は…?

「もっとも、グランバニアからの道は今まで隠されてきたから、知らなくても無理はないけどね はっはっはっ」
「なぜ隠されていたんです?」
「ここからずっと西にはカルベローナがあってな
 その町の住民の意向でそうしてきたんだが、町は魔物に破壊されてしまった
 だから隠す必要が無くなって、知られるようになったのさ」

392 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:14:43 ID:4cLXcxQB0
隠されていた道 それなら地図に載っていなくても仕方がない
それにしても…
経由できる町を考えると、グランバニアから行ったほうがはるかに安全だ
西からならチゾットまで三日かからない事も含めて…

店主の話にショックを受けながら、保存の利く食糧を買い店を出る
大きく膨らんだ食糧袋を背負い、俺はクリーニの診療室へ戻る事にした


393 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/04/12(水) 15:15:23 ID:4cLXcxQB0
今回はここまで、以上です
溜めてしまったから投下が大変だった…

394 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 15:55:04 ID:mH2TP8g90
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwwwwすげぇ更新wwwww乙wwww

395 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 17:22:52 ID:D6pKPBCJ0
あげ

396 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 18:08:51 ID:HLcwAC47O
タカハシ氏GJ!!!!!!!!
遅れたが暇つぶし氏と総長も乙かれっす!!!

397 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 19:32:22 ID:aTbtxyDVO
タカハシSUGEEEEEEEEEEEEE!!
メイたんカワイス。

しかし今残っている職人さんは総長・レッドマン・4の人・タカハシ・暇つぶし・魔神くらいか?

398 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 20:06:58 ID:eDJljDTD0
タカハシさんGJ

そして4の人待ってるよー

399 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/12(水) 20:06:58 ID:HLcwAC47O
オルテガも頑張ってるじゃないか!!!!

400 :総長 ◆8X2v8DcqWM :2006/04/13(木) 11:20:31 ID:TH369VKm0
いや正直かなりの賭けだった。イケが一回使った呪文を見よう見真似で使うことは。
だがしかし!俺は!賭けに!勝った!ぬをををををおおおおおおおっっ!!!!!!!!

これは…凄い…!

ねーちゃんが唖然としている。そりゃそうだ。俺のドラゴラムはその辺の奴のとは
訳が違う。このデカブツを一目見たときから考えていた。こんな化け物に勝てるのは
ヤツしかいない…そう…幾度と無く日本を壊滅させかけ、終いにはニューヨークにまで
遠征かけた…

ドラゴラムは呪文を唱えた本人の能力やイメージが強く反映されるわ。
ただこれは…禍々しいというか何というか…そうこの世界の生物ではないみたい…!

当たり前だ!俺たちのヒーローをこんな世界のチンケな竜なんかと一緒にすんな!
今日俺は「ゴジラ」の名においてコイツを倒す!!!!!!!!!!!!!

野生の本能かデカブツは即座に俺を敵だと判断すると飛び掛ってきた。
それでもまだなおデカブツの方が二周りはデカい。だがしかし!ゴジラの名において
敗北は許されない!俺は正面から取っ組み合った。

ぐんむぬぬぬガアアアアアァああグアアああッッ!!!!!


401 :総長 ◆8X2v8DcqWM :2006/04/13(木) 11:21:01 ID:TH369VKm0
巨体がぶつかり合う。もはや小細工無しの力と力の真っ向勝負!
俺の強烈なパンチが炸裂する!が、相手はたくさんある頭で同時に噛み付いてくる!
ぐッ…これはズルい…キングギドラですたら頭3つだったと言うのに…
俺は渾身の力で全身を叩きつける。体が小さい分小回りが利く。一撃の重さに劣るなら
こっちは手数で勝負だ!洞窟内に硬い皮膚と皮膚がぶつかり合う鈍い音がこだまする。
しかし徐々に押され始める。コイツは文字通り頭数が多すぎる!
ふんぐああぁぁぁぁぁ!!!これでどうだああああああ!!!!!!
力任せに一つの首を締め上げた。フロントチョークみたいな状態だ。そうとう苦しいのか
他の首が一斉に暴れだした。体中噛み付かれてボロボロだ。放さねえ!絶対放さねえ!
やがてゴキッと鈍い音があすると締め上げていた首の力が抜けた。

ぎゅアアアアアアァアアァ!!!!!!

さらに追い討ちと俺は口から強烈な炎を吐いた。温度でこそのダメージは薄いものの強烈な
圧力により相手は怯む。チャンスだ。一気にタコ殴りにする。俺の鉄拳連打が完全に相手を
捕らえた。

一瞬グッタリしたように見えた。まじかよ…コイツは一体何処までタフなんだ!?
直に体制を立て直し反撃に出てきやがった。残った口という口から猛烈な炎を吐く。
衝撃に押されて後退する俺。

バギッックロスッッ!!!!!


402 :総長 ◆8X2v8DcqWM :2006/04/13(木) 11:21:33 ID:TH369VKm0
ねーちゃんの起こした真空波がデカブツの炎を切り裂き顔面に命中した!
助かったぜナイスねーちゃん!立て続けにパンツが同じ箇所に一撃を見舞う。
この首も動かなくなった。

お父さん…私に力をかして!…ラィッディイイイインンッッ!!!!

勇者が強烈な雷を落とした。こいついつのまにこんな強い呪文を…

ギャアアアアオオオオオオオオおおううウウウウ!!!!!!!

これはさすがにかなりのダメージを与えたようだ。悶絶するデカブツ。
よしここで俺が一気にカタをつけてやる!あれ?なんかコイツさらに巨大化してないか!?
デカブツの目線がどんどん高くなる…いや違う!これは俺が縮んでるんだ!!!

…元にもどっちまった…。だがこの好機は逃せねえ!炎が効かないなら逆を攻めるのみ!
くらえ!ヒャダイン!!!!!!氷の刃を含む猛吹雪がデカブツを包む。
凍ったせいなのかはたまた体力が尽きたのかデカブツは動かなくなった。
倒したのか…?おそらく一気にダメージをおって動かなくなっただけよ!ねーちゃんが
叫ぶ。膝の力がガクッと抜けた。ち…ちょいとばかし飛ばしすぎたようだ。
もう一息なのに!動け!ドク…ドク…とバカでかい心音が響く。デカブツの回復力半端ねえ。

ゆっくりとだが動き出しこっちを睨む。こいつどうしたら倒せるんだ!?

まずいわ!体力も回復力も異常だもの!このままでは競り負ける!


403 :総長 ◆8X2v8DcqWM :2006/04/13(木) 11:22:06 ID:TH369VKm0
次の瞬間デカブツの振り回した頭により勇者とパンツが宙を舞った。
壁に打ち付けられ崩れ落ちる。どうやらパンツが自らを下敷きにして勇者をかばったようだ。
確かにこのままじゃこっちがもたねえ。クソこっちは
5人がかりだというのに…あれ?5人…そういやおっさんどこいった!?

総長殿総長殿…おっさんが話しかけてきた。てめえ無事か!?はい!身の危険を感じた故
あの岩の陰に最初から隠れてました!っていばるなそんなもん!…え!?なんだと?
おっさん曰くあの動きからして頭はたくさんあれど脳は一つらしい。で、その脳の場所だが
全部の首の付け根が怪しいらしい。ほんとか!?

間違いありません!あやつさっきからそこだけかばっておる!わしはずっと見ておった!

この際試してみるしかない。ねーちゃんに回復してもらう。ある程度はこれで動ける。
問題はどうやってその弱点を狙えるかだ。さてどうするか。今こっちの戦力は…
ねーちゃんはほぼ魔力使い果たし、パンツは完全に動けない。残るは俺と勇者。
勇者を呼び寄せる。俺がなんとかしてアイツの注意をひくからお前が剣で弱点を突け。
俺のドラゴンキラーは折れてしまったためこれがベストの選択だろう。
わかったと勇者が頷く。ここで失敗すると勝ち目は無い。気合入れてくぞ!



404 :総長 ◆8X2v8DcqWM :2006/04/13(木) 11:22:49 ID:TH369VKm0
ageちまったすまねえorz

405 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 11:31:42 ID:HbBKSvGYO
リアル支援。
総長乙。

406 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 13:29:42 ID:xdgHPHoD0
ゴジラ吹いたw
総長乙。

407 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 15:06:36 ID:rOOkj7rW0
ゴジラって、これはまた斬新なww


408 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 16:32:31 ID:rr6jFPaR0
ゴジラってこれ?
              /     NY\
            /_____,,=─-.`、__
            / /      \ ̄ヽ `‐、
            | / iilllllii.   oilllllii ヽ | ̄~
            |y =・= r ‐、 =・= ∨、   
          r-r'    i   i    | i   
\         { / ; ∵; ,|. : : 人; ∵; | {    / 
  \       しi| `''" `ー- '   ー  | _)   / 
            |ヽ i  ィュエエェュ、 i  |r~   
            |  | |     | |  |      /  _/\/\/\/|_
    \    ノ//, |    |     | ! .|,ミヽ    /   \          /
     \ / く  |!  ヽLィニニニ 」/ /  \      < バーーカ  >
     / /⌒   \___'"_,/ ⌒\ \    /          \
     (   ̄ ̄⌒          ⌒ ̄ _)    ̄|/\/\/\/ ̄
      ` ̄ ̄`ヽ           /´ ̄
           |            |  
  −−− ‐   ノ           |
          /            ノ        −−−−
         /           ∠_
  −−   |    f\      ノ     ̄`丶.
        |    |  ヽ__ノー─-- 、_   )    − _
.        |  |            /  /
         | |          ,'  /
    /  /  ノ           |   ,'    \
      /   /             |  /      \
   /_ノ /              ,ノ 〈           \
    (  〈              ヽ.__ \        \
     ヽ._>              \__)


409 :総長 ◆8X2v8DcqWM :2006/04/13(木) 18:22:19 ID:TH369VKm0
ねーちゃんが最後の気力を振り絞って竜巻を巻き起こす。デカブツの注意はこっちにむいたようだ。
勇者が駆け出す。よし後は勇者が回りこむまで俺がヤツを引きつけるだけだ。
とりあえず回りこんでることに気づかれてはいけないので派手なの一発かましとくか。
イオ!!!わざと爆発の中心手前にずらした。デカブツは口をこっちに向けると炎を吐く。

俺はフバーハを張ると後は仁王立ちだ。耐え切ってみせる!!!!
熱風が視界を塞ぐ。だがしかし俺は倒れん!!息切れか炎は止まった。
デカブツが大きく息を吸い込む。俺はポケットに詰めてあった薬草を全部口に押し込んだ。

ぐにゃあ!ぐるぢゃらごういびゃ!(コラ!くるならこいや!)

第二波がきた!俺は男の意地にかけて倒れん!…………ぬううううう………
意識が遠のきそうになる。勇者は!?勇者は今どこだ!?勇者がデカブツによじ登っているのが
見えた。もう少しだ。ちくしょうだが目の前の敵はまた大きく息を吸い込む…きた!!!!

やられてばっかじゃないぜ!ヒャダルコおおおお!!!!!!

冷気が炎を押し返す。ぐうううううううう!!!!…だめだ魔力がもたねえ…!
逆に押し返される。多少勢いは抑えられたようだ。なんとか踏みこたえる。

これはもう限界だ。視界がボヤける。デカブツが二重にも三重にも見える。ここまでか…。
総長!起き上がったパンツが体全体を引き摺りながら寄ってきた。そして俺の横に並ぶ。
次の一発が最後になるだろう。その間に勇者が一撃見舞えれば俺たちの勝ちだ。
パンツ!俺たちの根性をあのクソデカに見せてやるぞ!はいでやんす!俺達は肩を組むと
デカブツを睨み付けた!

怒号共に一際大きな炎が飛んできた。耐える耐える耐える!根性なら誰にも負けん!!!!!
全ての力を振り絞った。もはや体力は尽きている。だが時に気力は体力を凌駕する!!!!


410 :総長 ◆8X2v8DcqWM :2006/04/13(木) 18:23:06 ID:TH369VKm0
イヤああああァァァァあああああぁ!!!!!!!

勇者の叫び声が聞こえる。どうなったんだ?炎が止まりそこに写ったのは深々とデカブツの
首元に剣を突き立てる勇者の姿だった。

さっきまでの激闘が嘘のように一瞬静まり返る。

……グ……グッウィヲヲオオオオオオオオオオオオ…!!!!!!!!!

明らかにさっきまでとは違う苦しみ方だ。七転八倒して大暴れした後、動かなくなった。
勝った…のか…?満身創痍の俺達が集まる。いやーいやいや凄まじい死闘でしたな!
…いや一人だけピンピンしてやがる奴がいた…だが突っ込む元気もねー…

デカブツはもう完全に動かない。コイツ…本当に強かったな。デカイとはいえこっちは五人がかりだ。
おそらく俺一人でタイマンはってたら勝ち目は無かっただろう。強敵だった。
できる事なら墓の一つでも掘ってやりたいがさすがに無理がある。俺達は洞窟を後にした。
みんな疲弊しきっているのか無言だ。おっさんは一人興奮しているが誰も聞いちゃいねえ。
入り口で立ち止まる。どうしたの総長ちゃんと勇者が振り返る。

イ オ ナ ズ ン  ! ! !

轟音と共に入り口が崩れる。数分後岩盤で埋め尽くされ完全に埋まった。
強敵との闘いに敬意を表してこの洞窟をデカブツの墓標にしてやろう。我ながら粋な計らい…
完全に気力も体力も魔力も使い果たした俺はその場で気絶した。




411 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 20:07:21 ID:Gs+1FuL8O
総長カッコヨス

412 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 20:46:03 ID:m+GnZTnHO
総長スゴスwwwwwwwwww
確実に某魔王よりは強いな。
>>409
オレンジジュース吹いた

413 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/13(木) 22:22:44 ID:Spu2TPAH0
>>409
男塾か?

414 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/14(金) 06:30:05 ID:Ff5OfH1cO
>>412-413
おまいらレスミスりすぎw
>>408だろ?しかもにしこりだったっけ?

415 :素股三四郎 ◆BmPkDhDVz6 :2006/04/14(金) 08:04:47 ID:AJOGTKft0
朝、目覚めるとそこは見たことも無いベットの上だった。
ガンガンする頭を振りながら横を見ると、見たことも無い女が寝ている。
(またやっちまったか・・・)酔うと見境無く女を連れ込んでしまうのが俺の悪い癖だ。
よっ、とベットから飛び出すと思いっきり窓を開け朝日に俺のマグナムを晒す。
うーん、いい天気だ。
「いつまで俺のベットで寝てんだよ」俺は牛のようにだらしなく寝る女の形のいい尻をぴしゃり、と叩く。
童貞諸君の皆さんは人の家に泊まっておいてこれは無いと思うだろうが、
こう理不尽に言ってやったほうが女と縁は切りやすいのだ。 「とっとと出てけ、この売女」
「あなたは198人目のプレイヤーです」突然、女が機械のようなかすれた声でしゃべりだした。
「あなたはこのゲームの主人公です。迫り来る敵を倒し、大魔王から世界を救い出してください」
なんだ?何を言ってるんだこの女は?状況の飲み込めない俺は冷静さを装いながらも
ついチンコをしごいちまう。コレも俺の悪い癖だ。 「どういうことだ?」
突然、窓がぶち破られ、外から見たことも無い馬鹿でかいコウモリが現れた。「キキーッ」
何かやばそうだ。コウモリはかわいいつぶらな目をしているものの、
しかしその大きく開けた赤い口は、完全に人肉をほおばる種類の生き物である事を俺に告げていた。
やばいぞ。完全にやばい。しかし俺はこういうときこそ落ち着いて考えられる男。冷静に考えよう。
俺は今、見知らぬ女の家で見たこともない怪物に襲われている。そんなときどうすればいいか。
すぐさま俺は人差し指を両のこめかみにあて、「ぽっく、ぽっく」と独特のリズムでいい案を考え出した。「チーン」
思いついた。俺はすぐさま部屋にあるものを片っ端からコウモリにぶつけることにした。
鏡も、花瓶も、タンスの引出しも、全てだ。知ったこっちゃない。全部この知らない女のものだからだ。
後で警察が来て面倒な事になったらすぐ逃げてやる。

416 :素股三四郎 ◆BmPkDhDVz6 :2006/04/14(金) 08:05:56 ID:AJOGTKft0
「死ねええ!」飾台を思いっきりぶつけたのが功を奏したようだ。でかいコウモリは動かなくなった。
しかし俺を驚かせた罪は重い。すぐさま俺はコウモリを何度も何度も踏み潰す。
そして出てきた内臓に火をつけて燃やした。「ふはは、燃えろ、燃えろ」
「そこまで!」つんざくような声で、さっきまで動かなかった女が叫ぶ。
「もういいわ。もうやめてちょうだい」 呆れたように女がため息混じりに呟く。
金髪をふりみだしてベットに中座すると、桜色の乳房が朝日の中で美しく揺れていた。
「いかがでしたか?私は反対です」突然、女は誰もいない天井へ向かって話し掛けた。
「確かに冷静ですが、余りに残虐すぎます。勇者には向かないかと」
勇者……?何言ってんだこの女。クスリで頭がイカレちまってるのか?可愛そうに。
俺は女の前に仁王立ちになる。
「ハイ…ハイ…しかしマスタ」ぴしゃん、と俺は自慢の超ロング馬並ポコチンで女の頬を叩た。
「お空と交信中のとこ悪いな」イカレちまってる女を落ち着かせるには、これだ。「咥えろ」
ピシャリ。遠くで何かが割れる音がし、耳の奥がキーンと鳴った。「調子に乗ってんじゃ、無いわよ!」
どうやら俺はこの女にひっぱたかれたらしい。
茫然自失の俺にかまわず、女はますます別世界との交信を始める。
「ハイ。どうやらあなたの見込み違いなようです。この男に世界を救う力があるとは私には思えません!」
ふつふつと、俺の中に怒りが充満するのが分かった。「おい、黙って聴いてりゃ勝手なことばっかり言いやがって」
俺は完全に切れた。「てめえみてえな女が一番俺は気にくわねえんだ」
「何するの、やめなさい」 抗うのも構わず、俺は女に飛びかかった。
「やめてええ」俺は無理やり女の乳首を物凄い速さで擦る。
その摩擦力で火がつくぐらい、俺はコレでもかと擦り上げた。 「ああ、そんな、乳首にメラなんて」
訳の分からんことを、だがまあいい、どうやら感じてきたらしいぞこの女、と
俺は自分のもくろみが上手く行ってニヤリと笑う。女の股に手をやると十分湿った陰毛が、
俺の指をパックリ開いたアレに勝手に誘った。「ああん、いや、やめて、あっ、やめてえええ」

417 :素股三四郎 ◆BmPkDhDVz6 :2006/04/14(金) 08:36:41 ID:AJOGTKft0
「……ハイ……ハイ」
十分満足の行く行為が終わって、俺は煙草に火をつけていた。
「ハイ。ですから、その、やはり、私の勘違いでした、ハイ。この男、いいえ、このヒトには素晴らしい
勇者としての素質があります。ハイ。確かに、この世界の枠にはおさまらない破天荒なところがありますが、
それはでも、このヒトの魅力…というか、そんな型破りな性格だからこそ、大魔王から世界を救えるのかもしれません。
ハイ。分かりました。では、本格的に冒険を始めます。それでは」
「もうお空との交信はいいのか?」口に含んだ煙を一気に肺に流し込み、ふーっと吐き出して俺は言う。
「改めまして、初めまして」女は今にも四つ指立てそうな勢いで、俺のほうに向き直って恥ずかしそうに言い出した。
「こんな形で出会う事になっちゃって、ごめんなさい。と言ってもこれはあなたの無意識下のイメージのせいなんだけども」
「何が何だかわからねえや」もう一度煙草のフィルターから煙を吸い出す。
「あんた頭おかしいんだろ?SEXは最高だったけどな」
「ドラゴンクエスト」女がじっと俺の目を見詰めてつぶやいた。「やったこと無い?」
ふーっと煙を吐き出して、俺は言う。「あるよ」指先がかすかに痺れた。「小さい頃な」
「その世界に突然自分が飛び込んじゃったら、どうする?」
しばらく時間が流れた。女は真剣な眼差しで俺の目を真っ直ぐ見詰めてくる。
「見て」女が指差した方向には、さっき俺が燃やし尽くしたコウモリの残骸があった。
「あれは、ドラキーよ。あなたが倒したのは、まぎれもない、本物のドラキーなのよ」
「ちょっと待ってくれ」嘘を言っている様子は無かった。
「それじゃ何かい?」しかしこんな奴に限って関わるとろくなことが無い。
「俺は今ドラゴンクエストの世界にいるっていうのかい?」「そうよ」
女は自信たっぷりに言い切った。ヤバイ。俺の直感がそう告げていた。この女、ヤバイ。

418 :素股三四郎 ◆BmPkDhDVz6 :2006/04/14(金) 09:09:17 ID:AJOGTKft0
ゲームをやっているうちに自分がそのゲームの世界にいるような錯覚、
それは俺も味わった事がある。だからこの女の言っている事は何となく理解できるのだが、
ここまでくるともう完全に‘キ印’だ。ご愁傷様。
「いいSEXありがとう。俺帰るわ」俺は立ち上がるとその辺に落ちていた衣服をつかみ取り、
足早に部屋を出て行こうとした。「ちょっと待って」
後ろの方でいそいそと女が着替える音が聞こえたが、どうでもいい。
まとわりつかれないように、早いとこ逃げるだけだ。
西洋の旅館風の廊下を服を着替えながら足早に走り抜け、カウンターの親父の髭面にも目をくれず扉を開く。
開いて、俺はあんぐり口を開けた。「どういうことだ!」
街を歩いていたのは、どう考えても時代錯誤な衣服に身を包んだ人々と、
中世ヨーロッパにまいこんじまったかのような町並みの光景だった。
「だから言ったでしょ。あなたは今、ドラゴンクエストの世界にいるの」
追いついて来たた女が、俺の背後で静かに言った。「それも、勇者としてね」
「ああ?うるせえ!ここはどこだよ」
「始まりの街、ラダトーム」女は呟くように俺に言った。「とりあえず、王様に会いに行きましょう」
王様?ラダトーム?付き合ってらんねぇぜ。頭がこんがらがってきた。
俺はぎゅっ、っとチンコを握るとゆっくりさすりながら女に向かって言った。
「これは何かの祭りかアトラクションか?それともディズニーランドとか」
「期待していたより理解が遅いのね」長い睫毛をした青い瞳で俺の顔を覗き込んで女が言う。
「これはもう現実よ。レベル1の勇者さん」

419 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/14(金) 16:23:41 ID:K+LYU/XR0
エロエロな主人公降臨!!
ウッフンアッハンな展開に期待していいかな?

420 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/14(金) 20:29:54 ID:df1TVm6Y0
期待保守

421 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/14(金) 20:41:41 ID:xnXMUSfUO
>>418よくできてんな〜

422 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/14(金) 20:48:36 ID:YwL1EuX60
文体は上手いんだがこれはちょっと・・・

423 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/14(金) 21:03:19 ID:DLTlylqs0
鬼畜王?w

424 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/14(金) 21:56:55 ID:hVDdU7Gz0
>>422に同意。
既出の作品群には無い個性だが、やはり表現に抵抗を感じてしまう。
今後の展開が面白そうなだけに、残念。
下ネタ有りと明記して別スレたてて、他の同志募ってみては?

425 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/15(土) 02:05:09 ID:QdN7q59G0
面白いし、気になる作品ではあるだけど、板の性質上、小学生とかも
来訪者もいるからな…今後は全年齢版ではなく大人板寄展開になりそ
うだし

大人板でこのスレからの派生ということをスレタイに入れたスレを立てて、
続きを連載した方が良いかも。読みに行くので…

426 :素股三四郎 ◆BmPkDhDVz6 :2006/04/15(土) 19:15:28 ID:z8H9VnHX0
分かった。別スレ立ててシコシコやるよ。お目汚しすいませんでした。

427 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/15(土) 20:19:50 ID:6iLw95v4O
ちょwwこの板にたててるじゃねーかwwまぁ心意気は大いに認めるw

428 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/15(土) 21:31:43 ID:QdN7q59G0
まぁFFのヒロイン関連で結構あっち系が立ってたりするから良いんじゃね

429 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/16(日) 18:35:39 ID:DKLxb9DcO
保守

430 :総長 ◆8X2v8DcqWM :2006/04/17(月) 00:37:37 ID:hXyOkRmI0
次に目を覚ましたのはあの酒場だった。そう例の神酒のとこだ。パンツがここまで担いできたらしい。
店長は号泣しながら礼を言ってきた。別にお前のためにデカブツと倒したんじゃねえ。
うざいから泣くな。と、ねーちゃんが手招きしている。ははーんさては俺の男の中の男の闘いっぷりに
惚れちまったか?ったくこれだからモテる男はつらいぜ。誘われるがままに店の外に出る。

勇者殿…

来た来た。いつでも準備は万端だぜハニー。今晩は最高級のスイートルームを予約しようかってぬお!
振り返った視線の先にいたのはおっさんだった。なんでてめーがここに居るんだチクショーが!!!
実は洞窟でこんなものを拾ったのですじゃとおっさんが勲章のような物を見せた。
竜の形をしていて真ん中にはよくわからない文字が刻まれている。なんだこりゃ。

それはジパングの紋章よ。それもかなり地位の高い人しか身に付ける事ができないものよ。

ねーちゃんが続ける。男心を弄びやがって酷いぜねーちゃん…ってえ!?どういう事だ!?
あの洞窟にこの国の偉い奴しか身につけられない物が落ちている。どうやら嫌な予感は的中した
ようだ。沸々と湧き上がる俺の怒り。すぐに酒場に戻り全員に召集をかける。

おまえらこれを見て欲しい。

みんなの視線が竜を象った紋章に集まる。


431 :総長 ◆8X2v8DcqWM :2006/04/17(月) 00:38:34 ID:hXyOkRmI0
これは洞窟に落ちていたものだ。おっさんが拾った。ブローチだかペンダントだか何だかしらねーが
どうやらこの国のお偉いさんしか身に付ける事ができないものらしい。

勇者の顔が強張る。パンツが何か大発見をしたような顔で喋りだす。総長それはつまり…黙れ。
会議中においておまえに発言権は無い。

俺はハッキリ言ってブチ切れた。今から城に殴りこみに行くぞてめーら!

俺は大声を張り上げた。ちょっと待ってとねーちゃんが話し出す。

今日はみんな疲弊してる事だし準備を整えて明日改めて訪ねましょう。それにその格好じゃ
多分城の中に入れてくれないわよ。

自分の服を見つめてみる。ボロだ。これは服というより完全なボロだ。いやしかし服装など関係ない!
俺は今殴りこみをかけたいんだ!

あの…お取り込み中失礼しますがささやかですが出来る限りの料理と酒を用意しました!
娘の恩人です!遠慮なく食べて下さい!

……よし。出発は明日にしよう。

432 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/17(月) 01:38:35 ID:RdyazwDA0
>>321続き
ピラミッドは王家の墓であり、財宝庫であり、イシスの象徴であった。
見るもの誰もがその大きさに圧倒されるだろう。
そして夕日がピラミッドに沈む光景には自然の偉大さを感じ、
夜の暗闇に佇む姿に畏怖と崇高さを覚える。
ピラミッドという存在は、ファラオの力を一番端的に示しているのだ。
「こっちの世界にもピラミッドあるんだね〜ますますエジプトみた〜い」
エジプトみたい、じゃなくてそうなんだけどね・・・
「よ〜し、一番乗りだ〜!!」真理奈が正面の入り口に駆ける。
「こらっ!ここは王子である僕が一番に決まってるだろ!」
フィリーが真里奈の後に続く。
「あっ、フィリー様!私も行きます!」
「待て待て、ここは危険が無いかワシが調べてからじゃな―――」
プエラ・パトリスもピラミッドに入って行った。
皆が宝探しにワクワクしている中、残されたジュードは
「は〜やってらんねぇぜ。何であんなヤツの為に・・・」と1人ダルそうにしている。
「・・・・」コクコクッ
ジュードの隣でフィリアが同意、とばかりに頷く。
「何だ?お前もアイツ嫌いなのか?」
「・・・・」コクッ
「だよなぁ〜あのうるさいトコが気にくわねぇ。お前もそうか?」
「・・・・」
違うよ、という目でジュードを見る。
「あ?違うのか?」
「・・・・・・・・・名前、似てるから」
フィリアとフィリー。
「名前?あぁ確かに似てるな!ってか同じじゃん!ははっ、こりゃ笑える!!」
爆笑するジュードの事を軽く睨み、フィリアは脇腹にパンチを入れる。
「いでっ!!・・・何だよ・・・」
ジュードを無視し、フィリアもピラミッドに向かう。
ごめんねフィリア。あんなのと似てる名前にしちゃってごめんね・・・


433 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/17(月) 01:40:05 ID:RdyazwDA0
ピラミッドの入り口はそのまま大回廊となっている。
が、横幅が無いので2列なって進むしかなかった。
先頭に真理奈とパトリス。真ん中にフィリーとプエラ。しんがりはジュードとフィリア。
暗く、静かな廊下に唸り声が響いてくる。そして突然襲い掛かってくるモンスター。
「げげー!!これってミイラ?!」
「そうじゃな。気をつけるんじゃぞ真理奈。ここは狭いからの」
「大丈夫だって!うりゃあ!!」
ミイラ男にお得意の蹴りをかます。体をくの字に曲げ吹っ飛んでいった。
「王家の財宝を守るモンスター、か。もしくは財宝荒らしを獲物にしとるんじゃな」
しかし財宝が眠っているのに、このピラミッドの造りは何だろうとパトリスは思う。
普通何かを隠したり、大事なものを守ろうとする場合には厳重な扉をつけたりする。
それがピラミッドにはまったく無かった。イシスの兵士が警備をしてるでも無い。
「どうぞお取り下さい」とばかりに開け放たれている。
その代わりにモンスターがいるのかもしれないが・・・
(意図的にそうしている・・?まぁモンスターは財宝に興味はないからのぅ)
「それにしてもおじいちゃん達はジュードみたいに鎧を装備しなくていいの?」
真理奈の問いかけによって思考は中断されてしまう。
「ん?あぁ、あんな重たいモン装備しなくてもワシには呪文があるからの。
 例えばスカラという呪文がある。対象者の守備力を上げる効果があってな。
 これを使えばワシやフィリアのように防御力が低い者でも、
 モンスターの攻撃に耐えれるようになるんじゃ」
「へ〜」
「むっ!信じておらんな?よ〜し、スカラ!!さっ、真理奈よ。ワシに攻撃してみぃ」
「いいの?」「あぁ。逆に真理奈の方が痛いかもしれんがな。フォッフォ」
「じゃあいくよ〜」ボコッ!!!
「!!!!!!!」
「あっ、ゴメン!やっぱ痛かった?」
「いやいや、スカラのおかげでちっとも痛くないわい・・・おおぅ・・」
パトリスは真理奈に見えないように、懐からそっと薬草を取り出したのだった。


434 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/17(月) 01:42:01 ID:RdyazwDA0
回廊を真っ直ぐには進まず、小さな部屋を片っ端から見て回る。
その途中で宝箱をいくつか見つけたが、どれもからっぽだった。
「まぁ、黄金の爪は地下に眠っているという話じゃからのぅ」
「でもどうやって地下に行くの??」
「・・・分からん。もっと先に進まんと地下への階段がないかもしれんな」
しかし、モンスターが引っ切り無しに襲ってくるので、中々先に進めない。
大体は真理奈の一撃やパトリスの呪文で倒せるのだが、
この狭い回廊では倒したモンスターをまたぐ必要があるので面倒なのだ。
そうこうしている内に大王ガマが姿を現す。
と、それまで珍しく静かにしていたフィリーが声をあげた。
「ええい!僕はロマリアの王子だぞ!僕だって戦える!!」
一番前に飛び出し、赤いカエルに突っ込むフィリー。
攻撃を仕掛けようとした瞬間、踏み出した足元の床が抜け、フィリーは姿を消した。
「フィリー!!」プエラが叫ぶ。
穴の中からは「わ〜!!助けて〜!!」という声が・・・
真理奈がすぐさま飛び込み、フィリーの上に着地する。
上の階より暗いが、周りにモンスタ−がいるのが雰囲気で分かる。
「ぐえっ!」という声を無視して、足に力を入れモンスターに飛び掛る。
「フィリー!?」
プエラが穴から降りて、これまたフィリーの上に着地する。
「うぎゃっ!」
「あっ、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「ぜ、全然平気ですよ・・・」
「そんなカッコで言ったって説得力ないわよフィリー。
 ったく、どうせ姫にイイトコ見せようって思ったんでしょ?」
モンスターを追い払った真理奈がちょっかいを出す。
「まぁ、そうなのですか?」「っ!!」
赤面するフィリー。まぁ暗くて表情はあまり見えないんだけどね。
「違いますよ!僕はただロマリアの王子としてですね!」「ふふふ」
フィリーはプエラに手を引かれて立ち上がる。
そんな2人を見て真理奈は、うまくいけばいいなと思う。


435 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/17(月) 01:43:07 ID:RdyazwDA0
ピラミッド地下1階。視界の利かない中を真理奈達はゆっくりと進む。
プエラはここに来てようやくピラミッドの本当の怖さを実感していた。
それは、暗闇がいっそう濃くなったとか、ここから無事に地上に出られるのだろうかとか
そういった不安や恐怖がもたらすモノではない。
明らかにここは力の強さが違う。
まるでファラオ王に直接見られているような―――
実際に会った事はないが、ファラオ王にはこんな風に場を支配する力があったのだろう。
そう感じざるを得ないような場所に隠す財宝は、まさに秘宝を呼ばれるのに相応しい物。
つまり黄金の爪をはそういった類の物なのだ。
それ故に手に入れるには危険も数段高くなる。
女王があの時、占いの結果を伝える時に躊躇いを見せたのも分かった気がした。
しかし、もしそうならば女王はなぜ今回の儀式に黄金の爪を選んだのだろうか。
プエラ『占い』が建前だという事を知っている。
所詮ファラオやルビスの名を借りて、思うままに政治を行っているに過ぎないのだ。
それなのにこんな困難な命を下したという事は、この結婚話は成立しない方がいい。
そんな風に女王は考えているのかもしれない。
(どうして・・・?私達が死んでしまってもいいと言うの?)
周りの雰囲気も手伝ってか、嫌な考えばかりが浮かんでくる。
プエラは立ち止まり、その場で強く目を閉じてしまった。
どうしようもない不安から逃げ出したくなったのだ。
その時、不意に手をギュッと掴まれた。相手の温もりが伝わってくる。
「プエラ」 「・・・フィリー?」
「大丈夫。黄金の爪はもうすぐそこだよ。一緒に国に帰ろう」
「・・・・・・はいっ!」
それは太陽のような―――
「邪魔するなよモンスター!そしてピラミッドの主ファラオよ!!」
手を繋ぎ、再び歩き出す・・・・と、
「イシスの姫プエラと、ロマリアの王子フィリーがっ!!あぁあああぁぁぁ〜!!」
ガシャンガシャンガシャンガシャン―――ドシンッ!!
派手な音を立てフィリーは再度、奈落の底へ落ちていった・・・。


436 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/17(月) 01:45:37 ID:RdyazwDA0
(また落ちた・・・)
誰もがそう思い、呆れた。
「フィ、フィリー!!」
びっくりして思わず手を離してしまったものの、一番早く我に返ったプエラ。
フィリーを追いかけ、階段を駆け下りる。
「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・」
フィリーはモンスターの唸り声に似たうめき声を上げていた。
「フィリー!フィリー!!しっかり!!」
「・・・フィリア、ホイミしてあげなさい」
パトリスに言われ、フィリアが嫌そうな顔でフィリーに近づいた。
そして薬草をプエラに渡す。
(相当嫌いなんだな・・・)
その様子を見てジュードは一人納得する。
「しかし、まだ下があったとはのう」
「きっとこの先に・・・?」
長い間空気を入れ替えていないのであろう。息をするのも嫌になりそうだ。
フィリーのうめき声が止むと、また沈黙が辺りを包んだ。
そして誰からとも無く歩き出す。
曲がり角を含んでいるが、これまでと違い変哲も無い一本道。
それは、この先に捜し求めていた物があるという確信でもある。
再び左へ曲がる。
そこは行き止まりで、小さな部屋になっていた。
部屋の中央には1つの棺。
棺を見る者が必ず見上げるようにするため、その床は他より高く造られていた。
正真正銘のファラオの墓だった。
「やっと、たどり着いた・・・」
フィリーが皆の思いを口にする。
そしてフィリーとプエラは祭壇のように奉られている棺へと近づいた。


437 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/17(月) 01:47:58 ID:RdyazwDA0
今日はここまで、と。
思ったより長くなってしまうなぁ・・・
もう少しスマートに話を展開したいと思うオール明けの日曜日。

438 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/17(月) 18:26:32 ID:1o+24vtY0
暇潰し氏乙です!
長くなるのは歓迎ですw

439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/17(月) 19:20:33 ID:dLjJSU6k0
>>総長
現金主義で身替りが早いなw
>>暇潰し
内容的には申し分はないが文章の間に間を上手く開けたら
もっと読みやすくなって面白さが良くなる…か・も。


440 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/17(月) 20:04:55 ID:zMQCTWcDO
総長のギャグとシリアスの微妙なさじ加減にはいつも関心させられるw

441 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/04/18(火) 08:01:29 ID:hsXxyjcW0
あっつい・・・・・

俺達はドラゴンの塔に向っている。道中に教会があって水と食料を補充したのだがやっぱりしんどい。
俺の場合はもょもとがいるから交代制で歩く事ができるがサマル達はそう言う訳には行かない。 
 もょ「(タケ…すまん…)」
 タケ「(ええんよ。しばらく休んどき。しかし砂漠はホンマに疲れるで。)」
 タケ「レオン、大丈夫か?」
レオン「俺は慣れているから問題無いがムーンとリアがちょっとしんどそうだ。」
 タケ「日影になる場所があればいいのだが………」

マジ困った。なかなか日影になる様な場所が見つからない。やっぱり馬とかラクダは必要だったのだろうか?

サマル「ムーン。地図にはオアシスは載ってないのかい?」
ムーン「はぁ…はぁ…の、載ってないわ。」
サマル「そうなのか…ちょっと休みたいなぁ…」
 リア「しんどいよぉ〜…こ、こんなに疲れるなんて…」
流石に休憩はしないと本気でやばい。熱中症で誰かが倒れてもおかしくは無かった。
レオン「おや……あれは?おい、もょもと。」
 タケ「どうした!?」
レオン「オアシスがみつかったぞ!」
 タケ「マジっ!?みんな!オアシスが見つかったってよ!」
 リア「本当!?早くいこっ!」

俺達はレオンが言う通りの方向に向かった。

サマル「やったー!!これで休めるぞ!」
 タケ「ヒャッハー!水だ水だ!」
レオン「ここで野宿をしよう。日が暮れてきているし体力的にも限界だな。」
ムーン「そうね。休める場所があるだけでも贅沢は言えないわ。」
 リア「本当にありがとうレオンさん。」
レオン「可愛いレディのために男として当然の事さ。」


442 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/04/18(火) 08:03:14 ID:hsXxyjcW0
 タケ「いいぞベイベー!ここで水浴びしなければ只の馬鹿だ!ホント オアシスは天国だぜ!フゥハハハーハァー!」
            
                   ざっぶ〜ん

 リア「きゃあっ!」
ムーン「ふふっ、もょもとって子供みたい。」
 タケ「うるせーな、ムーン。水浴びはいいぞ!レオン、サマルも入れよ!」
サマル「ぼ、僕はいいよ。」
レオン「確かに水浴びしないとやってられないな。俺も行くぞ!」

レオンもオアシスに入ってきた。

 タケ「レオン!お主のお陰で余は大満足じゃ!かっかっか。」
レオン「まぁ、無事で良かったぜ。それにしてももょもと、最高のチャンスが回ってきたぞ。」
 タケ「どう言う事だ?」
レオン「まぁ聞けよ・・・・ゴニョゴニョゴニョ・・・・・・」
 タケ「マ、マジで!?」

こいつ、もしかしたらかなりウマが合いそうだ。別の意味で。

 タケ「しかしそれは大丈夫なのか?」
レオン「当たり前だ。恋愛の百戦錬磨の俺が言うのもアレだがたまには違うスリルを味わうのもいいかなって思ってな。」
 タケ「レオン。なかなかの悪ですな。しかし自分で恋愛の百戦錬磨って言う奴はいるか?」
レオン「ククク、俺には実績があるからな。まぁもょもとほど悪でもないけどな。」
 タケ「阿呆。プラン立てた奴に言われたくはないけど。」
レオン「まぁ実行するのは夜だ。それまで飯を食ったり、明日の準備をしたりして待つとするか。」

俺達は夜を待つ事にした。今夜はまさしくハプニングミッドナイトの予感!!


443 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/04/18(火) 08:04:59 ID:hsXxyjcW0
 タケ「隊長。夜になりました。自分はドキドキドッキンの状態であります!」
レオン「緊張するな。先に俺が様子を伺ってくるからな。しかし意外な一面があるなもょもとは。」
 タケ「そ、そうか…?」
レオン「まあいい。俺が先陣切ってくるからな。」

レオンは先に行動を移した。

 もょ「タケ、なにをしようとしているんだ?」
 タケ「たいした事は無いっすよ。まぁ、サマル達の警護やで。レオンと一緒にする事にしたんや。」
 もょ「なにかあやしいな〜べつのもくてきがあるんじゃないか?」
 タケ「ホ、ホンマにみんなの警護だけやから!」
 もょ「いっておくがへんなことしたらだめだぞ!」
 タケ「わ、わかってるがな…」

言えねぇ…ムーン達の所にタシーロしに行くなんて言えねぇ…

レオンの指示通りに待っていたのだがなかなかレオンが戻ってこない。何があったのだろうか?
これは気になるな。とにかく指示を無視して後を追いかけるか。
レオンの後を追いかけるとリアがレオンと一緒にいた。あの野郎!今度はリアに手を出すつもりか。
あのスケコマシめ!鋼の剣の錆びにしちゃる!
しかし二人とも様子がおかしい。何か入り込めない雰囲気がある。匍匐前進状態にしてここは様子を見るとしますか。


444 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/04/18(火) 08:09:49 ID:hsXxyjcW0
レオン「なぁリア。眠れないのか?」
 リア「うん…」
レオン「それにしてもいい夜空だな…あいつら、大丈夫かな…」
 リア「あいつらって誰なの?」
レオン「俺の仲間達さ。この世界に来ていると信じたいのだが、確証はもてない。」
 リア「そうなんだ、レオンさんの仲間が早くみつかればいいね。」
レオン「ああ…馬鹿ばっかりな奴らだけど、バラバラになったらやっぱり寂しい物があるな…」
 リア「レオンさん元気出して。必ずいるはずだよ!この世界に。」
レオン「どうしてだ?何か根拠があるのか?」
 リア「………わからなくてごめんなさい。でも、私は信じていたいの。レオンさんの仲間がこの世界にいるって。」
レオン「悲観的に考えても仕方がないな。僅かな可能性に賭けてみるか。」

そのうちレオンは自分の事を語り始めた。

リア「……なんて言えばいいのかわからないよ。」
レオン「気にするな、でも…もょもとと同様にリアも優しい女の子だな。」
 リア「えっ…で、でも…(////)」
レオン「いい笑顔だ。何か引き寄せられるものがある。」
 リア「そ、そうなんかなあ?」
レオン「俺もあんまり自分の事を話したくはない。けど、もょもとやリアの影響で思わず話してしまった。ハハッ…」
 リア「でも、ちょっとだけレオンさんの事を理解できて良かったと私は思うんだ。明日からもよろしくね!」
レオン「ああ…そろそろ寝るとするか。」

リアは自分のテントに戻っていった。俺もレオンにばれる前に自分のテントに戻るとするか…

テントの中でと何かゴソゴソする音が聞こえる・・・・・・・ドロボウか!?思わず俺は

 タケ「何しているんじゃクルルルルルルァァァァァァァァ!!」
  ?「し、しまった!!」

誰かがいた…俺は側に置いてある鋼の剣を持って戦闘態勢に入った。

445 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/18(火) 18:10:10 ID:h15tWj8z0
ちょww
ここでやめるかwwww

446 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/18(火) 22:16:57 ID:sTYlvsJjO
外道すぎるwwwwwwwwww
だが、そこがいい!

447 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/19(水) 07:12:50 ID:ZAFEuJSQO
まさかこのスレで某コピペが見れるとは思わなかったw

448 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/19(水) 19:13:52 ID:w7zcJyYM0
ああ・・・タケがますますネタキャラに・・・

449 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/20(木) 01:03:31 ID:V8Ajd0Z10
>>436続き
2人が棺を恐る恐る開けると、暗い部屋の中で、名前の通り黄金に輝く財宝が現れた。
  「おお〜」
  「うわ〜何か趣味悪い〜」
  「鉄の爪に似てるな。お前装備できるんじゃねーの?」
  「ヤだよこんなの!」
  「鉄の爪より攻撃力がありそうなんじゃがのう」
  「おじいちゃんまで何言うのよ〜」
その時、低く聞き取りづらい声が辺りを支配した。
              ―――我の眠りを覚ますのは誰だ―――
  「え?!」
  「何なに?」
         ―――王家の財宝を荒らす者よ。生きて帰れると思うな―――
突然棺から光が放たれる。暗闇に慣れた目にはひどく眩しかった。
  「・・・・・・?」
数秒の沈黙。何も変化が無いと思われたその瞬間、
  「ぐはっ!!」 ドカンッ!
ジュードが攻撃を受け、倒れる。
いつの間にかミイラ男が真理奈達の背後に迫っていた。
  「・・このッ!」
真理奈が鉄の爪をミイラ男に突き刺す。その一撃で勝負は決まった。
が、ミイラ男が倒れると、その後ろからまたミイラ男が・・・
目を凝らすと、この小部屋にどんどんとミイラ男が入って来るのが分かった。
  「何これ!さっきまでこんなにいなかったのに・・・!!」
目の前のモンスターを倒しながら真理奈が舌打ちする。
  「よし!ここはワシにまかせんしゃい!ベギラマ!!」
炎の渦がミイラ男達を焼き尽くさなかった。
  「・・・ありゃ?ベギラマ!ベギラマ〜ッ!!」
  「ちょっと!何してんのよ!!」
  「呪文が使えない・・・・」
な、なんだっ(ry


450 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/20(木) 01:09:10 ID:V8Ajd0Z10
  「ホイミ」
フィリアもジュードに呪文を試してみるが、効果は表れなかった。
パトリスを見上げ、首を横に振る。
  「・・・呪文なんか無くったって平気だっての」
ジュードは薬草を乱暴に飲み込み、ミイラ男の群れに突っ込んで行った。
狭い通路に真理奈とジュードが並び、少しずつモンスターの波を追い返していく。
  「今回ワシらは出番なさそうじゃのう・・・」
パトリスは戦う2人を眺めて嘆息し、フィリアは不思議そうに棺を見つめていた。

斬る。殴る。薙ぐ。蹴る。刺す。突く。裂く。
真里奈・ジュードはそれらを向かってくる相手にお見舞いしていく。
と同時に少しずつ相手の懐へ踏み込んで行く。
何せ通路いっぱいにミイラ男の列が出来ているのだ。
ただ倒すだけではここから一生出られないだろう。
パーティーはそれに合わせて徐々に前進して行く。
が、この通路では一度に2人しか戦えないのでその前進は微々たるものだった。

一番後ろで待機しているパトリスは再び疑問に思う。
通常倒したモンスターはそのまま死体となる。
中にはそのまま消えてしまうようなモンスターもいるが、少なくともミイラ男は違う。
それなのに真理奈とジュードが倒したミイラ男は跡形も無くなっているのだ。
暗闇に溶け込むように体が消失していく。
まぁそのおかげで、通路が死体だらけにならずに済んでいるのだが・・・
さらに呪文が使えない謎。人智を超えた力が働いているに違いない。
  (これが王の呪いなんじゃろうな・・・まったく女王も無茶させおるわ)

  「あぁぁあ〜もう!!いつまで続くのよ〜!!!」
ピラミッドにこだまするその声は、真理奈の苛立つ姿を嘲笑っているかのようだった。


451 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/20(木) 01:11:31 ID:V8Ajd0Z10
階段を上り、地下1階へとようやくたどり着いた。
しかし今度は四方からモンスターが迫ってくる。
未だ呪文の使えないパトリスやフィリアも戦闘に参加せざるを得なかった。
  「出口っ!どっち!?」
  「知るかよ!!」
さすがに真理奈やジュードには疲れの色が見え始める。
  「ピーピー!!」
それまで真里奈のバッグに隠れていたブルーがツノを出し、訴える。
  「あっちが出口なの・・?オッケー!ブルー、信じるよっ!!」
皆は真理奈を信じ、進行方向を定める。
戦えないプエラを守りながら周りに気を配り、モンスターを排除していく。
4人は何とかそれを実践していたが、1人フィリーだけが何もしていなかった。
いや、正確には何も出来なかった。
これだけのモンスターに囲まれ、足がすくんでしまっている。
真理奈達についていくだけで精一杯。
初めて感じるここまでの恐怖。
この試練がどれだけ難題だったのか、今になって実感しているのだ。
その時、1匹のミイラ男が4人の隙をつき、フィリーとプエラに襲い掛かってきた。
ミイラ男の包帯に巻かれた両腕が振り上げられる。
  「きゃあああぁぁぁぁあああ〜!!」
  (こんなの・・・・無理だよ・・・・)
  「フィリー!!」
気付いた真理奈が叫ぶ。しかしフィリーは動けない。
  「ロマリアの紋章が泣いてるわよ!」
  (そうだ!僕は・・・!)
  「うわああああああああ〜!!!」
フィリーは大声と共に気合を入れ、鉄の槍を突き出した。
が、王子様渾身の一撃はミイラ男には当たらず、脇に外れてしまう・・・
そして勢い余った王子はそのままミイラ男に渾身の体当たりをする形になる。
フィリーのヘンテコな会心の一撃はミイラ男を見事に吹き飛ばした!


452 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/20(木) 01:15:15 ID:V8Ajd0Z10
フィリーに飛ばされたミイラ男は、後ろのモンスターにぶつかり将棋倒しになる。
その先には天井から差し込む光が・・・
  「プエラ!行こう!」「はいっ!!」
王子と姫は手を繋ぎ、ピラミッドを脱出した。
プエラのもう片方の手にはもちろん黄金の爪がしっかりと握られている。
  「よっしゃ〜私達もこんなとこからオサラバしよっ!」
モンスターを適当にいなしながら真理奈達もピラミッドの外に出る事に成功する。
どうやらミイラ男達はピラミッドの外までは追って来ないようだ。
太陽がオレンジ色の光を放ち始め、一日の終わりを告げようとしていた。
  「はぁ〜終わった〜・・・」

  「きゃあぁぁぁぁあぁ〜!!!」
  「え?!」
突然プエラの前の地面が盛り上がり、赤くて巨大なカニが現れる。
地獄のはさみだ。ミイラ男のように次々と湧き出てくる。
  「ちょ・・・終わりじゃないの・・・?」
うんざりする真理奈を横目に、地獄のはさみの前に立つ者が1人。
  「ふっふっふ。神はちゃんとワシにも活躍の場を与えてくれたようじゃな。
   ここはワシに任せんしゃい!」
パトリスが子供のように楽しそうな表情で言う。
  (外に出ればこっちのもんじゃて!それに少しは働かんとご褒美にありつけんからのう)

フィリーがプエラを避難させ、パトリスが一番前に出る。
その間6匹の地獄のはさみは攻撃をしかける事無く、しきりにはさみを上下させていた。
[スクルト] [スクルト] [スクルト] [スクルト] [スクルト] [スクルト] [スクルト] [スクルト]
みるみると地獄のはさみ達の甲羅が堅くなっていく。
  「無駄じゃ無駄じゃ。ワシの呪文の前ではな!!
   メラミメラミメラミメラミメラミ〜!!」
パトリスがここぞとばかりに張り切り、地獄のはさみを焼いていく。
その一帯だけ昼間の灼熱の熱さを取り戻したかのようだった。


453 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/20(木) 01:21:10 ID:V8Ajd0Z10
炎に焼かれ、地獄のはさみが動かなくなる。
  「どうじゃ!呪文の力を思い知ったか〜!!」
  「カラ剥いて食べたらおいしいかな?」
  「お前モンスター食うのかよ」
  「え〜だってこれカニでしょ?カニっておいしいんだよ〜!」
  「・・・・・・・」
パトリスをかつて無い程のやるせなさが包んだ。

何を思ったかフィリアがトテトテと地獄のはさみに近づいた時、
  グググググググググ・・・
良い具合に焼かれた地獄のはさみ達の中から低い唸り声をあげ、生き残りが現れた。
  「もー勘弁してよ!早く帰ってシャワー浴びたいっ!!」
  「よ、よしっ!今度こそこれで終わりじゃ!メラミ!!」
しかし、パトリスの杖からはメラの炎は出現しなかった。
  「・・・・・MPが足りないようじゃの」
  「もーおじいちゃん使えない〜!」
  「な、なんじゃと!」
  「やるなら最後までしっかりと締めてよねっ!」
真理奈が止めを刺しに地獄のはさみへと走り、背中に飛び乗る。
  「おりゃ〜!!」
ガキンッ!!
  「・・・・!!!痛った〜!!!」
金属の壁を殴ったかのような衝撃。鉄の爪を通じて腕に痺れが伝わってくる。
  ググッ!グググ・・・
地獄のはさみは真理奈を攻撃しようとするが、はさみが届かなくてもだえる。
  「ありゃダメだよ。硬すぎ〜」
真理奈が地獄のはさみの背中からジャンプして戻ってくる。
  「やはりワシの呪文が無いと困るじゃろ?」
  「使えないのに言われても・・・」
  「・・・どうする?」
一応攻撃を試したジュードも戻ってくる。どうやらダメだったらしい。

454 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/20(木) 01:33:22 ID:V8Ajd0Z10
  「・・・」
そこでフィリアがここは私が、と声を上げる。
いや声は出してないんだけどね。
  「ルカニ」
久しぶりに聞くフィリアの声は、やはり凛としていた。

  「ねぇねぇ、ルカニって?」
  「ルカニは相手の守備力を下げる呪文じゃ。これで攻撃が効くように―――」
  グググ! [スクルト!]
地獄のはさみは不気味な笑みを浮かべながらはさみを振り上げ、呪文を唱える。
  「・・・あれじゃあ意味無いよね?」
真理奈の質問に対して、パトリスは明後日の方向に目を逸らした。

  「・・・ルカニ」
敵の的確な対応に少しムッとしたフィリアが再び呪文を唱える。
  [スクルト]「・・ルカニ」[スクルト]「ルカニ」[スクルト]「ルカニ!」・・・
フィリアと地獄のはさみの呪文が応酬を繰り返す。
フィリアを見下すように呪文を唱える地獄のはさみ。
それが気に食わないのか、意地になってフィリアも呪文を唱える。
  「なんじゃコイツは・・・MPが尽きんのか?」
それは魔法使いの自分よりMPがあるのではないかと思わせる程だった。

  「フィリアちゃん頑張って〜!!」
  「頑張ってください!」
  「ピーピー!!」
皆の声援を背中に受け、フィリアは呪文を唱え続けた。

ってかもうバギで倒せばよくね?


455 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/20(木) 01:36:40 ID:V8Ajd0Z10
  「はぁはぁ・・・」
魔法合戦はフィリアの方が先に息を切らして終わった。

  グガァァァァ〜
スクルトを唱えた姿そのままで地獄のはさみはチャンスと攻撃をしかけてくる。
幸いに地獄のはさみのスピードはそこまで速くなかった。
が、力尽きそうなフィリアは完全には避けきれずに倒れる。
そこに続けてはさみが振り下ろされる。
 ガキンッ!!
ジュードがフィリアと地獄のはさみの間に入り、剣で受け止める。
しかし力の差は地獄のはさみに軍配があり、ジュードの体は砂漠に沈んでいく。
  「くっ!!」
ジュードの顔が苦しくゆがむ。

  「攻撃が効かない、か。こりゃあ万事休すかのぅ・・・」
  (マリア・・・使ってもいいか?)
パトリスが心の中で何かを決めようとした時、真理奈が叫んだ。
  「そっか!スカラよ!」
  「何じゃと?強くしてどうするんじゃ!防御力を下げないと――」
  「違う!私にスカラしてって言ってんの!」
  「真理奈ならあんなヤツの攻撃食らわんじゃろ」
  「いいからっ!早くっ!」
  「!!スカラっ!!」
驚いたパトリスが思わず呪文を掛ける。
  「オッケー。姫様、ちょっとコレ借りるね」
  「は、はい!」
次に鉄の爪を外し、プエラが持っていた黄金の爪を手にはめる。
  「よ〜し!行っくよ〜!!」
真理奈は再度、地獄のはさみに向かって走り出した。


456 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/04/20(木) 01:44:50 ID:V8Ajd0Z10
  「ジュード!どいて!」
ジュードがフィリアが無事なのを確認してから、剣をずらす。
はさみが刃を滑り、力のベクトルが変わる。
ドシンっ!!地面にはさみが飲み込まれ、砂煙が舞い上がった。
ジュードはその隙に敵の懐から抜け出した。

視界が晴れると、地獄のはさみの目に真理奈が立ちはだかっているのが映った。
  グゥゥゥゥ〜
地獄のはさみは攻撃を低い声で唸りながら仕掛けてくる。
  「フィリアちゃん!もう1発ルカニを!」
フィリアは頷き、最後の力を絞って呪文を唱える。
  「ルカニっ」
地獄のはさみの防御力が下がる。ニヤリと笑う真理奈。
  「や〜い!スクルトしなくていいの〜?体がヤワくなってるよん」
真理奈の挑発に乗り、地獄のはさみが呪文を唱えようと体を起こし腕を振り上げる。
  (今だ!!)
真理奈は素早く地獄のはさみの体の下に入り込み、
  「よっ・・・っと!!」
綺麗にサマーソルトを決めた!!
  [スクル―――]バクンッ!!
だらしなく開いていた口が閉じられ、地獄のはさみの体が宙に浮いた。
真理奈は着地時の屈伸と同時に右腕に力を込める。
スカラのおかげで足に痛みは無い。そして思いっきり足を伸ばし跳躍。
  「とぉりゃあぁ〜!!」
黄金の爪を地獄のはさみに突き刺し、そのまま腹を引き裂いた!
最後の地獄のはさみは泡を吹いてそのまま仰向けに倒れる。
  「うしっ!」
真理奈のガッツポーズが決まる。
モンスターの血がその右腕にある爪に吸収されていく。
そしてイシスの秘宝は黄金の輝きを夕暮れに負けじと再び放ち始めた。


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