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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら六泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/11(土) 21:30:54 ID:2kKEOzWo0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです。
小説形式、レポ形式、一言何でも歓迎です。

・スレの性質上1000になる前に500KB制限で落ちやすいので
 スレ容量が470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
 (トリップは名前欄に「#(半角シャープ)+半角8文字」で出ます)
・同じスレ内で続きをアップする場合は
 アンカー(「>>(半角右カッコ2つ)+半角数字(前回レスしたスレ番号)」)
 をつけるとより読みやすくなります

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら五泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134827399/

まとめサイト
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」冒険の書庫
http://www.geocities.jp/if_dq/

18 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 18:52:35 ID:RN8bo9fiO
ごめんね

19 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 19:43:53 ID:cee3+gQZ0
はじめまして。暇潰しといいます
ドラクエ3〜そしてツンデレへ〜
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1138064814/
というスレから誘導されて来ました(さりげに宣伝)
こちらに投下しようと思います
よろしくお願いします

20 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 19:45:53 ID:cee3+gQZ0
〜終わりの始まり〜
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
                何故世界はこんなにも汚れに満ちているのだろうか
 人は皆自分だけの為に他人を傷つける
          何が努力だ。何が愛だ。何が友情だ。何が・・・
そんなものどこに存在しているというのだ
        もしあると言うなら、今すぐここに示してみせろ
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
     何故世界はこんなにも不幸に満ちているのだろうか
  自分は何もしていないのに苦しい事ばかりじゃないか
                               こんな世界なら存在しなくていい
こんな世界なら壊れてしまえばいい
    誰もいなくなれば、どんな苦痛も、不幸も、悲鳴も、死さえも無くなるだろう
               そうだ。そうなってしまえばいい
                       僕を傷付けるものは全て無くなってしまえ
 そして僕も消えてしまえばいい
                     そうすればきっとこの世界は救われる・・・
壊れてしまえ壊れてしまえ壊れてしまえ壊れてしまえ壊れてしまえ壊れてしまえ・・・

21 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 19:47:44 ID:cee3+gQZ0
〜Annunciation〜
タタタッ・・・!
街の騒音に混じって軽快な足音が響く
「はぁはぁはぁ・・・。」
時間は通勤ラッシュをとっくに過ぎ、昼前である。
「ちっくしょ〜」
そんな悪態をつきながらも、その声の主は通行人を華麗に交わしていく。
夏に入る頃の爽やかな風も手伝って、彼女が足を運ぶその度に赤チェックのスカートが危なげに舞う。
上は白いブラウスに赤のネクタイ。この先にある高校の制服である。
なかなか映える服装だが、遅刻なこともあり、周囲からはかなり目立ってしまっている。
普段から朝は強くないが、今回の寝坊は特に酷かった。
昨日遊んだ帰りに靴の紐が切れるし、夜は枕の形が気になってなかなか眠れなかった。
今朝は今朝で髪型がうまく決まらなかった。
「また怒られっかな〜・・」
遅刻は3回で欠席1に数えられてしまう。ちなみに結構ピンチである。

♪♪♪あの〜虹を〜渡って〜

「もう!何よこんな時に・・・」
携帯を取り出し、外れかけた赤いヘアピンを直しつつ画面を見る。
番号は分からないが、【RUBISU】と表示されている。
疑問を抱きつつも、条件反射で出てしまう。
「もしもし!?」
「私の名前はルビス。世界は再び危機に瀕しています」
イタズラかと思う。
「真理奈、あなたの力が必要です。どうか私達の世界を救って下さい」
「あんたね〜・・・」
言い終わらない内に真理奈の世界は白く包まれた。

22 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 19:51:00 ID:cee3+gQZ0
目を開けるとそこは一面の草原だった。
正面の遠く向こうには海岸、右手には山が連なり、左手には森が見える。
ちょうど丘のような場所に真理奈は立っていた。
さっきまでの高層ビル群は跡形も無く消えて、代わりにどこまでも抜けるような青空が広がっていた。
「・・・・・・何だこれ」
まるで夢の中で場面が突然変わってしまうかのように、景色が一変してしまった。
無意識的に頬をつねる。痛い。
どうやら夢ではなさそうだ。
というか、「夢かな?」と考えることができる時点で夢ではないことを証明しているようなものだ。
しかし真理奈はそんな事を考えられない。
(学校は間に合わないか・・・)
と、どこか間の抜けたボンヤリをしていると、何やら青くて丸いものが坂を登り、真理奈の方へ向かってくる。
サッカーボールよりも小さいが、ツノや目や口らしきものがついている。生き物・・・か?
「ピキー!!」と声を出し、必死に走って来る。
よく見ると、青いのの後ろからウサギが追いかけて来ていた。
こちらもなぜか大きな1本のツノが額の辺りから生えている。
スピードをつけ、頭を低くし、青いのを突き刺そうと猛ダッシュをかけている。
青いのも頑張って逃げているが、とうとう転んでしまった。
ウサギがチャンスとばかりに青いの目掛けてジャンプする。
「危ない!!」
真理奈はとっさに飛び出し、ウサギを思いっ・・・きり蹴飛ばした!
タタタタ タータッタ〜ン♪♪♪

23 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 19:53:06 ID:cee3+gQZ0
「ピー、ピー」
青いのが真理奈の足に擦り寄って来る。
「お〜よしよし」
持ち上げて体を撫でてみる。
不思議な感触だ。プヨプヨと柔らかいが、形を崩しても元に戻る。
色は真っ青で、向こう側が透き通っている。
ツノを体の中に押し込んでみると「プニュ〜・・・」と困ったような声と顔をした。
「ねぇ、ここはどこなの?」
さすがに人間の言葉は分からないみたいだ。
「ピー!」となぜか嬉しそうな返事をされてしまった。

「おい!お前そこで何してる?!」
突然、若い男の声が聞こえた。
振り返ると2人の男がこちらに向かってくるのが見えた。
しかし格好がおかしい。
映画に出てくるような鎧を着、手には槍が握られている。
「見かけない奴だな。どこから来た?」
「どこって・・家だけど?」
「家はどこかと聞いてるんだ!」
「怒鳴らなくてもいいじゃん・・・」
「こんな服見たことないし・・怪しいな。先輩、どうします?」
「そうだなぁ。とりあえず報告だな」
「分かりました。ほら、こっちこい」
若い方が真理奈の手を引く。
「ちょっと!引っ張らなくてもいいじゃん!」「ピー!」
「なんだ?・・スライムか。こんなの持って、ますます怪しい奴だ」
若いのはそう言うと、青いのを掴み投げ捨てた。
「あぁ!!」「いいから行くぞ!」「ピ〜・・・」
スライムは強引に連れて行かれる真理奈をいつまでも見つめていた。

24 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 19:55:02 ID:cee3+gQZ0
「ね〜ここはどこなの?」
「ん?アリアハンに決まってるだろ?」
「アリア・・・?」(そんな国あったっけ?)
「お前はどこから来たんだ?」
「幕張だけど?」
「マク・・?どこだそれは」
「千葉よ、日本の。ジャパン。分かる?」
「そんな国は聞いたことないな・・・」
話がまったく通じなかった。いや、日本語は通じるのだが、内容が話にならなかった。
「先輩、やっぱりモンスターが化けてるんじゃ・・?スライム持ってたし」
「誰がモンスターなのよ!」
「ん〜それはないだろ仮にモンスターだとしても、俺達にこんな嘘を付く理由がない」
「なるほど・・・それもそうですね」
「それにもうモンスターは―――」
話をしている内に、3人はアリアハンの町に入った。
何の事はない。真理奈がこの世界に現れた時は、アリアハンに背を向けていたのだ。
町の道路はまったく舗装されておらず、車はおろか、自転車の一台も走ってはいない。
そして都会のように小走りで歩く人もいない。皆運ばれてくる風を楽しむかのようにゆっくりと歩く。
建物はまばらで2階建てが多く、一軒一軒の敷地は広かった。確実に日本家屋とは様子が違う。
唯一高い建物と言えば、左手に見えるお城だった。これまた映画に出てくるような西欧のお城である。
真理奈はそれらを眺め、初めて今までと違うトコロにいるんだと実感した。
しかしまったく不安や焦りを感じなかった。
それはアリアハンの持つ、どこかのどかな雰囲気のおかげかもしれない。

25 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 19:57:15 ID:cee3+gQZ0
「キャー!!」
突然女性の叫び声が辺りに響き渡った。
真理奈を連行していた2人はとっさに走り出す。
「お前はそこで待っていろ!」
先輩の方が走りながら振り返り、真理奈に言い放つ。
「・・・まったく何なのよ・・・」
真理奈は1人取り残され、またしても呆然とする。
2人と入れ替えに青年が町の中に入って来た。腕にはぐったりとした女性を抱きかかえている。
「モ、モンスターだ!モンスターが攻めて来たぞ!!」
青年は町中に警告するように声を上げた。町人はすぐそれに反応し、家の中に避難していった。
(モンスター?あの2人もそんな事言ってたっけ・・・あのウサギや青いのの事かな?)
持ち前の行動力からか、単に騒ぎが好きなのかどちらかは分からないが、真理奈は2人を追いかけることにした。

町の外では2人がモンスターと戦っていた。
普段からの訓練が活かされているのか、次々と撃破していく。
「中々やるようになったな!」「先輩のおかげです!!」
なんて熱血する余裕もあるみたい。と言ってる傍から後輩の後ろに大きなカエルが突進してきていた。
「おぉ〜りぃやぁ〜〜!!」
真理奈はダッシュの勢いを付けカエルの腹に蹴りをぶち込む。カエルは泡を吹きながら吹き飛んでいった。
「油断よ、後輩ちゃん?」「お、お前!どうしてここに・・・」
「いいからいいから〜。私ちょっと自身あるんだ。一緒に戦うよ」
「何言ってるんだ!ダメに決まって――」
「口論してる場合かなぁ?先輩が大変そうだよ?」
真理奈の指差す方を見ると、先輩がカラス達に骨やら石やらを頭上に落とされて困っていた。
「あ・・」「ほらほら、行くわよ!」真理奈は走り出す。
「・・・・」そして後輩ちゃんも真理奈の背中を追うように走り出した。

その頃、アリアハンへと続く道には続々とモンスタ−が集結していた。

26 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 19:59:06 ID:cee3+gQZ0
「お前やるなぁ〜!」「でしょでしょ〜!!」「ありがとう。礼を言うよ」
カラス達を撃退した後、お城からの兵士が援軍に駆けつけ、事態は終息を迎えようとしていた。
真理奈は先輩後輩コンビと一休み。最初の疑いはどこへやら・・・
「しかし、なぜ今さらモンスターが凶暴化したんでしょうね?」
「分からん・・・」先輩は心底不思議という顔をしながら言った。
「今までもモンスターが襲ってくることはあったが、こんなにも多くのモンスターが攻めて来ることはなかった」
「???モンスターは凶暴なものなんじゃないの?」真理奈も不思議な顔をして尋ねる。
「ここ数年は大人しかったんだ。こんなの初めてだ・・・」
「お前はまだ若いからな。あの頃は―――」
ドド・・ドドドドド・・・ドドドドドドド・・・・!!!
地面がかすかに揺れる。それはゆっくりと、確実に力を増しながら近くなってくる。
「隊長!!モンスターの大群が・・!」兵士が走りながら報告する。
兵士の焦り具合を見ると事態は良くないようだ、と推量できる。
実際に群れを見て推量を確信に変える。が、隊長としてひるむ訳にはいかなかった。
「・・・よし!隊列を組みなおせ!!傷を負った者は今の内に治療しておけ!!」
先輩は兵達に声をかけていく。
「さ、さすがにあれは無理だ。ここからは俺たちに任せて、お前は避難しろよ」
「震えながら何言ってるのよ後輩ちゃん。ここまで来たら最後まで付き合うわ」
「でも・・・」
「負けたら町の中にいても同じじゃない」
「それは・・そうだけど・・・」
「じゃあ決まり!」
「巻き込んですまない。だが無茶はするなよ」先輩が戻ってきて言った。
「大丈夫だって!」
真理奈は満面の笑みで答える。その顔に2人はどこか安心感を覚えた。

27 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 20:02:11 ID:cee3+gQZ0
モンスター達はアリアハンから200m、兵士達からは100mの辺りで進行を停止した。
まるでその数を見せ付けるように、横一列に並んでいる。
そのちょうど真ん中には一際大きなモンスターが見える。
「馬鹿な・・・あれはグリズリーか・・・」
「え?!グリズリーってアリアハンにいるんですか?!」
「いや、いない。いるはずはない・・・」
(あれって熊よね?そりゃヤバいわ・・・)
日本にもいるが、当然遭った事はない。
「よし、俺達はあれをやるぞ」
「・・・お前、この盾使えよ。さすがにその装備じゃ辛いだろ」
後輩ちゃんが真理奈に盾を差し出す。
「お、ありがと」・・と、受け取ろうとする手を先輩は遮った。
「いや、俺のを使え。少なくともこいつよりも俺の方が強いからな」
先輩はニヤリと不敵に笑った。

グア〜オオォォオー!!!
グリズリーが雄叫びを上げる。それに呼応するように他のモンスターも奇声を発した。
「怯えるな!日頃の成果を見せる時が来たぞ!
 薬草と聖水忘れてないな?!何としてもアリアハンを守るんだ!!」
先輩が檄を飛ばす。
グァアアァァ〜!!!オオオオオオオオオ!!!
グリズリーが再び吠え、モンスターに突撃を命じた。一斉に動きだすモンスター達。
「行け〜!!」
隊長の掛け声に合わせて兵士達も迎撃に向かった。
真理奈も同じく駆け出す。真理奈の制服は戦場でも目立っていた。

28 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 20:06:11 ID:cee3+gQZ0
ほとんどの兵士が善戦する中、真理奈達3人は苦戦を強いられていた。
グリズリーがその巨体に似合わず俊敏な動きで真理奈達を翻弄したからである。
素早い攻撃を何とか盾で受け止めるものの、盾がひしゃげる程の威力があった。
「うあぁぁー!!」ガキン!!後輩ちゃんへの攻撃を真理奈がかばう。
「後輩ちゃんしっかり!」
「ふんっ!!」先輩が力を込め、グリズリーの心臓目掛けて槍を突き出した。
が、皮膚を少し傷つけることしかできなかった。
「!!」
渾身の攻撃が効かなかった事で先輩は少し怯む。怯みは隙となり、戦闘中の隙は致命傷である。
グリズリーの爪が先輩の腹を貫いた。
「せんぱ・・・こんちくしょー!!!」
後輩ちゃんが怒りに任せて突撃する。
しかしそれも虚しくグリズリーにかわされ、後輩ちゃんは蹴り飛ばされた。真理奈がフロッガーにしたように・・・
(先輩・・・後輩ちゃん・・・)
2人を片付けたグリズリーは、なおも攻撃の手を緩める事なく真理奈に迫ってきた。
左右の腕を交互に振り上げ、真理奈を裂くために動かされる。
ヒュッ!!ガキンっ!
盾が使い物にならなくなり、紙一重で避ける真理奈の服は少しずつ破れていった。
(ヤバっ・・・間に合わ――)
右からの攻撃をまともに受け、吹き飛ばされる。
グリズリーの爪は真理奈の背中左脇と左腕を切り裂いていた。
血がブラウスも赤く染めていく・・・
(もうダメか・・・)
朦朧とする意識の中、グリズリーが近づいて来るのを確認する。
グリズリーは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。最後の止めを刺す為に腕を振り上げた。
(お母さん・・・!)
その時、青くて丸いものが飛び出し、真理奈を守るかのように立ちはだかった。
「ピーー!!」「お前・・!」
しかしスライムではグリズリーの抑止力にはならない・・・!
ズシュ!!!
戦場では珍しくない肉の千切れる音がした。

29 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 20:08:45 ID:cee3+gQZ0
次に真理奈が目にしたのは空中を舞うグリズリーの腕だった。
「大丈夫か?」
見知らぬ青年が真理奈に声をかけて、返事を待たずにグリズリーとの戦闘に戻っていった。
「ベホイミ」
凛としたその声とともに体の痛みが消える。
振り返ると、少女が真理奈を見ていた。
「・・・あなたがやってくれたの?」
少女は答えない。
「大丈夫かの?」
その後ろからおじいさんがやってきた。
「は、はい。あなたは?」
「自己紹介は後じゃな。今は勝つ事だけ考えるべきじゃ」
少女が真理奈に何かを差し出す。パンチングマシーンのグローブのようなものだ。
甲の部分にカッターの刃のようなものが3本取り付けてある。
しかしそれはカッターよりも刃が太く、簡単には折れそうになかった。
「これは・・・?」「鉄の爪じゃよ。最後の一撃、頼みますぞ」
そう言うとおじいさんはグリズリーの方へ向かっていった。
「ありがとね」真理奈は少女に礼を言う。
「ピー!!」スライムが自分も忘れるな、と声を上げる。
「お前もありがとね」
スライムを持ち上げナデナデする。
そして真理奈は鉄の爪を右手にはめてみた。不思議と手に馴染む・・・
「よし!じゃあ行ってくるよ!こいつよろしく!」少女にスライムを渡した。
ニッコリと微笑むと、少女は真理奈に小さく手を振ってくれた。
「ピ〜!」
スライムの声援を背中に受け、真理奈は再び戦場に舞い戻る。

30 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 20:11:10 ID:cee3+gQZ0
片腕を無くしたグリズリーは痛みと怒りに狂い、滅茶苦茶な攻撃を青年に仕掛ける。
スピードはやや落ちたものの、攻撃力は増している。
まともに受ければ命はないだろう。
しかし、避けきれない程ではなくなっていた。
チャンスが生まれるまで青年は走り回った。
「さてさて、久しぶりに頑張ろうとするかのう」
おじいちゃんがMPを練り、青年と目を合わしてタイミングを取る。
「ヒャダルコ!!」
氷の波が地面を這い、青年を攻撃することだけに執着していたグリズリーの両足を凍らせた。
グァワァァァ〜!!!
突然動きの取れなくなったグリズリーはバランスを崩す。
その隙に青年はグリズリーの残りの腕に剣を突き刺し、腕の動きも奪う。
「今だ!!」
青年が叫ぶと同時に、真理奈が走りこんで来る。
(何かよく分かんない内にこんなことになっちゃったけど・・・)
(先輩と後輩ちゃんの仇は取る!!)
「ルカニ!」
「やぁぁぁああぁぁ〜!!!」
真理奈は疾走の勢いを殺さずに飛び上がり、グリズリーの胸に鉄の爪を突き立て、心臓を貫いた。
グリズリーは空を見上げるように顔を上げ、動きを止めた。
オオオォォォオオ・・・・
戦場に戦いの終わりを告げるグリズリーの断末魔の叫びが響き渡った。

31 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 20:15:25 ID:cee3+gQZ0
夜―――この世界で迎える初めての夜である。
真理奈は夜中に目を覚ましてしまった。
ここは宿屋2階のベッドの上。
横にはスライムが「ピー・・・ピー・・・」と寝息をかいている。
微かに笑った後、ベッドを抜け出して窓を開け、窓枠に腰掛ける。
まったく静かな夜である。
家屋の軒先には明かりの炎が焚かれているが、空の色を変えたりする程ではない。
視線を少し上げると、数ケ所に設置されている、民家と同じく小さい炎の中に浮かび上がるお城が見える。
夜空に浮かぶお城というと不気味に聞こえるが、決して威圧感を与えるような風景ではない。
時々運ばれてくる風に髪を揺らされ、どこか懐かしいような香りを感じる。
そして真理奈は自分の家の事を思う。
母親は心配していないだろうか、と。
いやあの母親では逆に、帰った時に怒られるのを心配した方がいいかもしれないが・・・
(携帯繋がらないかな・・・?)
ふとそう思い、携帯を取り出してみる。
・・・・・・・・圏外だ。
(そりゃ当たり前か)
諦めの表情に苦笑を浮かべる。と、携帯が鳴り出した。
♪♪♪あの虹を〜
「はいはいはい!もしもし?!」慌てて出る。
「ルビスです。ありがとうございました」
「あんたね〜!!」大声で怒鳴ってから、はっとする。
・・・良かった。スライムは起きなかったようだ。
「あなたには申し訳ないと思っています。しかし、これしか時間も方法も無かったのです」
「はいはい、そ〜ですか」投げやりに答え、窓の外に目を戻す。

32 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 20:16:27 ID:cee3+gQZ0
「で?もう帰してくれるの?」
「・・・それはまだできません。この世界を救って下さい。そうすればあなたの世界に帰します」
「随分な条件だこと!」
「お願いするしかありません。私の力は、あの力には及ばないのです」
「偉そうなくせして役立たずね〜」
「・・・1通だけメールを送れるようにします。お母様によろしく」
「え?!」ツーツー・・・・
「何なのよ!」
終了ボタンを押し、画面を見ると確かにアンテナが4本立っている。
「マジ?!」
慣れた手つきで母親のアドレスを呼び出し、メール作成画面に入る。
「えーっと、えーっと・・・何て書けばいいの・・・」
迷っていると、アンテナが3本に減った。
「え?!ちょっと待ってよ・・・」カコカコカコ
【お母さんごめんなさい。何か帰れなくなっちゃった。怪我とかしたけど、心配しないで―――】
「って怪我したって言ったら心配するじゃん!」
アンテナはもう1本になっている。
「こら〜ルビス〜!まだ終わってないんだからちょっと待て〜!!」
・・・・ちょっとだけ2本に戻った。
【―――ちゃんと帰るから怒らないで待ってて。真理奈】
「よし!送信!」送信完了と共に、再び圏外に戻ってしまった。
「ふぅ・・・今度から着信拒否しよっかな・・・」
少し本気で考える真理奈であった。

33 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/14(火) 20:20:56 ID:cee3+gQZ0
夜空を見上げると、本当に真っ暗で星が良く見えた。
あの星のどれか1つに自分の故郷があるのではないか。
そんな思いがするくらい、自分の世界が遠く感じる。
「世界を救って下さい・・・か」
昨日までそんなことを言われたこともなければ、考えたこともなかった。
真理奈の世界も色んな危機に瀕していると言えるだろう。
しかし、その危機を救おうとしているのは全人類のごく一部の人である。
ほとんどの人はその日を精一杯生きるのみである。
真理奈とてその中の1人である。
こっちの世界の危機がどんなものか知らないが、本当にそんな事ができるのだろうか。
ヒト1人の力なんてたいしたものではない事を真理奈はよく知っている。
漫画のように何か秘めた力でもあれば可能なのかもしれないが、そんな力を持っている訳ではない。
それに「世界を救う」と言われても漠然としすぎているし、事が大きすぎてさっぱり実感が沸かない。
「これからどうなっちゃうんだろ・・・」
自分がルビスに選ばれた訳や、この世界の事、それに元の世界の事・・・
色々と知りたいことはあるが、今日のところは寝るしかなさそうだ。
使わない頭で考えすぎて疲れてしまった。
(何か知らないけどやるしかない、か。自分の世界に帰りたいしね)
ベッドに戻り、スライムを起こさないように手に乗せる。
スライムが息をする度にその体が膨らみ、しぼむ。それの繰り返し。
その緩やかなリズムによって、真理奈の心はまどろみの中に誘われる。
「おやす・・み・・・」
そんな初夜だった。

34 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 21:08:56 ID:bcu2zF/a0
おおおスゲー
大作の予感、GJ!

35 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 21:54:16 ID:bvx1hHwUO
まってくれ、確かに乙だが・・・・・・スレタイは無視ですかそうですかorz

36 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 21:58:24 ID:8/BMu0/G0
スレの空気が読めない阿呆をこっちに押し付けられても困る

37 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 22:19:45 ID:BdP/FEHDO
>>35-36
けど今までにもスレタイ通りじゃないのもあるじゃん。
それに最近職人さん来ないしね

というわけで暇さん乙
おぅ〜りゃ〜ってモンスターに蹴り入れる描写が好き

38 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/14(火) 22:29:33 ID:dozkmrKs0
なぜこのスレに誘導されるのか。

39 :名無しでGO!:2006/03/14(火) 22:54:25 ID:BJxUJLbA0
>>暇つぶし氏

続きを早く読ませてくれ!

40 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/15(水) 01:24:30 ID:TN4YFjlZO
>>35-36
批判はごもっともです
とりあえず前スレを全部読んだので、このスレに投下する際に書き換えようとも思いました
が、良い展開が思い付かず断念してしまいました…
>>38
物語の設定がこのスレに似ているから、ということで誘導されました
けれど、本当にこのスレに投下していいのかどうか皆さんの意見を聞く為にも区切りのいい所まで張りました
もし、やめた方がいいという意見が多く出るならここでやめます


41 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 03:06:49 ID:G5Gk2QUd0
続けて欲しいなぁ〜。最初は、ん?と思ったけど面白かった!
でもこのままいくと確かにスレタイは無視されていきそうだ。
一読者としてはもはやスレタイの趣旨よりおもしろければいいってなってしまう…

42 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/03/15(水) 12:29:07 ID:hTMEza+i0
第三部途中、アプしました
長くなったので直接投下できません、ごめん
続きはしばらくかかります。

PC http://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date10926.txt
携帯 http://fileseek.net/proxy.html?http://sakuratan.ddo.jp/uploader/source/date10926.txt

43 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 16:42:02 ID:CyCWf5sb0
おお、伸びてると思ったらw
がんばれー
FF12で忙しいかもしれんがw

44 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 16:46:06 ID:RJSBEax10
>>20-33
長杉で読む気しないヴァー

とりあえず、妹が俺の棒を舐めまわs まで読んだ。

45 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 18:10:14 ID:4RB90cVb0
このスレもう終わってないか?

46 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 18:17:28 ID:/oVGkO+E0
何を今更

47 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 19:07:36 ID:uyo+73ggO
荒れる悪寒・・・。
タカハシ氏おつかれー!

48 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 19:14:28 ID:dSVl5Ybr0
突然DQの世界に飛ばされるという意味では、ここで続けてもいいのでは?

スレタイにこだわるなら新しいスレを作ってそこで続けるしかないが、
そこで書く職人が1人しかいない状況なら、わざわざスレを立てるよりここで続けたほうが、効率がいいと思う。


49 :名無しでGO!:2006/03/15(水) 19:36:02 ID:NlqaL9qA0
漏れもそう思う
続きを頼む>>暇潰し氏

50 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/15(水) 22:14:23 ID:cmt/x5WU0
>>45
誰もが思っている事だろ・・・

51 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:01:13 ID:wohqqkN30
ソフィアが死んだ。
たった、それだけ。たったそれだけの事で、どうしてこんなにも俺は虚ろなんだろう。
全身の感覚がソフィアの後を追ってしまい、視覚も聴覚も正常に動作していない。
歪む視界、遠い音。自分が今何処に居るのかも解らない。
ただそれでも、どうやら眼の前にはベッドがあって、そこにソフィアが横になっているらしい、という事だけは解る。解っている気がする。だから動かない。此処から。

次に気がついたのは、隣で擬似蘇生(ザオラル)を唱えるミネアの姿だった。
彼女がいつ入ってきたのか。解らない。扉が開く音がしたとしても聞こえなければ意味も無い。
視界にいつ入ってきたのか。覚えていない。気付いたら、もう呪文を唱えていた。
小さく息を吐く。結果は…同じ。

ミネアとクリフトが何度呪文を唱えても、ソフィアは蘇らなかった。
どうして。いや、疑問を挟む余地など無い。死者は、蘇らない。
そんなものは当たり前の事だ。そう、当たり前の…。

52 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:02:10 ID:wohqqkN30
何処かで感覚が麻痺していたのだろうか。
そうなのかもしれない。仲間達は皆強かったから、死ぬなんて事を考えられなかった。
いや…。
考えようとしてこなかったのか。

喪って、初めて気付いてしまった。
俺は、ソフィアが好きだった。大好きだった。どうしようもなく――。
どうして、どうして気付いてしまったんだ。気付きさえしなければ、こんなにならずに済んだのに。
失くしてから気付くなんて…遅すぎるじゃないか…。

ずっと続くような気がしていた。
だから、きちんと考えてこなかった。自分の心を。
その挙句が、これか――。

白く透き通る、綺麗な少女の顔にそっと手を当てる。
その冷たさに、言いようの無い悲しみを感じ。
いつかの誓いは破られる。
ぽろりと、一粒、二粒。涙が零れていった。

53 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:03:06 ID:wohqqkN30



ライアンが深いため息をつく。

「困りましたな…」

「ええ、そうですね…」

相槌を打つのはトルネコだ。
宿屋の食卓には今は二人しかいない。
つい、思い返してしまう。
10人が円卓を囲み、賑やかに行われた食事を。
明るく、楽しく、時に喧騒にもなったけれど。あれは、楽しかったのだ。

だというのに。
アリーナが、マーニャが傷つき、そしてソフィアが斃れ――。

「もう…あの頃のような時間は過ごせないのでしょうか」

「そんな事は…だが、皆が立ち直らない事には…」

そこで二人は嘆息する。
何も考えていない訳では無い。彼女たちは、恐らく再び立ち上がる。
だが…。

「ネネを喪ったら、私は…考えたくもないですよ…」

悲しげなトルネコの言葉に、ライアンもまた、瞑目した。




54 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:03:44 ID:wohqqkN30
木に拳を打ちつける音。
アリーナ。彼女の、慟哭の音。

「私は…私は何もできず…あの男が!デスピサロがいたのに!あんな…」

ドン。
男の胸に拳を打ちつける音。
ソロ。彼は、彼女の慟哭を受け止める。

「あんなに力の差があるなんて…私じゃ…」

「…諦めるのか?」

「……」

「俺は諦めない。ヤツは間違っている。
生あるものはいずれ滅びる。それを恐れて、人の全てを殺すなら…人も魔も、動物も、虫も、自然すらも破壊しなければならない。
大切な人を奪うのは、何も人間だけじゃないのだから…ヤツは、臆病なだけだ」

「……」

「アリーナ。君は、あんな男に負けるのか?負けたままで…良いのか」

「良いわけがないわ!許さない…ソフィアを殺したあいつを、許せるもんか!」

ぐっと、拳を強く握る。
だが、すぐにはっとしたような表情で、アリーナはソロを見上げた。そうして、自分の口を抑える。

55 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:04:14 ID:wohqqkN30
「…ごめんなさい」

「いや、構わない」

「ソロは…私、バカな事を訊いてしまうけど…悲しく、ないの…?」

思わず、そう問いかけてしまっていた。
バカな事だ。バカな事。しかし、つい、とはいえそう訊ねてしまう程に――ソロは、静かに立っていたから。

「…俺は、二度目だから。前よりは、慣れたんだと思う」

視線を外して、夜空を見上げる。
彼女は――自分の目の前で、妹の姿のまま息絶えて逝った彼女は、今の俺を見て…どう、思うのだろう。
立派だと言ってくれるだろうか。それとも――。

「悲しかったら…泣いても、良いと思う」

視線を戻す。
眼の前の少女は小柄だから、見下ろしがちになりがちだ。
対して、少女の方は男を上目遣いに見上げる。
その、強い意志の宿った瞳で。既にそこに、慟哭の色は無い。

「アリーナ…。ありがとう。だけど、俺は大丈夫だから。泣くとしても…それは、全てが終ってからにしたい。
そう、約束したからな…」

「…解った。その時は今度は私が胸を貸してあげるわね」

どん、と拳で自分の胸を叩いてみせる。
ソロは微苦笑を浮かべながらそれにも頷いた。




56 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:06:15 ID:wohqqkN30
老眼鏡をかけた老人が、一心不乱に書物を漁っている。
蝋燭の小さな光源のみに頼っているせいか、時折こめかみの辺りを抑え疲れをほぐしていた。
ゆらりと小さく焔が揺れる。気配を感じ、老人が顔をあげる。

「なんじゃ、お主か」

「なんじゃとはご挨拶ね、お爺ちゃん」

「ふん。察しはついておったしな。
お主は…思ったより大丈夫そうじゃな」

「あったりまえじゃない。あの子達みたいに若くないもの」

小さく気炎を吐く女に、動かす手を休めずに老人はそうかと小さく呟いた。
この女とも長い付き合いだ。彼女が、人一倍責任を感じているであろう事はすぐに解った。
あの場で最年長の自分が妹分、弟分を護れなかった。
誰より自分を責め――それを億尾にも出さない。悟らせない。それが彼女の矜持。
ならば、それを尊重しようと、この人生の先達はそう思う。

訪ねてきたのは彼女だ。だから、彼女が喋るのを待つ。

57 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:07:32 ID:wohqqkN30

「…あいつ。最上級の呪文を使ってきたわ」

「……なるほど、それで訊きにきたのか。
が、残念じゃがわしは氷結系の最上級、それも知識としてしか知らぬよ」

「それでも良いわ」

「…?お主では扱えまい。今更、氷結の基礎から修練するのも――まあ、お主なら可能やもしれんが…」

「勘違いしないで。…ヒントさえ掴めれば、後は私が何とかしてみせる。
それに、年寄りの冷や水はお爺ちゃんの十八番でしょ?それを奪うようなマネはしないわよ」

「ふ…凄い自信じゃな。じゃが…嫌いでは無いな。若者の、そういう所は」

負けていられないな。そう思う。
その、彼女なりの発破に苦笑し、己の知識を今一度、実践へ移す時が来た事を知る。

「良かろう。じゃがその前に、少し手伝ってくれ」

「…何を?」

「探しものじゃよ」




58 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:08:11 ID:wohqqkN30
何もかもが遠い世界の出来事のようだった。
傷つき斃れたアリーナも、マーニャも、それぞれが再び立ち上がり、歩いていこうとしている中で。
彼女を喪った俺は独り、深い闇の中に居た。

今日もまた、ミネアが部屋を訪れ、呪文を唱えている。
そうして、いつものように効果は現れず、ソフィアが目覚める事は無い。
いつもなら、小さくため息を吐いた後、小さな声で失礼しますと残し部屋を後にするのだが、今日は少し違っていた。

「…そろそろ、進みませんか?」

そう、聞こえた。
だが、俺にはその言葉の意味が解らない。
勇者である、ソフィアが死んだ今、何処に進めと言う。

「勇者の光は、ソロさんの中にも宿っています。
デスピサロを斃さねば、人は皆…」

バカな。ソロに、ソフィアの代わりをしろと?

「違います!そういう事では…」

「そういう事じゃないか!お為ごかしは止せよ!
ソフィアが…ソフィアが死んで…ソフィアがいないのに、見知らぬ他人を救ってなんになる!?
他の誰が死んだって構うもんか!ソフィアが生きてれば良かったんだ!!」

「――それじゃ、デスピサロと同じじゃない!」

バン、と扉が開け放たれる。
そこにはアリーナ、そしてソロの姿。

59 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:08:47 ID:wohqqkN30
「自分たちさえ良ければ良い、本当にそれで良いの!?」

「違う!だけど…自分たちが無いのに、他人だけがある、自分にはその良さが無いのに、他人のそれを守る為に戦う、そんなの…辛いじゃないか…」

「そうしている人がいるの。――ソフィアがいなくなって悲しいのは貴方だけじゃないんだから!」

そうなのだとしても。そうなのだとしても――立ち上がれないんだ。
これからどうしたら良いのか、もう…今迄立っていた場所が崩れてしまったら、そこにはもう立っていられない、空中に立つ事なんて出来はしない…。
右も左も解らない中で、最初からずっと一緒に居てくれた――彼女の上に俺は立っていた、彼女が居たから立っていられた。

俺にはデスピサロの気持ちが解る。
この世界に来る前の俺にはきっと解らなかった。だって、こんなにも。他人を好きになった事なんて、無かったから。
彼女さえ、居てくれれば。
そう思える存在がもし大勢の人間に追われていたら?
説得する。説得…バカな。それで解決する訳も無い。その努力をしたとしても、やがて諦め。
そして、隠すだろう。
愛する者の行き着く先は籠の鳥。窓から見える外には決して、踏み出せない。
籠の外は、鳥を狙う害虫が多過ぎるから。
自由を与えたい。だがそれは余りに、彼女にも己にとってもリスクが大き過ぎる。あまりにも。
寂しそうに外界を見る愛しい人。何故だ。どうして彼女がこんな目に合わねばならぬ。
自分を虐げる者の死すら哀しむ、聖なる存在が――な、ぜ、だ。

悪いのは彼女か?

――――――否。

悪いのは――――――。ダレダ。

60 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:09:27 ID:wohqqkN30
…突然、くしゃくしゃと、髪の毛をかき回された。
深い心の奥底に沈み、嵌りそうになっていた俺を引き上げる。
その何処か乱暴で、だがいつもより優しげな手は、マーニャのものだ。

「ミネア、まだ希望はあるんでしょう?」

「姉さん…希望、などと言えるのか解らないけど、私にはまだ、ソフィアさんの中に光が見えるわ。
とても弱々しくなってしまったけれど…だからこそ、私も擬似蘇生を続けてる訳だし…」

「よし、じゃあこれを使って取りに行きましょう」

どすんと大きな音と共に、テーブルの上に置かれるのは大きな壷だった。





















61 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:10:07 ID:wohqqkN30
「さあ、泣け!泣いてルビーの涙を流すんだ!」

ゴッ、ガンッ、バチン。

「強情なヤツめ…これでもか!」

ドンッ、ギリギリ、ぐしゃり。

「おいおい…やり過ぎじゃねえのか?」

「あーあ…死んだら元も子もねーってのに」

「へへ、別に良いだろ。あれだけやっても一粒たりともルビーを流さねえんだから…よ!」

「まあな」

「人間様に楯突くこいつが悪いわな」

「ヒヒヒ、そういう事そういう事」

「……ロ……さ……ま……」

「ん?なんだ、まだ生きてるのか?」

「ピ……サロ……さま……きて……くださったのです……ね……」

現れたのは、魔王。その光景に、愕然とする。
限りなく完璧に強い力を持った存在が見せる狼狽。そして、絶望。

62 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:11:09 ID:wohqqkN30
「貴様ら…ロザリーに…ロザリーに何をした…」

「あん?誰だおめえ、いつのまに…何って…なぁ?」

「へへ…」

彼らには解らない。
眼の前に、火山口がぽっかりと口を開き、中から今にもマグマが溢れ出さんとしている事が。

「ナニ、に決まってるじゃねーか…よ!」

がっと、ロザリーの頭が蹴り飛ばされる。

ぶつん。

そうして、何かが切れた。

「消えろォォォォォォォォォォォ!!!下衆ドモォォォォォォァァァァァァァァ!!!!!」

この世の、ありとあらゆる者を超える魔力。
それが、破壊の力へと姿を変える。
極大爆裂呪文(イオナズン)――呪文の中で、一つの頂点として評される周囲を破壊し尽す術。

辺りには何一つ、残っていなかった。
草も、樹も、動物も、虫も…人も。
魔王によってそこに存在するを許されたのは、唯、エルフの娘のみだった。

63 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:12:53 ID:wohqqkN30
「ロザリー…ロザリー…?聴こえるか?」

「はい…聴こえます…やさしい…こ…え…」

「待っていろ、すぐに治療する…」

魔王の、先ほど破壊の術を行使した掌が優しく光る。周囲を打ち壊した魔力が、信じられないほどに暖かく光る。
完全治癒(ベホマ)の輝きが。

しかし。
その光は届かない。もう、遅過ぎたから。間に合わなかった、から。

「ピサロ…さま…わたしの…最後の…わが、まま、を…き…いて…くださ…い…」

「最後…?馬鹿なことを言うな…」

「どう、か…野望を…捨て…て…わた…しと…ふたりきり…で…ずっと――――――――……………………」

「ロ…ロザリー…!」

ふっと。
かろうじて、燃えていた命の灯火が、吹き消され。

64 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:14:31 ID:wohqqkN30














―――――――――無音。
全ての音が死滅した、世界。

















65 :エレジー ◆gYINaOL2aE :2006/03/16(木) 03:17:16 ID:wohqqkN30
「………………」

絶望に満ちた世界で魔王は小さく呟いた。
最後の約束は――生まれ変わった先で果たそう、と。
それが最後の言葉。
エルフの娘が愛した魔族の男としての、最後の、言葉。

「許さん……許さんぞ……人間、いや……。
例えこの身がどうなろうとも、必ず……根絶やしにしてくれる……!」

魔王の視界が真紅に染まる。
彼の瞳から溢れる血涙の為に。
爆裂の余波でじりじりと燃え広がる紅の焔の為に。

何時の世も、人は、自らの手で滅びの運命を選ぶのだ。
何時の世も。何処の世も。



HP:105/105
MP:48/48
Eドラゴンキラー Eみかわしの服 Eパンツ
戦闘:物理障壁,攻勢力向上,治癒,上位治癒
通常:治癒,上位治癒

66 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 03:18:39 ID:GvzQ/LRY0
4の人キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!


67 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 06:30:17 ID:VJ48D7pQO
うおおおおおお!!乙!やっぱりすげえぇぇぇ!

68 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 07:36:02 ID:grC1zHWQ0
悲しい物語…破滅的な感じがするね。


69 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 09:08:01 ID:srS1CeRU0
4の人キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!

70 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 09:16:43 ID:deHEntTs0
すげぇよ!すげぇよ!視界が潤んでかなわん!読ませてくれてありがとう!
マトモな言葉がおもいつかねぇぇぇ!!!

71 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 10:46:42 ID:fDXG65kW0
このタイミングで投下なんて卑怯すぎる!
涙でキーが打てn

72 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 10:59:51 ID:2jVdf1E1O
キタY⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!
しかし混沌とした内容になりそうだな。次回にも期待乙!

73 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 14:19:50 ID:JwKa09zt0
あれ、コテ変わってねえ・・・?

74 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 17:40:18 ID:fDXG65kW0
ところで前スレに投下された作品が書庫に保存される前に前すれが落ちちゃったんだがどうするよ?

75 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 18:16:24 ID:MQNyhPqSO
書庫さんが回復して戻ってくれたら、DATか書き出したHTMLをアップしてあげればいいんじゃないかな
たいていの2chブラウザならHTML書き出し出来るからね

76 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 18:17:57 ID:MQNyhPqSO
ごめん
×書庫さん
○書記さん

77 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 18:23:54 ID:F0TEHu2nP
一応保管しました。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら五泊目
http://drain.qp.land.to/bbs/log/test/read.cgi/ifdq/1134827399/

78 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 18:52:01 ID:VJ48D7pQO
乙そして保守。
ああ心配だぜ・・・、落ちない・・・よな?

79 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 21:48:43 ID:srS1CeRU0
>>73
4の人の名前欄はコテじゃなくて章タイトルだから
(コテがないから通称「4の人」)

>>77
乙&サンクス


しばらくは1日2・3回は保守したほうがいいのかなあ

80 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 21:58:12 ID:cfNn7oVt0
自治スレによると、8時間レスのなかったスレがdat落ちしたそうだ。
圧縮ペースが想像以上にきつくなっているはず。
スレを守るためには6時間に一度保守しとくのがいいんじゃないかな。

81 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/16(木) 22:59:17 ID:fDXG65kW0
6時間に一度って結構ハイペースだな

>>77
乙ー

82 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 01:47:16 ID:Lw/lx+sH0
4の人乙です。すげー面白かった。

>8時間レスのなかったスレがdat落ち
例の12のせいかなあ。スレ乱立しすぎだし。

83 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 04:09:07 ID:jincv4G20
4の人乙
相変わらず素晴らしい出来です

84 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 08:31:22 ID:7uEEWpvL0
83から4時間経過したんで保守っとく

85 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 10:47:10 ID:VsT2NmH/0
書記は死んだのか。

86 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 12:41:21 ID:2d/BgRTt0
保守

87 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 16:12:08 ID:OAkNVV370
4の人早く完結してくれないかな。
それだけが楽しみでコのスレ見に来てるし。

88 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 16:18:49 ID:mJFm7z2C0
他の職人はイラネって言っているように聞こえるな・・・

89 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 16:29:20 ID:OAkNVV370
>>88
別にいらんとは言ってないよ。
ただ、一回でやめる奴とかばっかりだし、期待するのがバカみたいじゃん。
やめるのは自由とはいえ、もうちょっと考えろよと思う。
 
一回で続かなくなるなら最初から書くなよと言いたい。

90 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 16:35:49 ID:mJFm7z2C0
え〜と、とりあえず氏ね

91 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 16:40:20 ID:VsT2NmH/0
>>88
マジレスすると他の職人はいらない。

92 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 17:01:34 ID:7uEEWpvL0
>>87
マジレスすると、投下するのは数分で終わるけど
書き上げるまでにはお前が考えてる以上に集中力も根気も必要だし
とにかく時間がかかるんだよ

93 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 17:15:19 ID:OAkNVV370
>>92
そんな事は一回投下する前に分かる事だろ?
続かないと思ったら、一回で終わるような読み切りにするとか方法はあるだろ。
出だしだけ壮大っぽくてそのまま放置ってどうなんだよ?

94 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 18:14:19 ID:mJFm7z2C0
>>93
こいつ最高にアホwwwww
おまいみたいに暇人じゃないんだよ、忙しくてほんとにたまにしか時間がないんだよ。

95 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 18:14:51 ID:eGjcggSe0
>>93
お手本を見せていただきたい。

96 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 18:23:13 ID:/JBKq3jkO
頑張るから、あんまり荒れないで…

97 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 18:24:40 ID:Zw6FCvr80
4の人が面白いのは認めるが、タカハシやレッドマン・ローディ・オルテガ・クロベなど
個性があって読み応えがあるけどな。
個人的な意見としては色んな作品を楽しむ度量も必要なんじゃない?

それが出来ないのなら最悪板でも行ってコテ叩きでもしておけ。

98 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 18:49:56 ID:pubg/N1SO
4の人が面白いのは単純にストーリーが出来上がってるからだろ。もちろん書き方が上手いというのもあるけど。
オリジナルで書くってのは大変なんだよ。

99 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 19:52:56 ID:arBPPiXJO
また昔の流れに戻るのね
お馬鹿な人たちが職人をないがしろにしたせいで、超過疎になった昔に

職人さんたち
このスレの奴は、こんなお口だけの乞食ばかりだけど許してね
頭が悪いお子様がギャーギャー騒いでるだけだと思って、あんまり気にしないで
皆さんの心が海のように広いことをお祈りするばかりです

100 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 22:14:48 ID:2d/BgRTt0
保守

101 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/03/17(金) 22:29:18 ID:FftZuvUbO
私の作品がつまらないと思う住人の方もいるかもしれないが、長い目で見守って頂きたい。


私だけではなく、他の職人さん達もそれなりの事情があって書けない時もあるかもしれないが、その点は理解してください。


102 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 23:18:57 ID:zdfF7sNrO
ポジティブにいこうぜポジティブに
誰でも最初から上手い訳じゃないんだから
量と研究積み重ねるのが大事

103 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/18(土) 00:04:04 ID:JEIXCkXn0
>>41>>48>>49
ありがとうございます

スレタイに合う内容にできなかった自分を情けなく思います
けれど、1度初めてしまった物語。続きは書いていきたいです
わがままにお付き合いお願いします

>>33からの続きです

104 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/18(土) 00:06:04 ID:JEIXCkXn0
〜Four Nights+1〜
清々しい朝、そんなものはこの人には無い。
真理奈はベッドから落ちそうになりながら寝ている。
「ピーピー!!」
スライムが真理奈の胸に潰されて横長になっていて、苦しそうだ。
「おい!いつまで寝てるんだ!」ユサユサされる。
「ん〜?」
「今から王様が会ってくれるんだとよ!」ユサユサ
「んん〜・・・王様って誰よ・・・後にしてくんない?」
「できるか!起きろ!」ガクガクガクガク
「わ、分かった分かった!分かったからぁ・・・」
ようやく目を開けると、どこかで見た青年の顔があった。
「やっと起きたか。着替えたらすぐ行くぞ!早くしろよ」
「え?!・・・・・・あっ、そっか。ここ、違うんだった」
頭が少しずつ働き出す。
体を起こすと、スライムがペチャンコに潰れていた。
青年は部屋の片隅に置いてある椅子に座る。
真理奈は寝起きのダルさの中で、昨日の事を思い出す。
ルビスからの電話、違う世界への召喚、そして強力なモンスター・・・
(いつもじゃ有り得ない事の連続なのに、意外と混乱とかしないんだ・・・)
他人事のように考える。
それはまだこの世界に慣れていないからかもしれない。


105 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/18(土) 00:09:58 ID:lQpXb20X0
「おい!早くしろよ!」
「分かったってば!うるさいなぁ・・・」
真理奈は壁にかけてある制服のスカートを取る。
昨日の戦闘で破れたブラウスは宿屋の女将さんが縫ってくれるらしい。
血は洗って落ちるんだろうか・・・
そういえばあの時のアレは何だったんだろうか。
少女の声と共に感じた温かさ、そして痛みの軽減。
服を脱ぎ、グリズリーに裂かれた部分を確認すると傷は跡形も残っていなかった。
(ホント夢みたい。夢の中の夢なんじゃないかなぁ・・・それか漫画の世界かな)
誰もが一度は夢見るだろう。突然不思議な世界に迷い込むような夢を・・・
スカートを履き、上はとりあえずカバンの中にあったTシャツを着る。
「よし、オッケー」
「行くぞ」青年はぶっきらぼうに言う。
「そういえばさ〜先輩とか後輩ちゃんは大丈夫なの?」
「・・・?あぁ、兵士の隊長か。命に別状はないらしい」
「良かった〜心配だったんだよね」
隊長はグリズリーに腹を貫かれ、その後輩は強烈な蹴りを食らったのだ。
青年によれば、隊長達も真理奈を治してくれたあの少女が治療してくれた、とのこと。
もっとも、真理奈は大勝利に沸く兵士達に囲まれてそれどころではなかったが。
(後でお見舞い行かなきゃな)
宿屋の外に出ると今日も良い天気だった。雲一つ無く、どこまでも高い空―――
「ん〜!!気持ちイイ〜」
腕を伸ばし、思いっきり伸びをする。新鮮な空気が体中を満たす。
「そういえば」
「んー?」
「お前胸小さいんだな」
「――――!!!」ドギャーン!!
脇腹にめり込む見事な回し蹴りが炸裂した。
青年・・・それは禁句ですよ・・・


106 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/18(土) 00:19:49 ID:lQpXb20X0
「昨日はよく休まれたかな?」「はあ・・・」
嫌そうに真理奈は答える。ここはお城の玉座の間。
王様・大臣・兵士諸々、勢ぞろいしている。
(偉い人の話はつまんないって決まってるんだよねぇ・・・)
赤い絨毯の上、王様の正面に立ち、話を聞かされる。
青年は真理奈をここに案内した後、どこかに消えてしまった。
痛む脇腹をかばいながら・・・
「私はレキウスという。モンスターからアリアハンを守ってくれたそうだな。礼を言うぞ。
 そなたの名前を聞かせてもらえるかな?」
「真理奈。能登真理奈です」
「ロトとな!」「ロト・・・」「ロトだ!!」ざわざわ
「???」ホールがざわつくが、真理奈には何故か分からない。
「なるほど・・・してアリアハンには何用で来られたのじゃ?」
「ん〜、アリアハンに用って言うか、この世界に用があるみたい」
「世界・・・じゃと?」
「何かルビスって人にこの世界を救えって言われて―――」
「ルビス様とな!」「ルビス様・・・」「ルビス様!!」ざわざわ
「なるほど・・・ロトにルビス様か。それならそなたの活躍にも納得がいく
 そなたは真に世界の救世主なのかもしれんな・・・」
王様は、その通りであって欲しいという願いを込めているようだった。
「今日そなたを呼んだのは他でもない。力を貸してもらいたいのじゃ。
 昨日の通り、最近になってモンスターの動きが活発になっておるのだが・・・」
少しのためらいの後、決心をして告げる。
「実は魔王が復活したという情報が入っておるのだ」ざわざわ・・・
3度のざわつき。しかし、前の2回とは雰囲気が違う。
「もう既にアッサラームとバハラタの町は壊滅したそうじゃ・・・」
それは心の底からの恐怖。


107 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/03/18(土) 00:20:45 ID:lQpXb20X0
「そのような時に、そなたのような者が現れたのはまさにルビス様の導きであろう。
 私は運命というものを感じずにはいられない」
「しかし我々も、もう以前のように勇者に頼りきりではない。全ての者が力を合わせ、
 モンスターに、そして魔王に立ち向かわなくてはならないと考えたのじゃ」
「全ての者とは、アリアハンの全国民という意味ではない。世界中の人々、という意味じゃ。
 つまり我々は世界中の都市との連合結成を計画中でな、もう既に使節の第一陣がサマンオサに向けて出発しておる。」
「そこでじゃ、是非ともそなたに連合大使として世界を回っていただきたいのだが、どうかな?」
「魔王・・・連合大使・・・」
「もちろん一人でとは言わない。同行してくれる仲間もおるのじゃ。ほれ」
王様の合図で後ろを見ると、青年に連れられたおじいちゃんと少女が入ってくるところだった。
「レキウスちゃ〜ん!しっかり王様やってる〜?」
「うるさい!レキウス王と呼ばんか、レキウス王と」呆れたように王様が言う。
「あ!昨日の!」
3人とはもちろん昨日真理奈を助けた青年・少女・おじいちゃんである。
「ぶい〜」おじいちゃんだけテンション高めにVサインをしている。
「あはっ!イエ〜イ!」真理奈も楽しげにそれに応じる。
「んんっ!・・・真理奈よ、この3人と共に旅に出てほしい。良いかな?」
真理奈は王様の方に振り返りながら答えた。
「・・・良いも何も、私はこの世界を救わなきゃ帰れないんだから。何でもやるわ!」
「そうか・・・ありがとう。ではこれを預けよう」
王様は大臣から袋を受け取り、中身を取り出す。色鮮やかな丸い玉が5つ。
「これは聖なるオーブじゃ。このオーブを連合の証としたいと思っている」
王様はオーブをしまって、真理奈の所まで歩き、袋を手渡す。
「真理奈・・・よろしく頼んだぞ。私はもう悲しい犠牲を出したくはないのだ」
その声は、真理奈だけに聞こえるくらいの、微かな希望にすがるようなものだった。
「・・・りょ〜かい!よーし!皆で力を合わせて魔王を倒すぞ〜!!」「おぉ〜!!」
真理奈の力強い言葉に、ホールにいる全ての人が応える。
兵士達のトランペットが高らかにメロディを奏でた。
♪♪♪タ〜ン タタタタッタッタ〜ン―――


108 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 01:30:09 ID:zN1Vzf9HO
>101
悲しいかなあなたの作品は面白い訳だが

109 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 01:42:58 ID:yRpMcoKS0
>>97
激しく同意。
それぞれ違った面白さがあって楽しめている。
 
>>89
一回でやめるのは・・・という所は言ってる事も分からなくはない。
だが、職人さん達は金をもらって書いている訳ではないし、こっちも金を払って
読んでいる訳でもない。
職人さん達に続ける義務もないし、こっちに請求する権利もないと言う事だ。
それでも理解できなければ2度とこのスレに来るな。

110 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 08:22:07 ID:rxY9dSXi0
暇潰し乙。なんかすげぇ和む物があるな…
スレが嫌な雰囲気だがこの調子でがんばってくれ。

>>101
最初は一発屋で終わると思っていたが面白おかしく読ませて貰っているよ。
これからもドンドン書いてほしい。

111 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 11:04:03 ID:lNmXNbqR0
なんか勘違いしてる人がいるね。
ここで連載してる人はみんなすごいんだよ、文も想像力も・・・
こいつツマンネwwwwwとか言ってる奴に限って自分がすごい文かけるとか
過信しちゃってるんだよね。

112 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 15:29:48 ID:m+cqKeeT0
作品に文句を言っていいと言うつもりもないけどそれは置いといて
読み手と書き手を同じ土俵に上げて話をするのはなんかおかしいと思う
おすぎは最高の映画監督になれるのか
ピーコの服装は素晴らしいのか

113 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 15:42:23 ID:dKXgZEuCO
もーいーって、いい加減スレ違いじゃねぇの?
ここは書き手が小説を自由に晒す場所。読み手が自由に読める場所。
好きなだけ読みたい人のを読めばいいし、それが無いんなら来なければいいじゃんか。
逆もまた然り、書きたいだけ好きなように書かせてあげなよ。
てことで、職人さんドゾー。

114 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 15:46:02 ID:u6ddmG8U0
作品が投下されても何の反応もせず住人どうし煽りあい続けてるスレに未来はないね。

115 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 15:54:34 ID:j950in6U0
初代からずっとだよ。

116 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 16:12:04 ID:b7mtDkR+O
いまさらだね

117 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 17:25:59 ID:dg7bv3620
この殺伐とした流れを断ち切るかのように職人さん登場↓

118 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/03/18(土) 18:40:42 ID:63NgwOkHO
「ここで期待に答える事が出来たなら…」

俺は悩んでいた
目の前にそれは確かに、ある
だが果たしてこのままでいいものか…

「お前はそれで良いのか?」

厳しい表情のテリー

「あなたはそれでも良いの?」

メイも続き、同じ言葉を投げかけてくる

やはりこのままじゃいけない
これじゃただの箇条書き─

意を決し、俺は両手を地面につき頭を下げ、前のレスの人へ言った

「すまん、まだ推敲中なんだ」
「期待に答えられなくて、すまない…」

゙それで良い、よく言いましたな゙
トルネコも嬉しそうだ

かくして俺の投下は、前の人に許しを得られたかはわからないが、明日か明後日になる事が決まった
短編 完

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