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ぜろちゃんねるプラス
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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら六泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/03/11(土) 21:30:54 ID:2kKEOzWo0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです。
小説形式、レポ形式、一言何でも歓迎です。
・スレの性質上1000になる前に500KB制限で落ちやすいので
スレ容量が470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
(トリップは名前欄に「#(半角シャープ)+半角8文字」で出ます)
・同じスレ内で続きをアップする場合は
アンカー(「>>(半角右カッコ2つ)+半角数字(前回レスしたスレ番号)」)
をつけるとより読みやすくなります
前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら五泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134827399/
まとめサイト
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」冒険の書庫
http://www.geocities.jp/if_dq/
479 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/26(水) 09:53:38 ID:BZ0IFYhT0
本人なりの事情があるんだろ。俺達にとやかと言うことはできない。
480 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/26(水) 09:59:45 ID:5zoXgKtV0
× とやかと
○ とやかく
481 :
◆vNFYAR5c0g
:2006/04/26(水) 11:40:58 ID:wY0eq9qC0
リーザス村 11:52
扉を開ける音とともにサイモンは自分の部屋に入った。
ふと前を見ると筋肉が盛り上がり、身長は・・・・・サイモンよりは低い男
が彼のベットに横たわっていた。
おい!」
っとサイモンは体格の良い男をベットから蹴り落とした。それでその男
はようやく目が覚めたようで起きあがると元気よく。
「お帰りなさいサイモンさん」
「人の家に無断で入り込むとは良い度胸してるじゃねぇか。アベル」
アベルと呼ばれた男はサイモンの言葉を受け流し論点をすり替えた
「村を出るんですね?」
「何で知ってる?」
「ゼシカお嬢様の屋敷での会話を盗み聞きさせてもらいました。屋根で」
「なるほど・・・・俺の感動の別れを盗み聞き・・・死にたいようだな」
サイモンは剣を引き抜く体制をとった。しかし肝心のアベルはそんなことは
気にもとめておらず。ニヤニヤと笑いながら話を続けた。
サイモン アベル
Lv30 Lv10
HP200/200 HP30/30
MP300/300 MP0/0
武器:鋼の剣 鉄の胸当て 武器:銅の剣
呪文:ライデイン マホステ 呪文:
特技:隼切り 特技:正拳突き
482 :
◆vNFYAR5c0g
:2006/04/26(水) 11:42:37 ID:wY0eq9qC0
ずれたofz
サイモン アベル
Lv30 LV10
HP200/200 HP30/30
MP300/300 MP0/0
武器:鋼の剣 鉄の胸当て 武器:銅の剣
呪文:ライデイン マホステ 呪文:
特技:隼切り 特技:正拳突き
483 :
◆vNFYAR5c0g
:2006/04/26(水) 11:44:32 ID:wY0eq9qC0
またずれたofzスレ汚しスマン
アベル
LV10
HP30/30
MP0/0
武器:銅の剣
呪文:
特技:正拳突き
484 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/26(水) 17:28:31 ID:HQq5XQow0
内容短すwwww
三人称は苦手なようですな。
485 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/27(木) 14:49:20 ID:YnI7YmDrO
486 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:02:25 ID:bHmsBRUz0
>>392
から続き
●慣れない男と小さな事件
「おかえりなさい、タカハシさん」
診療室へ戻った俺をクリーニが迎えてくれた
「あ、そういえばここを宿屋変わりに使ってしまって…」
「とんでもない
実はもともと私は宿屋を営んでいまして、実際ここは宿屋だったんです
私が医者を始めてしまったせいで、この町からは宿屋が無くなってしまいました
旅人は皆、民家へお金を払って泊めてもらうんです
そんな環境ですし、構いませんよ」
「そうでしたか」
「お代はテリーさんにいただいてますから、どうか気にせず」
「…遠慮なく使わさせていただきます」
「私は地下の自分の部屋にいますから、何かあったらすぐに呼んでください」
クリーニが地下へ降りていく
俺は背負っていた食糧袋を床へ起き、メイの寝ているベッドの側にある椅子へ腰かけた
487 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:03:19 ID:bHmsBRUz0
ここチゾットから封印の洞窟まで、メイの持つ古文書の地図を見る限り距離はないからすぐ行けるだろう
だけど…
隠されていた道が今では誰でも利用できるようになり、商人や旅人は当然あちこち見て回る
洞窟が誰にも見付かっていないなんて保証はどこにもない
むしろ、すでに見付かっていると考えたほうが良い
…封印された魔法は、高度な魔力を持つ者にしか封印を解くことが出来ないという事だけが安心材料
しかしこれは封印方法にもよるよな
もし持ち運べる程ちいさな封印であれば持っていかれているだろうし
とてつもなく巨大なものであれば、持っていかれないとしても破壊されているかもしれない
賭けだ これからいく洞窟に果たして、何が待っているのか
メイの事を考えれば封印が残っていると、信じたい
俺にはシャナクがなくてもまだ、カルベローナの生き残った住人という可能性がある
それにしても…
しばらく魔物の姿を見ていない
もしかするとここら辺一帯は魔物がいないのだろうか
道具屋の話だと旅人も多いそうだし、壊滅させられた町の人も西には多く住むという
魔物が現われないから交流も盛んに行われているんだな
魔物はどこへ行ってしまったのか…
メイの顔を眺めた
とても落ち着いた表情で眠っている
488 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:03:57 ID:bHmsBRUz0
…なんで俺と行こうと思ったんだろう
俺なんて、フィッシュベルにいる時はとても弱かったし助けられてばかりだったのに…
もっと強い人と旅をしていればこんなに身体を痛めつけることもなかったのに…
気付くと、濃い茶色の長い髪
メイの頭へ手を乗せてしまっていた
「うぉ…」
思わず発し、手を除ける
「どうしました? 顔を真っ赤にして」
ベッドの横の階段からクリーニが登ってきながら言う
「あー 邪魔をしてしまいましたか?」
「え、うぅあ そんあ、そんなこと無いですよなんでもないですから」
「はは、そうですか さっき言い忘れてしまいましたが、お湯を用意しました
どうぞ使って下さい」
はぁ なんてザマ
別におかしな事はしてないんだから堂々としててもいいはずなのに
無意識だったけど、慣れない事はするもんじゃないよ…
489 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:04:53 ID:bHmsBRUz0
気をとり直し、クリーニへ返事をする
「それは助かります 二十日も水浴びすらしていなかったですから」
「では地下を降りてまっすぐ、突き当たりへ
これ、タオルです」
「ついでに洗濯してもいいですか?」
「どうぞどうぞ」
クリーニからタオルを受け取り、荷物から全部の着替えを取り出し風呂場へ向かい湯を浴びた
「ふぅー…」
この世界では始めての湯舟に浸かりながら一息
やっぱり湯に浸かるに限る
水じゃなんだか、うまくないんだよな
そのまま裸で、衣類全てをゴシゴシこすり洗い、風呂場を出ようとしたとき事件は起きた
「着替えまで洗っちまった…!!」
まずいぞこれは
まさか全裸で上がるわけにもいかない
考えろ、俺!
………そうだ魔法の鎧!
いやっまてっ!
裸に鎧は、胴体しか隠れないし明らかに変質者じゃないか
このまま服が渇くまでここにはいられない…
この世界に来てたぶん一番脳をフル活用して出た答えは─
490 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:05:40 ID:bHmsBRUz0
「クリーニさん!! クリーニさーん!! 服を貸してください!!」
この場から助けを呼ぶ事
しかし、ついてない事にその時クリーニは出かけていた
そうとも知らず俺は必死に叫びつづけ
急いで着替えを持ってくるクリーニを
かなり長い時間待ったのだった
491 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:06:20 ID:bHmsBRUz0
●静寂と形跡
メイは夜になって目を覚まし、クリーニから完全回復のお墨付きをもらい喜んでいた
だが気が、少し疲れているのだろう
湯を浴びた後すぐにベッドへ入り、上半身を起こした状態で会話をしている
クリーニは自分の部屋へ戻り、夜の診察室はランプの中で燃える炎の灯りでぼんやりと照らされる
「さっきは本当にこの世界… いや、ここまで生きてきた中で一番の恥ずかしさを味わったよ」
「ふふ タカハシはどこか、いつも抜けているのよね」
「いや、まぁ、言い返せないな はは
ん? ところでその首に下がっているのはなんだ?」
メイの首には小さなガラス玉
透明で穴が開けてあり、紐が通されている
「これ? これはね、私のお守りなの
ずっと首から下げていたんだけど、ローブのせいで見えなかったわね」
メイはこの診察室に運ばれた後、民家のおばさんに借りたサイズの大きいパジャマのような服装に着替えさせられていた
492 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:06:53 ID:bHmsBRUz0
「お守り? 何か特別な力でもあるのか?」
「これは"静寂の玉"っていって、場の魔力を封じ込める特別な水晶らしいの
私が幼いときにイシスの外で見付けて、それからずっと身に着けているのよ」
「魔力を封じる… 封じた事はある?」
「いいえ、一度もない
静寂の玉は古代魔法と同じ古代の力で作られた水晶玉
身に着ける者の思いを、長い年月をかけて込めなければ効力を発揮しないそうよ
だからいつも身に着けているの」
「そうなのか もしもの時の為に、これからも身に着けておかなきゃな」
「─もし、私ゃタカハシが危険な時、助けてくれたら いいね…」
少し、どこか遠くを心で見つめるような表情で答えるメイ
「うん? なんだ、大丈夫だよ
俺達はきっと、目的をやり遂げる …必ずだ」
俺が言い終わるのを待っていたかのように、外でザアザアバシャバシャと音が弾け始めた
「雨? そういえば雨なんて初めてだ」
「初めて? いくらなんでも初めてなんて、やっぱりタカハシは変わっているわね
と言っても、雨は私も一回しか見た事がないけどね」
この世界の雨は滅多に発生しないんだな
まぁ俺の世界とは気候も違うだろうし、別に変ではないか…
その夜降り始めた雨は激しく止むこと無く一晩中、世界をびしょ濡れにし続けた
何かを必死に、洗い流すかのように─
493 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:07:28 ID:bHmsBRUz0
─
「本当にお世話になりました
すっかり元気になって、クリーニさんと村の方のおかげです」
翌朝、俺たち二人はクリーニの診察室を出て封印の洞窟へ向かう事にした
洞窟はここから近い
ならばすぐにでも行って封印の無事を確認したい、そう思っての決断だ
丁寧にクリーニと俺たちを運んでくれた人達に挨拶をし、村を出る
今まで隠されてきた"西の道"
その道は平坦に舗装され登り降りもきつくない
しっかり休んで回復できたのもあるだろうが東の道を進んできたときよりも遙かに、楽に進むことが出来た
あんなに苦労して歩いてきた東の道の苦労は、なんだったんだろう
西の道を歩み初めてまる二日、俺たち二人は緑に囲まれる森の入口に居た
相変わらず、魔物とは一度も遭遇していない
「この森、古文書の地図にも書いてある
それで地図は… ここから更に西を指しているわ」
だが、目の前にある道はまっすぐ北へ延びている
西へ行く道なんて存在していない
あるのは背丈ほどの鬱陶しい草の壁だけ
「しかしというかやはりというか、西への道なんてないぞ?」
「うん でも地図は西を指しているの だから…
先頭で道を作っていってね、よろしく!」
「やっぱりそうなるよな、仕方がない…」
494 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:08:14 ID:bHmsBRUz0
俺は先頭にたち、オリハルコンの剣でバサガサと草を薙ぎ斬り倒し道を作っていく
魔力はもちろん使わない
使えば楽に進めるとは思うが、草相手じゃあな…
バサバキと草が茎から折れ、倒されていく音だけが森の中へ響く
鳥や虫の声も聞こえず、時折り剣がヒュウと空を切る音が混じる
メイはというと大人しく俺の後ろを着いてくる
こんな調子で休憩を挟みながら数時間は進んだだろうか
目の前から草が無くなり、変わりに地面に張りつく石畳が姿を見せた
その石畳はまっすぐと続く道を作り、道の両脇には刈り取られ枯れ果てた大量の草の山
「道が、現われたのはいいが… これは誰かが通ったみたいだ…」
「…」
なんとも言いようの無い、重たい空気が流れ始める
俺はそんな空気を嫌いメイへ話しかける
「どうしようか?」
「……もちろん、進む
もし誰かが洞窟を見付けて入っていたとしても、封印を解かない限り古代魔法を取り出すことは出来ないから…」
「そうだな 封印は魔力の強い者にしか解けないんだよな?」
「そう、私の様に賢者かそれ以上の魔力を持たないと封印を解くことは出来ないわ
そしてそれほどに魔力が強い人間はとても少ないから─」
「よし、行こう」
剣に着いた草の切れ端や汚れを拭き取り、収めながら俺は一歩踏み出し振り返り、ちょっと笑って言う
「もう剣は必要ないよな?
このまま草刈りばかりしてたら剣も腕も錆びてしまうよ」
495 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:09:09 ID:bHmsBRUz0
●封印された魔法
夜になり、まだ洞窟へはたどり付けず俺達は石畳の道沿いで過ごすことにした
メイは、古代魔法が近くにある為かなかなか寝つけないようで、見張りをいつもより長くしてくれると申し出てくれた
「眠たくなったらすぐに声をかけてくれよ」
「ええ、ありがとう
でもここ最近、魔物の気配は感じられないしこんな森の奥に人が来るなんてなさそうだから」
「魔物か… どうして急に姿を見せなくなったのか気になるけど、体力を温存できるから助かるな
でも油断は禁物だよ」
「もちろん 何か起こったらすぐに起こすわ
だから、たまには… タカハシは安心して休んで」
「たまには? ははっ いつも安心して休んでいるさ
まぁそう言ってくれてるんだから、今夜は少し多めに休ませてもらうよ
何度も言うけど、何かあったとしても一人で無理するなよ」
「うん」
木々の隙間からわずかにのぞく深い青色をたたえる夜空
その夜を物憂げに見上げるメイにその場をまかせ、俺は固く薄い毛布に身を包んで眠った
─
496 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:09:56 ID:bHmsBRUz0
この世界に"季節"は存在しないのだろうか
もうかなりの年月、この世界を旅しているが気温も湿度も変わりなく一定だ
雨だってこの間が初めてだった
俺は、そんな気持ちの良い風と空気にすっかり慣れきってしまっている…
だけど、今いるこの場所の環境はとても酷い
多量の水分を含み生温かい空気
体中にじっとりとまとわりついてくる汗
こんな場所早く出たい 外が恋しい
ここは─ 封印の洞窟内部
夜が明け、歩きだした俺達は程無くして、外へぽっかりと口を開ける岩山を見付けた
それはすぐに洞窟だと分かり同時に目指す場所であることもわかった
だが入口周辺には洞窟を見付けた人間が残した者であろう焚火の痕と、置き去りにされ朽ち果てかけたいくつかの布袋
"もう 封印は解かれてしまったのでは─"
ここまでリアルな人の形跡を見せつけられ、そんな思いが頭をよぎった
だけどやっぱり諦める事なんて出来ない
だから俺が率先して中へと踏み込んだ
メイの、不安そうな表情をなんとかしようと思ったのもあるが─
497 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:10:35 ID:bHmsBRUz0
焚火に使う燃料用の油を布へ染み込ませ、それを手頃な木の棒へ巻き付け松明を作り進んでいく
洞窟の中は人間三人が横に並んで歩ける幅
高さは二メートル半ほど
壁はデコボコで、明らかに手で堀進んだことが分かる
一面にびっしりと苔も張りついている
魔法を封印するためだけに掘ったのだろうが真直ぐ続く道はとても深い
相当の年月がかかっただろうと思う
「嫌な空気… 早く古代魔法を見付けて外へ出たいわ」
「きっと、長い時間人の出入りがなかったのだろうから空気の入れ換えができず、澱んでしまったんだろう…」
警戒して足早に進んで行き、やがて丸く広がる空間へとたどり着いた
松明の明りでうっすらと先が見える
「正面の奥、何かあるわ!」
メイの言葉に急いでその場所へと進み寄る
炎で照らし出されたのは石出で出来た石の土台と数メートルはある巨大な石の球体
「これが 封印…か?」
少し緊張しながらメイへ問いかける
「ええ… 古文書にはこの"丸い石に手をかざし念じろ"と書かれているわ
…やってみる」
メイが球体へ手をかざし、集中を始める
「…… …… よかった! この封印はまだ解かれていない!」
498 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:11:15 ID:bHmsBRUz0
顔を見合わせお互い安堵の表情
先に入った人間は、恐らく封印を解くことが出来なかったのだろう
これだけ巨大であれば持ち出すことさえ不可能だ
「いよいよ、封印を解くわね…」
メイは手をかざしたまま古文書に書かれた古代文字を指でなぞり、何かを呟く
すると、その呟きに反応するかのように球体が赤くぼんやりと光り、ゴゴと音をたて二つに割れてしまった
「! 割れたぞ……」
俺は声に出して驚いたが、メイは目を瞑ったまま集中している
その様子に俺はなんだか声を掛けられない
しばらくしてメイが、口を開いた
「……封印されていた魔法は、全部で三つ 全て、会得出来た…」
「もう終わったのか?
いやにあっさりしてるんだな… それで─」
「ごめんね…… シャナクは、無かったの…」
499 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:12:47 ID:bHmsBRUz0
シャナクは 無かった─
「ここまで来て… 本当に残念……」
「いや、これは誰も悪くない 謝ることは無いよ」
「でも 私が期待させるような事を言ってしまって─」
「気にしなくて、いい
元々、イシス以降まったく宛の無かった俺の旅なんだ
そんな旅に希望をくれたのはメイなんだよ 感謝してるさ
それにまだカルベローナがあるんだ
大丈夫、まだ希望はあるし何があっても誰のせいでもないから」
泣きそうな顔のメイ
俺は自分自身にも言い聞かせるように、そう言った
500 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:13:44 ID:bHmsBRUz0
●巨大なその、邪悪なるモノ
「早くここから出よう ここは空気が悪い」
ゆっくり、松明を左右に揺らしながら元来た道を帰ろうと振り返る
と─
「あれは…?」
「もしかして… これと同じ魔法が封印されていた丸い石じゃあ…」
うっすら見える巨大な物体へ近付くとやはり
さっき俺達が封印を解いた球体の割れた姿
「もしかして誰かが封印を解いたとか…」
「そうとしか、考えられないわね
でもどうして全ての封印を解かなかったのかしら…」
この球体にはどんな古代魔法が封印されていたんだろう
ん、そういえば魔物たちは古代魔法ルーラを使っていたな
……まさか!?
「早くここから出たほうがいいかもしれないぞ」
「どうして?」
「実はな、トルネコさんと旅をしているときにルーラを使う魔物がいたんだ」
「ルーラ それは確か古代魔法ね… !」
「そう、この封印を解いたのは魔物かもしれないんだ だから」
501 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:16:56 ID:bHmsBRUz0
何か、やばい気配が辺り一面に流れ込んでくるのを感じた
俺とメイは急いで洞窟を駆ける
正面に外のまぶしい光が見え、その光へ飛び込むように洞窟から抜け出す
外には森のさわやかな風が吹いているが、身体は汗だらけ
走ったのもあるがそれだけではない
「気配が消えない─」
『ガサリ』
「貴様ら、何をしている?」
不穏な気配の正体
それは目の前に突如現われた巨大な魔物 一目で、鍛え上げられた身体を持つ、アトラス
「まさか封印を解いたのではないだろうな?」
「お前に言う必要は無い…!」
オリハルコンの剣を抜きながら俺は、アトラスの前に立つ
「ふん 弱い人間のくせに口答えするか
…もう一度だけ聞く 封印を解いたのか?」
アトラスの大きな身体にギュッと力が入るのが分かった
こいつは簡単に倒せそうな相手では無い
救いは魔力を僅かしか感じられないから、力だけかもしれないという事だ
502 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:18:46 ID:bHmsBRUz0
「もちろん解いたわ! なにか、不満?」
メイが俺の前へズズイと出て、強気な返事を返す
「メイ、俺の後ろへ…」
「不満だと?
封印を解いたのなら生かしておくわけにはいかんな
解いてなくても殺すがな! ぐあっはっは!」
久しぶりの戦いだ
魔力も体力も完全に回復している
どう仕掛けるか…
「殺されるのなら、知りたいわ
他の封印を解いたのはあなたたち魔物?」
「ふむ どうせ死ぬのだから教えてやろう
俺達魔物では無い ゾーマ様自ら封印を解いたのだ
魔法はルーラだけだったが、俺のように強い魔物にもゾーマ様はルーラを授けてくださった」
「ルーラだけ… 魔王にしか封印を解けないのだったらあなたは何をしにここへ?」
「俺か? ゾーマ様がルビスの力を潰せと俺に命じたからだ」
「ルビス…だって?」
唐突に出た"ルビス"という単語に、今度は俺が聞き返す
こいつは単純なのかよく喋ってくれる
503 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:20:01 ID:bHmsBRUz0
「そうだ 下らない、創造神ルビス
相当の猛者がいるのだろうと期待してみればどうだ
いたのは貧弱な男と女ではないか…!」
足を踏みならし悔しさを表現するアトラス
右手に持つ巨大な棍棒をドスンと地面へ叩きつけ、俺達二人を見下ろした
「ゾーマ様はこうもおっしゃった
ルビスの力はどんなに小さくてもいずれ大きな力となり我々魔族を脅かす、とな
そして貴様等は"か弱い"くせに封印を解き古代魔法を手に入れた
貴様等のどれがルビスの遣いで、なんの魔法を手にしたかは知らんがな!」
「ルビスなんて、俺は知らん…」
俺はかなり迷った
こうなってしまっては、メイに俺の正体を隠しつづけるなんて出来ないからだ
だけどメイには、メイにだけは話しても…
「さて 貴様等と下らない話をするのにも飽きてきた
さぁ! 死ね!」
アトラスがドシンと前足を出し棍棒を俺に振りかざす
俺は戦いの事以外を考えていたから反応が一瞬おくれてしまった
やばい…!
504 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:21:25 ID:bHmsBRUz0
「イオナズン!」
ズドドォと、アトラスの居たあたりに凝縮され圧力の高まった爆発が起き、激しい爆風が辺り一面に埃のカーテンを作り出す
「はぁはぁ… やっぱり古代魔法はまだ私には負担が……」
メイだ
メイは俺とアトラスが話をしている間に魔力を溜めていた
「メイ! 大丈夫か?!」
「ええ… 古代魔法の一つよ、すごい威力だわ…
これだけで魔力をほとんど使ってしまった…」
爆発は空気中で起きていた
爆風は収まり、もうもうとのぼっていた埃が消え視界がはっきりしてくる
その痕は、木々をほとんど薙ぎ倒し残っている
アトラスは地面に俯せ倒れていたが、致命傷にはならなかったらしい
「く… なんて魔法だ…」
頭を抑えながら立上り俺達を睨み付けるアトラス
胸元はブスブスと煙が立ちこめ焦げている
あれだけの爆発を一身に受けながらこの程度の傷しか与えられないとは、なんと恐ろしい魔物だろう
「うがががががああああああ!!」
薙ぎ倒された木々を更に蹴飛ばしながら、力任せに棍棒を俺にいくつも振るうアトラス
その度にドスンズシンと地面が揺れ、意外にも素早いその動きを懸命に俺が避ける
505 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:25:11 ID:bHmsBRUz0
「しねぇぇぇぇえええぇ!!!」
ただひたすらに、前に立つ俺を追いかけ回し棍棒を地面へと叩きつけるアトラス
俺は叩きつけた後に出来る少しの隙を狙い、魔力を十分に送り込んだオリハルコンの剣で斬り付ける
が─ 刃があたる瞬間、妙な感触のせいで思った以上に深い傷を与えることが出来ない
魔王の力なのかなんなのか、とにかくこのまま地道に小さいダメージを与え蓄積させるしかない─
そうしてそんな追いかけっこが数分続いた所で、俺はある事に気づく
それは─
アトラスが蹴り飛ばす木は、確実に退路を絶っているのだ
その事に気付いたときはもう手遅れで、俺とメイは積み上がった折れた木に挟まれ、目の前には余裕の戻ったアトラス
「俺が力だけだと思っていただろうが、残念だったな!
貴様等の魔法や剣など闇の衣の魔力の前では無力!
もう逃げ道はない さぁ、死んでゾーマ様の力となれ!!」
おおきくゴツゴツとした棍棒がいままでよりも遙かに早い速度で近付き、俺は両手を使いオリハルコンの剣で受ける
が、とてつもなく重いその一撃に直撃こそ免れたが、俺とメイは地面から足が数十センチ浮き、吹きとばされてしまった
「くっ……… なんて、力……!」
ゴスッ!
「カ ハッ……!」
腹に激痛と苦しさ
同時にゴキッという骨の砕ける音
俺の口から苦く、温かい液体が飛び出す
血だ
腹の上にはアトラスの大きく太い足がグイグイとのしかかる
506 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:26:05 ID:bHmsBRUz0
「タカハシ!」
少し離れた所へ飛ばされたメイが、ヨロヨロ立ち上がりながら声をあげる
「女 人の心配をしている場合か?」
アトラスは俺から足を除けおもむろにメイへ近付き、身体に見合う大きな手で、叩き払った
メイの小さく軽い身体はまるで折紙のように空を舞い、倒された木々へガラガラと落とされる
「う……」
折れた木の枝が、胸部を貫通し真っ赤に染まってゆく
表情を歪ませその枝から身体を引き抜き、更に地面へ落ちるメイ
『力を─』
ルビス…か?
俺に、こいつと戦う"力"をくれ…
『あなたはすでに"力"を持っている 守りたいモノや人を強く、思いなさい…』
507 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/27(木) 16:26:21 ID:S+iMreCV0
>>魔神
テラ少なす・・・
>>タカハシ
テラ多すwww
508 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:27:01 ID:bHmsBRUz0
俺の中で何か大きな力が起き上がり、身体を支配する
逆にオリハルコンの剣は輝きを無くし、変わりに刀身が純白へと変わる
だが酷く損傷した俺の身体は思うように動かせない
「ベホ……」
メイが何かを小さく呟き、俺の身体にフワリとした感覚─
『ズシュ』
「クッ!! なんだキサマ!? この後に及んでまだ俺に抵抗しようというのか!
人間が無駄な事を!」
意識とは無関係に、アトラスの腕へオリハルコンの一撃を見舞う俺
その後は 覚えて、ない
気が付き目の前にあったのは 横たわり動かない、アトラスだった
509 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/04/27(木) 16:28:37 ID:bHmsBRUz0
今日はここまで
さんざん迷いまくって、結局こうなった
かなりツギハギしたから話の前後が今まで以上にわかりにくくなったかも…
脳内補間、お願いします
>>507
たぶん、今後も長くなると思いますw
510 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/27(木) 16:54:24 ID:9DeGN5oLO
GJGJ!
511 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/27(木) 17:01:23 ID:g9gkIwP30
そうだ…うまいぞ…タカハシ…
やればできるってもんだ。っと阿部さん風に言ってみる。
とにかくGJ!!
512 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/28(金) 12:36:52 ID:9V435TaC0
ま〜え〜ま〜え〜こ〜な〜ぎ〜
513 :
クロベ
◆JNf/CxpPRk
:2006/04/28(金) 18:53:37 ID:hdMcF9gS0
拝啓、皆さま。お久しぶりです。
私は今、死出の洞窟の前に立ち、こうして最期の別れを告げるべく筆を取り……じゃない。
今私たちは、ラダトームから北、岩山の麓から地下へと延びるほら穴の前にいる。
この奥が、宿屋を後にしてから町中で聞きまわり、ついに引き出した賊たちの隠れ家だ。
「じゃ、いこうか」
私の前に立つミモザが、気合を入れるように鞭を振るった。
「……うう」
行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない生きたくない、いやいやいや逝きたくない!
最初はラダトームの宿屋でミモザを見送るつもりだった。だけど今の私には、彼女のほかに頼るものも
なし、金……ゴールドもなければ知識常識もない。
そしてそんな私に、ミモザは言い放った。
「あ、付いて来ないんなら、あんたの面倒見ないからよろしく」
……そんなこと言われたら、付いてくしかないじゃん。あんた鬼や。
このアレフガルドとやらに迷い込んでからこちら、ろくなことがない。
ちょいと振り返ってみれば、
朝起きーの、宿屋追い出されーの、魔物に襲われーの。トツギーノ。いや、嫁いではないけど。むしろ
嫁ぎたいですけど。
おまけにその後ときたら、盗賊に助けられーの、下っ端になりーの、山賊退治に同行させられーの。
トツギーノ…とか言ってるバヤイじゃない。
まあ大体そんなことがあって、今現在、こうして私はミモザという女盗賊の金魚の糞をやっているわけで。
「ほらほら行くよ、あたしの荷物ちゃん」
ミモザは元気に洞窟の入り口へと足を踏み出す。ていうか人のこと「荷物」呼ばわりかい。人権なんて
あったもんじゃないですか。…まあ確かに荷物運び以外は役に立ってないけどね。
「……荷物って呼ばないでください」
私も死にそうな顔で洞窟の入り口へと足を踏み出す。ああ、父さん母さんごめんなさい。娘はこんなわけも
分からぬところで死んでゆきます。
514 :
クロベ
◆JNf/CxpPRk
:2006/04/28(金) 18:55:03 ID:hdMcF9gS0
洞窟のなかは思ったよりも広く、思ったよりも乾いていた。人の手が随分加わっていて、あちこちに燭台が
設置され、石造りになっている壁面もある。
ミモザの掲げるランプのおかげで、辺りはばっちり見えた。
真っ暗だったらつまづきそうな足元も、あちこちに生えているコケだのシダだのも、隅っこで朽ち果てている
不気味な骸骨も、雄たけびを上げてこちらへ襲い掛かってくる魔物も…
!!11!!!!1!!
「ちょ、ま、うわ、魔物マモノまも」
「……あんた慌てすぎだよ」
慌ててるんじゃない、テンパッてるだけです。ってそりゃ言い訳にならないか。
「ほら、ちょっと下がってな。あぶないから」
自信満々、余裕綽々でミモザは鞭を振るう。
「何だ、トロルか。戦うのめんどいなー…」
手に持った武器を眺めて、目の前の敵を眺めて、そして彼女は呟いた。
「バシルーラ」
……
…………
しかし なにも おこらなかった!
「……あれ?」
「どうしたんすか?」
「……魔法が使えないみたいだ」
「えっ」
それってやばいんじゃ、と思った私の勘は正しかった。
ていうか考えればそんなことすぐに分かるか。はは、私ったらおばかさん。
「ぎゃあああAAAAaaaaa!!1!」
「逃げるよっ!」
手に持った棍棒を思い切り振り回し、魔物――トロルが襲いかかってきた!
515 :
クロベ
◆JNf/CxpPRk
:2006/04/28(金) 18:59:18 ID:hdMcF9gS0
がきぃんッ!
……
次の瞬間。私はまだ生きていた。
「ばかっ何してる!」
「あ……」
ミモザがいた。盾で棍棒を受け止めて、私の前に立ちふさがっている。また助けられた。
「はやく逃げな、もうもたない……きゃあっ!」
軽いからだが、いとも簡単に吹っ飛ばされた。
私は慌ててミモザのもとに駆け寄る。ほかに、どうしていいか分からなかった。
「ミモザさん、ミモザさん、しっかり、ねぇ、ねぇ!」
「揺らすなっあほっ!……くぅ」
悪態をつきながら足に体重を乗せようとして、ミモザは眉をしかめる。立ち上がれないのだ。
ずしん。がきん。ずしん。どすん。
醜い足で地面を揺らしながら、無骨な棍棒で壁を破壊しながら、トロルが迫ってくる。
どこにも逃げられない。
死ぬ?
――やだ。ヤダ。嫌だ。
武器は? 無い。でも何かしなくちゃ、このまま死んで魔物の餌になるなんて嫌だ。
そのとき。ミモザの腰に吊るされていた短剣が、ちらりと目に入った。
咄嗟。
「これ、借りますっ!」
「え、ちょっと、おいっ!」
私は武器を手にとり、がむしゃらにトロルめがけて突きこんでいく。
とすん。
刃は、あっけないほど簡単に魔物の体を貫いた。
516 :
クロベ
◆JNf/CxpPRk
:2006/04/28(金) 19:03:16 ID:hdMcF9gS0
「ごがああぁあぁぁあ!!!!」
トロルは狂ったように叫び声をあげ、そして、
「よけろ、潰されるよっ!」
「え、あ、はい!」
よろけて倒れ、そのまま動かなくなった。
ミモザのとっさの声で後ろに下がっていなかったら、その巨体の下敷きになって私も死んでいたかも
しれない。
――倒した、んだ。私が、魔物を。
「大丈夫か?」
何とか立ち上がったミモザが、私の横にやってきた。
「怪我はないか?」
「……」
「ちょっと、ねぇ?」
「ひっぅ……ふっ……えぐぅ……」
止まらなかった。
緊張の糸が切れた途端、さっきまでの恐怖が襲ってきた。こわかった。こわかった。こわかった。
大人のくせに泣きじゃくるなんてみっともない。分かっていたけど、止まらなかった。
「……大丈夫だよ、もう泣かない。な」
「うん……」
ぽんぽん、とミモザが肩を叩いてくれる。その感覚が、とても温かかった。
トロルの死骸から離れて、私たちは岩陰に身を潜めた。今、他の魔物にあったら、多分逃げる暇もなく
やられてしまう。
ミモザは黙って荷物の中から薬草を取り出して、打撲や裂傷になっているところに貼り付けていく。
私にもいくつか分けてくれた。
治癒呪文をつかったときと同じように、あっというまに傷が治ったけれど、その不思議さは何だかもう
どうでもよくなっていた。そういうもんなんだ、と納得するしかなかった。
517 :
クロベ
◆JNf/CxpPRk
:2006/04/28(金) 19:04:53 ID:hdMcF9gS0
そしてだいぶ気分も落ち着いてきたところで、ミモザがぽつんと言った。
「それ、あんたにやるよ」
私の手の中にある短剣を指差して。
「え? いいの?」
「あたしにはこれがある。気にすんな」
短剣の鞘が吊るされているその反対側には、鋼鉄を紡いだ鞭。「それに、ここじゃあ駄目みたいだけど
魔法だって使えるしね」
そして彼女は腰のベルトから鞘をはずして、それを私に放る。
「ほら、しまっときな。あ、その前にちゃんと汚れを落としときなね、錆びたら大変だから」
確かに短剣は魔物の血でずぶぬれになっていた。……へえ、トロルの血って青いんだ。
ミモザから布を受け取って、丁寧に汚れを落としていく。刃はランプの光を反射して、紫色にきらめいた。
「やっぱり、紫色なんだ」
「ああ、毒が仕込まれてるからね。ちょっとした魔法剣みたいなもんだよ」
「へぇ」
「さっきトロルがあっさり死んだのはそのせいだろ。急所に入ればどんなでかい奴でも簡単に倒せる」
「へぇ。あの、ミモザさん」
「なに?」
「……ありがとうございます」
大事な武器を譲ってもらって。転んで動けないときに庇ってもらって。怪我の手当てもしてもらって。
そしてこうして面と向かってちゃんと彼女にお礼をいうのが初めてだと、言ってから気がついた。
「ございますはいらないよ」
ミモザは白い歯を見せて笑った。
「あ、はい、その……」
518 :
クロベ
◆JNf/CxpPRk
:2006/04/28(金) 19:07:51 ID:hdMcF9gS0
「ありがとう」
先は長い。当面の目的である山賊退治もこれからだ。ミモザの魔法も使えないし、私はただの足手まとい。
だけど、不思議だ。
――何とかなるかもしれない。
アレフガルドに落ちてきて、そのとき初めて、私はそう思った。
クロベ Lv8 フリーター
HP 17/55 MP 0/1
E アサシンダガー E ピーコート ミモザのにもつ
―――――――――
コピペ失敗orz
下の分は514と515の間に入りますよ
519 :
クロベ
◆LZJDwNvDH2
:2006/04/28(金) 19:09:29 ID:hdMcF9gS0
人間をむりやり数回りふくらしたような青い体に、一つ目の豚のような顔。だらしなくにやけた口からは、
舌がぶらんとはみ出している。
滑稽な姿をしているが、多分あの武器が一度でも当たったら、五回分くらいは軽く死ねるだろう。
ガスッ!ドスッ!と嫌な音が後ろから追いかけてくる。何が起きているのか気になったけど、振り向けば
待っているのは間違いなく、死だ。
でっぷりとした見た目に似合わず、奴は意外と俊敏だった。
走る。走る。走る!
ものの壊れる音が、後ろから迫ってくる。
もっと早く、早く。逃げなくちゃ、逃げなくちゃ。
でも。
息が詰まる。
足がもつれる。
――がくん。
「……っ!」
そこが私の限界だった。
つんのめって、肩にしょっていた荷物が前にふっとぶのがやけにはっきりと見えた。
肘を思い切りぶつけたようだった。本当なら泣きわめきたいくらい痛いはずだ。
でも、声が出ない。
あたまのなかが、まっしろに、なる。
何も考えられず、私はとっさに振り返った。
棍棒が、目の前にあった。トロルの顔には、いっそうニヤニヤと嫌な笑みが浮かんでいる。
ぐわん。
あ。もうだめだ。
しぬ。
520 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/28(金) 21:26:55 ID:iBHRdHWGO
クロベ氏、乙
主人公が本格的に参戦、楽しみです
これからが大変だと思いますが、頑張ってください
521 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/29(土) 14:41:42 ID:Qgm7nNciO
クロベさん乙。
久しぶりの更新だな。
522 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/29(土) 15:14:10 ID:If2KLtkBO
乙!
主人公の運テラタカスwww
523 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/29(土) 21:19:11 ID:ZFAHOL0n0
期待あげ
524 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/29(土) 23:30:21 ID:FOFV0E5/O
そーうーちょーうー
525 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/30(日) 11:52:34 ID:mr0vm9Le0
524 :名前が無い@ただの名無しのようだ :2006/04/29(土) 23:30:21 ID:FOFV0E5/O
そーうーちょーうー
526 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/30(日) 12:32:31 ID:MMoXms1V0
4の人は書くのが遅すぎるのであげ
527 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/30(日) 14:02:36 ID:cSQ18Q0uO
どうして毎回こう失礼なやつが現れるのか理解に苦しむのでsage
528 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/04/30(日) 15:21:41 ID:FtYOzSmh0
4の人マダーー?とか言ってるマルチは放置
529 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 21:57:46 ID:wRmz2JKx0
>>444
の続き
その泥棒は食料や水を盗もうとした所で俺に見つかったらしい。良く見てみると北斗の拳のハート様の様な男だった。
タケ「この小ざかしい泥棒がぁ!ブッた斬ったるわ!」
?「チッ!ここはズラかるか。」
タケ「待たんかい!!うわっ!!」
泥棒が俺に砂みたいなものを振り掛けて逃げ出した。目がぁ〜〜目がぁ〜〜って言いたい所だがこのまま逃がすわけにはいかん。
何とか視力が回復させ、泥棒が逃げ去った方向に走って向った。
すぐに追いつけた。なんだかあっけねぇな……………………やっぱりハート様だな。
530 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 21:58:35 ID:wRmz2JKx0
?「ちっ!ここまでか…」
タケ「人様の食料勝手にパクって何様や!ボケェ!」
?「なら強引にでも奪ってやるぜ!」
ハート様が大きな斧を持ち出し構えた。パワー型の盗賊って言うところか。足は遅いけど…
タケ「こいやオラァ!!」
俺が斬りかかったのと同時にハート様も斧を振り下ろしてきた!
ガキィィィィィィィィィィィン!!!!!!!!
タケ「なっ………なんちゅ〜馬鹿力や…」
?「オラオラどうしたぁ?俺様をなめるなよ!」
コイツ、パワーだけは一級品だ。このままの体制なら確実に力負けをする。だが…
タケ「足元ががら空きやで!」
?「し、しまっ…」
俺は足払いをした。ハート様はステンっと簡単にこけた。今がチャンス!
タケ「おまん逝けや!!!」
ハート様に追い討ちをかけるように俺は剣を突き刺した。
それが甘かった。
531 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 21:59:39 ID:wRmz2JKx0
タケ「ガハッ!!」
ハート様が(寝ながらだが)サマーソルトを俺に食らわした。俺の攻撃は回避され
しかもあごにまともに入ったためにちょっと脳震盪をおこした。
――――――――まだ動ける。
もょ「(だ、だいじょうぶか!?)」
タケ「(ちぃっ!パワーだけがやっかいやな。今の所は大丈夫やで。)」
タケ「中々やるやないかい!詰めが甘すぎたワ。」
?「てめぇもなかなかやるな。簡単にやられてたまるかってんだ。」
タケ「死にさらせ!」
剣を打ち込んでいるのだが中々クリーンヒットがしない。
テクニックでは俺のほうが何とか勝っているが致命的な一撃打たせないために早く打ち込む事に精一杯だった。
しかもハート様のなぎ払いで吹っ飛ばされた。
タケ「ハァ…ハァ…こいつのパワーはある意味人間やないな。」
?「しつこい野郎だ。俺様の最強の技喰らわせていやる。」
ここで本領発揮って所か。スピード系の技はまず有り得ないな。大防御で対処できるだろう。
?「くらえ!蒼天魔斬!!」
532 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:00:37 ID:wRmz2JKx0
ハート様が斧で地面に円を削ると紺色の霧のようなものがハート様の周りを包み始めた。
なんと霧が髑髏の形になって俺に襲い掛かってきたのだ。
俺は咄嗟に大防御の構えを採ったのだが恐怖で身震いしていた……
死ぬんじゃないだろうか?まして夢の世界であるはずなのに―――――――――
髑髏が俺を飲み込んだときに全身に激痛が走った。
タケ「あがががががががが!!!!!!!!うぐぐっ………!!」
もょ「(タ、タケ!!)」
タケ「(も、もょは出たらアカン!!お前も激痛が走るで!)」
次第に髑髏が消え去っていった。大防御のおかげか何とか防ぎきった。マジで死ぬかと思ったぜ。
タケ「甘くみるんやないで。防ぎきったわい。びびらせやがって。」
?「ガハハハハハ!!上手くいったようだな!」
タケ「何やと?そのアホ面を斬り刻んでやったる!」
体を動かそうとしたら全く動けない。どうなっているんだ?
?「蒼天魔斬の真の目的は相手の動きを止めることだ。思惑通りに麻痺させる事ができたぜ。」
533 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:01:44 ID:wRmz2JKx0
タケ「アハハハハハ!だから体が痺れて動けない訳やな。」
?「な、何笑っているんだ?こいつ…」
タケ「だってよぉ〜
ヾヽ'::::::::::::::::::::::::::'', / 状 .あ ま ヽ
ヾゝ:::::::::::::::::::::::::::::{ | 況 .わ だ |
ヽ::r----―‐;:::::| | と て |
ィ:f_、 、_,..,ヽrリ .| ち る |
L|` "' ' " ´bノ | ゃ よ |
', 、,.. ,イ ヽ う う /
_ト, ‐;:- / トr-、_ \わ な /
, __. ィイ´ |:|: ヽ-- '.: 〃 `i,r-- 、_  ̄ ̄
〃/ '" !:! |:| :、 . .: 〃 i // ` ヽヾ
/ / |:| ヾ,、` ´// ヽ !:! '、`
! |:| // ヾ==' ' i i' |:| ',
| ...:// l / __ , |:|::.. |
とニとヾ_-‐' ∨ i l ' l |< 天 ヾ,-、_: : : .ヽ
と二ヽ` ヽ、_::{:! l l ! |' 夂__ -'_,ド ヽ、_}-、_:ヽ 」※AAはイメージです。
?「ムカツク野郎だぜ!状況が悪くなってケロっとしている奴などはいないはず…」
タケ「(もょ。蒼天魔斬だけ気をつけたら何とかなるわ。)」
もょ「(そうてんまざんってドクロがでてくるわざだな!)」
タケ「(ああ。蒼天魔斬は遠距離攻撃みたいやから接近戦で攻撃したらもょのペースでいけるやろ。隙があったら魔人斬りを喰らわせてやれ。)」
もょ「(まじんぎりってなんだ?)」
タケ「(もょが以前、レオンが持っていた盾を破壊したやんか。勝手にそう呼ばしてもらった。強撃って呼ぶのも弱弱しいしな。)」
もょ「(なまえのつけかたがうまいなタケは。あとはおれにまかせろ!)」
タケ「(すまん。頼むで!)」
もょもとと代わり、もょもと対ハート様とのバトルになった。
534 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:02:35 ID:wRmz2JKx0
もょもとが向った行った瞬間にハート様はさずがにとどまった。その隙を突いてもょもとは攻撃を仕掛けた。
?「バ、バカな!ありえねぇ…」
もょ「とにかくこうげきさせてもらうぞ!!」
もょもとが先手を取ったようで有利な体制で力比べになった。
?「ぐぐっ………こいつ、こんな底力を隠していたのか…」
もょもとが強引にハート様を押し込んでいる。このまま押し倒す事ができそうだ。
?「足元がお留守だぜ!」
ハート様が足払いを仕掛けてきたがもちろん想定の範囲内である。
タケ「(もょ!バックステップや!)」
もょ「(おう!)」
?「く、くそっ!かわされた!」
もょ「たにんのわざをつかうなんてまだまだあまいな。」
こいつめ、いっちょ前に格好つけやがって。
もょ「いくぞ!まじんぎり!」
?「こ、これは…ぐばぁ――――!!!」
魔人斬りが綺麗に決まった。流石に立ってこれまい。
?「こ、ここまでか…」
もょ「さぁ、ぬすもうとしたりゆうをきかせてもらおうか!」
?「くくっ…」
535 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:03:57 ID:wRmz2JKx0
尋問しているときにレオンとリアがやってきた。
レオン「もょもと!何があったんだ?」
もょ「こいつがおれたちのしょくりょうをぬすもうとしたんだ。」
リア「もょもとさん大丈夫?怪我はない!?」
もょ「だいじょうぶだ。」
リア「良かった…」
レオン「ん…あ、あんたは…?」
?「ク、ククールでがすか!?」
レオン「ヤ、ヤンガス…」
まさか――――――――――――――――レオンの仲間が見つかったって事か?
ククール「あんた何やっているんだ?」
ヤンガス「おっさんが倒れたから食料と水を探していたのでがす。そしたら返り討ちにされてしまったでがす。」
ククール「トロデ王やミーティア姫もいるのか!?」
ヤンガス「そうでがす。」
ククール「他のみんなは?」
ヤンガス「気がついたらあっしとおっさんと馬姫さんだけだったでがす。兄貴達はどこに行ったのかわからないでがす。」
もょ「どうなっているんだ?レオンのなかまなのか?」
ククール「ああ…」
リア「レオンさんどういう事なの?」
ククール「レオンって言うのは偽名さ。本名はククール。この盗賊の名前はヤンガスって言って俺の世界の仲間だ。」
ヤンガス「そ、その前に治療を頼むでがす…」
ククール「わかった。しかしあんまり無理はするなよ。」
ククールがベホイミを唱えるとヤンガスは立ち上がった。
ククール「もょもとすまない。ここは俺の顔に免じてヤンガスを許してやってくれないか?」
もょ「しかたがないな。しかし、ひとのものをぬすむのはよくないぞ。」
ヤンガス「すまなかったでがす。とにかくおっさんの所に案内するでがす。」
ヤンガスはトロデ王の場所に俺達を案内した。
536 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:05:59 ID:wRmz2JKx0
案内された場所に着くとナメック星人みたいな生き物が倒れていた。しかも馬が心配そうにナメック星人をみていた。
リア「こ、この人がトロデ王?」
ヤンガス「そうでがす。おっさんも馬姫様もドルマゲスって奴に呪いをかけられたのでがす。」
もょ「のろいか…」
ククール「この馬もトロデ王の愛娘ミーティア姫さ。しかしドルマゲスは許せねぇ…」
ククールが感情むき出しで語った。よっぽどドルマゲスって奴に悲惨な目にあったのだろう。
タケ「(おい、もょ。)」
もょ「(どうした?)」
タケ「(もしかしたらラーの鏡でトロデ王やお姫様の呪いを解く事が出来るかもしれへんで。)」
もょ「(なるほど!ムーンののろいをといたようにやるんだな!)」
タケ「(しかし成功するとは限らへんけど…)」
もょ「レオン…じゃなかった、ククール。もしかしたらトロデおうとおひめさまののろいをとくことができるかもれないぞ。」
ククール「なんだと!?」
ヤンガス「本当でがすか!?」
もょ「ラーのかがみでムーンののろいをといたことがある。いまからもってくるよ。」
リア「さっすがぁ!もょもとさん!即実行あるのみだね。」
もょ「ちょっとまってろ。」
ラーの鏡を取りに行きリア達の場所に戻った。
戻った後トロデ王の水と食料を与え。とにかく起きてもらった。
537 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:07:22 ID:wRmz2JKx0
トロデ「お蔭様で助かったわい。」
ヤンガス「おっさん良かったでがす。」
トロデ「バッカもーん!!ワシの家臣でありながら何をやっておるんじゃ!!」
ヤンガス「あっしは家臣ではないでがす!」
トロデ「しかしこの者達がワシとミーティアの呪いを解いてくれるとな?」
ククール「俺達の世界と全く違う世界だからな。可能性はあると思う。」
もょ「まずはトロデおうからはじめることにするぞ。」
もょもとがラーの鏡でトロデ王を写し出し、覗き込むと人間の顔が写し出した。
ヤンガス「お、おっさん!手が人間の手に戻っているがす!」
トロデ「なんじゃと!?おおっ!」
ククール「凄いなこれは…元通りに戻ったみたいだな。」
トロデ「どうじゃ?ヤンガス、ククール。これでワシもギャルにモテモテじゃ!!」
ヤンガス「おっさん何言っているんでがすか!?」
ククール「はいはいわかったわかった。」
リア「後はミーティア姫だけだね!」
トロデ「そうじゃった!ようやくミーティアも元通りに戻せるぞ!もょもと!早くやってくれ!」
もょ「わかったぞ。」
もょもとがラーの鏡を馬に写し出した…しかし――――――――
バリィィィィィィン!!!!!!!!!!!
ラーの鏡が砕け散ったのだ……………………その瞬間全員の表情が硬直してしまった。
538 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:08:29 ID:wRmz2JKx0
もょ「な、なぜだ…?」
リア「そんな…」
トロデ「な、なぜミーティアだけ呪いが解けないんじゃ!?」
ククール「多分、トロデ王の呪いより姫の呪いの方が強いのだろう…」
ヤンガス「やっぱりドルマゲスを倒すしかないでがす!!」
トロデ「ドルマゲスめ…」
その時サマルとムーンが来た。
サマル「どうしたんだい?今凄い音がしたんだけど。」
ムーン「凄い音がして目が覚めたわ。」
もょ「ムーン、すまない。ラーのかがみがわれてしまったんだ。」
ムーン「…しかもレオンもいるじゃない。状況を説明して。」
ククール「俺が話そう。」
ククールは今までの話の流れを話した。
ムーン「ミーティアさんの呪いはハーゴンのよりもきついみたいわね。」
サマル「しかもドルマゲスって奴もハーゴンと同様に邪悪な魔術師みたいだね。」
トロデ「ムーン。家宝を壊してしまってすまんのぉ…」
ムーン「気にしなくていいわ。王様。人助けに使って壊れたんだからいいじゃない。」
なかなか話が進まない沈黙の状態でリアが切り出した。
リア「これからどうするの?」
539 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:09:58 ID:wRmz2JKx0
サマル「バカ!空気を読め!」
リア「ご、ごめんなさい…」
ククール「そうだな。もょもと、すまないが俺はここまでだ。」
もょ「なんだって?」
ククール「ヤンガスやトロデ王達と一緒に行くとする。俺のわがままで付きあせる事はできないからな。」
リア「そんな、寂しくなっちゃうね…」
ムーン「リア、ククールも目的があるんだから仕方がないじゃない。」
ククール「すまない…」
ヤンガス「それならまた待ち合わせしたらいいんじゃないでがすか!?」
トロデ「それもそうじゃの。ヤンガス、お前もたまには良い事言うもんじゃ。」
ヤンガス「余計なお世話でがす!」
もょ「そうだな。ローレシアでまちあわせしよう。ローラのもんのつうこうきょかしょうがいるな」
サマル「それなら僕が紙に書いて作っておくよ。」
ムーン「なら決まりね。私達はルプガナに行くわ。」
ククール「俺達はムーンペタに行ってローレシアに向うとしよう。元気でな!」
リア「またね!ククールさん、ヤンガスさん、トロデの王様。元気でね!」
もょもと&タケ
Lv.15
HP:43/105
MP: 0/ 0
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄の盾 E鉄兜
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:はやぶさ斬り・魔人斬り
タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御
540 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/01(月) 01:09:57 ID:nFz9QxX20
レッドマン乙
みんな職人さんマダー?って言ってるけど、俺は書庫さんの安否が心配じゃ
541 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/01(月) 07:28:48 ID:kEfj/vhoO
ちょwwwwそれ何て仙道wwwwwwwwww
542 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/01(月) 12:01:58 ID:P7AbthPB0
さり気無くムスカが絡んでるw
543 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/02(火) 12:03:08 ID:jUiphBIdO
レッドマン乙。
今後の展開が楽しみだ。
544 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:35:40 ID:1RKN4gD70
>>508
から続き
●変わらない
巨大なアトラスの身体には無数の深い斬り傷がパックリと開き
その命を奪ってしまっていた
「倒したのね…」
メイがよろよろと、立ち尽くす俺の横へ歩み寄り言った
深々と突き刺さった木の枝の傷痕は、消えてなくなっている
残っているのは真っ赤に染まった血痕
「残った全ての魔力で、古代魔法ベホマラーを使ったの」
「ベホマラー?」
「そう ベホイミやベホマとは違って、一度に複数の人を治せる
だけど、イオナズンとあわせてかなり魔力を消耗してしまったから、一晩くらい休まないと…」
だから…
不思議な力が湧いてすぐには起き上がれなかったけど
ベホマラーのおかげで立ち上がることが出来た
あの時メイが呟いた魔法はこれだったんだ
もし、洞窟で古代魔法を手に入れることが出来ていなかったら、今ごろ魂だけの存在になっていた
「ありがとう」
「お礼なんて、私たちは一緒に旅をして一緒に戦っているんだから」
「…そうだな ありがとう」
545 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:36:20 ID:1RKN4gD70
口の中に鉄のニオイに似た味が、ザラザラと残っている
俺はいったいどうやって アトラスを倒したんだろう
「剣が白くなって、タカハシはとても早い動きで何度も何度も… 斬り付けたのよ」
「何度も… 全く覚えていないよ」
右手に握るオリハルコンの剣は、いつもの通りの金属色
不思議な力は効力を失っていた
倒れる巨体へ目をくれると、光に包まれ空へ溶けこんでいくところだった
同時にシュンと、辺りから不穏な気配も無くなる
そのまましばらく無言で空を眺め、俺は口を開く
「メイ、ルビスの事なんだけど─」
話しておかなければならない
俺といれば、またアトラスのように強い魔物が現われるかもしれない
だから、真実を言って そして俺は一人で旅を続けたいと─
「私は… なんでもいい」
「え?」
「タカハシが"どこの誰で何者"だろうとタカハシである事は変わらない
今まで通り、なに一つ変わらないの」
「…そうだとしても、また強い魔物に襲われてしまう可能性は高いんだ
これ以上、俺と旅を続けるのは危険過ぎる」
「平気、よ タカハシがきっとまた、強い力で助けてくれると信じてる
それに、まだタカハシと旅を続けるって決めてるの」
「しかし─」
「私は、こんな事だいじょうぶだから─」
「聞いてくれ 俺は本当は─」
言い掛けた言葉は、メイの手の平で抑えられ出口を失った
546 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:37:02 ID:1RKN4gD70
「いい 言わなくても、いい
今まで通り、いつもみたいにまた、旅を続けようよ
今までだって常に危険だったじゃない」
メイの目も"それ以上なにも言わないでほしい"と語っているのが感じとれる
俺はいったいどうすれば…
「わかったわ じゃあ、こうする
もしまた不穏な気配を感じたら、私はすぐに遠くへ離れ逃げるから…
約束するから、お願い…」
アトラスとの短い会話の中でメイは何を、何に気付いたのか
もしかしたら俺が普通の人間では無いことに気付いているかもしれない
俺のあの不思議な力、俺自身が驚いてるんだ
……だけどやっぱり危険すぎるよ
その後も説得し続けたがメイは折れてくれず
"危険を感じたら必ず逃げる"
という約束を俺は信じ、一緒に今まで通り旅を続けることを承諾した
547 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:37:44 ID:1RKN4gD70
●遙かな時間
アトラスを倒ししばらくの休憩後、俺達はチゾットへ向け歩きだしていた
しかしあまりに厳しい戦いだったために、二人とも気持ちを前に進めることが出来ない
あまりに強すぎた敵アトラス…
そんな、お互いが不安定な状態では危険過ぎる
またゾーマの刺客が現われるかもしれない
だから明るいうちに野営を始め、そしてそのまま夜を迎え今に至っている
魔力を使い果たし疲れ果て眠るメイ
穴の空いたプリンセスローブは丁寧に繋ぎ合わせられ、血痕だけが濃く残っている
俺が身に着ける魔法の鎧はぐしゃりと潰れてしまったから、途中で破棄してしまった
今の装備は予備として持ち歩いている旅人の服
「あの力は、なんだったんだろう…」
ルビスに"守りたいモノや人を思いなさい"と言われ、思ったのはメイと自分の世界…
そして俺は意識を失い、いつのまにかあのデカブツを倒していた
ルビスの言う"真の力"はあの事だろう
だけどあれ以来、力を感じることは無くなってしまった
もしかしてまた死にかけなきゃ発揮されないとでもいうのか…?
「ふぅ…」
俺は溜息と一緒にググッと腕を伸ばし筋肉をほぐす
548 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:38:30 ID:1RKN4gD70
あの時"自分の世界"を思うのは当然だけど、今の目的である"トルネコと呪い"を思い浮かべることが出来なかった
いや、当り前かもしれない
目の前で木に貫かれたメイがいたんだ
だけど……
それだけじゃない感情が、俺に入り込んできていたのも事実
俺はこの世界の住人じゃないのにな
メイはどう、思ってるんだろう…
だめだ
俺はこんな感情を持っちゃいけない 捨てなくてはいけない
イシスからチゾットへ向かう間、ずっと考えていた
ここは俺の世界とは繋がることのない、遙かに遠い異世界なんだ
いつかは終わる、旅なんだ
549 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:39:08 ID:1RKN4gD70
●残り人
翌朝、アトラスとの戦いの記憶も多少薄れ、俺達は出発した
「もう一つの古代魔法はマホトーンっていうの」
「どんな魔法?」
「相手の魔力を、少しの間だけ無力化する事が出来るのよ」
「へぇ じゃあ、その静寂の玉と同じようなものか」
「そうね だけどマホトーンは失敗する事も多いらしいの
だからあまり過信してはいけないわね」
アトラスを倒してからも、魔物の気配は感じない
俺達はかなりゆっくりとした歩調で進む
魔王にはルビスの気配を感じとれるらしい
わざわざあんなに強い魔物を送り出してくるんだ
俺にはそう思えないが、ルビスは特別な力を持っているんだろうな
それとアトラスの言っていた"闇の衣の魔力"とはなんだ
古代魔法イオナズンも魔力を十分に送ったオリハルコンでもほとんど傷つけることが出来なかった
「闇の衣… 私も聞いたことが無い
もし、そんな力を全ての魔物が持つようになったら世界はおしまいね…」
「強力な魔法も、剣での攻撃も効かないとなると…
考えただけでも恐ろしい」
不安はつのるが、今はトルネコの呪いを解く事だけを考えよう
考えすぎると自分の世界へ帰る事すら、見失ってしまいそうな気がするから…
550 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:39:46 ID:1RKN4gD70
チゾットへ戻った俺達はクリーニに一晩の宿を借りて休み、再び西の道を歩いていた
呪いを解く事ができるかもしれない、カルベローナの生き残りを探すため
チゾットで聞いた話によると、西の道沿いを歩いていけば逃げ延びた人達が暮らす小さな集落があるらしい
その集落にカルベローナの人間がいるかどうかはわからないという事だったが、このまま途方に暮れるよりはマシだ
プリンセスローブはというと、チゾットの村人に洗ってもらい元のベージュに戻った
そして俺は、クリーニに譲ってもらった革の鎧を身に着けている
魔法の鎧より軽いが耐性はゼロだし鋭い爪の一撃をもらえばすぐにちぎれてしまいそうだ
だけどほとんど守っていないに等しい旅人の服よりは気持ち的に安心だ
「カルベローナの人達、すぐに見付かると良いけどなぁ」
「この道沿いを進んでいけばいいらしいから、すぐに見付かるわよ」
「見付けたら呪いを、すぐに解いてもらわないとな
メイももうすぐ、勇者にあえるかもしれないぞ」
「…タカハシは、勇者様の呪いが解けたらどうするの?」
「俺か …俺は旅を続ける
ただし、トルネコさんと一緒じゃない、一人で旅するよ」
「私達と一緒に旅を続けようよ!」
「それは─」
仕方がないんだ
俺は、帰らなきゃいけない所があるから─
551 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:40:44 ID:1RKN4gD70
「…その事は、その時考えればいいよね
もしかしたら、気が変わるかもしれないし」
「…そうだな それにだ
カルベローナの人達が呪いを解けるという確証はどこにもないんだ
もしかしたらまだまだ旅しなきゃならないかもしれないよ
そうなら─」
俺は、何を言おうとしてるんだ
駄目じゃないか
呪いを解くんだ、この旅はそのためにしているんだ
バカか、俺は…
「そうなら?」
「ん?ああ… そうなら… どうすれば呪いが解けるんだろう?って、言おうとしたんだ」
「わからないわね 呪いに関しては、教会でも研究が始まったばかりだし…
大きな町へ行って、人の話をたくさん聞いたほうがいいかもしれないね」
「大きな町か、じゃあもし、呪いを解けなかったらグランバニアへ向かおうか」
「そうね、グランバニアなら人が集まるからいろんな話が聞けそう」
どのみちライフコッドへ行くには、この西の道を通りグランバニアを経由する事になる
呪いが解けなかったとしても、一度ライフコッドへ行こうと思ってたから丁度良かった
552 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:41:23 ID:1RKN4gD70
西の道を歩き始めて幾日、うっそうとした森からようやく開放され、目の前に平地が現われる
更に数日進むと丸太を組み上げて作った小さな家がたくさん並ぶ、町らしき場所へたどりついた
「なぁ、あれ
あれがもしかすると生き残った人達が住む集落じゃないか?」
「きっとそうね だけどこれは…」
その場所は全く"町"という風体をしていなかった
整備された路があるわけでもなく、店があるわけでもなく、家もバラバラな方向へ向かい
まるで散らかされてしまったように感じる
それも広野に、広範囲に
「まぁ、見た目はどうでもいいさ
カルベローナの人達を見付けなきゃな」
集落へ入り人を探す
だが全く人気は感じられないし、家の扉は閉ざされたまま
少し気味が悪い
「うーん、誰もいないな
仕方がない、一軒ずつ尋ねていくか…」
なんだか訪問販売みたいで嫌だったが、外に人がいないんだ
こうするしかない
コンコンと扉をノックし声を掛ける
ガチャリと開き、女性が応対してくれた
553 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:41:59 ID:1RKN4gD70
「はい、なんでしょう?」
「あっ 俺はタカハシといいます
あの、カルベローナの人はこの集落にいますか?」
「カルベローナの人は、居るにはいるけど…
ここはカルベローナの人達が作った場所でね、だからそこ出身の人がほとんど
でも付き合いしたがらないから、誰も外へ出なくなってしまったんだよ
私はアリアハン出身だけどね」
「家へ尋ねても話してくれないんですか?」
「あんた、商人かい?
商人だったらカルベローナの人も話してくれるかもね
あの人達は買い物が好きみたいだから」
「そうですか… ありがとうございました」
商人か…
幸い今はチゾットで食糧や薬草を補充したばかりで荷物は大きい
これなら、心苦しいけど欺けるかもしれないな
早速、隣の家の扉をノックする
「はい?」
中からは中年の男がドアを少しだけ開け、返事をする
「あ、すみません
商人なんですが、何か買っていただけませんか?」
俺は商人になりすまし、大きい袋を見せアピールしてみた
「…あんた、商人じゃないな
すまんが見知らぬ人とは話をする気分じゃない、他をあたってくれないか」
男はそういうと扉を閉じてしまった
554 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:43:28 ID:1RKN4gD70
うーん、たぶん今の人はカルベローナの人に違いない
一言で見破られてしまうとは、トルネコに商人の話しかたを学んでおけばよかった
「タカハシ、どうしよう?」
メイも心配そうだ
「もしかしたら、一人くらい話をしてくれる人がいるかもしれないから…」
俺はそう言い、再び並ぶ家を尋ねる
だが、今度は一言も話さず、断られてしまった
なんでこんなにかたくななんだ…
555 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:44:10 ID:1RKN4gD70
それから20軒は回っただろうか
その間にカルベローナの住民と思える人は10人いたが、全ての家で門前払い
次、駄目なら一度チゾットにでも戻って商人を連れてこようかと、考え直しながら21軒目の扉をノックする
「はい、どなたでしょうか?」
今までとは違い、扉を大きく開いて一人の若い女性が出迎えてくれる
「あ… えーと…」
商人作戦は通用しない
なんと言えばいいのか─
「…あなた、何か、普通とは違う雰囲気を持っていますね
それに後ろの女性は大きな魔力を感じます
……私はバーバラ、どうぞお入り下さい」
どういう事なのかわからないが、なぜか家の中へ通される俺達二人
まだ名乗ってすらいないのに
丸太を組み合わせ作られた家
中へ入ると狭い部屋が二つ
片方は台所とテーブルが設置され、今通されているもう一つの部屋には二つのベッド
一つは空で、もう一つは歳老いた男が横になっていた
「長老、この方達は………」
バーバラが、長老と呼ばれた男へヒソヒソと短く耳打ちする
556 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:45:28 ID:1RKN4gD70
「うむ… そうか
バーバラ、お前は下がっていなさい…」
長老がそう言うと、バーバラは俺達に軽く一礼し部屋を出ていく
「あんた方、ワシの横へ…」
長老が横になるベッドへ近付く二人
「む……… あんたはタカハシ、後ろの女性はメイ、か
して、何か用かな?」
なんと
長老は心を読めるのか?
なぜ俺達の名前がわかるんだ…
「ワシは、カルベローナの長老 だった者じゃ
ほんの少しだけ、人の心を見通せる」
557 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:46:16 ID:1RKN4gD70
●盗まれた魔法
「俺達は、勇者の呪いを解くため旅をしてきました」
「うむ、知っている
先ほど、失礼ながら心を読ませてもらったからの」
心を読む、か
読まれる方は嫌な感じだ
「だからあんたたちの目的は知っておる
……残念な事なんじゃが、勇者様の呪いを解くことはできんのじゃ」
「そんな」
俺は、ガックリと肩を落とし絶句する
古代魔法もなかった
そして、カルベローナの長でも呪いは解けない
いったい、どうすれば……
「この世界のどこかに…」
長老が静かに語り始める
「マジャスティスという、魔法がある
その魔法は、強い正義の心を持つ者であれば誰でも扱える魔法じゃ
呪いや、マヤカシを打ち消す正義の魔法
ただし」
「ただし、なんです?」
思いがけない情報に、身を乗り出して長老へ聞き返す
558 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:48:19 ID:1RKN4gD70
「ただし、どこにあるのかは全く分かっていない…
ワシらカルベローナの民はその魔法を探しつづけ、そして今でも探しておる
商人が持ってくる珍しい古文書や情報を集めながらじゃ…」
「そのマジャスティスという魔法は、ほんとに存在しているの?」
メイの問いかけに長老がはっきりした口調で答える
「存在はする
これは確実じゃ、なにせカルベローナの一族が守っていた魔法なんじゃからな
だがある日、盗賊によってマジャスティスの魔法書が盗まれてしまった」
「盗賊にですか…」
「うむ…
あんた達が何者なのか、そこまではワシでもわからん
じゃが何か、大きな力があんたたちを守ってくれているようじゃ」
「大きな力?」
「そうじゃ
だからあんた達をバーバラもワシの元へ案内したんじゃろう
もしかしたら… 魔法書を見付け勇者様の呪いを解いて下さると…
本来マジャスティスは、盗まれたから取り戻そうとしていたのじゃが、勇者様がああなってしまった
だから今はその呪いを解くために探しているんじゃ」
大きな力か
ルビスだな、滅多に姿を見せない癖にどこかで見ているのか
「あまり人付き合いしないのも、そのためですか?」
「いいや、それは一族の昔からの風習というか、そういうものなんじゃよ」
559 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:49:25 ID:1RKN4gD70
新しい情報"マジャスティス"
どこにあるかわからないが、確かに存在しているという
次の目標は否応なしに決定した
早く呪いを解くためにも、早く元の世界へ戻るためにも、ガッカリしている暇は無い
この世界にきて俺の心は、滅多な事ではめげなくなってしまったようだ
「じゃあ俺達に、そのマジャスティスを探してほしいと」
「いいや、そうは言っていない
ワシらはワシらで今後も探していく
あんた達が魔法を見つけ出し勇者様の呪いを解いても文句もいわん」
「…お話、ありがとうございました
俺達もその魔法を探そうと思います」
「うむ 頑張りなさい
二人はまだ若いのだから、きっと見付けることができよう」
"失礼しました"と家を出る
560 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:50:06 ID:1RKN4gD70
「結果は残念だったけど、こうして新しい情報も手に入れた
…まだまだ旅は続きそう─」
メイに話しかけたところで、長老の家の扉がガチャリと開き、バーバラが出てきた
「そこの… メイさん、長老がお呼びなので来ていただけませんか?」
「私? 私は構わないけど…」
チラと俺を見るメイ
「うん? 構わないよ、俺はここで待ってるから」
「ありがとうございます、ではメイさん中へ…」
バーバラとメイ、二人が家へ入っていく
長老が呼んでるなんて、なんだろう
カルベローナの人は魔力が強いらしいから、その事で話でもあるのかな
メイは賢者だし…
561 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:50:39 ID:1RKN4gD70
ガチャと長老の家の扉が開きメイが出てきた
時間にすると一時間ほどだろうか
俺は座って何を考えるわけでもなく、ボーッとしていた
「お待たせ」
「お、長かったな」
「ええ 魔法についての話をたくさん聞いてきたわ
さすがに魔力の強い一族の長だけあって、いろんな事を知っていて、とってもためになった
タカハシも魔法を覚えたらいいのに、ホイミ教えてあげるわよ?」
「え?俺は… いいよ、メイが使えるのだから」
なんだか、変に、メイが明るく振る舞っているような気がする
「何か、よくない事でも言われたのか?」
「え! いいえ、本当に魔法の事をお話しただけよ
きっと、いろんな知識を知ることが出来て、嬉しくってそう見えるのね」
俺の思い過ごしか…
562 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:51:31 ID:1RKN4gD70
「では、道中どうかお気を付けて…」
何時の間にか扉から出てきていたバーバラが丁寧に挨拶をし、家へ戻る
「あ、どうも… って遅かった」
「これから、どうしようか?」
「うーん… 考えていたんだけど、一度ライフコッドへ行きたいんだ
その後、グランバニアで情報を集めてもいいかな?」
「もちろんよ 私も勇者様の姿を一目みておきたい」
「うん、じゃあトルネコさんに会いに行こう」
相変わらず静かな集落を後に、俺達はグランバニア方面へと歩きだした
もう一度、自分の目標を明確に自覚するために─
563 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:52:16 ID:1RKN4gD70
●予感
グランバニアへ向け出発し何日も過ぎた
この地方の地図はないが、真新しい休憩小屋がわかりやすく道沿いにあったため順調だった
魔物はやはり、出てこない
"もしかすると平和になったんじゃないか?"
そう思ってしまう程に、道は人々が行き交い、途中、新しい町の建設もされていた
「なんだか、平和に見えるね」
「ああ、ほんとにな
魔物が出なくなったんだ、そう思ってしまうのも無理は無い」
「無理は無いって、何か思い当たることでもあるの?」
思い当たること
いや、特にはない
だけど本当に真の平和が訪れたとは、俺にはどうしても思えない
「アトラス、やつが現われたじゃないか」
「あ、そうね まだ魔物はいなくなっていないのね…」
「うん だから」
「…油断はしないで、進んでいきましょう」
564 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:52:59 ID:1RKN4gD70
昼と夜の繰り返し
魔物は姿を見せず、代わりにたくさんの商人を見掛ける
俺達は少し疲れ、平地へ腰を降ろし休んでいた
時間は夕刻
遠い地平線に真っ赤な陽が、その身を隠そうとゆっくり動いている
「なぁ、この世界は丸いのk─ ?!」
俺が素朴な質問を言い終わる前に、メイが俺の背に自分の背中をくっつけ座り直した
突然の事に、俺はとんでもなく動揺してしまう
「少し、こうして座っててもいい?
背中をつける場所がないから、こうすればお互いもう少しゆっくりできるから」
俺は慣れないシチュエーションに内心かなり焦っていたが"いいよ"と、普段と変わらない調子で返事をした
「ありがとう
…この頃、嫌な予感がしてたまらないの
どう伝えればいいのか、まるで今の瞬間が、最後の瞬間なような気がして…」
あまり、自分が考え悩むことを俺に話すことがなかったメイ
そのメイがそう言っている
565 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:53:38 ID:1RKN4gD70
「そうか… 予感は外れることだってあるじゃないか
あまり、考えすぎる事はない」
「うん…」
「もうすぐグランバニアだって、さっき話した商人も言ってた
ライフコッド直行じゃなくて、一度グランバニアで休んでいこうか?」
「ううん、大丈夫 きっと… 私の思い過ごしよ
だけどもう少し、このまま…」
最後の瞬間とはどういった意味だろう
どうしても負の方向へしか考えられないから、陽で染まる地を眺め、気持ちをからっぽにしようと俺は努めた
566 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:54:37 ID:1RKN4gD70
次の日は、朝から雨が降っていた
雨はとても冷たく、気持ちもどんよりと曇る
俺たち二人は雨のせいか全く人通りの無くなった道を進む
もう数時間も歩けばグランバニアだ
「タカハシ、私これ以上進みたくない」
メイはそう言うと、立ち止まってしまった
表情がよくない
「どうしたんだ? もうすぐグランバニアに着くじゃないか」
「ごめん だけど、進むと何か、よくない事が起こりそうで…」
「そうは言っても… 昨日言ってた"予感"か?」
「昨日よりも、とても大きな─」
二人の周りを薄暗い霧が、どこからか囲み始める
「なんだ?!! 突然、いったいどこから!」
俺は焦りオリハルコンの剣を手にし、メイの前へ
「なにが─!」
567 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:55:20 ID:1RKN4gD70
後ろから、バシと大きな音とすぐ後ろで人が地に倒される音も聞こえた
同時に、今までに感じたことがないほど大きく邪悪で寒気のする気配
身体の向きを急いで変えると、空間に突如現われたガラスのような扉から
マントに身を包んだ若く、スラリとした男
メイが俺のすぐ後ろに倒れ、ゴホゴホとむせていた
「誰だ! メイに何をした?!」
メイを俺の後ろに立たせ、グッとオリハルコンの剣を両手で構えながら男に怒鳴りつけた
ガラスの扉がスゥと消える
「ルビスの遣いを殺しにきた」
マントを翻し、静かに語りだす男
その身体は漆黒の鎧に身を包まれ、武器などは一切所持していない
「何を言って…!!」
恐ろしい
この男は、その存在を目で確かめただけで、とても強い力を持っているとわかる
オリハルコンへ俺が持つ全ての魔力を注ぎこむ
「貴様等人間は、多すぎる 大勢は必要なくなったのだ
遣いを殺した後─ 私自らこの世を洗浄しよう…」
なんだこの男…!
まるで自分が支配者のような事を……
う、まさかこいつが─!!
「我が名はゾーマ この世界、そして宇宙を支配するのは神ではなくこの私…」
568 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:56:04 ID:1RKN4gD70
●愚かな若者
雨はざあざあと止むこと無く、薄暗い霧だけが晴れていく
俺の想像とは全く違う、人間と変わらないその姿
どこかもの悲しそうな、それでいて眼光鋭い目
筋の通った鼻にキリと結ばれた細い口
今、目の前に立つこの男がこの世界を苦しめる─ 魔王ゾーマ
両手で構えるオリハルコンの剣が、汗と雨水でズイと滑り落ちそうになる
「メイ、大丈夫か? 逃げるんだ…」
俺は小声でメイに告げる
「大丈夫、私だって戦う…」
「まて、無茶だ 約束したじゃないか!」
思わず大きな声で叫んでしまった
だけど、このゾーマにはどうしても勝てる気がしない
正直、俺もこの場を逃げ出したい
「俺が時間を稼ぐからそのうちに逃げろ!!」
メイの言うことを無視してゾーマヘ斬りかかる
『シュン』
切先は確かにゾーマの身体を切り裂いた─ はずだった
しかしアトラスの時よりももっと強力な力が働き、まったく傷を負っていないゾーマ
569 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:57:06 ID:1RKN4gD70
「…私に傷を付けられるとでも思ったのか? ルビス! この程度なのか?!」
「な、なんだ…と─ う?!」
俺の身体がフワリと宙に浮き、まるで金縛りにあってしまったように固まり、動けなくなる
ゾーマが手の平を俺に向け、強く俺を睨み付けたその瞬間
俺の身体は細かい、何か波動のようなもので無数の切り傷を受けてしまった
しかし身体は地に着くことがなく、幾度も同じ攻撃を受けてしまう
「イオナズン!!」
メイによって放たれた古代魔法イオナズン
しかしその爆発が起こる前に、空気中に完成したその爆発の源が、ゾーマによって握りつぶされてしまった
「娘よ、焦ることは、無い
わが身に纏う"闇の衣"の前では全ての魔法は無力…
だがお前は、力を持つ者として我が世界へ招いてやろう
まずはこの男の絶望を吸いつくし殺してからだ
その後、ゆっくり弱らせ我が力にしてやろうではないか!」
その言葉にメイがガックリと ひざから落ちる
「効果は薄いと思ってはいたけどまさか… 消されてしまうなんて……」
570 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:58:54 ID:1RKN4gD70
くっ……
闇の衣ってあの赤いマントの事か?
まさに絶望だ 希望を微塵も感じることが出来ない……
このままじゃメイまでも…
─あの、力
あの力が今…!
俺は必死に、心の奥底から自分が守りたいものを強く思い描く
身体の奥で何かが動き始め、意識が飛んでしまいそうになる
くそっ!
頼む、守るんだ……!
ざあざあ降っていた雨がピタリと止み、真っ黒な雨雲がほんの少しずつ散っていく
「む… ルビスの力だな」
金縛りを魔力で破り、ストッと俺は地に降りる
この、大きな力ならいける…!
「ほう…」
ゾーマがニヤリと笑い両手を前にし俺と対峙し、強い圧力を俺に向けて放つ
一瞬、目の前の景色がグニャリと曲がったように感じ、一歩下がってしまう
571 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:59:39 ID:1RKN4gD70
ゾーマ…
武器をもたず己の魔力を自在に操り相手を傷つけてくる恐ろしい敵
そしてなにより、あの不思議なバリアのような"闇の衣"
アトラスと同じならばこの白く輝くオリハルコンの剣で貫けるはずだ…!
俺は両手の真正面を避けるように動き、一回二回と斬り付けザッと離れる
この"真の力"の早さに、ゾーマはついてこられないのかオリハルコンの攻撃をまともに食らう
闇の衣は貫いている、手応えはあった…!
この調子で斬っていけばいける……!!
手応えの結果を確かめず俺はとにかく動きまわり何回も何回も斬り付けた
その度にゾーマは無言で刃を身に受け、微動だにしない
さすがに俺も警戒しはじめ、そのうちに斬りつけるのを止める
「はぁはぁ… かなりダメージをあたえられたはず…」
この"真の力"はかなり体力と魔力を消耗するようで、俺は息切れしてしまう
斬り付け続けたその姿を見ようと、俺は顔を持ち上げる
572 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:00:32 ID:1RKN4gD70
「フッ…」
「な…」
ゾーマは一切、傷を受けていなかった─
「なぜだ! 確かに手応えが…」
「若く愚かな男よ
お前が斬ったと思い込んでいたのは… クックック………」
「なにがおかしい! どこを見て………?」
おかしい
おかしいのだ
俺はゾーマを斬っていた
なのになぜ─
ゾーマの視線を追いかけその先に俺が見たのは
血だらけになって倒れる、メイ
「ハッハッハッハッ!!」
ゾーマの太く、不愉快な笑い声が、グランバニアを目前にしたなだらかな平地を、支配していた
573 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:01:12 ID:1RKN4gD70
●滅び滅ぶ
「メイ!!」
俺はオリハルコンの剣を放り、両手でメイの身体を起こす
「タ、カハシ……」
「すまない…! 俺は、俺は……!」
「ベホマ… 間に合わないの……」
「どうして……?!」
メイの小さな両肩を、ギュッと引きよせる
「ふむ… 愚かな男女よ
貴様等の絶望と悲しみ、怒りと憎しみは実に良い
どうなったのか、特別に教えてやろう
闇の衣の魔力を使い男に幻を見せただけだ
どうだ、クックッ…
あっさりと罠に嵌まり、私だと思い込んで女を斬り続けたではないか!」
幻…!
「その女、闇の衣のおかげで即死は免れたようだが、もう時間の無駄
だが私は!
邪魔をしないで見守ってやろう!
男よ、もう残された時間は少ないぞ?
早く私に、お前の絶望を味わわせてくれないか! クックックックッ!」
なんて… 冷酷な……!
574 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:01:59 ID:1RKN4gD70
「タカハシ…」
メイの生きる力が、グングンと小さくなっていくのが感じられる
「メイ、もう喋るな ベホマだ、ベホマをかけろ!」
「もう、だめなの…
もう、魔法で回復できる損傷度合を越えてしまったの…
だけど、タカハシのせいでは、ないのよ……」
「ベホマを! ベホ、マを……!」
だめだこのままじゃ…
メイは死んでしまう……!
俺が、俺が、俺が…………!!
「タカ、ハシ… 手を、見せて…」
俺は、心がどうにかなってしまいそうなのをグッと堪えメイの眼前へ、震える手の平を差し出す
その俺の手の平を、メイはそっと弱々しく自分の手にあわせ、言う
「この手が、好き… いつも私を引っ張り守ってくれた手…
もうこの手を見ることは、なくなってしまうのね……」
「まってくれ まだ、頼むから回復魔法を使ってくれ!
きっと治る…!」
「これを…」
メイが差し出したのは静寂の玉
575 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:02:43 ID:1RKN4gD70
「これ、身に着けていて
私だと思って、連れていってね…」
「バカな事を… 言うな! まだ一緒に、旅をするんだよ!」
メイがフフと笑い、言葉を続けていく
「タカハシがどこから来てなにをしようとしているのか…
私は夢の中でルビス様から聞いたの
チゾットで眠っているときにね…
ずっと、一人で、誰にも言えずにいたんだね……
そして、ルビス様は私に、タカハシの助けになってほしいって、言っていた…
私はそう言われたとき、こうなる事も覚悟していたから、だいじょうぶ……」
「そ、そうだルビス! いるなら返事をしろ! メイを、助けるんだ!!」
声は届かず
何も返らない
「聞いて、タカハシ…
カルベローナの長老は、あなたのその秘められた力を見抜いていたわ…
私が、ルビス様と約束をしている事も知っていた…
そして、私の覚悟を感じとった長老はある魔法を、私に授けてくださった…」
576 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:03:29 ID:1RKN4gD70
よく、わからない
なんでこうなってしまった
ルビスはなんでメイに告げた なんでだ
俺はなぜ、メイを斬ったんだ
そうしてなぜ、メイが死ななきゃならないんだ─
「う……! タカハシ、私はそろそろ、この身体を抜けなければならないの…」
「抜けるって、どういう」
「わからない… だけど安心して、私があなたを守るから…
一緒に旅が出来て楽しかった、本当に会えてよかった…
もっと一緒に旅したかったけど、ここまでなの ごめんね…」
「そ、んな そん、な事…」
「一つだけ約束… あなたが元の世界へ戻ることが出来て…
私が生まれ変わって、もし目が覚めたらあなたの世界の人間だったら…
また一緒に……」
メイが目を瞑り、少しだけ集中する
「さようなら、タカハシ あなたは何一つ悪い事なんてないの
私、とっても楽しかった…
そしてこれが、長老から授かった究極の魔法…」
「ま、待ってくれ、俺は─」
メイが、俺の手をギュッと握る
腕組みをしたまま俺達を傍観するゾーマを見つめ、小さくつぶやいた
577 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:04:16 ID:1RKN4gD70
「マダンテ」
刹那、俺はメイの身体と共に吹っ飛ばされ
ゾーマを真っ白な空間に閉じ込め
その空間の中はまるで
小さな宇宙が誕生するかのごとく
混沌と
暴々と
恐々と
眩しく輝きあたり一面、影が焼き付いてしまうほどにグウグウゴウゴウ瞬き
やがて小さく収縮し、消えてしまった
「クッ…… ! メイ─」
俺のそばでぐったりとするメイは
赤色が無くなり魔力も感じられずただ 横たわるだけの動かない存在
「メイ? 死んだ、のか?」
棒のように真っ直な言葉が、口をついて出た
そうして、メイの頬へ手を触れようとしたら、ボッと青白い炎に包まれ粉のように消えるその脱殻
何が起きたのか 頭は"わかる"と言うけれど、心が"わからない"と叫んだ
578 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:05:46 ID:1RKN4gD70
「フフッフッフッフ………」
ぼんやりと、そのおかしな笑い声の方向へ体ごと向けると、マダンテに包まれ収縮し消えたはずのゾーマ
ゾーマは、ボロになったマントを引き摺り、近付いてくる
俺にはもう抵抗する気力なんて ない
メイが 死んでしまったんだ
「おもしろい事をしてくれたではないか…!
マダンテを使えるとはな…
おかげで闇の衣は消滅し、私自身も傷を負った 時間をかけ癒さねばならない
知っていたか? その魔法は術者自身の命を燃やし、相手を滅ぼす魔法なのだ
その女が消え去ったのはマダンテの効果、そして殺したのは」
不敵なゾーマは、力強い声で─
「お前だ!!」
俺が? そうか…
「惜しい魂を失ってしまったが…
結局は我が力となるであろう、我が世界でゆっくりとな」
ゾーマの言葉を、ただただ、聞くことしか、しない
「男 おまえの力、十分に使える
ルビスの力を持つお前は殺そうと思っていたが…」
ゾーマは右腕を俺へと伸ばし
「お前は弱いルビスの遣い 今からルビスではなくこの私の為に、その魂を、捧げ続けよ……」
579 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:07:02 ID:1RKN4gD70
離れた所には、輝きを失ったオリハルコンの剣
手を伸ばせば届くのだが、頭に置かれようとするゾーマの鋭い爪を伴った手を俺は、少し見上げ自ら受け入れた
メイは死んでしまった
ルビスのせいか?
いや… ゾーマの言う通り俺だ
俺の手で、その命を殺した
彼女が好きだと言った、この手で………
意識は次第に薄れていき、グイと、"我が世界"へ引き込まれて─
そのまま、永遠に眠ってしまいたいと、願った──
タカハシとメイ、そしてゾーマの姿は グランバニアの南から完全に消え
残されていたのは泥だらけの 立派な剣だけであった
それから57日後
世界は 魔王ゾーマにより全ての町を滅ぼされ
少数の人間が隠れ住む 荒れた廃地となる
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