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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら四泊目

1 :冒険の書庫の書記:2005/10/08(土) 23:00:44 ID:oCXhwG/I
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです。
小説形式、レポ形式、一言何でも歓迎です。

前スレ
「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら三泊目」(DAT落ち)
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1122390423
前々スレ
「もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら二泊目」(DAT落ち)
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1116324637/
初代スレ
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(DAT落ち)
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1110832409/

まとめサイト
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」冒険の書庫
http://www.geocities.jp/if_dq/

519 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 01:17:44 ID:Zv3ZUynx0
かくがくしかじかと話すと、ふーん。と素っ気ない答え。駄目だこりゃ。
フレノール郊外。
広々とした畑以外は一面草原。花が大地に彩を添える。遠くに目を凝らせば霞がかった海の向こうに集落とおぼしき色とりどりの屋根が見えた。
草原に海からの風が渡る。
正直身体を動かすのは苦手である。
今までの戦闘の中では呪文さえ使えれば魔物を倒せると思ってた。事実倒してきたし、また違った用途にも活用してきた。
回復呪文も習得したし、味方自分の怪我を治すことも出来た。
が。
魔力が尽きたらただの足手まといになるのはいやだ。という考えもあった。
まぁ実際その場面があって足手まといになったし、聖なるナイフを持っていてもただ振り回すっきりでミス連発だった。
あとでアリーナにパンチ連発されたけど。
忙しかったから無理だった、というのは言い訳にすぎない。時間など作ろうと思えば作れる。ただ、まとまった時間を得て一気に習得したかった。
「じゃあ、いい?まず腕立て500回」
「…はい?」
「私のいつもの日課のメニューだけど?」
…体術を教えてくれとは言ったがあんたのトレーニングメニューをやりたいとはいっておらん。
「あの…護身術をお願いします」
体術でも二種類ある。
一つはアリーナみたいな力で押せ押せのパワープレイ。
もう一つは相手の力を利用し、ことを上手く運ぶ。つまり護身術みたいなもん。
あたしは力がないか弱い乙女なので後者を選んだ。


520 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 01:21:54 ID:Zv3ZUynx0
「あの…護身術をお願いします」
体術でも二種類ある。
一つはアリーナみたいな力で押せ押せのパワープレイ。
もう一つは相手の力を利用し、ことを上手く運ぶ。つまり護身術みたいなもん。
あたしは力がないか弱い乙女なので後者を選んだ。
「護身術ぅ?!つまらないものやるわねぇ。やっぱり拳炸裂!蹴りが飛ぶ!肉が潰れるぐしゃりとした音と!ベキボキ折れる骨!肉弾戦はそうじゃなくっちゃ!」
力説する彼女。
いや…あの…。
お姫様がいうセリフじゃないんですけど…。
☆アリーナ先生による護身術講座☆
〜〜〜開始〜〜〜
基本動作から。
「そうそう…うんうん…こうして…そう」
アリーナの動作を見よう見まねで行い、おかしい場合はあたしの身体の形を訂正する。
教え方がうまい。間違っていても怒らないし、口での伝え方も適切。
そこそこ形が完成すると、今度は応用動作。
相手の力を使って倒す方法。
一通りの形が出来たらアリーナが相手役になる。失敗すると彼女の本気入った拳と蹴りが身体に入る。
身体で覚えるってゆーか痛みを身体で覚えるってゆーか…。

521 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 01:24:34 ID:Zv3ZUynx0
まぁ二度と間違えないようにするにはいいかも…。
〜〜〜終了〜〜〜
夕方。
「はぁ〜楽しかったわ〜!人に教えるっていうのも新鮮でいいわね!」
額から流れる汗を腕で拭いながら彼女。
「勉強になったよ。ありがとう」
額から流れる血を腕で拭いながらあたし。
「さぁ帰るわよ。明日も特訓!またお願いね」
自分から言い出しといてやだとは言えないから多分明日も付き合うんだろうな。
町へ向かってゆっくり帰りだす。
明日はきっと全身筋肉痛だなと思いながら。


522 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 01:33:06 ID:Zv3ZUynx0
あ!すいません!519と520、二重カキコになってる!今度は気を付けるorz

523 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/29(火) 09:07:19 ID:et8+J8QN0
>>519
× かくがくしかじか
○ かくかくしかじか

524 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 23:22:05 ID:DGAXp37L0
かくがくしかじかじゃなかったんだ…。今まで素で使ってた。教えてくれてありがとう。
投下します

525 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 23:24:20 ID:DGAXp37L0
5日目。
おはよう!
すんげぇ筋肉痛!身体動きません!
それでも今日もアリーナによる護身術講座を行う。
今日は弁当と飲み物を携えて。
ということは1日中やるんだよな…。鬼だ…。
服装は鎖帷子はなく動きやすい布の服。半袖、ズボン。いたってシンプル。
アリーナは半袖とミニスカート。パンツ見えそうだが「パンツじゃないわよ。局部強化下着よ」とのこと。パンツだと駄目でその局(ryは見せてもいいのかという素朴な疑問は無視だ。
因みにクリフトは教会へ行っているし、ブライは宿で風呂に入っている。
護身用に聖なるナイフを腰に差して出かける。
今日もいい天気。
早速昨日の復習をする。
「そう、そう…うん。なかなかできてるじゃない」
アリーナが感心する。
そりゃ昨日あんなに散々身体で覚えさせられればな。いくら覚えが悪いあたしでもちったあ覚えるさ。
「じゃあもうちょっと頑張ってみよう」アリーナはにかっと笑った。あたしは既に額に脂汗を滲ませていた。
「まぁ、いんじゃない?」
お互い息荒くしていた。
あたしは動体視力はない。が、ずっと速いものを意識しながら見続けると段々だが見えるようになってきた。


526 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 23:27:05 ID:DGAXp37L0
アリーナの動きを見て、交わせるようにはなってきてる。
「そろそろ魔物と戦ってみましょうか。魔法はなしよ。そのナイフは使っていいわ」
アリーナの提案に頷く。今なら出来そう。
アリーナが口笛を吹くとすぐ魔物が集まった。
人喰い草。
草原と同化していたか。草木みたいな風貌だが唯一頭と思われる花の場所に牙が付いている。
それが4匹。
「はぁっ!」
気を吐きながら人喰い草に飛び付くアリーナ。早速拳を花に食らわせてる。
ごっ!
鈍い音を立て、一匹崩れる。
アリーナの勇姿を見とれている場合ではない。人喰い草の蔓が伸びてくる。
蔓を掴んで引っ張り、人喰い草の身体を自分に寄せるとナイフを頭に真っ向から突き刺す。
きゅおおおうっ
妙な声をたて、人喰い草は弛緩した。
もう一匹、パックリ口を開け、こちらへ向かってくる!
ギリギリまで人喰い草を自分に近づけてから左足を軸にし半周身体を右に回して人喰い草を避ける。
と同時に胴と思われる茎を素早く利き足で右へ蹴り流し、今までの勢いも相まって人喰い草は草原に倒れ込み、その際頭の部分をナイフで突き刺す。


527 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 23:33:22 ID:DGAXp37L0
片足を軸にし身体を回すという動作、バスケット中ボールを持って止まったときの行動を想像してもらえばわかると思う。
草たちが動くなったことを確認し、散らばるゴールドを拾い集めた。
アリーナ先生にはうまくいったと自分で実感出来たでしょ、と。
その通りである。誉められればそれが自信に繋がる。
それから夕方まで経験を兼ねて魔物相手の実戦が続いた。
今日は朝から筋肉痛だったけど、自分では、よく出来たと思う。頑張った自分を誉めてあげたい。
今日も宿のうまい食事と戴き風呂に浸かる。
もしかしたら自分の日にちの計算が間違ってるかなと思って夜は毎日宿の裏手を窓ごしで覗いているが、来ていたら皆を呼び飛び出そうと思っている。
今日は来ていなかった。
また明日も講座だ。今日はうまくいった。明日もきっとうまくゆく。
ベッドに入り込むと眠りに落ちた。


528 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 23:35:56 ID:DGAXp37L0
6日目。
今日もいい(ry
お弁当を持っ(ry
あたしは体術と呪文を使って魔物を倒す、通常戦闘に近づけた特訓をしようと思う。
アリーナも昨日は素手だったが今日は鎖鎌が握られている。
彼女は、訓練じみたものは嫌いでやはり魔物相手にしているほうが生き生きとしている。
戦いが好き。身体を動かすことが好き。自分が強くなっていく実感が持てるのが好き。という彼女。武闘家として向いているなと思う。
あたしはあまり魔物を刃物で刺し殺すのも身体を動かすのも好きじゃないから遠くからでもダメージを与えられる呪文を選んでいるけど。
もっとも理論じみたことが好きだから呪文を勉強するのは別に構わない。
それにしても不発に終わったイオ。出来るならば完成させたいなぁ。
呪文の中ではイオ系が好きなんだよね。爆発させ一撃で魔物を木っ端微塵にぶっ飛ばす!その威力、その効果!
あ、アリーナみたいなこと言っちゃった!
しばらくたつと腹時計はごはん時と教えたので休憩し、弁当を広げた。中身はパン、骨付き肉、果物など。うまそう。
飲み物にはフレノール特産バジージュースとミネラルウォーター。バジーというのは林檎みたいな実で味は林檎と蜜柑がミックスされたような味。これも美味。
以前野宿した時のように聖水を周囲に振りかけ、魔物除けにする。
他愛のない話をしながら弁当を食べる。
弁当を食べ終えるとしばらくゆっくりしていた。アリーナは寝そべって。あたしは足を伸ばして。


529 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/11/29(火) 23:51:36 ID:DGAXp37L0
日も真上に上がり、燦々と輝き肌を焦がす。
草原を駈ける風。風と共に波打つ海。鳥たちが、渡っていた。綿飴のような入道雲が青空を埋める。今しかないと精一杯日差しを浴びて命育む緑の大地。
夏。
そしてもうすぐ秋がくる。ひっそり、そしてゆっくりと。
お互いしばらく黙っていた。
そして、あたしから切り出す。
「ねぇ」
「ん?」
「入道雲をみるとさ、あの上にお城があるとか思わない?お城があって、雲の上にあって絶えず動いてるの」
「…それは、考えたことなかった。街とかじゃなくて?」
「天空城」
「天空城?」
「そう。街じゃなくてお城。神様が住んでいたりするの」
「いたらいいわね」
「あ…あれ?」
「え?」
「ねぇ、あれ…あの入道雲の上、お城みたいじゃない?ほらあそこ」
「どれ?…ん〜なんか、雲にしか見えないわよ」
「そう?見えなかった?気のせいかな。ねぇ、もし、もしもよ、天空城があったら行ってみたいと思う?」
「あるわけないけどね…もしあったら…行ってみたいな。空から眺める世界は、どういうふうに見えるかな」
ふふっとあたしは笑った。
「なによぉ。夢物語に付き合ってあげたのに笑うなんて」
夢物語か。
そう思っていてもらってもいいや。
入道雲のてっぺんあたりに太陽の光を受けた天空城は白く輝いていた。


530 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/11/30(水) 00:23:19 ID:BxcEwXFK0
洞窟についた頃、日は沈みかけており、辺りは大分暗かった。
洞窟に入ると、地面に布団を敷いただけの簡易な宿屋があった。
他にもテーブルや椅子が設置されている。ここにいる旅人達は恐らく、洞窟が開通されるのを待っているのであろう。
更に進んでいくと、兵士二人が道をふさいでいた。
「おや、その棺桶は…まさか洞窟の魔物を倒してくれる方ですか?」
「ああ、魔物など3秒で骨にしてやる。」
「これは頼もしい!ではお通りください!」
兵士が道を明ける。エテポンゲは普通に通っているが、これで俺達が3秒で骨にされてしまえば、全世界に恥を晒す事になる。

兵士二人がいた所から、20m程進んだ所に魔物が待ち構えていた。
ホラーウォーカーと格闘パンサーだ。王の話では、魔物はバトルレックスと言う恐竜らしいのでこいつらではないだろうが、目が血走っているので注意が必要だ。
「ギギ…コロス…。」
その上キ○ガイときたか。キ○ガイは何をしでかすか全く分からないから怖い。
「てめえらなんざ2秒であの世行きだ!!」
エテポンゲが飛びかかる。
その時格闘パンサーの目が光り、次の瞬間にはエテポンゲの腹に格闘パンサーの爪が貫通していた。
「解剖してやるぜぁー!!」
格闘パンサーの爪が、次々にエテポンゲの肉を貫く。
流石にこれだけ攻撃をくらえば死んでしまうので、俺はギラで遠距離攻撃を試みた。
俺の手先から放たれた炎は、格闘パンサーとエテポンゲを燃やした。
エテポンゲは燃えながら喚いているが、エテポンゲも巻き込むつもりだったと言うのは極秘事項だ。
格闘パンサーが怯んだところに、ボロンゴが襲い掛かる。俺ははやぶさ斬りでホラーウォーカーに対抗した。
途中、真空派など強力な技をくらった時は危なかったが、何とか倒した。
ボロンゴも結構なダメージを受けているが、どうにか倒した様だ。

531 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/11/30(水) 00:23:50 ID:BxcEwXFK0
エテポンゲのダメージが凄いので、ホイミを唱えた。
が、まだ傷が癒えていない部分があった。どうやら回復量にも限度があるらしい。
エテポンゲはすっと立ち上がり、魔物達を睨みつけたかと思うと、今度はこの戦闘を遠くから見ていた兵士達にこう言った。
「おい、片付けておけよ。このボロクズを。」
そう言って、エテポンゲは先に進んでいく。
ボロクズに瞬殺されたボロクズが、ボロクズに対してボロクズとは、ボロクズ以下だな。
兵士二人は笑いを堪えていたが、敢えて言わないことにした。

丸太で川を渡ったり、バトルレックスの卵が孵化して襲い掛かってきたりと色々あったが、何とかバトルレックスの元に辿り着いた。
剣士は既に先に辿り着いており、今まさにバトルレックスと戦闘に突入しようとしていた。
それにしてもこの剣士凄いな。この魔物、体長4m以上で巨大なオノも持っているのに、冷静な顔をしている。
「行くぞ!」
剣士が激しく斬りかかる。しかし、バトルレックスの鋼の肉体は、剣を全く通さなかった。
バトルレックスが奇声をあげると、どこからともなく稲妻が現れた。
間一髪で避ける剣士。剣士の顔からは明らかに焦りの色が見え始めていた。
巨大なオノを振り続ける。剣士の方は防戦一方である。
「くっ…こんなところで時間をかけている暇はない!…イオラ!!!」
バトルレックスを中心に周囲が激しく爆発する。イオより爆発が大きく、爆発時間も長かった。
「とどめだ!はああ!!」
剣士は魔人の如く斬りかかった。その剣は、バトルレックスの鋼の肉体をいとも簡単に切り刻んだ。
バトルレックスは、悲鳴をあげてその場に倒れこんだ。

532 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/11/30(水) 00:24:30 ID:BxcEwXFK0
「さて、この死体を棺桶に入れればいいんだな。」
剣士はずるずると死体を引きずり、棺桶に入れた。
「はっはっは!じゃあな!」
剣士はその場から去っていく。畜生、なんか腹立つ。
その時、棺桶がガタガタと動き出したかと思うと、突然バトルレックスがカンオケの中から飛び起きた。
「なっ…何!?」
バトルレックスは巨大な斧を振り下ろし、剣士を叩き潰した。
剣士はその場に倒れこみ、気絶してしまった。
「ググ…ツギハ…オマエラダ…。」
バトルレックスがこちらに目標を定めた。
冗談じゃない。こんな化け物と戦えるか。さっさと逃げてやる。
が、俺が逃げようとした瞬間、バトルレックスは斧を振り下ろしてきた。
エテポンゲが狙われたが、軽く避ける。
「甘いぜ!くらえ!」
エテポンゲは、口から毒の霧を吐いた。バトルレックスは霧に包まれ、毒におかされて苦しんでいる。
俺はそのスキを突き、火炎斬りを放った。
しかし、バトルレックスの鋼の肉体に俺の剣は全く効かなかった。
バトルレックスの尻尾で叩かれ、俺は壁に弾き飛ばされた。
更に突撃したボロンゴ、エテポンゲにも同じく、尻尾で弾き飛ばす。
なんてこったい。こうも好きにやられるとは。
そういえばあの剣士、イオラを使って斬りかかる時、剣からオーラのようなものが発していたが、俺もあれをすれば倒せるのではないだろうか。
やり方はわからないが、とりあえずやってみればいいんだ。適当にな。

533 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/11/30(水) 00:25:04 ID:BxcEwXFK0
俺はバトルレックスに勢いよく飛びかかった。
いっけえ!ハイパーオーラ斬りだぁ!!
ガキィン!!
結果、先程と全く同じで、剣を通さなかった。オーラのようなものも出ていない。
再び尻尾で弾き飛ばされる。
立った二撃で体が動かなくなった。体中痛すぎる。
ホイミでは回復しきらないか。と言うことは呪文書に載っていた中級回復呪文「ベホイミ」の出番と言う訳だ。
俺は精神を集中させ、ベホイミを試みた。
ベホイミ!!
数秒の沈黙。ゲラゲラと笑うエテポンゲ。ニヤニヤするバトルレックス。
だめか。やはり中級呪文ともなると、初級呪文のようにはいかない。
仕方ないので、ホイミで我慢することにした。まだ体の痛みが残っている。
さて、一見どうしようもない状況に見えるが、策はある。
俺はすばやく立ち上がり、バトルレックスに向かってバギを放った。
バトルレックスは悶えている。成功だ。やはり物理攻撃に弱くても、呪文には弱いらしい。
ボロンゴはスピードでかく乱し、エテポンゲは毒を吐き、俺はバギで攻撃する。
段々弱ってきた。順調だ。そろそろとどめといくかい。
バギ!バギ!…バギマ!!
その瞬間、バギよりも一回りも二回りも大きい竜巻が現れ、バトルレックスの身を、風の刃が切り刻んだ。
どうやら成功したらしい。バギ連発の後に勢いでいけば何とかなると思っていたが、本当にできてしまった。
バギマの一撃で、バトルレックスはその場に倒れこんだ。
よし、どうやら倒した様だ。一応確認するが、ピクリとも動かない。
が、バトルレックスを棺桶に入れようとすると、突然起き上がった。
しまった、フェイントか!?殺される!

534 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/11/30(水) 00:25:38 ID:BxcEwXFK0
「ググ…オマエツヨイ…オレ…オマエニツイテイク…。」
バトルレックスが仲間になりたそうにこちらをみている。仲間にしてあげますか?
はい いいえ →だが断る!
バトルレックスが土下座をしている。仲間にしてあげますか?
はい いいえ →狼牙風風拳を再びくらいたいらしいな…。
バトルレックスが泣きそうな顔でこちらをみている。仲間にしてあげますか?
…仲間にしないと先に進めないらしい。避けられないイベントと言うことか。
俺は少しビビりながらも、バトルレックスを仲間に加える事にした。
その後、帰る時に瀕死の剣士にエテポンゲが「はっはっは!じゃあな!」と言っていた。剣士の悔しそうな顔が面白かった。

Lv16
HP25/84
MP0/32
武器:鋼の剣 鎧:鉄の鎧 兜:鉄兜
呪文;ホイミ、バギ、バギマ、ギラ、スカラ
特技:はやぶさ斬り、火炎斬り、正拳突き

535 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 08:44:41 ID:9h2z4s25O
テリー・ヘタレ君ワロスw

536 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 09:32:33 ID:9loMHBoBO
エテポンゲのファンになってしまいそうだ!

537 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 20:36:21 ID:55a8UySF0
アミタソも乙
すっかりファンになってしまいますた
武道会終了後も続けてくれるのかな?

538 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/01(木) 14:35:02 ID:SuhbPgHR0
537
うはwウレシスwww
武道大会後はね…4の人とかぶるから今のところ考えてはいないです。


539 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/01(木) 23:03:49 ID:ugxymfum0
やれやれ

540 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/02(金) 00:54:05 ID:30BYf5G+O
4の人最近こないなぁ。
結構好きなのに。

541 : ◆B3LZLiGmaE :2005/12/02(金) 01:03:02 ID:yWQFBLd40
ベットの上でオレは意識を取り戻した。
今日は日曜日のハズだから今日は寝まくるべな!と細く目を開けて
再び眠りについた。包丁がまな板と叩く音が聞こえるし、いつもの朝だ。

そう思って眠りについて何時間経ったんだろうか。
「お兄ちゃん、朝ごはんできたよ。」
と聞いた事もない優しい声に起こされた。
内心、キタコレ、妙リアルの夢だwwwwwwww
と覚醒したら2chの妹スレにでも報告しようと思いながら体を起こした。
傍には青い髪の女の子がたってる、超鳥山顔だ。正直萎えた。
萎えすぎて朝勃ちもしないくらい萎えた。んで、早く目覚まさないかなって思ってた。

「今日の夜は精霊祭なんだから早く起きて支度してよね!」
とか言ってるナニコレ、ファンタジー夢?全然把握できないwwwwww
ケツをボリボリと掻きながら、ベットから下りた。
本当、スンゲーリアルな夢だな、とかオレ思ってる。
ちゃんと眠いし、ちゃんと歩いてる、ここがどこだかまったくわからないけど。
おもむろにその女の子に「洗面所の場所キボンヌ。」とか言ってみた。
どうせ夢だし、日頃抑えてる2ch語でも使いまくるか、とか思ったんだ。
「キボンヌ?それいいね!私もつかってみよーっと!で、まだ寝ぼけてンの?」
うはwwwwwwww把握してくれたwwwwwww
というか、本当に洗面所がわからないのでウロウロしてみた。
テーブルには結構豪華なメシが並んでて、カラアゲを一つ撮み食い。

滅茶苦茶美味かったので二個も三個も食べておいた。
そして女の子に、うはwwwwテラウマスwwwwwww
と述べて、洗面所にたどりついた。蛇口がなかったので桶の中の水で洗ったら
無茶苦茶怒られた。それは飲み水だとかどうとか。
顔も洗ってサッパリして鏡を見たらオレ青い髪で超イケメンなのwwwwwwww
メシは美味いし、超イケメンだし、何よりリアルな夢だから絶対報告しようと思った。

後は、鳥山顔じゃなかったら文句はなかったのに………

542 : ◆B3LZLiGmaE :2005/12/02(金) 01:23:37 ID:yWQFBLd40
「村長さんに昼前に家にきてほしい。って言われてたでしょ?
 早くゴハン食べて支度して行ってきなよー?」

と鳥山顔の女の子に言われたので
渋々身近なタンスを開けて支度をしようと思ったんだ。
(この夢はファンタジー世界で、オレはナニモノかになりきってるんだな。)
と現状をまとめてタンスをあけたら、【65Gをみつけた!】とか
視界に埋まるようにウィンドウがでてきた。凄い邪魔。
ともすれば「あー!私のお小遣い!」と横で吼えられた。

オレは超イケメンの青髪の青年で、妙に自信があったので
鳥山顔のその女の子の額にキスしてやった。現実じゃありえん。
そしたら頬を赤らめて、もー、とか言ってるの。

萌えねえって。



543 : ◆B3LZLiGmaE :2005/12/02(金) 01:24:06 ID:yWQFBLd40
さておき、身支度を整えたオレは家の外に出てみた。
一瞬クソまぶしいフラッシュが起きて、なんかBGMまで流れ出した。
(見た感じド田舎なのに、BGMなんか流される村なんだなあ。)って思ったよ。
というか、なんか2Dのゲームでこんな地理を見たことあるなあ。って暫くブラブラ歩いてて思ったよ。
なんだかそんな記憶があるんだけど、全然思い出せない。
とりあえずイケメンになったオレはその辺を歩いてた鳥山顔の村娘に声をかけてみたよ。
「うはwwwwwwおはようwwwwwいい朝だねwwwっうぇwww」
2ch語炸裂、村娘は小首を傾げて「おはようございますホニャララララさん」と返答してきた。
ハ?何そのトリビアの種のアレみたいなごまかし方!って思った直後
【名前を入力してください】また視界一杯にウィンドウが広がった。邪魔だって。
入力もクソもキーボードねーし、どうすりゃいいんだ?とか思って
「わかんねー」って声にだしたら
【ワカンネでいいですか?】とか表示がでた。
「ハ?」って声を出したら、それに決定された。
決定された直後、オレはどうしても自分の名前が思い出せなくなった。激しく後悔した。
もう自分の名前は【ワカンネ】って思い込んでるんだけど。自分でもワカンネって名前なんだけど凄い不愉快。

(テラウゼエ夢だなあ、とか思ってる矢先に)
「ワカンネさん、村長がワカンネはまだこない!って息巻いてましたよ!」
とか言ってくるの、もうね、アホかとバカかと。マジでラチがあかないので
「村長んちどこだっけ?」って聞いてみた。マジわかんねーんだもん。参った。
そして早く夢が冷めればいいのに、って凄い思った。
「ワカンネさん、寝ぼけてるんですか?w」

ワカンネって言うんじゃねえッ!


544 : ◆B3LZLiGmaE :2005/12/02(金) 01:43:37 ID:yWQFBLd40
「ワカンネ、お前にしては珍しく遅刻したのう。お前を拾って早数年…」
無事村長の家にたどり着いたオレはすでにとても疲れていた。
村長の家にたどり着くまでに
ツノマスクのマッチョ兄貴に精霊の鎧テラカッコヨスwwwwwwwとか言われて
イライラしてツボ蹴っ飛ばしたら、変な棒がでてきたし。
それをみた鳥山バアちゃんが、ちゃんと装備するんだよ。とか言ってくるし。
「装備ってどうすんの?wwwwwww」って聞いたら
ステータスの事をレクチャーされた。とりあえず、ステータスって呟くと
ステータス画面が出る事がわかった。
【HP24 MP0 65G 0EXP 特技・呪文ナシ。】
【ひのきの棒 布の服 ナシ ナシ ナシ】
そのほかにもなんか色々あったが何もかも記憶がぼんやりしてきた。
最早夢だろうと現実でもどうでもイイ気さえしてきた。
考えるのも億劫だ。その上村長の長い話。誰かオレを殺せ。
「という事で村の民芸品をシエーナまで売りに行ってほしいんじゃがな。」
どういう事だよ。ゴメン、オレが聞いてなかった。んで村長はテーブルの上にある
本当、なんかサンタがもってるようなデカイ袋をオレに渡してくるの。
なんでも道具袋だとか。見りゃワカるっつーの。ハゲ。
というかコレもってオレはでかけるの?明らかにこんな大きいのいらないよねエ!
とか反論する余地もなく、ウップンを溜めて村の玄関を潜った。
ダカダカダッ!て脳味噌に直接響き渡った効果音。
そして一瞬のフェードアウトの後、目を開けたら広大な世界が広がっていた―――――
クソデケエ袋をあさって地図を取り出して確かめた。

 ○ライフコッド
 △山はだの道上
 △山はだの道下
 □シエーナ

あまりのアバウトっぷりにオレははにかんだ………


545 : ◆B3LZLiGmaE :2005/12/02(金) 01:54:57 ID:yWQFBLd40
2chのみんな、聞いてくれ。
先日、ものすごい勢いで魔物に囲まれた。
ものすごいってのは別にギャグでもなんでもない。マジで瞬きの間に囲まれた。

思わず痴漢男の出だしにもなるよ。いきなり茂みからスライム5匹出てくるんだもん。
というか、この状況になったやっとわかったよ、オレ。DQの世界に明らかに紛れこんじゃってるんだよ。
しかも現実チックに。スライム達が牙を向いてるもん。超おっかないんだけど。
もうすでに引き返せない、ええい、ままよ!とひのきの棒を振り上げた。
まずは体当たりをしかけたスライムにナイスバッティング。青い液体がはじけ飛んでお金がでてきた。
足元にコロコロと転がるスライム眼球に吐き気を催した。今腹をやられたらイっちまうぜ!

果たして、スライム達との戦闘は死闘を極めた。
やっぱりドテっぱらに体当たりを貰って、嘔吐。吐いてる間にスライム三匹に手足を噛み疲れて
物凄い痛い。きっとDQNを怒らせたらこの位ボロボロになるんだろうな。と思った。
体当たりをしてきたスライムを心を鬼にして踏み潰した。眼球の感触が背筋を振るわせる。
腕を噛み付いてるスライムには鉄拳の制裁。脆いんだろうか、大抵一発ではじけ飛ぶ。
足に噛み付いてきたスライムは蹴り払い、現在はスライム三匹とガンのつけあいだ。
HPを見てみたらまだHPは22も余ってる。1とか2とかになったら絶対死んじゃう。
それだけは阻止しなければ、とか思ってると
今度はぶちスライムまできやがった。しかも3体だよ、畜生。もう嫌だ。
しかしHP1とか2とかになりたくないので、オレは深呼吸を整えて


その場から一気に逃げ出した―――――

546 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/03(土) 09:30:58 ID:0Yl/qYjP0
点呼10番目

何か書こうかとは思うけどDQが思いだせん。
どこに何の町があったかとか、主人公の目的が何か、とか。
攻略本でも買ってこようか・・

547 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/03(土) 12:59:20 ID:CgJ4OEmp0
6日は、昼の後はマターリして終わってしまった。
まぁいいか。たまには。強制じゃないし。
今日も宿の裏にはマッチョたちは来ていなかった。やはり明日くるんだろう。んじゃ、おやすみ。
因みにドアは直してもらった。
7日目。
昼。(二度寝した)
今日はアリーナと付き合わない。
彼女は朝早くから誘いに来たが気乗りしないと伝えると、それならまた今度ね、と早々と踵を返した。
えーっ?!やだやだー!とか言われるかと思いきや結構サッパリしているもんである。
今日は、クリフトのところへ行こうかと思ってる。別に用事はないんだけどね。
格好は昨日と同じ。動きやすく半袖ズボン、腰に聖なるナイフを差して。煙草を持って。
彼のいる部屋へノックすると、「はい」と。ドアノブをひねる。
「あたしだよ〜ん」
「おや…こんにちは」
彼は振り向き、会釈する。入り口から飛び込んでくるのは南向きの大きな窓。日が差し込み部屋は明るい。その窓の右側の机に向かって本を読んでいた。彼に近づき、本を覗き込む。
「何読んでるの?エロ本?」
「なっ何をおっしゃいます?!いきなり!違いますよ!」
顔が一気に赤くなり慌てて否定する。
「これは魔法理論本ですよ」
見せてくれたものの、文字解らず。わかりませんか、と再び机に本を置き、
「これで最近勉強中なんです。ところでどうしたんですか?」
「別に用事はないんだけど」
「そうですか」
〜〜〜終了〜〜〜


548 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/03(土) 13:01:28 ID:CgJ4OEmp0
会話…続かないな…。ブライやアリーナとはよく喋るんだけど…。今まで会話する機会なんてなかったからかな。これならブライと呪文講座、していたほうが良かったかも。
「あ、お茶淹れましょう。昨日色々な茶葉を混ぜて飲んだんですがおいしかったので是非。ベッドに腰掛けてて下さい」
椅子をたち、いそいそと淹れ始める。彼が淹れたお茶は美味しかった。
可哀想に。あたしは大のお茶好きで茶飲みババアというあだ名があるんだぞ。飲ませたら最後だ。
またそんなあたしにお茶をくれるのでクリフトは喫茶というあだ名を命名しよう。きっと嬉しくない。
眼鏡はお茶の湯気がたつと曇るので外した。読書をするときは眼鏡をかけるらしい。
イイヨー(*´Д`*)ハァハァ眼鏡萌え〜☆
「旅は…どうですか」
既に3杯目のお茶を戴いているあたしに問う。
「まぁまぁ。クリフトは?」
「私ですか…?ええ、まぁまぁです」
………。
続かないな…。
と思いきや。
「私、小さい頃から城の教会にずっといたのであまり城の外には出なかったんですよ。たまにサランには行きましたが」
アリーナといいクリフトといい城の中にいたから肌が白いんだな。今は両方日に焼けて少しは逞しいが。
「城にいる13年間、学びうるものは全て学びました。そろそろ巡礼の旅に出たいと思っていたのです。そんな折り、我が主君アリーナ姫が旅に出たいと申し、私もご一緒したのです」
一気に巻くしあげたので喉が乾いたのかお茶を一口。


549 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/03(土) 13:05:34 ID:CgJ4OEmp0
ん…?13年間?
「あんた今何歳?」
「私は18。5歳までサランにいました。神の道はサランにいたときに得たのです」
そうなのか…。
「ブライ様やアリーナ姫と旅。あの方達は個性が強いですからね。一緒にいて大変ですよね」
苦笑する彼。
まぁ確かにあの2人の間にごく全うなこの青年だと陰は薄くなるな…。
あたしはもう慣れたが。
「旅をしながら今は呪いを解く呪文と魔法を封じ込める呪文を勉強しているんです」
「クリフトは攻撃呪文は覚えないの?」
「覚えようと思えば覚えるんですけど今はそちらの呪文を優先したいですね」
なるほど。
今の彼の役職は神官という肩書き。ちなみに神官、神父と聖職者があるが神父は教会にいて教会で行う仕事と(解毒など)冠婚葬祭を執り行うが、神官は上記に加え政治に対して発言力を持ち、王族の戴冠式を行う。
つまり神官のほうが位は高いが如何せん本人は勉強不足です、と。
二十歳未満で神官という肩書きを貰うのはまだ早いですと謙遜している。
サランの学校を主席で卒業したという理由が判った気がする。

550 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/03(土) 13:07:47 ID:CgJ4OEmp0
それくらいいいものを持っているならば王族と結婚権もあるのでは?と尋ねると、私は民間人であって貴族や豪族の出身ではありませんからと。
日本の天皇制ではでは血が濃くなるのを防ぐのに一般人が選ばれるのに。
また王族とは違うかな…。
目をやれば、カップに口付ける彼。珍しい、深海のような青髪に、整った顔立ち。アクアブルーの瞳を縁取るは長い睫。
がっちりとした身体付きではないが、そこそこに筋肉がついた中肉中背。背もすらっとして見た目だいたい175cm。そして、眼鏡。
ヤバい。ヤバいぞこれわ。
あたしの心の中に面妖な気持ちが湧いてきた。

551 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/03(土) 13:11:07 ID:CgJ4OEmp0
その日の夜、あたしたちは宿の裏側で待っていた。
あたしの手には黄金の腕輪。
時刻は推定8時頃。空には青白い満月が皓々と照らし、人影を作る。
風が鳴り、森がざわめく。
「どうやら約束のブツを持ってきたらしいな」
マッチョと猿轡と縄で縛られた姫が不安そうにこちらを見ている。マッチョの後ろには数名の黒装束。
「早くよこしな!」
「これは禍いを齎すものだぞ。どうしてこんなものを欲しがる」
ブライが交渉する。
「お前らには関係ない」
低い声で威圧するマッチョ。
「…お前ら魔法の匂いがする…下手なことしたら姫の命はない」
「いいよ」
と言おうとしたが止めた。
「渡すものさえ渡せばこちらだってお前らに危害は加えない。わかるだろう?俺達がちょっと力を出せばお前らなんて軽く一捻りだ。さぁ、どうする?」
そう。
マッチョと黒装束たち。
全く隙がない。
それどころか、殺気を振り撒き、こちらに威圧感さえ与える。
ここにいるだけでも息苦しい。だが。
「これが、一体、何に使われるのか、知っているのか!」
あたしはヤケクソのように言い放つ。


552 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/03(土) 13:13:30 ID:CgJ4OEmp0
「知らん。ただ、俺達は姫を浚い、黄金の腕輪を手にしろ。言われたのはそれだけだ」
「アミさん、渡しましょう。分かっているようですが、私たちにはかなう相手じゃないようです…。ここで私たちが戦いをふっかけても返り討ちになります」
クリフトが小声で囁く。
わかってる、わかってるよ!でも!
これは!
「アミ…渡そう。あの子を助けようよ」
アリーナが優しく諭す。
悔しいぃぃぃ!
あたしは腕輪を森へと投げた。
素早く黒装束たちは動き、森へ入ってあっと言う間に腕輪を探し当てた。
黒装束の手に月光を受けて輝く腕輪。
「確かに貰った。じゃあ姫を返してやる。じゃあな」
姫を突き放し、マッチョたちは風に消えた。
「…いくらあれが禍いを呼ぶものだとしても、必ずしもそうであるとは限らないぞ」
ブライがあたしに話しかける。
違う、そうじゃないんだよ!
それに、付け焼き刃とはいえ、体術も習ってバッチリだった。魔力もあるし、イオも習得出来たんだよ!
なのに、なのに、どうして止められなかったんだ!
あたしは悔しくて悔しくて…。涙がボロボロ溢れて、拭いさっても溢れて、鼻水すら拭かなくてグシャグシャな顔で慟哭した。
「大丈夫でしたか」
クリフトがナイフで縄と猿轡を外した。
「あ…ああ…!」
安心したのか、姫はアリーナの胸に飛び込み、泣き出した。
「怖かったでしょう」
アリーナは姫の頭を撫で、背中を抱きしめた。


553 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/03(土) 13:17:29 ID:CgJ4OEmp0
「あ、あたしの名前は、メイ。だだの、旅芸人なの。お姫様の格好をしたら皆ちやほやしてくれるから、つい気をよくしちゃって…。悪気は、無かったの。本当に、こんなことに巻き込んじゃってごめんなさい」
しゃっくりを上げながらメイは言う。
いいのよ、と頭を撫でながらアリーナ。
「これ、お礼にもならないんだけど、あたしの宝物。受け取って」
メイは鍵を渡した。
「お迎えも来たようだし、あたし、行きます」
振り向けば、メイの同行している宿で負傷していた神官と老人が立っていた。今はもう身体は大丈夫なようだ。
「ありがとう、命を救ってくれて。ありがとう、本当のお姫様…」
アリーナから離れるとメイは涙を拭き、同行者と町を出るまでアリーナの姿を見送り、手を振っていた。


554 :魔神戦争 ◆vNFYAR5c0g :2005/12/03(土) 21:12:11 ID:d7Jnrb4Z0
「ところで二代目よ、このことは知っているか?」
俺は剣を磨いているところにどこからか現れたバラモスに驚きながらも聞き返す。
「知っているって何が?」
「まだいっていなかったが、お前やわしのように魔の血が体内に流れている物が、
死後どうなると思う?」
俺は何も言わずにただ聞いているだけだった
「魔の血がその体内に流れるものは、死後天国や地獄にもいけずに、死んだときの苦しみを受けたまま魂だけが永遠に漂うことになる」
「そのまま続けてくれ」
「そしてそのうち精神もなくなり、魂だけが永遠に漂うことになる、永遠にな」
・・・・・
「そう言うのはもっと早くいってくれないか、今さら遅いだろ」
「いったところでお前は魔人王になっていただろうからな、お前の場合」
・・・・・・・・・・・
「それじゃあ、死後そうなるのは、俺、バラモス、ゾーマ、一代目、魔人達、か」
「いや、あの魔人達には魔の血は流れておらん、あいつらは生まれたばかりの子供達をできるだけきずかれなすように
モンスター達にさらわした子供達を魔人として教育しただけだから、魔の血は流れていない」
「それも初めて聞くな、なぜ教えなかった」
「説明したがお前が聞かなかったんじゃろうが・・・」


555 :魔神戦争 ◆vNFYAR5c0g :2005/12/03(土) 21:45:10 ID:d7Jnrb4Z0
そういえば修行を始めたばかりの頃、そんな感じのことをいってたような
「そんなことより二代目よこの間のサマンオサの件だが、なぜ正面からたたかなかった」
「そんなことをすれば、サマンオサとつながっている国全てを敵に回すことになるし、
現に今の状況はそんな感じなんだが、今あそこをつぶせば別国に本拠地の場所がばれてしまう
かもしれないしな、それならいっそのこと内部から操ってしまったほうが楽だし、
犠牲も少ないしな」
とりあえず呼吸を整える
「それにゾーマ様から送られてくるモンスターもレベルの低い連中ばっかりだからな、
少しでも戦力は多い方が良い」
HP:399/399
MP:320/320
E魔界の剣 E魔界の鎧 
呪文:エビルデイン・イオラ・ベホイミ・ルーラ
特技:魔人斬り(強)


556 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2005/12/04(日) 12:59:45 ID:g1xdcl+vO
サマルトリアからムーンペタに向かう事になった俺たちはローラの門を抜け無事ムーンペタについた。
街に入ったら犬が俺たちを迎えてくれた。しっぽもふって可愛い子犬だ。
リア「この子かわぃぃ〜☆」
リアが子犬を抱き抱えた。子犬もリアを気に入っているみたいだ。
サマル 「この犬は不思議だね。」
タケ「ああ。雰囲気で何か感じたのかなぁ?」
普通犬は警戒して吠えるのだがこの犬は人なつっこいのだ。
リア「おにいちゃん、もょもとさん。この子と遊んでいい?」
サマル 「ダメだよ。勝手な行動をしちゃ。」
タケ「まぁいいじゃないか。ただし街の外に出ないのが条件だぞ。」
リア「はぁ〜い。」

リアと子犬は一緒に離れていった。やっぱ女の子は笑顔が一番だ。
サマル 「甘やかし過ぎじゃないかい?もょ。」
タケ「色んな物に興味がある年頃だから無理もない。それに、新しい事を知る良い機会じゃないか。」
サマル 「それもそうだけど…」タケ「サマルがお兄さんだから心配する気持ちは理解できるけどあの娘の気持ちも理解してあげるのも必要だ。」
サマル 「それもそうだね。じゃあ僕達は武器防具を見にいこうか。」


557 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2005/12/04(日) 13:01:42 ID:g1xdcl+vO
ここの武器防具は今持っている青銅の剣が真ん中のランクで鉄の槍、鋼の剣が売っている。
防具も鉄の鎧や盾、兜など重い装備品が売っていた。
サマル 「うーん。僕やリアにはちょっと重すぎるね。」
タケ「少なくても武器だけは買い替えたいな。」
サマル 「リリザで僕の武器防具を揃えてくれたんだからもょが何か買いなよ。」
タケ「いいのか?」
サマル 「戦力を上げるために必要な投資はしなくてはいけないからさ。もょが僕に教えてくれたじゃないか。」
タケ「わかった。」
俺は鋼の剣を購入することにした。これで一人前の剣士になった気分だ。

サマル 「格好いいじゃないか!僕も足を引っ張らないようにしなくっちゃ。」
タケ「その意気だ。サマルは頼もしい奴だよ。」
サマル 「そんな事無いよ。」
タケ「そんな事無いよな。」
サマル 「ひどいじゃないか!」
タケ「アハハ。まぁ落ち着けって。」
おっちょくったら小学生みたいに怒ってサマルは愉快な奴だ。パーティのいじり役はこいつに決まりだな。
街をふらついていると兵士の格好をした女がいた。街には相応しくない服装で何か挙動不振だ。

タケ「あのー」
兵士「ひぃっ!」
タケ「あっ〜びっくりした。どうしたのです?」
兵士「ム、ムーンブルグの城が…」
タケ「なんやて!?ど、どないしたんや?」
サマル 「…んっ?しゃべり方がおかしいよ。もょ?」
タケ「あ、アハッ…何でもないぞ。」
あぶね〜、気を付けないと。
サマル 「一体何があったのです?」
兵士「ハーゴン軍に攻められ、国王様は殺されました…」


558 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2005/12/04(日) 13:02:28 ID:g1xdcl+vO
タケ「やはり、あの兵士が言った事は本当だったのか!」
兵士「あの兵士って!?あなた方はいったい…?」
タケ「自己紹介が遅れてすまない。俺はローレシアの皇子もょもと。こっちにいるのがサマルトリアの皇子サマルだ。」
兵士「あ、あなた方がローレシアとサマルトリアの…失礼致しました。私の名はカタリナです。」
サマル 「カタリナさんはどうやってハーゴン軍から生き延びたの?」
カタリナ「私も必死に戦ったのですが…国王様や王女様を置いて逃げてしまったのです。会わす顔がありません…」
タケ「カタリナさん。あんまり自分を責めるな。それより、王女はどうなったのだ?」
カタリナ「それが…行方不明なのです。」
サマル 「そんな…」
カタリナ「はい。王様がハーゴン軍に殺されたのは目撃しましたが王女様までは…うっうっ…」
タケ「もしかしたら…生きている可能性があるかもしれないな。」
サマル 「で、でも…ムーンブルグ城は…」
タケ「わかってる。しかしこの目で確認しないと納得できないからな。」
カタリナ「それなら私も連れていってください!」
タケ「あんたはここに残っておいてくれ。俺達でなんとかするから。言っては悪いが足でどまいなるだけだ。」
カタリナ「し、しかし…」
サマル 「それにカタリナさんには危険な目には会わせたくないからね。」
タケ「余計な事を言うなバカ!」
思いっきりサマルをブン殴ってやった。空気を読めない奴は困ったもんだ。
サマル 「い、痛いじゃないか!・゚・(ノд`)・゚・」
タケ「教訓してやったんだから感謝しろ。」

まさに外道!



559 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2005/12/04(日) 13:03:52 ID:g1xdcl+vO
カタリナ「あ、あの、よろしいですか?」
タケ「すまない。どうした?」
カタリナ「じゃあこれをお持ちください。」
カタリナは俺達に綺麗な翼を渡してくれた。
サマル 「これは確か…」
カタリナ「はい。キメラの翼です。耳文学なのですが一度立ち寄った場所に一瞬で行けるみたいです。」
タケ「すごいアイテムだな。しかしどうやって手に入れたんだ?」
カタリナ「ハーゴン軍が落としていったのでそれをくすねたのですよ。」
サマル「キメラの翼はなかなか市場に出回らないから結構貴重だよ。一回買ったことあるけど300ゴールドはしたなぁ。」
タケ「そ、そんなに高いのか?」
サマル 「うん。」
なんてこった。貴重なアイテムは使いたくないという心理が働くからな。
リア「お兄ちゃん!もょもとさん!どうしたの?」
サマル 「び、びっくりしたじゃないか!」
カタリナ「こちらの方は?」
タケ「彼女はサマルの妹のリア。リアちゃん、その前に挨拶しないといけないだろ。」
リア「ごめんなさ〜い。」
教育係かよ俺は?
リア「ねえねえ、何の話しているの?」
タケ「こちらの方にムーンブルグ城について話してもらった。今から向かう事にしたよ。」
リア「本当!?」

タケ「多分相当危ないから気を引き締める様にな。」
リア「う、うん…」
リアがちょっととまどったのだが実際問題ハーゴン軍の残党がいてもおかしくはない。油断は禁物だ。
タケ「じゃあ行くとするか!」
サマル 「ああ。」
カタリナ「お気を付けて。無事に戻ってきてください!」
リア「任せて!必ず戻ってくるからね!」
俺達はムーンブルグ城に向かう事になった。

560 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2005/12/04(日) 13:05:32 ID:g1xdcl+vO
滅ぼされた跡地に向かうのは気が進まないが何かてがかりが欲しい。

事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!

って言う風に青島刑事は言っていたもんな。

もょ(いまからムーンブルグにむかうのか!?)
タケ(そうやで。何かあったん?)
もょ(わがままいってわるいがかわってくれないか?)
タケ(またまた、どないしたんよ?)
もょ(このめでかくにんしたいんだ。たのむ!)
タケ(も〜。まぁええけど、そのかわり今までより厳しい場所になるから下手だけは打つなよ。)
もょ(おんにきるよ。)
タケ(その代わり、戦闘は任せるで。その時は完全に引っ込むから。俺も見ておきたいんよ。)
もょ(じゃあ、まわりのけいかいをしてくれ。)
タケ(あいよ〜)

話をしている間に建物が見えてきた。その建物は小学校の時、修学旅行で見に行った戦争博物館の写真の様な状態だった。

これが…戦争…

生で崩壊した戦争の跡地を見たのは初めてだ。平和な時代に生まれた俺にとってはあまりにもショックが大きかった…
俺だけではなくもょもと達もとまどっているみたいだった。
リア「こ、これがムーンブルグ城…」
サマル 「じ、実際に滅んでいるなんて…」
もょ「とりあえずはいろう…ふたりともきをつけろよ。」

561 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2005/12/04(日) 13:06:32 ID:g1xdcl+vO
三人はムーンブルグ城に入った。内部の壁はボロボロに崩れ、人、モンスターの死体が転がっている。
人の体がバラバラになっていたりモンスターの目がえぐれていたり…
軽々しく表現するのは嫌だがまさに、『地獄』だ。
サマル 「うっ…おぇぇぇ〜」
リア「お、お兄ちゃん、どうしたの?」
サマル 「ち、ちょっと気分が悪くなってね…」
もょ「おもてでやすむか。サマル?」
サマル 「だ、大丈夫。探索を続けよう。」

もょもと達は王の間についた。赤い炎の様な物がうろついている。

もょ「みんなかまえろ。こうげきをしかけるぞ。」

もょもとのが炎の物体に斬り掛けようとした時に炎が話し掛けてきたのだ。

炎 「ダレカイルノカ…?」
もょ「な、なんだ?」
炎 「ワタシハムーンブルグノオウ。ハナシヲキイテクレ…ワシニハナニモキコエヌ…」
サマル 「もょ、リア、黙って聴いてみよう。」
王?「ワガムスメムーンガハーゴンノマホウニヨリコイヌニサレテシマッタ…」
王?「マモノタチノハナシデヒガシノヌマニワガシロノヒホウ『ラーノカガミ』ヲカクシタラシイ…ワシハコレヲダレカツタエルタメニシヌワケニハイカヌ…」

562 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2005/12/04(日) 13:07:54 ID:g1xdcl+vO
どうやらこの炎はムーンブルグ王の魂らしい。よーするにラーの鏡を探せって訳か。
もょ「ラーのかがみをさがしにいこう。なにかてがかりがつかめるかもしれない。」
サマル 「そうだね。もっと探索もしたいけど、その方が先決だね。」
リア「で、でもあの炎は本当に王様なの?」
もょ「おれにはなにかひびくものをかんじた。しんようしてもいいとおもう。」
三人が話をしている内に何かの気配を感じた。
タケ(もょ!聞こえるか?)
もょ(どうしたんだ?)
タケ(早めにラーの鏡を探しに行った方がいい。ハーゴンの部下に聞かれたかもしれへん。何かの気配を感じたで。)
もょ(そいつはどのあたりにいるんだ?)
タケ(俺達が入ってきた場所や。急いで戻ってくれや!)
もょもとに頼み込み、入り口辺りに戻ると一人の兵士の服装をした男が立っていた。
その男はボロボロな服装で体中血がついていた。


563 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2005/12/04(日) 13:09:58 ID:g1xdcl+vO
兵士「お、お前達は…?」
もょ「おまえこそだれだ?ここでなにをしている?」
兵士「俺はここの兵士だ。ハーゴン達にやられたんだ…」
もょ「そうなのか。疑って悪かった。俺はローレシアのもょもと。この二人はサマルトリアのサマルとリアだ。」
兵士「あっ…し、失礼致しましたぁ!私の名はトーマス。ムーンブルグの兵士長です。」
リア「トーマスさんはどうやって生き残ったの?」
トーマス「モンスターの攻撃で気を失って、気が付いたら誰もいなかったのです。」
サマル 「しかしムーンブルグがこんな事になるなんて…信じられない」
トーマス「まさかハーゴン達があんなに強いとは…」
もょ「ぶじでなによりだ。トーマスさん、ラーのかがみってしっているか?」
トーマス「いえ、私には分かりませんが…」
もょ「おれたちはそれをさがしている。おうじょについててがかりをえることができるかもしれないからな。」
トーマス「それなら私にも協力させてください!」
サマル 「そ、その傷じゃ危ないよ。ムーンペタに戻ったほうが…」
トーマス「いえ、王女様が生きておられるのなら命を賭ける。それが私の役目です。」
もょ「それならいっしょにいこう。きょうりょくしてくれ。」
トーマス「はい!ありがとうございます。もょもと皇子!」
リア「じゃあラーの鏡を探しに行きましょ!」

トーマスが加わり東にある沼にラーの鏡を探しに行くことになった。


564 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2005/12/04(日) 13:10:31 ID:g1xdcl+vO
しかしこのトーマス、槍の使い手だが少なくともサマルよりは強い。
マンドリルには致命的にダメージを与え、タホドラキー達を串刺しにするなどなかなかの腕前だ。
リア「トーマスさんすごおぃ!」
トーマス「私はまだまだですよ。もょもと皇子の方が私よりも強いでしょうね。」
サマル 「でも心強い人が増えると頼もしいよ。」
もょ「そろそろもくてきのばしょがみえてきたぞ…」
俺達はラーの鏡がある沼についた。それにしても広い沼だ。
サマル 「こ、この中から探さなきゃいけないの?」
もょ「やるしかないだろ。」
リア「頑張って探そうよ。絶対あるはずだよ。」
もょ「そうだな。あきらめてはだめだ。さっそくはじめるか!」
トーマス「じゃあ私は皆様の警護をしておきますね。」

俺達はラーの鏡を探し始める事にした。

もょもと&タケ
Lv.11
HP:69/80
MP: 0/ 0
E鋼の剣 E皮の鎧 E鱗の盾 E木の帽子 
特技:かすみ二段・強撃・チェンジ・はやぶさ斬り(もょもと専用)


565 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 00:23:31 ID:CMbra5wTO
埋めマンさんage

566 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 03:02:54 ID:LmwMJOBgO
レッドマンGJ!!
サマルの妹が出ているのは(・∀・)イイ!!ね。

567 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 03:31:59 ID:GMDTpU9u0
アミタソ(;´Д`)ハァハァ
なんか凄く好きかも
中の人のキャラですか?

エイコタソも待ってるYO

568 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/05(月) 11:53:15 ID:rI+RCuBz0
567
アリガト!
批判、感想、誤字脱字を教えてくれると大変有り難いし嬉しい。
読んでいてくれる人がいるんだなって思うし。
ちなみに中の人…かも。
投下します

569 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/05(月) 11:55:00 ID:rI+RCuBz0
かくて一つの事件が終わった。そして次の日。
「この町から南下して、海まで出た後西へ歩けば砂漠のバザーが開かれているんですって。沢山他国の商品が売っているみたい。行きましょう」
町から得られた情報を手掛かりに、行き先を決めた。
ブライは一国の王女がお忍びで旅をするなんて、偽姫さらいの件でお分かりじゃろう、帰りましょうと提案するが聞き入れず、逆にブライが城へ帰ればと言い放つ。
それは困ります!姫に…とブツブツ言っているが、まぁ年をとれば説教くさくもなるし放っておく。
アリーナは他国エンドールで武術大会。そう主君が申し上げている以上ご一緒させていただくのが筋な気もするし、危険な目にあおうがそう決めた以上アリーナの全責任である。
可愛い子には旅させろという言葉を知らないのか。
ブライを尻目にあたしたちは武装し、さっさと町を出た。
後からブツクサ言いながら付いてきたが。
教育係で付いてゆくとか、巡礼の旅だとか、色々理由つけているけど、皆ただアリーナが好きなんだよね。
だから、思う。アリーナとずっと一緒にいたいから。元々自分のいた場所に拘りはないからホームシックにもならなかったし、それより色んな場所に行きたいし。
日本に帰りたいとは思わなくなっていた。
大好物のラーメンとチョコレートと自分の吸っている煙草が手に入らないのは残念だが。


570 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/05(月) 11:58:18 ID:rI+RCuBz0
人さらいがあって、要求されたものを得る為に洞窟に潜ったり、アリーナやクリフトとは語る時間があったり、丘の上から眺める風景は絶景であり。何よりじゃじゃ馬精神旺盛の、温かい人々たち。
サントハイム領フレノール。いい町である。
フレノールを出立し、街道を南下。あの野宿した場所でもう一度野宿。朝起きてまた更に南下。
途中、様々な魔物に襲われたが連携して倒してゆく。習得したイオ、大活躍。たまに木も一緒に巻き込んで火事おこしたりした。
あとで利用を控えるようにとヒャダルコで消火活動をしたブライに叱られたが。
森を抜けると平原が広がると同時に彼方地平線には海が見えた。夕日がゆっくりと海へ沈んでゆく中、あたしたちは祠へと到着した。
フレノールで見た木造ではなく、煉瓦を隙間なく埋め、海風に耐えられるよう強化されたのか。
一戸建ての広そうな祠である。
「ここはエンドールへの玄関口。サントハイム王よりアリーナ様を通すなと勅令を賜っております」
と入るなり口調も固ければ頭も固そうなおっさん兵士が通せんぼした。
今はエンドールに行かず、砂漠のバザーへ行く予定だし、何より夜。野宿は嫌なのでここで一泊泊めてもらう理由で立ち寄っただけ。
ここからエンドールへ行ける、というのは覚えておいたほうがいい。


571 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/05(月) 12:03:19 ID:rI+RCuBz0
「えっ、ここに泊まるんですか」
兵士が別の理由で立ち寄ったことでやや面食らった顔をする。
「駄目かしら」
「いえ、ですが、まぁ確かに多数の兵士がここに滞在しベッドはありますからお貸し出来ますけれども」
「それなら良いではないか。まさか国に仕える兵士が王女様に外で寝ろと?」
ブライが既に武器防具を外し椅子に腰掛けリラックスしている。
「お茶、飲みたいのう。お湯はあるか。クリフト、疲労回復の薬草がええな。あるか」
「ありますよ。用意します」
クリフトは兵士を押しのけてずけずけと台所へ入ってゆく。
「ねぇ、お風呂あります?汗かいちゃって。お茶飲んでから入りたいんだけど」
「ごはんはないの?(・∀・)ニヤニヤ」
「さ、皆さんお茶ドゾー。⊃旦」
「ちょww宿ぢゃねーしwwwおまいらw勝手杉ww」
兵士が喚く中、あたしたちは勝手に祠の中で行動した。


572 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/05(月) 12:04:56 ID:rI+RCuBz0
次の日の朝、祠を発った。
西には360度広がる大海原。入道雲は海から生まれ、ゆっくりと高度を上げてゆく。波は緩やに白い砂浜を往復する。海水浴を楽しむ人々。海の反対側を臨めば残雪残る険しき山脈が連なる。
あの祠、海よりそう遠くない場所に位置する。
あそこに海の家なり宿屋があればそこに一泊してエンドールへ疲れを残さずに行けると思うし、海水浴にきている人は宿に長く滞在していくらかお金を落としていけるしと思うのんだけど。
サントハイムは観光に力をいれていないのか。
(そんなこと知らないby王女)
一行は砂漠のバザーを目指す。


573 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/05(月) 12:08:34 ID:rI+RCuBz0
祠から西側へ歩いて行くと、足場は草原からやがて砂地に変わって行き、景色も一面砂の山に変わった。
砂漠のバザーへの行き方は看板が50m間隔で立っていた為迷わなかったし、遠くからでもバザー開催地を臨めた。
魔物は砂漠仕様で熱に強く、身体が硬いものばかり。ブライのヒャダルコとルカニが大活躍。
おじいちゃん使えるやーん。
日差しは強く、砂からの照り返しも強く、吹く風は熱風と化し、汗は噴き出して滝の様に流れ、こぼれると同時に砂に染み込んでゆく。
装備を外し真っ裸になって今すぐ水風呂に浸かりたい。
暑くてダレて、早く着きたいと思っても砂に足を捕られ、なかなか前に進めず。いつしか皆無口であった。
這々の体で辿り着く頃には、夕日は砂浜へと落ちて行った。
砂漠の夜。
日中の温度と夜の温度の落差が激しいと聞くけれども、確かにやや寒い。
宿に行き、皆真っ先に飛び込んだのは風呂だった。水風呂じゃなかった。念のため。
期間限定のバザーだが宿は簡易に出来ていない。そこらの宿と引けを取らない程度に良くできたもの。
異国風味のタペストリーやカーペットがひかれて眺めていたかったが、日中の疲れが睡眠を誘い、ベッドに入り込むと瞼はすぐに閉じてしまった。
次の日。
宿を出ると日差しが真っ先に降り注いだ。お買い物日和。…というよりはやや暑い。
皆半袖に着替えてバザー散策。
露天に所狭しとと並んだ品物に目を奪われる4人。


574 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/05(月) 12:11:32 ID:rI+RCuBz0
「これ可愛い」
服をとり、胸に当ててみる。
「儂はつばつきの帽子が欲しいのう。お前たちは髪があるからいいが皮の帽子じゃ頭が暑くてかなわんわい」
「暑いというより眩しくてブライの姿が見れません」
「何じゃと?」
「これだけ店があるなら強い武器あるかしら。防具はいいのよ。動きやすければ」
「ここには教会はないのですね。残念です」
アリーナの要望で武器屋へ行くとめぼしいものは見つからず、彼女は拗ねた。
鉄の槍で槍の使い方がうまくなったクリフト君が調子に乗り第2弾、ホーリーランスを購入。これは軽いし使いやすいかもと感想を述べた。騎士が使うような槍で、彼の格好良さ2倍。
あたしとブライは武器を売ってそれぞれ毒牙のナイフを購入。ナイフに毒が付着して稀に麻痺を引き起こすそうだ。
持ち手が蝶になっていて可愛い。
アリーナの鎖鎌を売り、新たな鎖鎌を購入。使い古し、血や汗で錆が出来ていたからだ。
そんな武器たちを買い取りしてくれるのもまた磨けば使えるからさ、と日に当たり真っ黒になった武器屋のおじさんが言う。
夜出会ったらどこからが人間だかわからないこと受け合いである。
防具屋を覗くとめぼしいものは見つからなかったが、唯一鱗の盾をあたしとクリフトとブライが購入。皮の盾よりやや大きく、しっかりした鱗がきっと魔物からの攻撃に文字通り盾になってくれるだろう。
アリーナは盾を装備しない。そんな邪魔なもの持ったら動きが阻害されると遠慮した。代わりに左腕に露天で買ったブレスレットをはめた。


575 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/05(月) 12:15:35 ID:rI+RCuBz0
このバザーの中央にあるオアシスでジュースを飲みながら一休み。椰子の木が木陰になり気分は南国。周りが砂ばっかなのが気にくわないが…。
「あっ!姫様!」
見たとこ若い小太り兵士があたしたちの姿を見、小走りしてくる。
「ここなら姫様がくると思い、待っておりました。至急サントハイムにお戻りください!王様のお声が出なくなったのです!」
「なんですって!?」
なんでぇ大したことないじゃん。
「こうしちゃいられないわ…。クリフト、ブライ!行くわよ!ちょっとアミ!変顔でジュース啜らないでよ気持ち悪い」
気持ち悪いって…。
「声が出なくなっただけでしょう?何でそんなに慌てるのよ?」
煙草に火をつけ一口吸いながらあたし。
「アミさん…こう見えてもアリーナ様、父上様の王陛下が大好きなのですよ」
とクリフトがこっそり耳元で教えてくれた。
ファザコンかい?
「ここからまたサントハイムに戻れと申されるか。帰るには遠いのう。しからば…あの呪文を試すか」
「あの呪文とは?」
「ルーラだ。空間の一部を歪ませ、一度行った場所へと戻る」
「着けばいいわ。それお願い」
「それでは皆、集まれ。…唱えるぞ。サントハイムへ、ルーラっ!」
あたしたちは小さな光になった。

576 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/05(月) 14:49:53 ID:6YQfsasxO
http://h.pic.to/56n59
スレ違いかもしれないが、絵を描いてみた。
一応アリーナ。

577 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 14:53:40 ID:YPhiPVqS0
>>576
PCでも許可

578 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 23:35:56 ID:lB+EsVSj0
>>576
テラウマスw

579 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/06(火) 00:19:35 ID:5v0nYTh10
ドランゴ(バトルレックスの愛称)を城付近に待機させ城に戻った俺は、英雄として歓迎された。
死体については、ドラゴンキッズをギラで骨にし、「バトルレックスは骨にした」と王に言うというエテポンゲの浅はかな提案を実行した。
バレるかと思ったが、案外簡単にだまされた。王はバカなのかもしれない。
夜、宴が始まった。俺は例によってオレンジジュースをチビチビと飲む。
王は酔っ払い、札束を地面にばら撒き「わははは!金だ金だ!」といいながら金の上をごろごろ転がっている。
マトモな王と思っていたが、王はどこに行ってもバカだらけらしい。
エテポンゲも参加し、「世の中は俺と金と中心に回っているのだ!」と言っている。アホか。妄想は夢の中でしとけ。
夜も大分更けてきたので、寝る事にした。城にある客用の寝室を使っていいらしい。
バカ笑いをしながらのたうち回っているエテポンゲを殴り倒して気絶させ、またエテポンゲに飲まされて酔い潰れたボロンゴと気絶したエテポンゲを引きずって、その日は夜中の1時に眠りについた。

…苦しい。体調を崩してしまったのだろうか。体が重い。
まぶたをゆっくりと開くと、俺の上に何かが乗っていた。
…エテポンゲと王だ。何で俺の上に乗っているんだ。
普段なら俺の膝蹴り→羽交い絞め→ジャーマンスープレックス→起き上がった所にマッハパンチというく○お君ばりのコンボが炸裂していたが、やはり朝は弱く力が出ない。
そう言えば力が出ないと言えばアン○ンマンだが、あのアニメはオープニングに「愛と勇気だけが友達さ」というとんでもない事をがさらっと言っている。気弱で友達のいない園児にはグサリと来る歌詞だろう。これは教育に悪いとして訴えるべきだ。

とりあえず二人とどかして部屋を出ると、兵士に「昨晩はお楽しみでしたね。」と言われたが適当に聞き流した。
城を見回ると、随分散らかっており兵士が片づけをしていた。どうやら昨日は宴で相当散らかったらしい。

580 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/06(火) 00:20:23 ID:5v0nYTh10
数十分後、王が起床して宝を渡されることになった。
俺の目の前に宝箱が置かれる。また大層な箱を用意しやがって。中身は大した事ないんだろう。
左の宝箱…静寂の玉。敵の呪文を封じる玉。
右の宝箱…錬金釜。最大三つのアイテムを合成できる釜。
真ん中の宝箱…雷鳴の剣。振りかざすと雷と呼び起こす神秘の剣。
三つともかなり貴重なアイテムらしい。ドランゴは倒してはいないのだから詐欺に近いが、やはり貰える物は貰う主義と言うのは変わらない。



城を出た俺はドランゴと合流し、開通された南の洞窟を抜けた。
洞窟を抜けると、目の前には砂漠が広がった。
城を出たのは夕方前で、今は太陽も沈みかけているので快適な気温だ。
砂漠は昼夜の気温差が激しいので、夕方と明け方に移動し、昼は岩陰で夕方になるまで待つ。
できるだけ早くオアシスの町につきたいので、俺たちは早足で南下する。
日は沈み、徐々に気温が下がる。夜の寒さが俺たちの体温を奪う。
寒さでガタガタ震えていると、目の前に一匹のともしび小僧が立ち憚った。
その瞬間エテポンゲの目がギラリと光り、ともしび小僧に飛びかかった。
エテポンゲは一瞬でともしび小僧を半殺しにし、こういった。
「おい、死にたくなければ黙って俺たちについてきな。」
ともしび小僧が震えながら頷く。エテポンゲに一瞬で半殺しにされたのが余程恐ろしかったんだろう。


581 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/06(火) 00:20:53 ID:5v0nYTh10
暖かい。非常に楽な砂漠の旅だ。
ともしび小僧の頭にある炎が、俺達の体を温める。ともしび小僧の周囲に密集し歩く俺達。ともしび小僧はむさ苦しそうにしているが、そんな事は構っていられん。
旅人たちは砂漠で体力を奪われ、魔物たちに苦戦する事が多いらしいのだが、ともしび小僧のお陰で楽に魔物を倒すことができる。
いや、寒くないから戦闘も楽ということもあるが、一番はドランゴの存在だ。
ドランゴはパーティの中でもズバ抜けて攻撃力が高く、巨大なバトルアックスで出てくる魔物を次々になぎ払う。ドランゴを仲間にして正解だった様だ。
現時点でのそれぞれの長所をあげるとこうだろう。
俺…呪文が使える。
ボロンゴ…スピードがズバ抜けている。
ドランゴ…驚異的な破壊力。
エテポンゲ…知らん。
ホイミで足の痛みを和らげながら歩いていると、東の空が明るくなり段々と夜も明けてきた。
「これから暑くなってくるな…。」
エテポンゲがそういうと、薬草を取り出してともしび小僧に渡した。
「無理矢理つれてきて悪かったな。もう行っていいぞ。」
エテポンゲが良い笑顔でともしび小僧をポンと叩く。
…実は朝になったらともしび小僧を殺すかもしれないと思っていたが、まさか助けるとは…しかも共有の薬草でなく自分用の薬草まであげて…。
エテポンゲがどんどんかっこいいキャラになっていく。最初の頃を考えると信じられん。



582 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/06(火) 00:22:15 ID:5v0nYTh10
暑い暑い熱い熱いあついあついアツイアツイ。
昼間の太陽の日差しが、容赦なく俺たちの体力を奪う。
ともしび小僧と別れた後、ドランゴより遥かに大きな岩を見つけたので岩陰で休んでいるのだが、それでもかなり暑い。
汗がダラダラ出て眠れん。ボロンゴもドランゴもぐったりしている。
そんな中、エテポンゲは一人瞑想をしていた。文句一つ言わない。
おいおい、エテポンゲってこんな奴だったか?いったい何が奴を変えたんだ。
水がめに入っている水も、夜に比べ消費量が激しい。出来るだけ飲まないようにしているが、それでも見る見るうちに水が減っていく。
その上、360度回りを見渡しても砂漠しか見えない、砂の海。体力だけでなく精神力までも奪われてしまう。
こんなときにヒャドが使えたら良いのだが、魔力があっても心身ともに疲れているので使えない。
これは、夕方になるまで持久戦か。辛いが頑張るしかない。
そう言えば錬金釜を早速使ってみた。500G玉を2つ入れると、1000G札に変わった。便利なので全て1000G札に変えてやった。城の秘宝なのになんか夢のない事をしてるな、と思ったがその辺は気にしない。

オアシスの町が見えてきたのは、次の日の明け方だった。
昨日の夕方からダラダラと歩き出し、ほとんど寝ていなかったので夜中に毛布を被って仮眠を取り、明け方にはまたダラダラと歩いていると南の方にやっと町が見えてきた。
「ヒャッハー!!水場だ!!これでもう旅はしなくていいぜー!!」
エテポンゲが馬鹿笑いをしながら走り出す。
今まで文句一つ言わなかったが、多分あまりに疲れて喋る気力もなかったのだろう。




583 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/06(火) 00:22:49 ID:5v0nYTh10
オアシスの町はかなりの人で賑わっていた。
大きな水場、砂漠の城、城下町、カジノ。
取り敢えず水は尽きて、喉がカラカラだったので水場へ直行した。
「水はコップ一杯10Gです。」
ニコニコと笑うデブ。何だこいつは。金を取る気か?
いや、オアシスと言っても砂漠での水は命同然。それも仕方ないか。
突然エテポンゲがデブのビール腹を鷲掴みにし、真上に投げる。
「水一杯に金を取るデブなど必要ない!」
落下してきた所にエテポンゲの鉄拳が炸裂する。デブはその場に倒れこみ気絶してしまった。
エテポンゲは何もなかったかのように水を飲む。こいつ、一般人にまで手を出すなよ。
喉も潤った所で、今度はカジノに行く事にした。最近戦闘ばかりで全然遊んでいなかったので、たまには遊ぶのも良いだろう。

カジノにはスロット、モンスター格闘場、スライムレースがあった。
思っていたより狭く種類も少ないが、娯楽があるだけマシだろう。
俺は200Gでコイン10枚を買い、5枚をエテポンゲに渡すと格闘場の方に行った。俺はスライムレースでもすることにする。
スライムレースは5匹のスライムが競争し、一着二着を当てるというものだ。
取り敢えず1−4に2枚かけた。倍率は4倍だ。
レースが始まると、一斉に客がレース場の周りに集まってきた。かなり賑わっている。
「行けー!突っ走れー!!」
「隣のスライムぶち殺せ!構わん!俺が許す!!!」
時々罵声が飛び交う。恐ろしい。ギャンブル狂か。

584 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/06(火) 00:23:24 ID:5v0nYTh10
結果、1−4が見事に当たった。2×4=8枚のコインを入手する。
コインを貰っている時に大金を賭けて負けた奴に足を踏まれたので、正拳突きを放って気絶させた。
本当なら即ポリさんが駆けつけてくるが、そこは殺伐とした世界だ。誰も関わろうとしない。弱肉強食の世界である。
さっきエテポンゲに一般人に手を出すなと言ったが、まあ今回は正当防衛ということで。あまりに無理矢理だが。
もう一度スライムレースをしようかと思ったところで、エテポンゲが俺の所に来た。
「稼いでるじゃねえか。少しまわしてくれ。」
エテポンゲに11枚全てのコインを奪われる。ちょっと待てお前。もう5枚使い切ったのか。
エテポンゲについていくと、格闘場でコイン11枚全てを賭けていた。
メタルスライム、ホ意味スライム、バブルスライム、スライムで、倍率108倍のスライムに賭けていた。
ちょ、待てやお前!あたるはずないだろ!?
開始直後、三匹のスライムにノーマルスライムが集中砲火をかけられ、秒殺された。
「ガッデム!金返せこの野郎!!」
それは俺の台詞だ。大穴にも程がある。
エテポンゲが袋を漁る。何を取り出すのかと思うと、その手には全財産約2000Gが握られていた。
「全部コインにしてやる!待ってろ!」
ちょっと待て!ギャンブルジャンキーかお前は!
走って追いかけるも、信じられない速度でコイン売り場に走っていく。
俺が辿り着いた時には、全財産は100枚のコインに替えられていた。
「へっへっへ。これで一回100コインのスロットで当ててやるぜ!」
そう言ってスロットのほうへ行く。…もういい。好きにしてくれ。ボロンゴ、疲れたろ。僕も疲れたんだ…。

585 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/06(火) 00:24:24 ID:5v0nYTh10
数分後、エテポンゲはスタスタとこちらに戻ってきてすれ違いざまに俺の肩を叩いてこう言った。
「中々楽しかったぜ。」
一瞬殺意を覚えた。こいつ、装備や道具を買う為の金を100コインスロットで一瞬で消しやがって。

さて、今日はもう宿屋で休みたいが、金がない。どうしよう。
俺が考えていると、エテポンゲが突然歩き出した。
「金なんて魔物を倒せば手に入るだろ。待ってろ。」
エテポンゲが一人で町を出た。まあこいつのせいで2000Gすったんだから、これぐらいは当然だ。
数時間後、町に戻ってきたのは、本物のゾンビの如く地面を這って水を求めるエテポンゲと、ギリギリの宿屋代(4人で48G)であった。

Lv17
HP89/89
MP35/35
武器:鋼の剣 鎧:鉄の鎧 兜:鉄兜
呪文;ホイミ、バギ、バギマ、ギラ、スカラ
特技:はやぶさ斬り、火炎斬り、正拳突き

586 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/06(火) 01:42:28 ID:buVityjU0
>>ローディ
めちゃワラタww
エテがイイ味出してるなぁ

>>アミ
絵もウマいっすね
物語も絶好調な感じ
アミタソ好きだー

587 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/06(火) 03:37:59 ID:ozqwM9xkO
良スレ発見
自分でも書いてみたいと思ったが、みんなクオリティ高杉てむりぽ

588 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/07(水) 00:23:49 ID:nCbjRJ04O
>>587
ユーやっちゃいなよ!

589 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/07(水) 19:45:58 ID:8PlDYnuv0
>>魔神
全然感想かかれてないね、いまいちだとは思うけど。

590 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/07(水) 21:35:16 ID:dY3KH3uYO
ダークヒーロー路線も(・∀・)イイ!!と思うぞ。
がんがれ
(・∀・)つ魔神

591 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/07(水) 22:57:27 ID:q2rPUAv70
次の日の朝、町全体がざわついていた。何か事件に匂いがする。
…しまった!水場の管理人を気絶させた事か!?それはまずい。早くエテポンゲを真犯人としてつき出さねば。
話を聞くと、どうやら違うようだ。城の王子コリンズが行方不明らしい。
それは大変だ。まあ頑張ってくれ。エテポンゲがさらったのではない限り、俺はそんな面倒事には関わらないつもりだ。
荷物をまとめて旅立とうとすると、町の出口に一人の少年が立っていた。
緑の髪で、貴族っぽい服を着ている。王様ごっこでもしているのか?
「おい、お前!」
話しかけられた。ギブミーチョコレート少年か?チョコはないが腐った死体パンなら買ってやろうか?
…しまった。今文無しだった。1Gの腐った死体パンすら買えない。エテポンゲでも差し出すか?
「お前昨日水場にいた奴を一発で倒した奴だろ。」
ああ、あいつか。あれはエテポンゲが倒したんだが…。まあエテポンゲが倒せるなら俺でも一発で倒せるだろう。俺はああ、と言った。
「お前たちはしらんだろうが、あいつは一ヶ月前から水場を占領していた奴なんだ。中々手強くてみんな渋々金を出して水を買っていた。」
あのスマイルデブが?そうは思えん。ただの雑魚にしか見えなかった。エテポンゲに倒されたから尚更そう見える。
「その腕を見込んで頼みがあるんだ。」
「だが断る!」
エテポンゲが少年の頭を押しのけて町を出ようとする。
「いたた!何するんだ!俺は王子ヘンリー様だぞ!」
エテポンゲが分かった分かった。と流している。いくら子供といっても、王子にこの態度とはある意味尊敬する。

592 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/07(水) 22:58:01 ID:q2rPUAv70
「ふん!お前はいい!おいお前!頼みを聞いてくれるな!?」
ヘンリーは俺を睨む。面倒だが、ここで嫌だと言えば何をされるか分からないので、一応聞く事にした。
「よし。俺の弟コリンズが行方不明になった事件は知っているだろう。あれは実は昨晩魔物にさらわれてしまったんだ。」
魔物…。このパターンは魔物退治か。まあ今の時点では頼みを聞くという約束だけで、引き受けるとは言っていないのでもう少し聞いてやろう。
「魔物はここから西にある塔に行ってしまった。お願いだ。魔物を倒して弟を取り戻してくれ。」
やはりか。子供の考えは読み易い。そして騙し易い。断ってやるか。
「報酬は30000Gだ。前金として10000Gをやる。」
「引き受けましょう!王子様!!」
エテポンゲがヘンリーの手を握る。態度変わりすぎだろう。
ヘンリーから10000Gを貰った。紫のローブをまとい、不気味に笑っている魔道士の絵がかかれてある。
ヘンリーは頼んだぞ!と言い残し城に戻っていった。
俺は速攻で武器屋へ行き、俺用に破邪の剣、ボロンゴ用に鋼の牙、ドランゴ用に鉄の鎧を買った。
ドランゴに装備できる鎧など普通に考えてないが、ちゃんと用意されてあるのがこの何でもありの世界だ。
因みにエテポンゲはずっと裸一貫だ。装備など必要ない。





593 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/07(水) 22:58:38 ID:q2rPUAv70
西の塔に到着する。町からはそれ程遠くなく、水の消費量も少なかった。
中には火を吹く竜の像がいくつも設置されており、火を避けるのが大変だった。
当たっても回復すればいい、という選択肢はない。
何故なら、像の近くでアームライオンと戦っていると、像に近づいたアームライオンが火の直撃を受け一瞬にして燃え尽きてしまったのだ。
あまりに強すぎる炎。史上最強。向かう所敵無しである。この像を持って旅をしたい。
何とか像を潜り抜け、最上階に辿り着く。
ボスのお出ましかと思ったが、オークとキメーラが襲い掛かってきた。前座という訳か。
こんな奴ら一瞬で倒せるだろうと思っていたが、これが意外と強い。
いくら攻撃してもキメーラのベホイミで回復される。鬱陶しい。
仕方ないので、エテポンゲがオークを挑発し、その間に三人でキメーラを叩くという作戦に出た。
オークがエテポンゲに必死で攻撃するが、エテポンゲは軽くかわす。オークは鼻をブヒブヒ言わせて怒っている。豚か。
キメーラをボロンゴでかく乱させ、混乱したところをドランゴと俺が攻撃する。
俺の攻撃では死に至らなかったが、ドランゴの強烈な一撃で絶命してしまった。
エテポンゲはまだオークを挑発している。エテポンゲも体力がなくなってきたせいか、時々攻撃をくらっている。いかん。さっさと倒してしまおう。
俺は後ろからゆっくりと近づき、オークの肩を叩いた。
「ん?」
オークが振り返った所に俺のバギマが炸裂する。オークの体が宙を舞い、天井に頭をぶつけて地面に落ち、絶命してしまった。
倒し方がエグイかもしれないが、その辺は気にしたら負けである。

594 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/07(水) 22:59:09 ID:q2rPUAv70
俺はダメージを負ったエテポンゲにベホイミを施す。
実は、町からここに来るまでに練習し、習得したのだ。結構時間はかかったが。
奥に進む。さっきから俺達を見ていたボスと思われる奴にゆっくりと近づく。
よく見ると、ボスの容姿は10000G札に載っていた奴に似ていた。
「ほっほっほ…。ようこそデモンズタワーへ。待っていましたよ…。」
魔道士が不気味に微笑む。俺はこの魔道士から底知れぬ魔力を感じた。
「私はあなた達に会いたかった…。近頃強い魔物を次々に倒しているという魔物使いがいると聞きましてね…。王子をさらったのも、あなたに会えると思ったからです。」
なるほど、それで俺達がこれ以上調子に乗らないように、殺そうという訳か。面白い。
「まあ、強い魔物と言っても所詮それは人間レベルでの話…。私たち魔族の世界ではせいぜい下の中といった所ですか…。」
「そうだな…その程度だろう。あんな魔物が強いなんていったら俺はがっかりだぜ。」
エテポンゲが一歩前に出る。
「随分自信がおありのようですね…。しかし、先程の戦闘を拝見させて頂いて、答えは出ました。」
「ほう…。お前は俺たちに一瞬で殺される、という答えか?」
魔道士はニヤリと笑い、少し間をあけて言った。
「…あなた達の力は、私の部下二人、いや一人にも及ばない。」
その瞬間俺は背筋が凍りついた。
「面白い…。ならやってみるか?」
エテポンゲが構える。
俺は嫌な予感がした。奴の言っている事は当たっている気がする。そう感じたのだ。

595 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/07(水) 22:59:41 ID:q2rPUAv70
「いいでしょう…出でよ!ジャミ!ゴンズ!」
次の瞬間、落雷と共に紫の鬣の馬ジャミ、盾を持っている紫の豚ゴンズが現れた。
よく見りゃ1000G札と5000G札に載っていた奴らじゃないか。そんなに有名なのか?
「へっへっへ。お前らなんざ俺達で十分だぜ。」
ゴンズが嘲笑う。ジャミも同じく明らかに俺達を見下していた。
「死んでも恨むなよ!」
エテポンゲが一直線にゴンズに突っ込む。
「遅すぎる!」
ドガッ!!!
ゴンズが繰り出した拳は、エテポンゲの腹を抉る様に打ち込まれていた。
「あが…が…。」
エテポンゲがその場に倒れこみ、気絶する。
「へっへっへ、こんなもんか?」
ゴンズがニヤニヤと笑う。
まさか…ここまでとは…力の差がありすぎる…。
「ググ…ナメルナ…!」
ドランゴがバトルアックスをジャミに向かって振り下ろす。
「おっと。」
ジャミはその巨大な斧を片手で受け止めた。
「おねんねしてな!魔族に刃向かう悪い子が!」
ジャミの回し蹴りがドランゴに炸裂する。ドランゴは勢いよくその場に倒れこんだ。
次々と仲間が突っ込んでいく中、俺はというと、完全に震えていて動けなかった。
どうあがいても勝てない。そう悟った。

596 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/07(水) 23:00:34 ID:q2rPUAv70
「グルルル…!」
ボロンゴが牙を剥き、魔道士達を睨む。
やめろ、ボロンゴ!殺されるぞ!
が、俺の叫びも虚しく、ボロンゴは敵の中心に突っ込んでいった。
結果は、言うまでもなかった。
ゴンズの頭突きで口から大量の血を吐き、その場に倒れ気絶するボロンゴ。
そして遂にこちら側で立っているのはただ一人、俺だけとなった。
「ほっほっほ…。後はあなただけですね…どうしますか?逃げてもいいんですよ?」
………。
「どうせ初めから殺すつもりなんだろ…さっさと殺せよ…。」
俺は死を覚悟した。
俺の様な一般人が少し強くなったところでどうにかなるようなものではない。
それが可能なら、もうとっくに実力者たちが集結して魔族を壊滅させていただろう。
魔族に刃向かうなど、愚か過ぎる行為だったのだ。
「諦めましたか。しかし下の中程度の魔物を倒されたと言っても支障が出るわけではない。命はとりません。ただし…。」
魔道士は倒れているボロンゴ達を一人ずつゆっくりと見て、再びこちらに向き直す。
「ただし石になってもらいますよ。魔族にとって邪魔な存在に変わりありませんから…。」
魔道士がゆっくりとこちらに掌を向ける。
「最後に…。」
「ん?」
「最後に聞かれてくれ…お前の名前を…。」
魔道士は少し考え、俺の目を見つめ不気味に微笑んだ。

597 :ローディ ◆qdB5QYIaRc :2005/12/07(水) 23:01:08 ID:q2rPUAv70
「ゲマ…。次期魔王三大候補の一人…。」
ゲマの掌から灰色の煙が放たれ、俺の体を包んだかと思うと足の先から徐々に石化しだした。
それ以降、俺の意識は完全に途絶えた…。

「この二匹は元々凶悪な魔物のようですね…。かなりの実力があるようなので利用させてもらいましょうか。」
「こっちの腐った死体はどうしますか?」
「一見腐った肢体に見えますが、一応人間のようです。…こうしてしまいましょう。」
ゲマが掌をエテポンゲに向けると、エテポンゲの体が光の包まれ、ふわりと宙に浮いた。
「バシルーラ!!」
次の瞬間、エテポンゲの体が動き出したかと思うと窓を突き破ってどこかへと飛んでいった。
「魔族に刃向かう人間はこうなるのです。では行きましょうか。ほっほっほ…。」
そうして、ゲマ達はボロンゴ、ドランゴと共に消えていった。
石化した俺一人を残して…。

第一部 終

Lv18
HP93/93
MP39/39
武器:破邪の剣 鎧:鉄の鎧 兜:鉄兜
呪文;ホイミ、ベホイミ、バギ、バギマ、ギラ、スカラ
特技:はやぶさ斬り、火炎斬り、正拳突き

598 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/08(木) 01:29:48 ID:5JqD+NkLO
ヤベェェェェェ!!!!
オラわくわくしてきたぞ!!!!

599 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/08(木) 02:28:45 ID:BPMnCQFvO
ツヅキミタイ
ソウキュウニタノム

600 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/08(木) 15:47:14 ID:UfSDeH9I0
ツヅキガミタイよ

601 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/08(木) 18:30:17 ID:5JqD+NkLO
早急じゃなくていいから確実にうpしてくれ!頼む。
ヌカ喜びだけはさせねぇでくれorz

602 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/08(木) 21:27:15 ID:x4FNczCa0
586
アリガト!嬉しいよ(ノД`)
前の文で間違いがありました。
○180度
×360度
盛り上がっている中失礼ながら投下します。

603 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/08(木) 21:29:06 ID:x4FNczCa0
目を開けると目の前に城が飛び込んできた。
城、といえば日本なら姫路城とか彦根城(いずれも国宝)が思い浮かぶし、西洋風なら崖壁に聳え立つドイツやフランスの城が思い浮かぶ。
目の前にあるのはどちらかというと西洋風の城だがあそこまで華美ではない。
白い壁に群青色の屋根。入り口には色とりどりの花が植えられ、目を楽しませる。
城、というよりただ大きい家、という感じ。他国が攻めてきたときに応戦出来るように壁に大砲口や防御の為の鉄柵や堀もない。せめて高い城壁でもあれがいいがそれすらない。
これ…だいぶ設計ミスだと思うんだけど…。ここを攻められたら1日も持たず陥落させられること受け合いである。
城門にはただ物々しく兵士が2人立っていた。青銅の鎧を着込み、ホーリーランスを携えた兵士。あまり様になっていない。
あたしたちの姿を見ると同時に背筋を伸ばし、敬礼した。
「アリーナ様、無事にお帰りで!」
「アリーナ様、お聞きになりましたか、王様が…」
「聞いたわ。今から行くところよ。開けてもらえる?」
はっ!と威勢良く返事をすると兵士たちは城門を開ける。
中は思ったより広い。
天井は高く、高名な画家が描いたであろう天井画が一面に張り巡らされている。
その天井を支えるのは丸太程の白柱。入り口から左右規則正しく並んでいるが、そのうち一本真ん中から折れているのはどこぞのお姫様が戯れで壊したもの。


604 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/08(木) 21:31:03 ID:x4FNczCa0
足場には赤の天鵞絨、金糸を使った豪華な絨毯が真っ直ぐ二階への階段に続く。
窓は見当たらないがその代わり蝋燭を大量に利用し城の中を明るくする。蝋燭台は職人の手により細かな細工が施されている。素材は真鍮、黒ずみやすいものだが手入れされているので輝きは色褪せていない。
外観と同じ、城内も白色の大理石でまとまっている。それ故に花の色が映えるのであろう。
初めてみる城の内部に、はーっとかほーっと感心しているあたしとは対象に、アリーナは始終無言。クリフトやブライは久々に帰ってきた城に安堵した様子。
寄り道もせず真っ直ぐに歩き、二階へ上がる。
階段を上がるとすぐ観音開きの戸が現れ、両手で開ける。(やたら大きい。取っ手なんぞ鍍金ではなく黄金で出来たもの。大理石ではなく本革を貼り付けて高級感を演出。それがここに王がいると予感させる)。
謁見の間。
赤い天鵞絨が床いっぱいに広がる。入り口から王座までおおよそ50m程。フル装備の兵隊が何人か警護にあたっている。
二階は一階と違い大きな窓が壁を占め、太陽光が差し込み明るく部屋を照らす。
王座の左右には水場が設けられ、水瓶を右肩に担いだ少年の顔をした有翼人像の水瓶からは絶えず水が流れ水面に波紋を投げかける。
水が生み出す霧に周りの植物たちは生き生きと大輪の花を咲かせる。
謁見の間というよりは、憩いの場として、会議場として、または舞踏場として、活用出来る多目的スペース。


605 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/08(木) 21:35:49 ID:x4FNczCa0
頭上を臨めば水晶と金細工で作られた精巧且つ巨大なシャンデリアがいくつも飾られ、夜になればキラキラと輝き高級感溢れる部屋の演出に一役買うだろう。
流石一国の領主がいるだけあって、ものは豪華だし掃除は行き届いて清潔感はあるし、いて心地よい。
感動しているあたしを見てアリーナは苦虫を噛み潰したような顔をした。
城の広さ、大きさ、職人たちの匠技。パンピーから見れば目を輝かすものばかり。生まれながらのお姫様にわかるものか!
王の姿を見るなりアリーナは走る。あたしも続く。
「お父様!」
王冠をかぶり、赤いマントを着込んだいかにも王様といういでたちの王に飛び込むアリーナ。
「おお、アリーナ様!大変なことになりました。王の声が出なくなったのです。筆談も試しましたが、手は震えてとても…!医者にも看ていただきましたが原因不明。この国は王で保っています。ああ、どうなるのでしょう…!」
「あなたが、大臣がそんなに取り乱してどうするの!」
大臣と呼ばれた恰幅のよい男は一喝するアリーナにびくりと身体を震わせる。
「医者にでも判らない…?何の病気でしょう。私に看させてください」
クリフトが名乗り出て王の口や舌を覗き込み、舌を出したり引っ込めたりしてもらう。怪訝な顔をして、特に発熱や外見や口に異常は認められませんと首を振った。
「お父様…声を出してみて」
娘の要望に答えようとするが、うまくいかず、歯を噛み締める王。
「何で?どうしてなの?」
アリーナの問い掛けに勿論答えられない王。パクパクと口を動かすばかり。


606 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/08(木) 21:38:57 ID:x4FNczCa0
「最近までは身体共に良好でおりましたがある日、あまりにも毎日同じ夢をみると申し上げ、それを私に伝えようとしたときから声が出なくなったのです」
大臣が焦りながら言う。
「王はご病気でと近隣国に鞭撻しておりますが、このまま意思を伝える手段がないと近隣国との会議や会合に摩擦がおきかねまする…」
どうも…いきなり声がでなくなったというもの。病気ではなさそうである。
「奇怪な」
ブライが考え込む。
「儂は分からないがこの城にいる物知りゴン爺ならもしや声が出ない時の対処法を知っているかもしれないな。ゴン爺は城の裏手におる」
「行くわよ!そのゴン爺の元へ!」
アリーナはこの城の屋根と同じ群青色のマントを翻し、颯爽と城を出た。
城の裏に回り、ゴン爺の部屋と思われるべきドアにノックするが返事が返ってこず。ドアノブを引くと鍵が掛かっていて開かない。
アリーナはあのメイから貰った鍵を取り出しノブに差し込み回すと、かちゃんっと音を立て施錠が開く。どうやら一致したようだ。
中には城のあの豪華さはなく殆ど物置のような部屋でブライより更に年老いた老人が1人椅子に腰掛けていた。
ゴン爺に王の声が出ないから治療方法をと聞くといきなり取り乱し、この国もおしまいじゃ!と泣き喚いた。


607 :アミ ◆/MA4zYDgBI :2005/12/08(木) 21:42:23 ID:x4FNczCa0
落ち着かせるとサランの町にいる吟遊詩人マローニも昔喉を痛めたことがある。今は綺麗な声で歌を歌っているから何かわかるかも、と教えてくれた。
声が出ないのと喉を痛めたのでは似て非なるものだが今はそれしか情報がない。今度はサランへ急ぐ。
サランの町はあたしが来た頃から何も変わっていない。
クリフトやブライが城へ帰って安堵する気持ちが分かる。あたしはサランの町に懐かしさを覚えた。
あの頃と今。少しは成長したかな…。
感傷に浸る間もなくマローニの元へ急ぐ。
「そうです、私がマローニです。え、王様の声が出なくなった?ええ、それは隠密ですね」
判ったようなことを言い、紫色がかった長髪をふわさっと後ろに流した。
「で、私の声がどうして美しいといいますとね、昔声が出なかった時がございまして、定期的に行われる砂漠のバザーでさえずりの蜜を購入して舐めたら声がよくなったのでございますよ」
「今開催している砂漠のバザーよね?」
「そういえば今開催しておりますよね。あるかもしれません。蜜は即効性がありますから嗄れた声などすぐよくなりますよ」


608 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/08(木) 21:45:46 ID:x4FNczCa0
「わかった。行ってみる。情報をありがとう」
「お気をつけて。一刻も早く王様の声が戻ることをここで祈りを込めて続けていましょう。ララ〜♪」
マローニ、確かにイイ声をしているんだけど、やたらキーが高いんだよな…。
「ブライ、聞いたわよね。もう一度、砂漠のバザーへあの呪文を」
「判っておりますとも。さぁ、唱えますぞ。ルーラ!」
目を開けると、あの砂漠のバザー一瞬にして着いていた。
「おい、おまい!蜜キボンヌ」
「うはwwwねぇよwwwうぇwうぇww」
「ちょww」
そこらの露天商のおっちゃんに聞いたらわからんかなと思ってわざわざバザー開催者に聞いたのに…。
「昔はあったが最近はないなぁ。その蜜、さえずりの塔で採れるんだよね〜」
「さえずりの塔?」
「この砂漠を出て南西に向かい、半島にある。塔の一番上でエルフが花から蜜を採っているんだ。これは技術的に人間には不可能でさ。貴重なもんだ。エルフと物々交換して手に入れていたが最近はエルフがこないからものもないんだ」
そうか…。なんだか絶望的だな。


609 :アミ ◆36yZlE15gs :2005/12/08(木) 21:52:31 ID:x4FNczCa0
「どうします?」
困り顔のクリフトがアリーナに問う。
「…行くわ。もしかしたらいるかもしれないし…行ってみなければ判らないでしょ。行って諦めがつくのと、行かないで諦めるのは違うでしょ、例え結果が残念でも…。だから、行く」
ブライとクリフトは頷いた。
前から思っていたけど、彼女、やると思ったらやるという人なんだな。意志が強いというか。
自分が持っている力を、可能性を、何より自分自身を信じているからこその意志。
そんな彼女が彼女であるうちはこれからも強くなれる。
だけどこれだけは忘れないで。
あなたが最大限に自分の力を発揮出来るのは、あなたを全肯定し、サポートするブライとクリフトがいるからこそ。
そして、弱音を吐きたいときに吐ける強さもあるんだと。

610 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:29:26 ID:TYYarTqo0
嘗て。
戦いがあった。竜神と、魔帝。
この二柱は烈しくぶつかり合い、空は鳴動し、海は裂け、大地は割れた。
竜神マスタードラゴンと、進化を極めた地獄の帝王エスターク。
勝負は幾年、幾十年、幾百年にも及び、それでもマスタードラゴンはかろうじて、エスタークを地の底に封印する事に成功する。
帝王は長い眠りに就いた…。



クリフトが語る物語は、神話、と呼ばれる話であり、一般人に取ってみれば寝耳に水、と言って良いレベルのものだった。

「それが…今、復活しようとしているの?だけど、どうして…」

アリーナの問いに、今度はミネアが答える。
彼女の足は、急がなければならないと、この中で誰より理解しているというのに、決して早いものではなかった。

「アッテムトには、鉱山がありまして…金が出るという事で、とても栄えた町でした。
毒性のガスが出て、人が倒れる事も少なくないにも関わらず、金を求める人は後を立たず…。
人が集まれば、今度はその人達を目当てに色々な商売を担う人がやってきて…その連鎖で、良くも悪くも、賑やかな…。
ですが、最近は金の出る量が減り、鉱夫の数が減ると共に町も少し賑やかさが減ってきて…いたの…です、が…」

「ちょっと、ミネア?大丈夫?」

苦しそうに息を吐くミネアを、マーニャが気遣う。
だが、それも無理は無いだろう。
アッテムトと呼ばれる、嘗て栄華を誇った鉱山都市は、今や見る影も無い。
毒と、腐敗と、絶望が渦巻く死の都でしかなかった。
最盛期の頃とも違う、マーニャとミネアが訪れた時とも違う。
広大に広がる毒の沼地の中には、まだ新しい死体もあれば腐りかけのもの、それどころか人骨すら無造作に転がっている。
大気は鉱山から噴き出すガスで染められ、うっすらと紫がかっていた。
そして、まだ生きている人は…中には死にたくなければこの町から出て行けと忠告してくれた老婆や、この地獄においても人を救おうとする神官の姿も見えるものの、
その大多数は既に死を悟り、ただその時を待つ肉塊と化してしまっていた。

611 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:29:58 ID:TYYarTqo0
「地獄の帝王、エスターク…まさに、ね。今やこの街は地獄そのものだわ…」

ぽつりと呟いたマーニャが、ミネアに此処で待っているように諭している。
一応、宿屋の建物の中はガスも入って来難いのか、まだマシな環境だと言えた。
ミネアはその強い感受性で、恐らく鉱山の中で待つものに対し、恐れを抱いてしまっているのかもしれない。
それに加えて、このガスは繊細な彼女にはかなり厳しいものとなっている。

この雰囲気は、そう…あの時に、似ている。
一番最初、ソフィアと出逢ったあの山奥の村。
さっきまであった生き物の気配が、一瞬で消え去ったあの空虚さと、この町での生物がもがき、苦しむ姿をまざまざと見せ付けられる様は、
どちらがどうと言うには、少々相応しくないだろう。
俺はちらりとソフィアへと視線を送った。
彼女の細い肩は…小さく震えていた。
手を、置こうかと。少しだけ逡巡して…止める。

しかし、そうなると鉱山に潜るメンバーの選出はどうなるだろうか。
大人数で潜るには、坑道は狭すぎる。身動きが取れなくなり余計な危険を招く恐れもあるので、やはり半分程度の人数で赴くのが望ましい。
ミネアがいけないとなると、やはりマーニャが途中までの道を知っている唯一の存在になる。
更にクリフトも外せまい。治療に長けた者を外せるほど、楽な相手とも思えないので。
…ま、もし噂のエスタークがお話通りの力を持っているのなら、正直逃げるしかないかもしれないが。
それに、一行のリーダーでもあるソフィア。実力を考えれば、ソロもまた参加となるだろうか。
後はライアンか、アリーナだが…。

「…ふむ、そうですな。ここはアリーナ姫にお任せいたしましょう」

「良いの!?ありがと!」

嬉しそうにぴょんと跳ねるアリーナ。全く、そりゃあれだけ眼で行きたい行きたい訴えてればそうもなるわな。
恐らく、実力で言うなら…現段階では、ライアンの方が良いのだろう。
俺はさりげなく、ライアンに本当に良いのかと訊ねてみた。

612 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:31:37 ID:TYYarTqo0
「ええ。…これは私の戦士としての勘、なのですが。
アリーナ姫にはまだまだ、伸びしろが沢山あるように思うのです。それこそ、年を取った私よりも。
それはきっと、更なる強敵との戦いの中で…開花するのではないかと。
そうすれば、その力は一行の助けとなる筈です」

ソロやソフィア、そしてクリフトと共に、一緒に行ける事を喜ぶアリーナを、
ライアンは面映そうに、その皇帝髭をしごきながら見守っていた。

「こちらに残る皆の事は私にお任せを。
貴公は、彼らを見守っていてください」

……誰に言ってんだ、この中年戦士は。

「ほら、行くわよ!」

何かを言う前に、マーニャに腕を掴まれずるずると引き摺られる。
ぬおーっ、助けてトルネコさん!!

「ハハ、私が行ってはお腹がつっかえてしまいますから」

爽やかに笑って言うデブ。
痩せろやああああああああ!!!!
俺の叫びは地獄への入り口の中で反響し、やがて消えていった。



坑道内は、町よりも更に濃い紫がかった霧が充満していた。
服の裾を口元に当てて、直接吸い込むのを防ぐ。とはいえ、魔物が出てきた時はそうも言ってられないのだが。
いずれにせよ、速く脱出したい所である。
途中までの道のりはマーニャが知っている事もあり、すいすーいと進む事ができた。

613 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:32:04 ID:TYYarTqo0
「…前に来た時は、確かここまでしか道が無かったわ」

マーニャが足を止めた先にも、更に奥に坑道は広がっている。
無言で進める行程――地の底へと進んでいくような道のりの果てに、やがて坑道は終わりを告げ俺たちの眼の前にぽっかりとした巨大な空間が広がる。
地下に此処までの空間が広がっているとは思いもしなかった。

それは城だ。
俺たちはデスパレスを見ていたから、ただ、その威容だけで足がすくむという事は無い。
だが…何なのだろうか、この…威圧感は。
身体が押し潰されてしまいそうなプレッシャー。
城の内部から漂う、生き物全ての生殺与奪を握っているかのような気配…。
居るのだ。この中に、地獄の帝王が。
主の居ない城と、居る城とでは此処まで違うものなのか。肌で感じられるのは、果たして良い事なのか悪い事なのか。

仲間に視線を送ると、皆、一様に蒼白な面持ちでこの帝王の城を見上げている。
マーニャはその中で、ふと坑道の端に倒れていた工夫へと歩み寄り、膝を屈めた。
それはもう、九割九部死んでいるただの肉であり、それだというのにうっすらと――歌っている。
欲望への賛歌を。

「金、金、金……人の欲望が、地獄の帝王を復活させるきっかけになるだなんて……笑っちゃうわね。
この土地に金が眠っていたっていうのも、出来すぎた話だわ」

皮肉気に嗤うマーニャを見て、俺は少し逡巡する。
進化の秘法…錬金術…金を生成する学問では無いとはいえ、それがある種代表的な事例になっているのは間違いない。
地獄の帝王エスタークが進化の秘法を極める程に、錬金術に長けていたのだとするなら、あながち相関関係が無いとも言い切れないのか。
封印されていながら、何かできたのかどうかは解らないが…。

耳が痛む程の静寂の中を、靴音で破りながら城へと突入する。
デスピサロが先行している以上、躊躇している暇は無い。
恐らくは彼らもこの城の内部構造を完璧には把握していないであろうから、そこに活路を見出したい所である。
後ろから俺たちが来ている事にも気付いていなければ、足も遅い筈だ。

614 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:32:53 ID:TYYarTqo0
途中に転がっていたガスの噴き出すツボを拾ったりしながら、やがて俺たちは辿り着く。
彼の帝王の、御前に。



「――これが、地獄の帝王、エスターク……」

大きかった。
あの変成したバルザックよりも更に巨大な、青い身体。
角が生え、突き出たショルダーガードのような外郭が見える。
両の手には、軽く反りの入った剣。

だというのに――静かだ。
恐ろしいまでの静寂の中、実はアレは石像か何かなのではないかと思う。いや、そう思いたいだけか。
僅かに揺れる身体を見れば、確かにアレが生きている事が解る。解ってしまう。

「眠っている…?」

クリフトがぽつりと呟いた。
それでようやく、俺たちの間に時間が流れ出す。

「なら、やっちゃうわよ、幸いあの美形もまだ来て無いようだしね!」

ばっと鉄扇を開き、術の詠唱に入るマーニャを皮切りに、ソフィアが、ソロが、剣を抜き、アリーナが跳躍する。

「範囲物理障壁(スクルト)!!」

クリフトの援護が皆に届く中、特大の火球がエスタークに直撃する!

615 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:33:20 ID:TYYarTqo0
「やぁ!!」

火球が着弾した箇所に爪を突き立てるアリーナ。
それと時を同じくして、それぞれ足を切り裂くソフィア、ソロ。
皮膚が焼ける匂い、裂かれる皮、噴き出す体液。
効いている…!そう確信した俺たちは、攻撃の手を休めない!

ブライから教わった俺の速度上昇(ピオリム)が更に皆を加速させる。
特に、ソフィアとアリーナの動きが顕著だ。
速い。最早、それは残像でしかない。彼女たちの攻撃は時に、重さが足りなくなりがちだが、攻勢力向上(バイキルト)がそれをも補う。
文字通り血煙を吹き上げるエスターク。いける…!そう、思った矢先であった。

カッ!!!

エスタークの身体から、光が溢れる。
そう、それは光であったから、光ったと思った瞬間には――既に、俺たちの身体に到達していて。

灼熱する。

俺はいつのまにか、床に倒れこんでいた。
かろうじて首を折り、辺りの様子を窺う。だが、そこに立っているのはエスタークただ一人。
仲間達は皆、一様に床に倒れ、身体を起こそうともがいている途中であった。

一体何が起きたのか。
それすらも俺には解らなかったが、だが、今から始まるものこそが――真の地獄に相違ないと、そう思う。

エスタークが、両の手を振り上げる――その巨大な鉈のような剣が、無造作に、まるで何事もないかのように。
振り下ろされた。その下には、ソフィアと、ソロの姿。

616 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:33:57 ID:TYYarTqo0
ゴッ、鈍い音と共に剣が大地に埋まり込む。
俺は最悪を予想しソフィアの名を呼ぼうとした。だが、喉が焼け付き上手く声が出ない。
ゆっくりと持ち上がる剣――沈んだ床の中央に、横たわる二人の身体。
一瞬、浮かんだ青白いスクルトの光が、圧力が無くなると共に再び姿を消す。
補助魔法はかなりの効果を生んでいる。それを確認した俺は、すぐにソロへの攻勢力向上を練り上げる。

「――タァァァァァ!!!」

エスタークのターゲットから外れたアリーナが雄々しく勇躍する。
彼女は大地と、エスタークの身体をすら蹴り上がり、顔面へと肉薄した。
繰り出される脚線による曲線美。メシリ、鈍い音が響く!
だが、まるで揺らぐ事無くその彼女に向かって繰り出される剣。迫る凶悪な刃を前に、アリーナの胴と足が血液による泣き別れを演じる姿が思い浮かぶ。

それすらも、杞憂だ。
彼女はまるで柳の枝のようなしなやかさで、その剣の勢いを利用し更なる速度でエスタークへと肉薄し、炎の爪を突き立てる!!

「…信じられない、あの剣の刃に足を当てて…勢いに逆らわず、斬られる事も無く、やり過すだなんて…」

身体を起こしたマーニャがぽつりと呟いた。
それも無理は無いだろう。今のアリーナは、スクルト、バイキルト、ピオリムを受けまさに鬼神と化している。
エスタークが目線に入ってくるアリーナに気を取られた、その隙に。
ソフィアが入れた切り口に、バイキルトを受けたソロが全力で剣を叩きつける!
傾ぐ、巨体。膝が折れる――彼の、地獄の帝王が膝を折った!

いける…!そう思わせるに十分な一撃に、誰もがそう思った刹那。

突き出される帝王の剣の柄。拳――否、指先から、心身を凍てつかせるかのような波動が迸る!

「え…力が…抜ける…!」

「補助呪文が…!?まずい、ソフィア!アリーナ!下がれ!!」

617 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:34:29 ID:TYYarTqo0
ソロの叫びに反応し、二人が後方に跳躍する。
しかし――それすらも、帝王は予測していたかのように。
凍える吹雪がフロア一面を覆いつくす!
急激に下がる気温に身体が凍てつき、固まった皮膚を雪が、細かい氷が縦横無尽に引き裂いていった。

これは…マズイ。
攻撃が広範且つ、強力過ぎる。
クリフトもソロも、自分の治療で精一杯になってしまえばいずれ女たちが倒れ、その後は…。
まさか補助魔法が全て打ち消されるなんて…それが解っていれば、最初からこまめに治療の術を撒いていったというのに。

「ごめん、なさい…」

ソフィアがぽつりと誰にとも無く呟いた。
今迄の戦術が上手くいっていたから、今回も。それは決して間違いでは無かったろう。
それでも、彼女は一行のリーダーとして、謝ったのか。

「…いえ、謝る事はありませんよ」

彼女に優しく笑いかけ、そう呟いたのは緑色の神官だった。
彼は素早く身体を起こし、一度ずつ、皆に向かって掌を向ける仕草をする。彼の手から、暖かな波動が響いてくるかのように。
その都度、仲間達の身体を淡い光が包んで行く――。

「――集団治癒(ベホマラー)」

神官が力を篭めた言葉を呟くと、光が一斉に弾け、皆の身体に染み込んでいく。
それは見事な、更なる逆転劇、治療の術は一人ずつという既存の価値観を打ち破る、独創性の勝利か。

「凄い、凄いわ、クリフト!」

「いえ、まだです、姫様。エスタークは未だ膝をつきながらも立っている。
勝利をお掴みください!治療は私にお任せを!」

618 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:34:58 ID:TYYarTqo0
こちらをも見ながら頷くクリフトに対し、俺もまた腰の剣を抜く。

切る、斬る、キル。

ソロが、アリーナが、俺が、そしてソフィアが。
治癒をクリフトに任せ、全力で斬りつける。
巨大な剣が、凍える吹雪が、俺たちの身体を切り裂くが、その度にクリフトが背中を支える。

ズドォン!

一際派手な音はマーニャの火球だ。
彼女の術は、コンスタントに、且つ、止まる所を知らず次々と生み出され、帝王を焼き尽くさんとする。

「ヤァァァァァァ!!!」

幾度、幾十度にも及ぶ攻撃の末に、遂に、ソフィアがエスタークの額に剣を衝き立てる。
それが合図かのように――蒼い、エスタークの身体が、ゆっくりと変色していき……やがて、その動きを止めた。

「…やった…の…?」

「恐らくは、な。完全に消滅させる事は、彼の竜神でも出来なかった所業だ。
これで、暫くは眠りから覚める事は無い…と、思いたいが。後でミネアやブライさんにも調べてもらうか」

注意深く動きを止めたエスタークの様子を窺っていたソロが、ふっと一つ息を吐いた。
それを切欠に、喜びが弾ける。

「あー、疲れた!早く戻って汗を流したいわ」

619 :アッテムト、最奥で待つ者 ◆gYINaOL2aE :2005/12/09(金) 00:35:48 ID:TYYarTqo0
マーニャがぱたぱたと鉄扇を仰ぎ、少しでも清浄な空気を近くに寄せようとしている。
ソロがソフィアに近づき治癒を施している間に、アリーナはクリフトの手を取って上下に揺らしている。
今回の殊勲はクリフトだろう。彼の範囲治癒が無ければどうなっていたか…一度に、全員の傷を癒す、その強力な効果は目を見張るものがある。
ずっと修練していたのか。それでも、度重なる使用で彼の精神は極限まで磨耗し、顔面は蒼白になってい――た、筈なのだが。
嬉しそうな姫君を前に、少なからず紅潮しているようにも見えなくは無い。
ご褒美としては、これ以上ないものなのかもしれないな。

今回の戦いは、逆転に継ぐ逆転だった。
それでも、最後の最後にはこちら側に引っくり返せたのだから、とりあえずは由としよう。反省は後でするとして。



此処で、反省していれば。後の事態を防げたのだろうか。



マーニャはエスタークの傍で、睨むようにその巨体を見上げていた。
ソロとソフィアは、まだ少したどたどしいやり取りで互いの無事を確認している。
アリーナは、完全に背を向け、意識はクリフトに傾いていた。

クリフトが気付く。だが、それもまた彼を苛む疲労故に、余りにも遅すぎた。



「……ぇ……?」

アリーナの、小さく可憐な唇から、ついぞ聞いた事のないような、小さく呆けたような声が漏れる。

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