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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら三泊目

202 :1/3:2005/09/11(日) 15:00:08 ID:xnql8pvO
ジリリリリリリリリ・・・
大きなベルの響きに、私の意識は力ずくで引きずり出された。
体の向きを変え、頭を持ち上げると、まだ曇ったままの視界に見慣れぬ物体が映った。
どうやらさっきから続いている無遠慮な騒音はこの物体から発せられているらしい。
「・・・なんだコレは?」
とっさに上から鷲づかみにする。とたんに静寂が戻る。
見れば見るほど奇妙なモノだ。こんなものが昨夜の私の枕元にあった記憶は――――
ガバッ、と音がするほどの勢いで体を起こし、周囲を見渡した。
「―――――ここはどこだっ!?」

さっきの騒々しかった物体だけじゃない。辺りは不可解なものに満ちていた。
想像できるだろうか。その部屋にあるものの大半が、
今まで見たことも聞いたこともないようなもので構成されているのだ。
かろうじて本棚だけは判別できた。だがそこに収められた書物はすべて
やはり自分の知らない文字でびっしり埋められていて―――
(・・・いや、これは?)
――読める。初めて見る文字のはずなのに、その読み方が、
単語の意味が、文章の言わんとすることが次々と頭に浮かんでくる。
どういうことだ、これは。

ただ一ついえるのは、ここが昨夜まで自分が泊まっていた宿ではなく、
どこかまったく別の場所だということだ。
そういえば宿代をまだ払ってないな。とりあえず帰らなくては。
目を閉じ、懐かしいあの場所の光景を脳裏に展開する。
そのイメージを強く固定させたところで、カッと見開き、叫ぶ。
「ルーラッ!!」

203 :2/3:2005/09/11(日) 15:01:09 ID:xnql8pvO
叫んだ瞬間気づいた。しまった、ここは屋内だった。
とっさに両手を頭の上に乗せ、力を込め、衝撃に備える。
しかしその必要はなかった。
4つか5つ数えるくらいの時間がたって我に返った。
思わず固く閉じてしまった目を恐る恐る開き、首を動かす。
あたりの光景に何も変化はなかった。そして自分の肉体にも。
・・・ルーラが発動しなかった?
かき消された訳ではない。魔力が消費された感覚がないからだ。
「まさか!?」
犬歯で小指の先を食い破って血を出し、そこにホイミを唱えてみる。
何も起こらない。
思い切ってギラを唱えてみる。本来なら屋内では危なっかしくて使えないのだが。
それでも何も起こらない。
その他、自分が覚えている限りの呪文を片っ端から試してみたが、すべて結果は同じだった。
呪文が・・・使えない?

かつてルーラとリレミトを習得したとき、私はうれしかった。
この2つの呪文さえあれば大抵のピンチは切り抜けられる。
魔力さえ残っていれば、どこからでも脱出でき、体勢を立て直せる。そう思ったからだ。
しかるに、この状況はなんだ。
それでも万一を考え、キメラの翼も常に肌身離さず携行していたはずなのだが、
手持ちのアイテム・装備すらこの場にはひとつもない。さっき確認した。
参った。打つ手なしか。

204 :3/3:2005/09/11(日) 15:01:48 ID:xnql8pvO
落ち着け。頭を冷やせ。
こうなった以上、私のするべきことは2つに1つ。
呪文が使えなくなった原因を突き止め、さらに力を取り戻す。
ルーラさえ使えればすぐにでも元の世界に戻れるのだ。
もしくは、元の世界に戻る方法を見つけ出す。
そうすれば呪文をまた使えるようになる。根拠はないが確信があった。
さもなくば―――あまり考えたくはないが―――
この何だかよくわからない世界で、残りの人生のすべてを過ごすしかない。

やはり枕元にあった、畳まれた服を見る。
いや、材質も形状も訳のわからない無茶苦茶なものだが、
その大きさと感触から判断するにおそらく服なのだろう。
上に乗っていたのは――やはり確かなことはいえないが――多分サイフだ。
細かな金属製のモノが絡み合って口を閉じていたが、
中にはコインが何枚も入っているようだ。
とりあえず無一文ではない。最悪の状況は避けられた。
世の中、金さえあれば何とかなるもんだ。
問題は、その中身にどれだけの価値があるのかということ。そして取り出す方法だ。
隙間には大きな数字の入った長方形の紙切れが何枚かあった。
よくわからないが、捨てる必要もないだろう。何が役に立つのかわからない以上は。

その他、部屋中の書物を開き、新聞(と書かれた灰色の紙束)に目を通した私は、
とりあえずこの部屋を出ることにした。
この国(ニッポンというらしい。やはり聞いたことがないな)を出て
元の世界に戻る。そのための手がかりを探すために。
今までとは勝手が違うだろうが、私の冒険は再び始まる。

・・・おい、この部屋のドア、どうやって開けるんだ。

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