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ぜろちゃんねるプラス
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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら六泊目
1 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/03/11(土) 21:30:54 ID:2kKEOzWo0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです。
小説形式、レポ形式、一言何でも歓迎です。
・スレの性質上1000になる前に500KB制限で落ちやすいので
スレ容量が470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
(トリップは名前欄に「#(半角シャープ)+半角8文字」で出ます)
・同じスレ内で続きをアップする場合は
アンカー(「>>(半角右カッコ2つ)+半角数字(前回レスしたスレ番号)」)
をつけるとより読みやすくなります
前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら五泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134827399/
まとめサイト
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」冒険の書庫
http://www.geocities.jp/if_dq/
535 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:03:57 ID:wRmz2JKx0
尋問しているときにレオンとリアがやってきた。
レオン「もょもと!何があったんだ?」
もょ「こいつがおれたちのしょくりょうをぬすもうとしたんだ。」
リア「もょもとさん大丈夫?怪我はない!?」
もょ「だいじょうぶだ。」
リア「良かった…」
レオン「ん…あ、あんたは…?」
?「ク、ククールでがすか!?」
レオン「ヤ、ヤンガス…」
まさか――――――――――――――――レオンの仲間が見つかったって事か?
ククール「あんた何やっているんだ?」
ヤンガス「おっさんが倒れたから食料と水を探していたのでがす。そしたら返り討ちにされてしまったでがす。」
ククール「トロデ王やミーティア姫もいるのか!?」
ヤンガス「そうでがす。」
ククール「他のみんなは?」
ヤンガス「気がついたらあっしとおっさんと馬姫さんだけだったでがす。兄貴達はどこに行ったのかわからないでがす。」
もょ「どうなっているんだ?レオンのなかまなのか?」
ククール「ああ…」
リア「レオンさんどういう事なの?」
ククール「レオンって言うのは偽名さ。本名はククール。この盗賊の名前はヤンガスって言って俺の世界の仲間だ。」
ヤンガス「そ、その前に治療を頼むでがす…」
ククール「わかった。しかしあんまり無理はするなよ。」
ククールがベホイミを唱えるとヤンガスは立ち上がった。
ククール「もょもとすまない。ここは俺の顔に免じてヤンガスを許してやってくれないか?」
もょ「しかたがないな。しかし、ひとのものをぬすむのはよくないぞ。」
ヤンガス「すまなかったでがす。とにかくおっさんの所に案内するでがす。」
ヤンガスはトロデ王の場所に俺達を案内した。
536 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:05:59 ID:wRmz2JKx0
案内された場所に着くとナメック星人みたいな生き物が倒れていた。しかも馬が心配そうにナメック星人をみていた。
リア「こ、この人がトロデ王?」
ヤンガス「そうでがす。おっさんも馬姫様もドルマゲスって奴に呪いをかけられたのでがす。」
もょ「のろいか…」
ククール「この馬もトロデ王の愛娘ミーティア姫さ。しかしドルマゲスは許せねぇ…」
ククールが感情むき出しで語った。よっぽどドルマゲスって奴に悲惨な目にあったのだろう。
タケ「(おい、もょ。)」
もょ「(どうした?)」
タケ「(もしかしたらラーの鏡でトロデ王やお姫様の呪いを解く事が出来るかもしれへんで。)」
もょ「(なるほど!ムーンののろいをといたようにやるんだな!)」
タケ「(しかし成功するとは限らへんけど…)」
もょ「レオン…じゃなかった、ククール。もしかしたらトロデおうとおひめさまののろいをとくことができるかもれないぞ。」
ククール「なんだと!?」
ヤンガス「本当でがすか!?」
もょ「ラーのかがみでムーンののろいをといたことがある。いまからもってくるよ。」
リア「さっすがぁ!もょもとさん!即実行あるのみだね。」
もょ「ちょっとまってろ。」
ラーの鏡を取りに行きリア達の場所に戻った。
戻った後トロデ王の水と食料を与え。とにかく起きてもらった。
537 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:07:22 ID:wRmz2JKx0
トロデ「お蔭様で助かったわい。」
ヤンガス「おっさん良かったでがす。」
トロデ「バッカもーん!!ワシの家臣でありながら何をやっておるんじゃ!!」
ヤンガス「あっしは家臣ではないでがす!」
トロデ「しかしこの者達がワシとミーティアの呪いを解いてくれるとな?」
ククール「俺達の世界と全く違う世界だからな。可能性はあると思う。」
もょ「まずはトロデおうからはじめることにするぞ。」
もょもとがラーの鏡でトロデ王を写し出し、覗き込むと人間の顔が写し出した。
ヤンガス「お、おっさん!手が人間の手に戻っているがす!」
トロデ「なんじゃと!?おおっ!」
ククール「凄いなこれは…元通りに戻ったみたいだな。」
トロデ「どうじゃ?ヤンガス、ククール。これでワシもギャルにモテモテじゃ!!」
ヤンガス「おっさん何言っているんでがすか!?」
ククール「はいはいわかったわかった。」
リア「後はミーティア姫だけだね!」
トロデ「そうじゃった!ようやくミーティアも元通りに戻せるぞ!もょもと!早くやってくれ!」
もょ「わかったぞ。」
もょもとがラーの鏡を馬に写し出した…しかし――――――――
バリィィィィィィン!!!!!!!!!!!
ラーの鏡が砕け散ったのだ……………………その瞬間全員の表情が硬直してしまった。
538 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:08:29 ID:wRmz2JKx0
もょ「な、なぜだ…?」
リア「そんな…」
トロデ「な、なぜミーティアだけ呪いが解けないんじゃ!?」
ククール「多分、トロデ王の呪いより姫の呪いの方が強いのだろう…」
ヤンガス「やっぱりドルマゲスを倒すしかないでがす!!」
トロデ「ドルマゲスめ…」
その時サマルとムーンが来た。
サマル「どうしたんだい?今凄い音がしたんだけど。」
ムーン「凄い音がして目が覚めたわ。」
もょ「ムーン、すまない。ラーのかがみがわれてしまったんだ。」
ムーン「…しかもレオンもいるじゃない。状況を説明して。」
ククール「俺が話そう。」
ククールは今までの話の流れを話した。
ムーン「ミーティアさんの呪いはハーゴンのよりもきついみたいわね。」
サマル「しかもドルマゲスって奴もハーゴンと同様に邪悪な魔術師みたいだね。」
トロデ「ムーン。家宝を壊してしまってすまんのぉ…」
ムーン「気にしなくていいわ。王様。人助けに使って壊れたんだからいいじゃない。」
なかなか話が進まない沈黙の状態でリアが切り出した。
リア「これからどうするの?」
539 :
レッドマン
◆U3ytEr12Kg
:2006/04/30(日) 22:09:58 ID:wRmz2JKx0
サマル「バカ!空気を読め!」
リア「ご、ごめんなさい…」
ククール「そうだな。もょもと、すまないが俺はここまでだ。」
もょ「なんだって?」
ククール「ヤンガスやトロデ王達と一緒に行くとする。俺のわがままで付きあせる事はできないからな。」
リア「そんな、寂しくなっちゃうね…」
ムーン「リア、ククールも目的があるんだから仕方がないじゃない。」
ククール「すまない…」
ヤンガス「それならまた待ち合わせしたらいいんじゃないでがすか!?」
トロデ「それもそうじゃの。ヤンガス、お前もたまには良い事言うもんじゃ。」
ヤンガス「余計なお世話でがす!」
もょ「そうだな。ローレシアでまちあわせしよう。ローラのもんのつうこうきょかしょうがいるな」
サマル「それなら僕が紙に書いて作っておくよ。」
ムーン「なら決まりね。私達はルプガナに行くわ。」
ククール「俺達はムーンペタに行ってローレシアに向うとしよう。元気でな!」
リア「またね!ククールさん、ヤンガスさん、トロデの王様。元気でね!」
もょもと&タケ
Lv.15
HP:43/105
MP: 0/ 0
E鋼の剣 E鋼の鎧 E鉄の盾 E鉄兜
特技 共通技:チェンジ
もょもと専用:はやぶさ斬り・魔人斬り
タケ専用:かすみ二段・強撃・ゾンビ斬り・大防御
540 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/01(月) 01:09:57 ID:nFz9QxX20
レッドマン乙
みんな職人さんマダー?って言ってるけど、俺は書庫さんの安否が心配じゃ
541 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/01(月) 07:28:48 ID:kEfj/vhoO
ちょwwwwそれ何て仙道wwwwwwwwww
542 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/01(月) 12:01:58 ID:P7AbthPB0
さり気無くムスカが絡んでるw
543 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/02(火) 12:03:08 ID:jUiphBIdO
レッドマン乙。
今後の展開が楽しみだ。
544 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:35:40 ID:1RKN4gD70
>>508
から続き
●変わらない
巨大なアトラスの身体には無数の深い斬り傷がパックリと開き
その命を奪ってしまっていた
「倒したのね…」
メイがよろよろと、立ち尽くす俺の横へ歩み寄り言った
深々と突き刺さった木の枝の傷痕は、消えてなくなっている
残っているのは真っ赤に染まった血痕
「残った全ての魔力で、古代魔法ベホマラーを使ったの」
「ベホマラー?」
「そう ベホイミやベホマとは違って、一度に複数の人を治せる
だけど、イオナズンとあわせてかなり魔力を消耗してしまったから、一晩くらい休まないと…」
だから…
不思議な力が湧いてすぐには起き上がれなかったけど
ベホマラーのおかげで立ち上がることが出来た
あの時メイが呟いた魔法はこれだったんだ
もし、洞窟で古代魔法を手に入れることが出来ていなかったら、今ごろ魂だけの存在になっていた
「ありがとう」
「お礼なんて、私たちは一緒に旅をして一緒に戦っているんだから」
「…そうだな ありがとう」
545 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:36:20 ID:1RKN4gD70
口の中に鉄のニオイに似た味が、ザラザラと残っている
俺はいったいどうやって アトラスを倒したんだろう
「剣が白くなって、タカハシはとても早い動きで何度も何度も… 斬り付けたのよ」
「何度も… 全く覚えていないよ」
右手に握るオリハルコンの剣は、いつもの通りの金属色
不思議な力は効力を失っていた
倒れる巨体へ目をくれると、光に包まれ空へ溶けこんでいくところだった
同時にシュンと、辺りから不穏な気配も無くなる
そのまましばらく無言で空を眺め、俺は口を開く
「メイ、ルビスの事なんだけど─」
話しておかなければならない
俺といれば、またアトラスのように強い魔物が現われるかもしれない
だから、真実を言って そして俺は一人で旅を続けたいと─
「私は… なんでもいい」
「え?」
「タカハシが"どこの誰で何者"だろうとタカハシである事は変わらない
今まで通り、なに一つ変わらないの」
「…そうだとしても、また強い魔物に襲われてしまう可能性は高いんだ
これ以上、俺と旅を続けるのは危険過ぎる」
「平気、よ タカハシがきっとまた、強い力で助けてくれると信じてる
それに、まだタカハシと旅を続けるって決めてるの」
「しかし─」
「私は、こんな事だいじょうぶだから─」
「聞いてくれ 俺は本当は─」
言い掛けた言葉は、メイの手の平で抑えられ出口を失った
546 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:37:02 ID:1RKN4gD70
「いい 言わなくても、いい
今まで通り、いつもみたいにまた、旅を続けようよ
今までだって常に危険だったじゃない」
メイの目も"それ以上なにも言わないでほしい"と語っているのが感じとれる
俺はいったいどうすれば…
「わかったわ じゃあ、こうする
もしまた不穏な気配を感じたら、私はすぐに遠くへ離れ逃げるから…
約束するから、お願い…」
アトラスとの短い会話の中でメイは何を、何に気付いたのか
もしかしたら俺が普通の人間では無いことに気付いているかもしれない
俺のあの不思議な力、俺自身が驚いてるんだ
……だけどやっぱり危険すぎるよ
その後も説得し続けたがメイは折れてくれず
"危険を感じたら必ず逃げる"
という約束を俺は信じ、一緒に今まで通り旅を続けることを承諾した
547 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:37:44 ID:1RKN4gD70
●遙かな時間
アトラスを倒ししばらくの休憩後、俺達はチゾットへ向け歩きだしていた
しかしあまりに厳しい戦いだったために、二人とも気持ちを前に進めることが出来ない
あまりに強すぎた敵アトラス…
そんな、お互いが不安定な状態では危険過ぎる
またゾーマの刺客が現われるかもしれない
だから明るいうちに野営を始め、そしてそのまま夜を迎え今に至っている
魔力を使い果たし疲れ果て眠るメイ
穴の空いたプリンセスローブは丁寧に繋ぎ合わせられ、血痕だけが濃く残っている
俺が身に着ける魔法の鎧はぐしゃりと潰れてしまったから、途中で破棄してしまった
今の装備は予備として持ち歩いている旅人の服
「あの力は、なんだったんだろう…」
ルビスに"守りたいモノや人を思いなさい"と言われ、思ったのはメイと自分の世界…
そして俺は意識を失い、いつのまにかあのデカブツを倒していた
ルビスの言う"真の力"はあの事だろう
だけどあれ以来、力を感じることは無くなってしまった
もしかしてまた死にかけなきゃ発揮されないとでもいうのか…?
「ふぅ…」
俺は溜息と一緒にググッと腕を伸ばし筋肉をほぐす
548 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:38:30 ID:1RKN4gD70
あの時"自分の世界"を思うのは当然だけど、今の目的である"トルネコと呪い"を思い浮かべることが出来なかった
いや、当り前かもしれない
目の前で木に貫かれたメイがいたんだ
だけど……
それだけじゃない感情が、俺に入り込んできていたのも事実
俺はこの世界の住人じゃないのにな
メイはどう、思ってるんだろう…
だめだ
俺はこんな感情を持っちゃいけない 捨てなくてはいけない
イシスからチゾットへ向かう間、ずっと考えていた
ここは俺の世界とは繋がることのない、遙かに遠い異世界なんだ
いつかは終わる、旅なんだ
549 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:39:08 ID:1RKN4gD70
●残り人
翌朝、アトラスとの戦いの記憶も多少薄れ、俺達は出発した
「もう一つの古代魔法はマホトーンっていうの」
「どんな魔法?」
「相手の魔力を、少しの間だけ無力化する事が出来るのよ」
「へぇ じゃあ、その静寂の玉と同じようなものか」
「そうね だけどマホトーンは失敗する事も多いらしいの
だからあまり過信してはいけないわね」
アトラスを倒してからも、魔物の気配は感じない
俺達はかなりゆっくりとした歩調で進む
魔王にはルビスの気配を感じとれるらしい
わざわざあんなに強い魔物を送り出してくるんだ
俺にはそう思えないが、ルビスは特別な力を持っているんだろうな
それとアトラスの言っていた"闇の衣の魔力"とはなんだ
古代魔法イオナズンも魔力を十分に送ったオリハルコンでもほとんど傷つけることが出来なかった
「闇の衣… 私も聞いたことが無い
もし、そんな力を全ての魔物が持つようになったら世界はおしまいね…」
「強力な魔法も、剣での攻撃も効かないとなると…
考えただけでも恐ろしい」
不安はつのるが、今はトルネコの呪いを解く事だけを考えよう
考えすぎると自分の世界へ帰る事すら、見失ってしまいそうな気がするから…
550 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:39:46 ID:1RKN4gD70
チゾットへ戻った俺達はクリーニに一晩の宿を借りて休み、再び西の道を歩いていた
呪いを解く事ができるかもしれない、カルベローナの生き残りを探すため
チゾットで聞いた話によると、西の道沿いを歩いていけば逃げ延びた人達が暮らす小さな集落があるらしい
その集落にカルベローナの人間がいるかどうかはわからないという事だったが、このまま途方に暮れるよりはマシだ
プリンセスローブはというと、チゾットの村人に洗ってもらい元のベージュに戻った
そして俺は、クリーニに譲ってもらった革の鎧を身に着けている
魔法の鎧より軽いが耐性はゼロだし鋭い爪の一撃をもらえばすぐにちぎれてしまいそうだ
だけどほとんど守っていないに等しい旅人の服よりは気持ち的に安心だ
「カルベローナの人達、すぐに見付かると良いけどなぁ」
「この道沿いを進んでいけばいいらしいから、すぐに見付かるわよ」
「見付けたら呪いを、すぐに解いてもらわないとな
メイももうすぐ、勇者にあえるかもしれないぞ」
「…タカハシは、勇者様の呪いが解けたらどうするの?」
「俺か …俺は旅を続ける
ただし、トルネコさんと一緒じゃない、一人で旅するよ」
「私達と一緒に旅を続けようよ!」
「それは─」
仕方がないんだ
俺は、帰らなきゃいけない所があるから─
551 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:40:44 ID:1RKN4gD70
「…その事は、その時考えればいいよね
もしかしたら、気が変わるかもしれないし」
「…そうだな それにだ
カルベローナの人達が呪いを解けるという確証はどこにもないんだ
もしかしたらまだまだ旅しなきゃならないかもしれないよ
そうなら─」
俺は、何を言おうとしてるんだ
駄目じゃないか
呪いを解くんだ、この旅はそのためにしているんだ
バカか、俺は…
「そうなら?」
「ん?ああ… そうなら… どうすれば呪いが解けるんだろう?って、言おうとしたんだ」
「わからないわね 呪いに関しては、教会でも研究が始まったばかりだし…
大きな町へ行って、人の話をたくさん聞いたほうがいいかもしれないね」
「大きな町か、じゃあもし、呪いを解けなかったらグランバニアへ向かおうか」
「そうね、グランバニアなら人が集まるからいろんな話が聞けそう」
どのみちライフコッドへ行くには、この西の道を通りグランバニアを経由する事になる
呪いが解けなかったとしても、一度ライフコッドへ行こうと思ってたから丁度良かった
552 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:41:23 ID:1RKN4gD70
西の道を歩き始めて幾日、うっそうとした森からようやく開放され、目の前に平地が現われる
更に数日進むと丸太を組み上げて作った小さな家がたくさん並ぶ、町らしき場所へたどりついた
「なぁ、あれ
あれがもしかすると生き残った人達が住む集落じゃないか?」
「きっとそうね だけどこれは…」
その場所は全く"町"という風体をしていなかった
整備された路があるわけでもなく、店があるわけでもなく、家もバラバラな方向へ向かい
まるで散らかされてしまったように感じる
それも広野に、広範囲に
「まぁ、見た目はどうでもいいさ
カルベローナの人達を見付けなきゃな」
集落へ入り人を探す
だが全く人気は感じられないし、家の扉は閉ざされたまま
少し気味が悪い
「うーん、誰もいないな
仕方がない、一軒ずつ尋ねていくか…」
なんだか訪問販売みたいで嫌だったが、外に人がいないんだ
こうするしかない
コンコンと扉をノックし声を掛ける
ガチャリと開き、女性が応対してくれた
553 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:41:59 ID:1RKN4gD70
「はい、なんでしょう?」
「あっ 俺はタカハシといいます
あの、カルベローナの人はこの集落にいますか?」
「カルベローナの人は、居るにはいるけど…
ここはカルベローナの人達が作った場所でね、だからそこ出身の人がほとんど
でも付き合いしたがらないから、誰も外へ出なくなってしまったんだよ
私はアリアハン出身だけどね」
「家へ尋ねても話してくれないんですか?」
「あんた、商人かい?
商人だったらカルベローナの人も話してくれるかもね
あの人達は買い物が好きみたいだから」
「そうですか… ありがとうございました」
商人か…
幸い今はチゾットで食糧や薬草を補充したばかりで荷物は大きい
これなら、心苦しいけど欺けるかもしれないな
早速、隣の家の扉をノックする
「はい?」
中からは中年の男がドアを少しだけ開け、返事をする
「あ、すみません
商人なんですが、何か買っていただけませんか?」
俺は商人になりすまし、大きい袋を見せアピールしてみた
「…あんた、商人じゃないな
すまんが見知らぬ人とは話をする気分じゃない、他をあたってくれないか」
男はそういうと扉を閉じてしまった
554 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:43:28 ID:1RKN4gD70
うーん、たぶん今の人はカルベローナの人に違いない
一言で見破られてしまうとは、トルネコに商人の話しかたを学んでおけばよかった
「タカハシ、どうしよう?」
メイも心配そうだ
「もしかしたら、一人くらい話をしてくれる人がいるかもしれないから…」
俺はそう言い、再び並ぶ家を尋ねる
だが、今度は一言も話さず、断られてしまった
なんでこんなにかたくななんだ…
555 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:44:10 ID:1RKN4gD70
それから20軒は回っただろうか
その間にカルベローナの住民と思える人は10人いたが、全ての家で門前払い
次、駄目なら一度チゾットにでも戻って商人を連れてこようかと、考え直しながら21軒目の扉をノックする
「はい、どなたでしょうか?」
今までとは違い、扉を大きく開いて一人の若い女性が出迎えてくれる
「あ… えーと…」
商人作戦は通用しない
なんと言えばいいのか─
「…あなた、何か、普通とは違う雰囲気を持っていますね
それに後ろの女性は大きな魔力を感じます
……私はバーバラ、どうぞお入り下さい」
どういう事なのかわからないが、なぜか家の中へ通される俺達二人
まだ名乗ってすらいないのに
丸太を組み合わせ作られた家
中へ入ると狭い部屋が二つ
片方は台所とテーブルが設置され、今通されているもう一つの部屋には二つのベッド
一つは空で、もう一つは歳老いた男が横になっていた
「長老、この方達は………」
バーバラが、長老と呼ばれた男へヒソヒソと短く耳打ちする
556 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:45:28 ID:1RKN4gD70
「うむ… そうか
バーバラ、お前は下がっていなさい…」
長老がそう言うと、バーバラは俺達に軽く一礼し部屋を出ていく
「あんた方、ワシの横へ…」
長老が横になるベッドへ近付く二人
「む……… あんたはタカハシ、後ろの女性はメイ、か
して、何か用かな?」
なんと
長老は心を読めるのか?
なぜ俺達の名前がわかるんだ…
「ワシは、カルベローナの長老 だった者じゃ
ほんの少しだけ、人の心を見通せる」
557 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:46:16 ID:1RKN4gD70
●盗まれた魔法
「俺達は、勇者の呪いを解くため旅をしてきました」
「うむ、知っている
先ほど、失礼ながら心を読ませてもらったからの」
心を読む、か
読まれる方は嫌な感じだ
「だからあんたたちの目的は知っておる
……残念な事なんじゃが、勇者様の呪いを解くことはできんのじゃ」
「そんな」
俺は、ガックリと肩を落とし絶句する
古代魔法もなかった
そして、カルベローナの長でも呪いは解けない
いったい、どうすれば……
「この世界のどこかに…」
長老が静かに語り始める
「マジャスティスという、魔法がある
その魔法は、強い正義の心を持つ者であれば誰でも扱える魔法じゃ
呪いや、マヤカシを打ち消す正義の魔法
ただし」
「ただし、なんです?」
思いがけない情報に、身を乗り出して長老へ聞き返す
558 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:48:19 ID:1RKN4gD70
「ただし、どこにあるのかは全く分かっていない…
ワシらカルベローナの民はその魔法を探しつづけ、そして今でも探しておる
商人が持ってくる珍しい古文書や情報を集めながらじゃ…」
「そのマジャスティスという魔法は、ほんとに存在しているの?」
メイの問いかけに長老がはっきりした口調で答える
「存在はする
これは確実じゃ、なにせカルベローナの一族が守っていた魔法なんじゃからな
だがある日、盗賊によってマジャスティスの魔法書が盗まれてしまった」
「盗賊にですか…」
「うむ…
あんた達が何者なのか、そこまではワシでもわからん
じゃが何か、大きな力があんたたちを守ってくれているようじゃ」
「大きな力?」
「そうじゃ
だからあんた達をバーバラもワシの元へ案内したんじゃろう
もしかしたら… 魔法書を見付け勇者様の呪いを解いて下さると…
本来マジャスティスは、盗まれたから取り戻そうとしていたのじゃが、勇者様がああなってしまった
だから今はその呪いを解くために探しているんじゃ」
大きな力か
ルビスだな、滅多に姿を見せない癖にどこかで見ているのか
「あまり人付き合いしないのも、そのためですか?」
「いいや、それは一族の昔からの風習というか、そういうものなんじゃよ」
559 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:49:25 ID:1RKN4gD70
新しい情報"マジャスティス"
どこにあるかわからないが、確かに存在しているという
次の目標は否応なしに決定した
早く呪いを解くためにも、早く元の世界へ戻るためにも、ガッカリしている暇は無い
この世界にきて俺の心は、滅多な事ではめげなくなってしまったようだ
「じゃあ俺達に、そのマジャスティスを探してほしいと」
「いいや、そうは言っていない
ワシらはワシらで今後も探していく
あんた達が魔法を見つけ出し勇者様の呪いを解いても文句もいわん」
「…お話、ありがとうございました
俺達もその魔法を探そうと思います」
「うむ 頑張りなさい
二人はまだ若いのだから、きっと見付けることができよう」
"失礼しました"と家を出る
560 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:50:06 ID:1RKN4gD70
「結果は残念だったけど、こうして新しい情報も手に入れた
…まだまだ旅は続きそう─」
メイに話しかけたところで、長老の家の扉がガチャリと開き、バーバラが出てきた
「そこの… メイさん、長老がお呼びなので来ていただけませんか?」
「私? 私は構わないけど…」
チラと俺を見るメイ
「うん? 構わないよ、俺はここで待ってるから」
「ありがとうございます、ではメイさん中へ…」
バーバラとメイ、二人が家へ入っていく
長老が呼んでるなんて、なんだろう
カルベローナの人は魔力が強いらしいから、その事で話でもあるのかな
メイは賢者だし…
561 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:50:39 ID:1RKN4gD70
ガチャと長老の家の扉が開きメイが出てきた
時間にすると一時間ほどだろうか
俺は座って何を考えるわけでもなく、ボーッとしていた
「お待たせ」
「お、長かったな」
「ええ 魔法についての話をたくさん聞いてきたわ
さすがに魔力の強い一族の長だけあって、いろんな事を知っていて、とってもためになった
タカハシも魔法を覚えたらいいのに、ホイミ教えてあげるわよ?」
「え?俺は… いいよ、メイが使えるのだから」
なんだか、変に、メイが明るく振る舞っているような気がする
「何か、よくない事でも言われたのか?」
「え! いいえ、本当に魔法の事をお話しただけよ
きっと、いろんな知識を知ることが出来て、嬉しくってそう見えるのね」
俺の思い過ごしか…
562 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:51:31 ID:1RKN4gD70
「では、道中どうかお気を付けて…」
何時の間にか扉から出てきていたバーバラが丁寧に挨拶をし、家へ戻る
「あ、どうも… って遅かった」
「これから、どうしようか?」
「うーん… 考えていたんだけど、一度ライフコッドへ行きたいんだ
その後、グランバニアで情報を集めてもいいかな?」
「もちろんよ 私も勇者様の姿を一目みておきたい」
「うん、じゃあトルネコさんに会いに行こう」
相変わらず静かな集落を後に、俺達はグランバニア方面へと歩きだした
もう一度、自分の目標を明確に自覚するために─
563 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:52:16 ID:1RKN4gD70
●予感
グランバニアへ向け出発し何日も過ぎた
この地方の地図はないが、真新しい休憩小屋がわかりやすく道沿いにあったため順調だった
魔物はやはり、出てこない
"もしかすると平和になったんじゃないか?"
そう思ってしまう程に、道は人々が行き交い、途中、新しい町の建設もされていた
「なんだか、平和に見えるね」
「ああ、ほんとにな
魔物が出なくなったんだ、そう思ってしまうのも無理は無い」
「無理は無いって、何か思い当たることでもあるの?」
思い当たること
いや、特にはない
だけど本当に真の平和が訪れたとは、俺にはどうしても思えない
「アトラス、やつが現われたじゃないか」
「あ、そうね まだ魔物はいなくなっていないのね…」
「うん だから」
「…油断はしないで、進んでいきましょう」
564 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:52:59 ID:1RKN4gD70
昼と夜の繰り返し
魔物は姿を見せず、代わりにたくさんの商人を見掛ける
俺達は少し疲れ、平地へ腰を降ろし休んでいた
時間は夕刻
遠い地平線に真っ赤な陽が、その身を隠そうとゆっくり動いている
「なぁ、この世界は丸いのk─ ?!」
俺が素朴な質問を言い終わる前に、メイが俺の背に自分の背中をくっつけ座り直した
突然の事に、俺はとんでもなく動揺してしまう
「少し、こうして座っててもいい?
背中をつける場所がないから、こうすればお互いもう少しゆっくりできるから」
俺は慣れないシチュエーションに内心かなり焦っていたが"いいよ"と、普段と変わらない調子で返事をした
「ありがとう
…この頃、嫌な予感がしてたまらないの
どう伝えればいいのか、まるで今の瞬間が、最後の瞬間なような気がして…」
あまり、自分が考え悩むことを俺に話すことがなかったメイ
そのメイがそう言っている
565 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:53:38 ID:1RKN4gD70
「そうか… 予感は外れることだってあるじゃないか
あまり、考えすぎる事はない」
「うん…」
「もうすぐグランバニアだって、さっき話した商人も言ってた
ライフコッド直行じゃなくて、一度グランバニアで休んでいこうか?」
「ううん、大丈夫 きっと… 私の思い過ごしよ
だけどもう少し、このまま…」
最後の瞬間とはどういった意味だろう
どうしても負の方向へしか考えられないから、陽で染まる地を眺め、気持ちをからっぽにしようと俺は努めた
566 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:54:37 ID:1RKN4gD70
次の日は、朝から雨が降っていた
雨はとても冷たく、気持ちもどんよりと曇る
俺たち二人は雨のせいか全く人通りの無くなった道を進む
もう数時間も歩けばグランバニアだ
「タカハシ、私これ以上進みたくない」
メイはそう言うと、立ち止まってしまった
表情がよくない
「どうしたんだ? もうすぐグランバニアに着くじゃないか」
「ごめん だけど、進むと何か、よくない事が起こりそうで…」
「そうは言っても… 昨日言ってた"予感"か?」
「昨日よりも、とても大きな─」
二人の周りを薄暗い霧が、どこからか囲み始める
「なんだ?!! 突然、いったいどこから!」
俺は焦りオリハルコンの剣を手にし、メイの前へ
「なにが─!」
567 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:55:20 ID:1RKN4gD70
後ろから、バシと大きな音とすぐ後ろで人が地に倒される音も聞こえた
同時に、今までに感じたことがないほど大きく邪悪で寒気のする気配
身体の向きを急いで変えると、空間に突如現われたガラスのような扉から
マントに身を包んだ若く、スラリとした男
メイが俺のすぐ後ろに倒れ、ゴホゴホとむせていた
「誰だ! メイに何をした?!」
メイを俺の後ろに立たせ、グッとオリハルコンの剣を両手で構えながら男に怒鳴りつけた
ガラスの扉がスゥと消える
「ルビスの遣いを殺しにきた」
マントを翻し、静かに語りだす男
その身体は漆黒の鎧に身を包まれ、武器などは一切所持していない
「何を言って…!!」
恐ろしい
この男は、その存在を目で確かめただけで、とても強い力を持っているとわかる
オリハルコンへ俺が持つ全ての魔力を注ぎこむ
「貴様等人間は、多すぎる 大勢は必要なくなったのだ
遣いを殺した後─ 私自らこの世を洗浄しよう…」
なんだこの男…!
まるで自分が支配者のような事を……
う、まさかこいつが─!!
「我が名はゾーマ この世界、そして宇宙を支配するのは神ではなくこの私…」
568 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:56:04 ID:1RKN4gD70
●愚かな若者
雨はざあざあと止むこと無く、薄暗い霧だけが晴れていく
俺の想像とは全く違う、人間と変わらないその姿
どこかもの悲しそうな、それでいて眼光鋭い目
筋の通った鼻にキリと結ばれた細い口
今、目の前に立つこの男がこの世界を苦しめる─ 魔王ゾーマ
両手で構えるオリハルコンの剣が、汗と雨水でズイと滑り落ちそうになる
「メイ、大丈夫か? 逃げるんだ…」
俺は小声でメイに告げる
「大丈夫、私だって戦う…」
「まて、無茶だ 約束したじゃないか!」
思わず大きな声で叫んでしまった
だけど、このゾーマにはどうしても勝てる気がしない
正直、俺もこの場を逃げ出したい
「俺が時間を稼ぐからそのうちに逃げろ!!」
メイの言うことを無視してゾーマヘ斬りかかる
『シュン』
切先は確かにゾーマの身体を切り裂いた─ はずだった
しかしアトラスの時よりももっと強力な力が働き、まったく傷を負っていないゾーマ
569 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:57:06 ID:1RKN4gD70
「…私に傷を付けられるとでも思ったのか? ルビス! この程度なのか?!」
「な、なんだ…と─ う?!」
俺の身体がフワリと宙に浮き、まるで金縛りにあってしまったように固まり、動けなくなる
ゾーマが手の平を俺に向け、強く俺を睨み付けたその瞬間
俺の身体は細かい、何か波動のようなもので無数の切り傷を受けてしまった
しかし身体は地に着くことがなく、幾度も同じ攻撃を受けてしまう
「イオナズン!!」
メイによって放たれた古代魔法イオナズン
しかしその爆発が起こる前に、空気中に完成したその爆発の源が、ゾーマによって握りつぶされてしまった
「娘よ、焦ることは、無い
わが身に纏う"闇の衣"の前では全ての魔法は無力…
だがお前は、力を持つ者として我が世界へ招いてやろう
まずはこの男の絶望を吸いつくし殺してからだ
その後、ゆっくり弱らせ我が力にしてやろうではないか!」
その言葉にメイがガックリと ひざから落ちる
「効果は薄いと思ってはいたけどまさか… 消されてしまうなんて……」
570 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:58:54 ID:1RKN4gD70
くっ……
闇の衣ってあの赤いマントの事か?
まさに絶望だ 希望を微塵も感じることが出来ない……
このままじゃメイまでも…
─あの、力
あの力が今…!
俺は必死に、心の奥底から自分が守りたいものを強く思い描く
身体の奥で何かが動き始め、意識が飛んでしまいそうになる
くそっ!
頼む、守るんだ……!
ざあざあ降っていた雨がピタリと止み、真っ黒な雨雲がほんの少しずつ散っていく
「む… ルビスの力だな」
金縛りを魔力で破り、ストッと俺は地に降りる
この、大きな力ならいける…!
「ほう…」
ゾーマがニヤリと笑い両手を前にし俺と対峙し、強い圧力を俺に向けて放つ
一瞬、目の前の景色がグニャリと曲がったように感じ、一歩下がってしまう
571 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 12:59:39 ID:1RKN4gD70
ゾーマ…
武器をもたず己の魔力を自在に操り相手を傷つけてくる恐ろしい敵
そしてなにより、あの不思議なバリアのような"闇の衣"
アトラスと同じならばこの白く輝くオリハルコンの剣で貫けるはずだ…!
俺は両手の真正面を避けるように動き、一回二回と斬り付けザッと離れる
この"真の力"の早さに、ゾーマはついてこられないのかオリハルコンの攻撃をまともに食らう
闇の衣は貫いている、手応えはあった…!
この調子で斬っていけばいける……!!
手応えの結果を確かめず俺はとにかく動きまわり何回も何回も斬り付けた
その度にゾーマは無言で刃を身に受け、微動だにしない
さすがに俺も警戒しはじめ、そのうちに斬りつけるのを止める
「はぁはぁ… かなりダメージをあたえられたはず…」
この"真の力"はかなり体力と魔力を消耗するようで、俺は息切れしてしまう
斬り付け続けたその姿を見ようと、俺は顔を持ち上げる
572 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:00:32 ID:1RKN4gD70
「フッ…」
「な…」
ゾーマは一切、傷を受けていなかった─
「なぜだ! 確かに手応えが…」
「若く愚かな男よ
お前が斬ったと思い込んでいたのは… クックック………」
「なにがおかしい! どこを見て………?」
おかしい
おかしいのだ
俺はゾーマを斬っていた
なのになぜ─
ゾーマの視線を追いかけその先に俺が見たのは
血だらけになって倒れる、メイ
「ハッハッハッハッ!!」
ゾーマの太く、不愉快な笑い声が、グランバニアを目前にしたなだらかな平地を、支配していた
573 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:01:12 ID:1RKN4gD70
●滅び滅ぶ
「メイ!!」
俺はオリハルコンの剣を放り、両手でメイの身体を起こす
「タ、カハシ……」
「すまない…! 俺は、俺は……!」
「ベホマ… 間に合わないの……」
「どうして……?!」
メイの小さな両肩を、ギュッと引きよせる
「ふむ… 愚かな男女よ
貴様等の絶望と悲しみ、怒りと憎しみは実に良い
どうなったのか、特別に教えてやろう
闇の衣の魔力を使い男に幻を見せただけだ
どうだ、クックッ…
あっさりと罠に嵌まり、私だと思い込んで女を斬り続けたではないか!」
幻…!
「その女、闇の衣のおかげで即死は免れたようだが、もう時間の無駄
だが私は!
邪魔をしないで見守ってやろう!
男よ、もう残された時間は少ないぞ?
早く私に、お前の絶望を味わわせてくれないか! クックックックッ!」
なんて… 冷酷な……!
574 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:01:59 ID:1RKN4gD70
「タカハシ…」
メイの生きる力が、グングンと小さくなっていくのが感じられる
「メイ、もう喋るな ベホマだ、ベホマをかけろ!」
「もう、だめなの…
もう、魔法で回復できる損傷度合を越えてしまったの…
だけど、タカハシのせいでは、ないのよ……」
「ベホマを! ベホ、マを……!」
だめだこのままじゃ…
メイは死んでしまう……!
俺が、俺が、俺が…………!!
「タカ、ハシ… 手を、見せて…」
俺は、心がどうにかなってしまいそうなのをグッと堪えメイの眼前へ、震える手の平を差し出す
その俺の手の平を、メイはそっと弱々しく自分の手にあわせ、言う
「この手が、好き… いつも私を引っ張り守ってくれた手…
もうこの手を見ることは、なくなってしまうのね……」
「まってくれ まだ、頼むから回復魔法を使ってくれ!
きっと治る…!」
「これを…」
メイが差し出したのは静寂の玉
575 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:02:43 ID:1RKN4gD70
「これ、身に着けていて
私だと思って、連れていってね…」
「バカな事を… 言うな! まだ一緒に、旅をするんだよ!」
メイがフフと笑い、言葉を続けていく
「タカハシがどこから来てなにをしようとしているのか…
私は夢の中でルビス様から聞いたの
チゾットで眠っているときにね…
ずっと、一人で、誰にも言えずにいたんだね……
そして、ルビス様は私に、タカハシの助けになってほしいって、言っていた…
私はそう言われたとき、こうなる事も覚悟していたから、だいじょうぶ……」
「そ、そうだルビス! いるなら返事をしろ! メイを、助けるんだ!!」
声は届かず
何も返らない
「聞いて、タカハシ…
カルベローナの長老は、あなたのその秘められた力を見抜いていたわ…
私が、ルビス様と約束をしている事も知っていた…
そして、私の覚悟を感じとった長老はある魔法を、私に授けてくださった…」
576 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:03:29 ID:1RKN4gD70
よく、わからない
なんでこうなってしまった
ルビスはなんでメイに告げた なんでだ
俺はなぜ、メイを斬ったんだ
そうしてなぜ、メイが死ななきゃならないんだ─
「う……! タカハシ、私はそろそろ、この身体を抜けなければならないの…」
「抜けるって、どういう」
「わからない… だけど安心して、私があなたを守るから…
一緒に旅が出来て楽しかった、本当に会えてよかった…
もっと一緒に旅したかったけど、ここまでなの ごめんね…」
「そ、んな そん、な事…」
「一つだけ約束… あなたが元の世界へ戻ることが出来て…
私が生まれ変わって、もし目が覚めたらあなたの世界の人間だったら…
また一緒に……」
メイが目を瞑り、少しだけ集中する
「さようなら、タカハシ あなたは何一つ悪い事なんてないの
私、とっても楽しかった…
そしてこれが、長老から授かった究極の魔法…」
「ま、待ってくれ、俺は─」
メイが、俺の手をギュッと握る
腕組みをしたまま俺達を傍観するゾーマを見つめ、小さくつぶやいた
577 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:04:16 ID:1RKN4gD70
「マダンテ」
刹那、俺はメイの身体と共に吹っ飛ばされ
ゾーマを真っ白な空間に閉じ込め
その空間の中はまるで
小さな宇宙が誕生するかのごとく
混沌と
暴々と
恐々と
眩しく輝きあたり一面、影が焼き付いてしまうほどにグウグウゴウゴウ瞬き
やがて小さく収縮し、消えてしまった
「クッ…… ! メイ─」
俺のそばでぐったりとするメイは
赤色が無くなり魔力も感じられずただ 横たわるだけの動かない存在
「メイ? 死んだ、のか?」
棒のように真っ直な言葉が、口をついて出た
そうして、メイの頬へ手を触れようとしたら、ボッと青白い炎に包まれ粉のように消えるその脱殻
何が起きたのか 頭は"わかる"と言うけれど、心が"わからない"と叫んだ
578 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:05:46 ID:1RKN4gD70
「フフッフッフッフ………」
ぼんやりと、そのおかしな笑い声の方向へ体ごと向けると、マダンテに包まれ収縮し消えたはずのゾーマ
ゾーマは、ボロになったマントを引き摺り、近付いてくる
俺にはもう抵抗する気力なんて ない
メイが 死んでしまったんだ
「おもしろい事をしてくれたではないか…!
マダンテを使えるとはな…
おかげで闇の衣は消滅し、私自身も傷を負った 時間をかけ癒さねばならない
知っていたか? その魔法は術者自身の命を燃やし、相手を滅ぼす魔法なのだ
その女が消え去ったのはマダンテの効果、そして殺したのは」
不敵なゾーマは、力強い声で─
「お前だ!!」
俺が? そうか…
「惜しい魂を失ってしまったが…
結局は我が力となるであろう、我が世界でゆっくりとな」
ゾーマの言葉を、ただただ、聞くことしか、しない
「男 おまえの力、十分に使える
ルビスの力を持つお前は殺そうと思っていたが…」
ゾーマは右腕を俺へと伸ばし
「お前は弱いルビスの遣い 今からルビスではなくこの私の為に、その魂を、捧げ続けよ……」
579 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:07:02 ID:1RKN4gD70
離れた所には、輝きを失ったオリハルコンの剣
手を伸ばせば届くのだが、頭に置かれようとするゾーマの鋭い爪を伴った手を俺は、少し見上げ自ら受け入れた
メイは死んでしまった
ルビスのせいか?
いや… ゾーマの言う通り俺だ
俺の手で、その命を殺した
彼女が好きだと言った、この手で………
意識は次第に薄れていき、グイと、"我が世界"へ引き込まれて─
そのまま、永遠に眠ってしまいたいと、願った──
タカハシとメイ、そしてゾーマの姿は グランバニアの南から完全に消え
残されていたのは泥だらけの 立派な剣だけであった
それから57日後
世界は 魔王ゾーマにより全ての町を滅ぼされ
少数の人間が隠れ住む 荒れた廃地となる
580 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 13:10:44 ID:1RKN4gD70
第三部完です
第三部のまとめテキストは以下のURL
直リンでは見られないかもしれないのでコピペでお願いします
DLキーは「takahasi」です
ttp://mata-ri.tk/up1/src/1M1813.txt.html
続きはまた、長い後日に
第三部は本当に、しんどかった…
581 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/02(火) 13:58:33 ID:pIFzgkVF0
凄いモノを読んでしまった・・・
お疲れ様でした
582 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/02(火) 15:11:47 ID:BDCRJnOkO
乙!!
ビビった〜、てっきり終わりかと・・・。
583 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/02(火) 17:01:12 ID:2i4kA/bkO
細かい修正する前のテキストを張ってしまいました…
違いは言い回しくらいなので、前回に引き続き脳内補完お願いします
あと、書き忘れたけど話は第四部へ続きます
584 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/02(火) 17:44:32 ID:SYMPzL0SO
ダークヒーロ―誕生予感。
てかすげぇ…
585 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/02(火) 18:04:18 ID:/mupVn6b0
レッドマンの明るい内容から
タカハシの辛い内容を読んだらかなりへこむな。
メイタソ
.。::+。゚:゜゚。・::。. .。::・。゚:゜゚。*::。.
.。:*:゚:。:+゚*:゚。:+。・::。゚+:。 。:*゚。::・。*:。゚:+゚*:。:゚:+:。.
ウェ━.:・゚:。:*゚:+゚・。*:゚━━━━゚(ノД`)゚━━━━゚:*。・゚+:゚*:。:゚・:.━ン!!
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.:*::+。゜・:+::* *::+:・゜。+::*:.
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586 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/02(火) 22:49:01 ID:jUiphBIdO
正直に言うと
自分が一番好きな映画を見終わった気分。
さらに続編の制作が決定された時の喜びを感じた。
もっといい言葉があるだろうけどうまく言い表せない、とにかく最高だ!!
587 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/03(水) 21:16:45 ID:uDTlMb4U0
機体
588 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/04(木) 01:17:19 ID:g1mll+0+0
タカハシSUGeeeeeeeeeee!!!!!!!GJ!!!!!!!!!!!!!
脳汁垂らしながら読んだ。
すごくショックだ。
泣けた。
589 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/04(木) 17:18:45 ID:XLJXE3SR0
保守
590 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:47:44 ID:d01ssZ4/0
>>579
からの続き
●失われた時間
「タカハシ! 起きて!」
ん… 誰だ俺を起こそうとするのは…
頭が、とても痛い……
「今日から一緒に旅するって言ったでしょう! 私よ、メイよ!」
メ…イ?
メイ?!
ズアッと、声のする方へ勢いを付け立ちあがり
その顔をじっと見つめる
「どうしたの? 目は覚めた?」
目の前にいるのは紛れもなく─ メイ
「メイ……!」
「寝坊よ! 待っていたのに寝てるなんて!」
この場所は、見覚えがある
そう確か…… フィッシュベルの宿屋だ
「ここはフィッシュベルの宿屋… か」
「そうよ 扉を叩いてもあなたは出てこないし、部屋の中まで迎えにきたんだから」
「メイ… 生きて………」
591 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:48:17 ID:d01ssZ4/0
時間が戻ったのか
俺がずっと悪い夢をみていたのか
目の前で生き少し怒った顔のメイに俺は、涙が出そうになる
存在を、確かめようと頬へ手─
「迎えにきたのよ、あなたを相応しい場所へ連れていくために…」
「え、連れていくって…」
な、なんだ これはメイじゃ、ない……?
「私は生きていない、なぜ?
だって、フフフフフ… あなたが殺したじゃない フフッ
あなたが剣で、私を斬り殺した…!!」
「な………?!」
メイの姿が突如、霧状の魔物へと変化する
景色も一変し、宿屋の一室から赤く黒くウネウネと動く空と、草一本生えていない土の大地になる
一瞬、言葉が頭の中から消滅し、目の前の出来事が色を無くしてしまったかのよう─
592 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:49:05 ID:d01ssZ4/0
「クカカカカカカ!
お前! マヌケな人間!
心の中から大事に思ってるものを、お前の心に合わせて見せてやったんだ! ありがたいと思え!」
フィッシュベルでの、始まりの朝…
俺のこの どろどろとした、心……
「お前、殺したんだってな!
嬉々と! 自分が大切に思う女を! ケケッ 邪悪なヤツ!」
「あ、あ、ああ・…」
嬉々、と…?
俺、おれ… が、ころした……
「ここは! ゾーマ様が創り出した我々魔族の為の世界!
お前はここで生きる屍のように生き長らえ、魂の力をゾーマ様へ捧げ続けるんだ!!」
「うう…… やめろ、俺は殺してなんか、ない… 罠に嵌まっただけ─」
「事実を認めないなど、情けないヤツ! 本当にルビスの遣いか?!
お前は失ったんだ! その人間の女との時間を! お前には何ものこっちゃいないんだ!
さあ! 今から腑抜けた人間共の暮らす町へ送ってやる!!」
霧の魔物が"バシルーラ"と叫び、身体にガツッとした衝撃が走る
身体は不気味な空を飛び、風はギュウと身体を押し潰そうとし、そのうち気を、失った─
593 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:49:47 ID:d01ssZ4/0
●絶望
『さようなら』
『私は死ぬの?』
『痛い…! やめて…!』
『ヤメテ!!』
「メイ──!!! くっ かっ はぁはぁはぁ………」
「おい、起きるならもっと穏やかに起きてくれないか」
だれ?
「お前、ずいぶん眠ってたぜ」
「メイ……?」
「メイ? なに言ってんだ、俺はフーラルって言うんだ」
「」
「なんだ? おいおい、こういう時は名乗るのが礼儀だぞ?」
594 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:50:27 ID:d01ssZ4/0
う、わからない…
「わから、ないんだ」
「何が? 記憶喪失とか言うんじゃないだろうな?」
「なんであの時、殺したのか… わからないんだ」
「なに? あー… そうか
お前もあの霧の魔物に嫌なモノ見せられたんだな
気にするんじゃない、あいつの見せるモノはほとんど嘘だ」
うそ?
「嘘、なんかじゃないんだ…
今も覚えてる あの感触を あの姿を 青い炎を…
うそなんかじゃないんだ……うそじゃ………」
「こいつは─ 重症だな…
よっぽどの思いをさせられたんだろう、かわいそうに」
595 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:51:04 ID:d01ssZ4/0
「フーラルさん、おじゃましますよ」
「お、トルネコ! 丁度いいや!」
「彼が、この間ここへ飛ばされてきた?」
「そうなんだが、どうも様子がおかしいんだよ
俺じゃどうしようもないから見てもらえないか?」
「ええ、ええ 見て差し上げましょう、どれ…」
「しかし、あんたも元勇者なのになぁ…」
「ホッホッ またその話ですか
何度も言いますが、覚えてないのです
私なんかが勇者なわけないでしょう、この町の管理者ですよ」
「確かにこの"絶望の町"の管理者だけどさ…
あんた、操られてるんだろ? とても魔物の仲間には思えないね」
「そう言われましても… 気付いたら管理者だったんですから…
それに魔物の仲間だなんて、思ってやしませんよ
私はただ、この町を管理するだけです」
「またまたぁ! 勇者なんだからさ、なんかすごい力でババーンと─」
「ホッホッ そんな力ありません
さぁ、この若者を看ますからしばらく静かにしていて下さい」
596 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:51:39 ID:d01ssZ4/0
「ふむ… 身体はどこも悪くないようですが、どうも気持ちが定まっていない
まだ様子をみながら安静にしたほうがいいでしょう」
「そうか、あんたが言うんならそうしよう
で? この男は俺と一緒の部屋でいいのか?」
「そうしてもらえませんか?
他の人達ではこの若者の面倒をみる事は、できないでしょうから」
「ああ、そうだな…
ふぅ…… まったく魔王ときたら、手当たり次第に人間様をこんな辺鄙な所へ送りやがって…」
「手当たり次第ではありませんよ
魔王は秀でた才能を持つ者だけを、選んで送り込んでいるのです」
「なんで? また?」
「さぁ… そこまでは私ではわかりかねます
フーラルさんのほうが、そういう話を知っているんじゃないですか?」
「ん? んん… しかしなぁ、俺なんか別にスゴイ才能持ってるわけじゃないんだけどなぁ…
ここで世界の破滅を見ているのも、辛いもんだよ死なないとはいえ……
だってよぉ? 街全て滅んでしまったっていうじゃないか!
残ったのは少数の人間だって話だ… 他は死んじまったんだぜ?
あーあ 俺の故郷も親兄弟も… 死んじまったんだなぁ いっそ俺を、殺してくれないかなぁ」
「あなた方はこの世界でこうして嘆き悲しんで、魔王にその感情を吸い取られているだけですからね」
「おいおい… なんでそんな普通に言うんだよ!
全く、本当に勇者だったのか? まぁ、呪われてそうなっちまったんだろうが、聞いたときは心底驚いたぜ」
「私は管理するだけの人間ですから… では、他に用事が有るので私はいきます」
「ああ、わかった ありがとな!
なんかあったらまた連絡するから!」
「ええ、ええ そうしてください、では…」
597 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:52:27 ID:d01ssZ4/0
「はぁ… こっから出て、また前みたいに金持ちから金せびって暮らしたいなぁ……」
「とるねこ……?」
「お! なんだ、聞いてたのか
そう、さっきのは元勇者トルネコだ 知ってるだろう? ライフコッドで呪われたっての」
「とるねこ、さん……」
「そうそう、トルネコさんだ
あの人もかわいそうだよなぁ 呪われて記憶無くなったと思ってたらこんな世界へ連れてこられてたんだ」
「て…」
「て? 手か?」
「てりー……」
「テリー? 知らないなぁ 知り合いか?
才能あるんならこの世界にいると思うけど、聞いたこと無いから才能なかったんだろうな!」
「」
「まただんまりか 早く治ってくれよ?
他のヤツラみたいに、世界が破滅しただの生きる意味が無いだのって無気力になっちゃだめだぜ?
この町でまともに動けるのは俺とカンダタと、トルネコだけなんだからな
若いお前にはまともになっててもらわなくっちゃ
じゃなきゃぁ… ますます救われねぇぜ……」
598 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:53:24 ID:d01ssZ4/0
●希望
「よぉ! どうだ、今日は喋れそうか?」
「」
「だめか まぁよし、今日はお前に客が来ている」
「タカハシ!」
「」
「おめぇ… 生きてたんだな! おい! なんとか言え!」
「」
「カンダタ こいつ、タカハシっていうのか?」
「おう、そうだ 俺はタカハシの剣を鍛えてやった」
「へぇ… もしかしてお前って、鍛冶屋? 賢者の石を扱えるっていう」
「お?! なんだおめぇ、知っているのか?」
「いやなに 実は俺は情報屋でな、情報で飯を喰ってたんだ
だからいろいろ知ってるぜ もちろん、この世界の情報も持ってる」
「この世界の情報って、どうやってだ?」
「それは職業柄教えられないんだが、人間も魔物もおだてに弱いって事だ!」
「む、俺にはできねぇ商売だな! なぁタカハシ! ハッハッハッ」
599 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:54:10 ID:d01ssZ4/0
「で、その情報にこの世界を逃げ出せそうなシロモノはあるのか?」
「いや、ない まだそこまでは聞き出せていないんだが、きっと聞き出すぜ」
「また拷問受けないようにしろよ!」
「大丈夫だ こっちの世界で俺達が死ぬことはないからな!」
「それにしてもだ 他のやつらはどうしてあんなに腑抜けなのか」
「仕方ないさ こんな世界で、しかも元いた世界はもう滅んだも当然なんだぜ?
逆に元気な俺達がおかしいんだよ」
「そうかもしれねぇ… だけど俺は! 負けたくねぇんだ 俺の弟子とカミさんを、あいつら殺したんだ!」
「…ああ、まったくだ 魔王だかなんだかに、負かされたままじゃいられないぜ…」
600 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:54:51 ID:d01ssZ4/0
「それはそうと… フーラル、タカハシと一緒に女はいなかったか?」
「いや、いなかった」
「そう、か…… メイは……」
「その名前、こいつが来たときにもつぶやいてたぜ? なにもんだ?」
「うん メイはな、タカハシと同じくらいの歳の娘でな
俺は、その娘に命を助けられた事が有って、それからよく遊びにくるようになったんだ
ある日、タカハシと一緒に旅に出て、それから見なかったが─」
「う、メ、メイ……」
「タカハシ! なんだ? 話せるようになったか?!」
「メイ、は…… 俺が、殺した……… この、手、で…………」
「……な んだって…?」
「そういえば…… タカハシは"なぜ殺したかわからない"とも、呟いていたっけ…」
「ころした、だと? おい、タカハシてめぇ…どういう事だ!」
「まて! カンダタまて! 待てって! 手を離せ離すんだ!!」
「くっ……!」
「落ち着け、落ち着けよカンダタ…!」
601 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 17:55:25 ID:d01ssZ4/0
「聞け、カンダタ
俺達もこの世界に飛ばされたとき、霧の魔物にへんな幻をみせられただろう?
もしかしたらそれを、タカハシは言ってるかもしれないんだ」
「だが! メイは実際この場所にいない!」
「お前、確か信用できる人間相手にしか商売しないんだろ?
それともなんだ? 金ほしさにタカハシの剣を鍛えたってのか?」
「それは─ ちがう、断じてちがう
信用したんだ、こいつを… 信用したのに、メイを殺したっていうじゃねぇか」
「まぁまてよ まだ はっきりとした真相を本人から聞いてないんだ
それを聞くまでは、俺に免じて待ってくれないか」
「……わかった 俺だって信じたい、魔物どもの思惑通りにもなりたくねぇ
感情的になってすまなかったな
それにしても、やけにタカハシの肩を持つじゃねぇか?」
「そういうわけじゃないんだが、なんとなく─
こいつが"希望"に思えるんだ、俺には…」
「希望… よくわからねぇ」
「まったく、お前にタカハシを任せなくて正解だったぜ
とにかくそういう事だから、まだ手出ししないでくれよな」
602 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/04(木) 18:02:46 ID:d01ssZ4/0
第四部、導入はここまで
しばらくペースが落ちるので、推敲が終わった話だけを投下
過去の話のまとめテキストを再アップしておきます
まとめテキストのほうは誤字脱字の修正や意味が変わらない程度にセリフや行動が書き換えられています
第三部後半は特に顕著です
DLキーは全て「takahasi」
URL直リンでは見られないかもしれないのでコピペでお願いします
第一部
ttp://mata-ri.tk/up1/src/1M1827.txt.html
第二部
ttp://mata-ri.tk/up1/src/1M1828.txt.html
第三部
ttp://mata-ri.tk/up1/src/1M1829.txt.html
603 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/04(木) 23:46:35 ID:lxkaZAdW0
ただいま376KB
長文投下時は一度メモ帳にコピペ→プロパティを見て
KB数を確認してから投下するといい予感
604 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/04(木) 23:51:52 ID:A1p1jOiK0
□□□□□□□□□□□ __ ,.-―‐-、..
□□■□□■□□■□□ /:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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□□■■■■■■■□□ .|:::| ▲ : ▲ |::::/
□□■□□■□□■□□ ヽ| ´ ̄ i !  ̄` レ'|
□□■□□■□□■□□ | _、_,ヽ 、 !ノ
□□■□□■□■■□□ ! ノ ) !
□□□□□■□□□□□ ヽ ヽ ‐=ニニ=ー'/ /
□□□□□□□□□□□ ヽ、 ヽ /
□□□□□□■□□□□ ヽ 、___,./´
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□■□■□□■□■□□■□□□■□■□□□■□■□□□□□
□■■■□□□□■□□■□□□■□■□□□■□■□□□□□
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□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
605 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/05(金) 01:16:05 ID:UdyND82bO
勝手にこのスレの主人公達の職業を考えてみる。
総長…賢者
タケ…戦士
タカハシ…魔法剣士
真理奈…武鬪家
クロベ…盗賊?
ジャガン(魔神氏)…(闇)勇者
4の人の主人公…僧侶?
606 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/05(金) 09:01:54 ID:jyalXVQG0
>>605
総長の職業は総長だろ
607 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/05(金) 22:23:53 ID:loud/pA70
保守
608 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/07(日) 06:00:06 ID:Ui74wGftO
保守
609 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/07(日) 06:48:05 ID:LFnwZwZe0
>>606
おまえ天才だ
610 :
竜宮状
◆SX5Jg8LAVM
:2006/05/07(日) 16:47:32 ID:zdYEhqwC0
保守
611 :
◆nvrQgBBjrw
:2006/05/08(月) 03:14:31 ID:HuTgfSw6O
てす
612 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/08(月) 09:20:52 ID:4IkbbiRg0
トリップテストすんな
613 :
タカハシ
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/08(月) 15:42:10 ID:KOEXxmfZ0
HDD昇天
第四部から書いてあった話は全て消え─
タカハシの旅は、より鈍足になるだろう
カキッって、鳴った時点でバックアップとるべきでした orz
614 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/08(月) 18:24:56 ID:PlrClmz10
>>613
どどんまい!しかしペースが速すぎるんじゃないのか?
無理するなYO!
615 :
たかはし
◆2yD2HI9qc.
:2006/05/08(月) 19:29:37 ID:Y1Qw1UkYO
>>614
ありがとう
PCは中身入れ直してなんだか快適になったけど…
この際なのでじっくりやっていこうと思います
616 :
一読者
:2006/05/09(火) 01:19:23 ID:NZfvLKCOO
>>615
そうそうドーンと構えてじっくり練り上げて下さい。
他の作者さんも焦らずにじっくりゆっくり練り上げて行って下さい。
617 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/09(火) 17:42:50 ID:lPmPr6uh0
|> ほしゅはまかせろ
618 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/09(火) 23:09:44 ID:oZUtJMpt0
心配なので早めに保守
619 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/10(水) 06:40:57 ID:DfctEsNsO
保守
620 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/10(水) 17:35:02 ID:6App2/1Y0
ローディ ◆qdB5QYIaRc
オリジ ◆8Ntuwr18d2
DQな現代 ◆gqal0QWwZw
魚間◆TRIPなし→4PnqyfvO3
オルテガ ◆8JKqodVw2k→zYgagV2g.w
ヘタレ ◆ozOtJW9BFA
キョウ ◆Hju2GLbs6k
591 ◆MAMKVhJKyg
シャルル ◆zu/zVku.Kc
彼らの作品がまだこのスレで一回も投下されていないな。気長に待ちますか。
621 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/10(水) 21:47:12 ID:+qHt9vbx0
投下してる人がものすごく少なく感じる。
ここは気長に(ry
622 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/10(水) 22:28:51 ID:XwfynC2jO
その中の一人だけど、次スレに移って新規の人のためにまとめにUPされたら投下しようと思ってたんだけど
あれよあれよという間にここまで来てしまった。
623 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/11(木) 14:12:26 ID:4FGH9lLL0
2スレ目はこれで読めるぞ。
ttp://makimo.to/cgi-bin/dat2html/dat2html.cgi?game10/2/ff/1116324637/
624 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/11(木) 14:32:49 ID:VMM+rwO9O
>>623
>77のリンクから飛べば全スレ読めるがな(´・ω・`)
625 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/05/11(木) 17:10:14 ID:vo/Rzc500
あぁ〜GW最悪だったぜ〜・・・
さてさて
>>473
さん、ありがとうございます〜
これからも試行錯誤していくつもりなので、気になるところがあったら言って下さい
では
>>456
からの続きです
626 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/05/11(木) 17:12:28 ID:vo/Rzc500
砂漠で水がどんなに大事なものか想像してみよう。
とても、とても暑い日だ。
日陰でじっとしていても汗が滴り落ちてくる。
気持ちの悪い熱気が容赦なく体を包む。
「あつい・・・・・」
その言葉しか言えないような状態だ。
そんな時、目の前に水を差し出されたらあなたはどうするだろうか。
ほとんど、いや間違いなく飲む事を選ぶだろう。
水を口につけ、渇いた喉が潤いで満たされる。
ごくごくと一気に飲み干し、ぷはっ!と息をつくあの瞬間の何と気持ちのいいことか。
水が無ければ我々は生きていけない。
砂漠という枯れ果てた土地では水は命に等しい。
もしくはそれ以上のものなのかもしれない。
ではそんな水によって育った花はどうだろうか。
「バカヤロウ!俺は今喉が渇いてるんだよ!花で喉が潤うか!!」
確かにそうだ。
しかし、本当にそうだろうか。
水が喉を潤すのは、その瞬間だけだ。
対して自然の恩恵によって咲いた花は人の心を潤す。
色鮮やかな花びらが風に揺られるその姿に安堵と覚える。
また、一生その場所で健気に咲き続ける花の強さに感動を覚えることもある。
一瞬の欲望に身を任せるよりも
美しいものを愛でる方がよっぽど人間らしいのではないか
でも結局人は喉が渇けば水を飲むのだ。
だとすれば、心が荒れた時に花を見ればいいじゃないか。
全てはその時の状況次第である。
だから、何が言いたかったかと言うと、
イシスの水で育ち、花で飾られたプエラ姫は今、1番美しい、という事だ。
627 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/05/11(木) 17:15:08 ID:vo/Rzc500
「天にましますルビスの御霊よ。
そして我らが父ファラオの名によって、今日の日が人々の記憶に残らんとするように。
偉大なる歴史の1ページを飾るこの式に参加できた事を我々は感謝するでしょう」
イシスの王宮、女王の間は飾り付けられ、結婚式場に仕立てられている。
玉座の前に神父が立ち、机を挟んで新郎新婦が横並びになっている。
プエラは花冠にシルクのドレス。胸の一輪の花が良いアクセントとなっている。
恥ずかしげな表情の中にも嬉しさを隠せない、といった笑顔が可憐である。
フィリーもタキシードで決めればちゃんと王子らしく見える。
黙っていれば嫌われるような事のない顔立ちなのだ。
トップの地位にある者として、それが損に働く事はまぁないだろう
「今から交換する指輪は、おふたりの愛のシンボルです。
その輪には、初めもなければ終わりもない、永遠のものです。
あなた達が永遠でありますように願いを込め、互いの心に祈りなさい」
2人の前の机には黄金の爪と、指輪が2つ乗せられている。
フィリーとプエラは相手にはめる指輪を手に取り、向かい合う。
互いの目が合い、どちらからともなく微笑みあう。
その表情から確かな愛をその場にいる全ての人が感じただろう。
そしてフィリーがプエラの指に、プエラがフィリーの指に指輪をはめた。
その動作をイシス女王・ロマリア王を始め、両国のお偉い様方が見つめる。
もちろん真理奈達も同席している。
「それでは新郎新婦、誓いの口付けをもってイシスとロマリアの民に、
そしてあなた達2人の心に夫婦となることを示しなさい」
「「はい」」
2人は寸分の違いもなく返事をし、再び向き合い近づく。そして、キス。
その瞬間、王子はプエラの夫に、姫はフィリーの妻になった。
「汝らの行く道に幸福あれ」
神父の声と皆の拍手喝采が2人を祝福した。
628 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/05/11(木) 17:23:52 ID:vo/Rzc500
「いやはや、こんなに嬉しい事は久しぶりですよ。
姫は息子に合って美しいし。いや、本当にめでたい」
「こちらこそ、無事に今日という日を迎えられて光栄に思いますわ」
誓いの儀式が終わった後、テーブルが出され皆に料理が振舞われた。
真理奈達はおいしく頂いたが、イシスの料理が合わなかったロマリアンもいたみたいだ。
「イシスの女王よ。改めて礼を言わせて頂きたい」
「もう止しましょう。この気持ちは1日喋り続けても尽きることはないのですから」
「おぉ、そうですな!ワハハ」
喋り続ける陽気なロマリア王を咎める者は誰もいない。
お酒の入る祝いの席なのだ。
それも息子の結婚式ともなれば多少羽目を外しても仕方の無いこと・・・
「フィリーよ、これからは2人でロマリアのために力を尽くしてくれ。
それとご安心なされ女王よ。
姫のロマリアでの豊かな暮らしを約束しますからな。ワハハ」
「・・・それはどういう意味でしょうか」
「どうもこうもないでしょう。こんな素晴らしいお嬢さんを頂けて私は幸せですよ」
「・・・何か勘違いされていませんか?これはそちらから持って来られた話です。
王子はイシスでプエラと一緒に住んでいただきます」
「何をおっしゃっているのですか。女が男の方に嫁ぐというのが当然でしょう」
「イシスにはそんな慣習はありません。だいたいプエラは次の女王となるべき―――」
「こちらだってそうだ!!可愛い息子を取られてたまるものか!!」
一気に場の雰囲気が変わる。ストゥルーストの叫びを機に双方の言い合いと発展した。
629 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/05/11(木) 17:28:06 ID:vo/Rzc500
「こんな砂漠の地に王子を置いていくなんて考えられない!」
「こちらだって可愛い姫様をお一人で他所へ嫁がせるなんてできませんわ!」
「何だと!こんな不毛の大地に住んでるからそんな事が言えるんだ!
砂漠の砂と同じようにお前らの心も渇いてるんだろうよ」
「まぁ!そんな事を平気で口にできる方がどうかしてるんじゃありません?!」
「だいたいこのスープはなんだ!もっと味を薄くしろよ!!」
わいわいがやがや・・・せっかくの披露宴が台無しである。
真理奈達は唖然とし、プエラは助けを求める目でフィリーを見た。
が、フィリーは黙ったまま、静かに様子を伺っていた。
「そもそも姫にそちらの王子は不釣合いですわ!頼りなさそうだし・・・」
「何を言うか!王子にはもっと利発そうな女子がだなー」
「それは王子の頭が足りないって事を認めるのね?」
「ちょっと待てコラー!フィリーだってやる時はやるんだぞー!!
プエラだっていい娘なんだからっ!!」
最後のは我慢しきれなくなった真理奈の怒声。
加わってどうするよ・・・まぁ気持ちは分かるけどね。
「フィリー、我が息子よ!お前も私の意見に賛成だろ?」
「プエラ、あなたは私の後を継いでくれますよね?」
まったく同時に今回の主役に話が振られた。
怒号は止み、2人の発する言葉に期待がかかる。
心配そうにフィリーを見つめるプエラ。
フィリーはそれに笑顔で返し、すっと立ち上がった。
そして静かな声で話し出す。
「父上」 「う、うむ?」
「申し訳ないのですが、プエラと一緒にロマリアに帰るつもりはありません」
「な・・・」
「そして新しい母上様」 「はい」
「申し訳ないのですが、プエラと一緒にイシスに住むつもりはありません」
「・・・・」
630 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/05/11(木) 17:31:41 ID:vo/Rzc500
「ピラミッドから帰って来た後、これからの事を私達は話し合ったのです。
この結婚が成立し、ロマリアはアリアハンとの連合に参加する事になりました。
連合に参加するという事は、この世界の平和の為に尽くす、という事です。
では私達は何をするべきなのか」
誰もが王子の声に聞き入っていた。
「私達はまず、アッサラームをモンスターの手から取り戻したいと思います」
驚き。しかしそれを表情に出しはしても、声にする者はいなかった。
「ピラミッドから無事に黄金の爪を持ち帰った事を経て、
行動しなければ道は開けないという事を私は学びました。
行動したからこそ私は今ここに立っていられるのです。
もちろん真理奈達の助けが無ければミイラの餌になっていたでしょう。
アッサラーム奪還も1人では到底不可能です。
ですから、皆さんの力を貸して頂きたいのです。
言い争っている場合ではありません。
ロマリア・イシス、皆の力を合わせて世界の平和を守りましょう!
これ以上哀しみを増やさないために!
未来を切り開くために!」
パチパチパチ・・・ワアァ〜!!
笑顔が溢れる中、それまで表情を崩すことのなかった女王も、優しく微笑んでいた。
そこで真理奈が立ち上がり、フィリーに何かを手渡す。青く輝くオーブだ。
「はい。これが連合参加の証」
「ありがとう真理奈」
「青はオアシスの色よ。頑張ろうね!」
真理奈はフィリーと、少し涙目のプエラと握手を交わした。
こうして真里奈の連合使者としての初めての仕事が終わりを告げた。
631 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/05/11(木) 17:35:20 ID:vo/Rzc500
「はぁ・・・」
ため息。それは1回つく毎に他人を3回不幸に落としいれるものだと言われる。
しかし今の真里奈には他人の事など関係なかった。
「はぁ・・・」
携帯の画面の明かりで真理奈の沈んだ表情が微かにうかがえる。
「はぁ・・・」
これで誰かがもう9回も不幸になってしまった。
このままでは世界を救うどころか、逆に滅ぼしかねない。
披露宴が終わり、浮かれていてもいいはずの夜なのに・・・
携帯の画面では仲間と写した写メが待ち受けにされている。
画面の右上では、電池の残量表示が1つ。赤く光り、警告している。
それもそうだ。
こちらの世界には充電しようにも電気が無いのだから。
携帯充電器も使い切ってしまった。
このままでは使い物にならなくなるのは時間の問題である。
では電源を落としておけばいいだろ、と思われるかもしれない。
しかし、真理奈にはそれが出来なかった。
真理奈にとって今や携帯は元の世界と今の世界を繋ぐ唯一のものなのだ。
それが使えなくなるという事は、元の世界との関係が切れてしまう事に思える。
常に圏外なので、電池の残っている今でも使い物にはならないのだが、
ルビスがいつ電話をかけてくるか分からないし、
メールを送る機会が無いとは言い切れない。
ルビスが自分の願いを聞き入れて向こうの世界と繋げてくれるかもしれない。
現に1回は送れたのだ。
届いたかどうかはこちらでは分からないが・・・
632 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/05/11(木) 17:40:46 ID:vo/Rzc500
真理奈はヒマな時、母親や友達にメールを作っていた。
未送信ボックスに残された、たくさんの届かない想い。
突然変な世界に連れてこられた事。
こっちで出会った仲間の事。
勉強より冒険が楽しい事。
早く戻ってしたいことが山ほどできた事。
それは元の世界では有り得ない今のこの状況を整理するのに一役買っていたが、
寂しさを増やす要因にもなっていた。
みんなで冒険をしてるときはいいのだ。
余計な事を考えなくていいから。
話をして、戦って前に進む。
それだけしてればいい。
思い出さなくていい。
この世界で自分だけが違うことを。
♪♪♪あの〜虹を〜渡って〜
ピッ 「・・・・もしもし」
「ルビスです。お疲れ様でした」
「・・・・・」
「この調子で―――」
「・・・・てよ・・・」
「あなたなら―――」
「帰して!!戻してよっ!!」
「真理奈・・?」
「このままじゃ帰れなくなっちゃう!!電池がっ・・・!!」
「真理――」 プツッ!ピーピーピーピーピー・・・
携帯が電池切れを告げる。
「どうして私なの・・・?ウッ・・・うぅ・・」
真理奈は携帯を耳に当てたまま泣き続けた。
633 :
暇潰し
◆ODmtHj3GLQ
:2006/05/11(木) 17:50:38 ID:vo/Rzc500
っと、今日はここまでです。
読みにくかったら言ってください。
すみません・・・
次の話はうまく書ける自信がないなぁ・・・
でも頑張ろ
ではではー
634 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/11(木) 19:48:03 ID:eTr4Fm8d0
暇潰しさんおつかれー
635 :
名前が無い@ただの名無しのようだ
:2006/05/11(木) 20:16:35 ID:eoQPNuYrO
暇潰しさん、乙彼さまです
送信出来ないメールを溜めてるって、なんだかとてもさみしい感じが伝わってきた
続きを早く読みたい!
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