■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 最新50 [PR]ぜろちゃんねるプラス[PR]  

ハ・・・ハッサンが!!ハッサンがー!! ハッサソLv3

620 :新・うちのハッサン(LV29、パラ☆2、盗☆7):04/01/06 06:15 ID:C97LP3+p
あいつが久しぶりに酒場にやってきた。俺を預けてからどの位時がたったのか、正確に思い出せないほど、久しぶりだった。
変わらない、ただゆっくりと腐り行く日々を送っていた俺には、それだけのことがとても新鮮に感じられた。
そして同時に、今までできるだけ意識しないように押し隠していた「寂しい」という感情があふれだしていた。
気がつけば俺は店の外に走り出ていた。ただ仲間たちに会いたかった。

緊張するな。変に意識するな。一緒に魔王を倒した仲間なんだぞ。
俺は深呼吸して、ばくばくしている心臓をなんとか落ち着けようとした。
そういているうちにあいつが近づいてきた。チャモロとミレーユも一緒のようだ。
「よ、よぉ・・・ひさ・・・」俺は思わず息を呑んだ。

「やあ、ハッサン。わざわざ出迎えに来てくれたの?ありがとう。」
あいつがにこやかに俺に笑いかけた。昔と変わらないさわやかな笑顔。
だが、見た瞬間、俺は感じた。目の前にいる男の、恐るべき強さを。
後ろでにこにこしているチャモロとミレーユも同様だ。一体、俺と別れてから、どれだけの修行を積んだというのだろうか・・・

「あー、しばらくヒマになるわよねえ・・・。」
「仕方ないですよ。私達はもう十分に強くなったんですから。」
どういうことだ?俺はチャモロに尋ねた。
「ああ、私達はもうはぐれメタル以外の職業を極めてしまったんですよ。それで他の仲間を鍛えることになったんです。馬車には8人しか乗れませんからね。」

あいつは新しく仲間になったキングスとカダブウという奴らを連れて店から去っていった。
「うーん、どうせはぐれの悟りがいっぱい手に入るまでお呼びがかからないだろうし、おばあさまのところにでもいこうかしら?」
「ダメですよ。近いうちにメタルキングヘルムを大量に手に入れるぞって言ってましたから。出番があるかもしれませんよ。」
目の前の仲間達が、別れているときよりも遠くに感じられた。

621 :新・うちのハッサン(LV29、パラ☆2、盗☆7):04/01/06 06:16 ID:C97LP3+p
それからあいつは頻繁に店を訪れるようになった。
途轍もない強さのホイミン(スライムの格闘場を制覇したらしい)、ピエール、ドランゴ、ロビン2が次々と店にやってきた。
代わりにヤスケ、カンカン、ルーキー、アンクルが次々と店から出て行った。
俺には一緒に連れて行ってくれと言うことすら出来なかった。

テリーはミレーユとドランゴがかまってくれるようになってから急に明るくなった。
ヒマそうにしていた仲間モンスターたちはチャモロからそれまでの冒険の話を聞いて、自分の出番はまだかまだかと目を輝かしている。
俺はグラスを傾けるアモスを見た。生気の失せた虚ろな目。孤独と自分に対する絶望。まるで自分の姿を見ているようだった。
だが、ある日のことだった。「ハッサンとアモス、来てくれないか?」

『ハッサン、来てくれないか?』俺はその言葉を一瞬信じられなかった。
「お、俺か?大丈夫なのか?その・・・あの・・・」声がうわずってまともな言葉が出せない。
「うん、大丈夫だよ。とりあえず馬車で待っててよ。」あいつはさわやかに答えた。
わずかな困惑、しかし大きな喜び。俺は新しい装備品を与えられなかったことなど全然気にしていなかった。

はじめてペガサスの馬車に乗った。興奮と喜びのあまり、俺はつばを飛ばしてあいつに話しかけまくった。
やがて馬車はある塔に着いた。ファルシオンがペガサスになったという塔らしい。こんなところに今更どんな用があるのだろうか。
「こんなとこで何するんだよ?俺、もっと空の旅を・・・」「出たな。」あいつは一人で馬車の外に出た。
はぐれメタルと暗黒魔道が現れた。

一瞬のことだった。あいつはこの世で最も硬く素早いモンスターであるはぐれメタルを一撃で仕留めていた。
慌てる暗黒魔道。はぐれメタルを蘇らせ、自らも呪文や杖で攻撃を仕掛けてきた。
だがあいつは、その攻撃を全く意に介さず、ただ淡々と蘇り続けるはぐれメタルを殺し続けた。
恐怖を感じた。

622 :新・うちのハッサン(LV29、パラ☆2、盗☆7):04/01/06 06:18 ID:C97LP3+p
58回生き返ったはぐれメタルを殺そうとしたとき、あいつの剣先がはぐれメタルを捕らえ損ねた。一目散に逃げ去るはぐれメタル。
「あちゃー、しくじっちゃったか。仕方ないか・・・」残された暗黒魔道を一撃で切り捨てると、あいつは馬車の中の俺に話しかけてきた。
「どう?結構レベル上がった?」
俺のレベルは8は上がっていた。

「前から考えてたやり方だったんだけどさ、実際どの位うまくいくのかわかんなくてさ」「まあとりあえず実験てことで」
「でももし凄くうまくいっちゃったら高レベルな人だと経験値が無駄になっちゃうじゃん?」「だから君らを呼んだんだけど・・・はじめてだとこんなもんか。」
俺とアモスは酒場に戻された。
俺たちの装備はしっかり全部はがされた。

「はぐれメタルなんてそうそう仲間に出来るものじゃないのに・・・。あのひともヒマ人ね。」
「仕方がないですよ、凝り性ですからw」
「おおーい、見てくれ!新しい仲間の『はぐりん』君だ!!」
俺にはどうでもよかった。

ある日、悲しげな表情のあいつが店にやってきた。
「どうしたんですか?」「ルイーダさんに、『あなたのお仲間はあなたを含めて24人までが限界よ』って言われたんだ・・・」
「それ以上はもうモンスターを仲間に出来ないってことか・・・」「そう・・・仕方ないわよね。」「うん・・・残念だけど・・・仕方ないよね・・・」「元気をだしてくださいよ。」
俺にはその話をそれ以上聞くことは出来なかった。

あいつは結構いい奴だ。今も昔もそれは変わってないと思う。仲間になったモンスターを捨てるような真似はしないだろう。無論、人間もだ。
だけどあいつの行動は、あいつの意思とは関係なく俺から多くのものを奪ってしまった。男としての、武道家としての、ヒトとしての誇りと自信・・・・・・
今ここにあるのは、レベルだけ無駄に高いただのでくの坊だ。
絶望した。俺は自分の体に両手を向けてニフラムを唱えた。俺には効かなかった。

500KB
続きを読む

名前: E-mail(省略可)
READ.CGI - 0ch+ BBS 0.7.4 20131106
ぜろちゃんねるプラス